2005年3月号
特集

物流資産は誰が持つ 日本型3PLのアセット戦略

MARCH 2005 16賃貸物件の建設費を抑制今年二月 佐川急便は新たに前橋店をオ プンさせた 同社にと て三三七カ所目となる同施設は延べ床面積約五九〇〇平方メ トルの平屋建て 一部二階建て 昨年十二月に市町村合併で誕生した新生・前橋市で集荷 配達を担当する拠点として機能していく 次ペ ジ写真参照 土地および建物を用意したのは不動産開発会社のケネデ ・ウ ルソン・ジ パンだ 同社は今回の物件について佐川と二〇年の定期借家契約を締結している 将来は前橋店を物流REIT 不動産投資信託 などの不動産フ ンドに売却する計画だ 佐川が拠点を賃借するのは珍しいことではない すでに現在稼働している拠点のうち約半数は賃貸物件だ ただし これまでは現地の地主などから物件を賃貸しているケ スがほとんどで 不動産フ ンドに絡んだ物件を利用するのは今回が初めてだという も とも 佐川にと て不動産フ ンド云々とい た話はあまり大きな意味を持 ていない 同社がケネデ から物件を賃借することにしたのは単に賃料が安か たから コンペを実施した結果 いずれ発生する修繕費なども含めたト タルコストを最も低く抑えることができる提案を行 たのがケネデ だ た 今回はたまたまケネデ をパ トナ に選んだが 次の案件でもケネデ のような不動産開発会社と手を組むとは限らない 当社はよりコストが安く済む提案を受け入れるだけ 相手は選ばない 不動産開発会社が物流施設の分野に進出してきたことは 従来よりも選択肢が増えるという意味で ユ ザ としては歓迎すべきことだ 競争原理が働くようにな て 賃料がさらに下が ていくことを期待している と増子天設備投資部長は説明する 佐川にと て前橋店は初の不動産フ ンド関連の案件であると同時に 実は自社主導で拠点の仕様を決める 佐川急便施設モジ ルシステム の第一号案件でもあ た 同システムは設備投資部が一枚の設計図を用意し それを基づいて拠点づくりを進めていくというもの 設計図ではプラ トフ ムの高さや 外壁に使用する建材の種類など拠点の仕様が細かく決められており 建設会社はそれに準拠するかたちで拠点の建設に着手することが要求される 試算によると 詳細な設計図を予め用意しておくことで一拠点当たりの工費を従来に比べ一五%程度削減できる見通しだという 実際 前橋店のプロジ クトを通じて大きな成果が上がることを確認できた 賃料ダウンにも大きく貢献している これを受けて 今後はすべての拠点について施設モジ ルシステムの適用を義務付けることにした 素人には判別しにくいが 同社の既存の拠点は仕様がバラバラな状態にな ている 例えば プラ トフ ムの高さや柱の太さなどは拠点によ て微妙に違 ている そのため 拠点としての規模はそれほど変わらないにもかかわらず 拠点ごとに工費にバラツキが生じていた 佐川は一〇年ほど前まで地域ブロ クごとに別法人化されていた 拠点の仕様が統一されていないのは 各法人に拠点の建設を委ねてきたことの名残だ しかし新システム導入後は拠点建設に関連する権限を各支社から本社の設備投資部に一本化する 増子部長は 施設のモジ ル化は建設コストを削減して投資負担を軽くすることだけが目的ではない 仕様を統一することによ て現場の作業生産性のバラツキを解消する狙いもある と説明する 日本型3PLのアセット戦略欧米市場とは違って、資産を持たないノンアセット型3PLは機能しない――それが日本の物流業界では、これまで常識となっていた。
しかし物流不動産ファンドが台頭し、施設の所有とオペレーションが分離されたことで、日本にもノンアセット型3PLを展開する環境が整ってきた。
(刈屋大輔)第3部 物流資産は誰が持つ 特集 17 MARCH 2005日立物流の高橋俊之営業開発部長現在 佐川では経営指針の一つに 資産のオフバランス化 を掲げている 資産をなるべく持たないようにするため 今後は賃借物件を中心に拠点を立ち上げていく方針だ その際 供給先に拠点の建設を丸投げするのではなく 自身が拠点の建設により深く関与する そうすることで 拠点の工費を大幅に削減し 賃料などコストの引き下げを実現しようとしている ノンアセ ト型が可能に宅配便や特別積み合わせ輸送のようなインフラビジネスでは物流業界に限らず ネ トワ クを資産として所有するのが長い間 日本では常識とされてきた 購入した資産を担保物件として新たな資金を調達 それによ てネ トワ クの拡充を図る しかし このやり方は不動産バブルの崩壊によ て破綻した これに伴い物流企業はアセ ト戦略の転換を迫られた しかし 佐川のように財務的な観点から新しい方針を固めているケ スはまだ少数派だ 日本通運では不動産フ ンドの提供する施設を数多く賃貸利用する一方で 依然として不動産の購入も続けている 必要な施設を賃貸するか購入するかは 案件ごとに担当部署が判断する体制だ 他の多くの企業も現状では同様の対応をと ている 日立物流は今年三月末に 東日本PFC PlatformCenter を稼働させる 同施設はトイレタリ 業界を対象にした共同物流センタ で メ カ から預か た製品を保管・仕分けして東日本地域の日雑卸に配送する機能を担う 敷地面積約三万八〇〇〇平方メ トル 延べ床面積約五万八〇〇〇平方メ トルの四階建ての大規模センタ で 東北自動車道加須インタ チ ンジから約一・五キロに位置する 施設を用意したのはプロロジスだ これまで日立物流は特定荷主を対象とした3PL用の拠点を新設する場合でも 資産として購入する場合が多か た 例え3PL契約が打ちきられたとしても他の荷主を獲得できる自信があれば購入する ノンアセ ト型3PLが普及する欧米市場とは異なり 日本ではアセ ト型のほうが有利という考えがあ た しかし その方針は近年 微妙に変化し始めている 東日本PFC を計画するにあた て 日立物流では荷主の工場や配送先の分布から最適な建設候補地を割り出すためのシミ レ シ ンを実施した その結果 関東 東北地区へのアクセスがいい加須を候補地に選んだ 続いて自社で投資して拠点を用意すべきなのか それとも外部の業者に委託すべきなのかを判断するためのコンペを実施 自社で拠点を用意した場合の運営コストと 外部に任せた場合の運営コストを比較して よりコストの安いほうを選ぶことにした 最終的にプロロジスをパ トナ に選んだわけだが その理由は簡単だ 当初 一〇 一五年の長期契約を求めたり 坪当たりの賃料が相場によりも割高だ たり かなり強気な内容だ たプロロジスの提案が 何度も交渉を重ねるうちに日立物流のニ ズに近づいてい たからだ 高橋俊之営業開発部長は とてもじ ないがそんな条件ではペイできない と説明して提案内容の見直しを要求した すると次第に彼らの対応が変わ てきた センタ 内部に導入するマテハン機器についても当社の意向を汲んでくれるという 最終的に当社で拠点を用意した場合のコスト水準を下回る提案があ て ゴ サインとな た と説明する 物流不動産フ ンドとノンアセ ト型3PLがタ グを組んでアウトソ シング事業を構成する欧米型のモデルが日本にも普及し始めている 佐川急便は賃貸物件の設計を自らが手掛けることで建設コストを削減している(写真は「施設モジュールシステム」の第一号案件となった前橋店)

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