ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2003年7号
メディア批評
不可解な妥協を繰り返す最近の朝日新聞 小沢一郎への屈服にみるマスコミの堕落

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

佐高信 経済評論家 31 JULY 2003 『朝日新聞』がおかしい。
有事法制に基本的 に賛成する民主党案を社説で支持したり、変 な妥協が目立つのである。
そのスタートともいうべき「事件」は小沢 一郎への屈服にあった。
「野中広務と小沢一郎 の正体」という副題の松田賢弥著『闇将軍』 (講談社)がその経緯を詳細にドキュメントし ている。
一九九四年秋、?手打ち〞はなされた。
その前に『朝日』は小沢が「どの女と寝よ うが勝手じゃないか」と発言したことを報じ、 小沢とは断絶状態だった。
それを政治部長だった秋山耿 こう 太郎が遺憾と し、関係修復に動くのである。
同年一〇月十二日夕、秋山は総理官邸向か いの国会記者会館に足を運び、同紙の記者二 〇人近くを前に、こう切り出したという。
「小沢一郎氏とのこれまでの対立状態では、 小沢氏から直接取材できない。
新・新党結成 の流れのなかでは、いかにもまずい。
直接取 材できるパイプをつくるため、近く小沢氏の インタビュー記事を出したい」 驚く記者たちに、秋山は付け加えた。
「しかし、記事が出たからといって、小沢氏 に屈するものではないという信念をもってい る。
明日から、たとえ激しくケンカしてもか まわない。
私が責任をとる」 弁明になっていない弁明だろう。
さすがに 現場の記者たちは反論した。
「なぜ、こちらから折れる必要があるのか。
折れるかたちでのインタビューは必要ない。
なぜ、おもねるのか。
小沢の記事で、うちと 他社を比べて、どこが見劣りするというのか。
他社だって小沢の情報をとれていないじゃな いじゃないか」 「承服できない。
ジャーナリズムとジャーナ リストの自殺行為だ」 「かりに、ある省庁とトラブったら、その省 庁に言われるままに詫び状を出すのか。
それ と同じことだ。
小沢には権力があるからへり くだるというのなら、権力者への屈服そのも のだ」 このように突き上げられた秋山は苛立ち、 次の趣旨の発言で押し切った。
「?手打ち〞だ……。
タイミングがいいんだ。
(時事通信社の政治部次長で?小沢番〞だった田 崎史郎が『文藝春秋』一九九四年一〇月号で小 沢のオフレコ発言の一部を暴露報道した)?田 崎メモ〞の公表で、小沢氏が直接取材を受け たがらなくなっている。
インタビューに編集 局長は消極的だ。
しかし、オレが責任をもつ」 秋山が考えていた「責任」とは何だったの だろうか。
その後、彼は編集局長となり、役 員となったが、自らをジャーナリストとして 規定していたとは思えない。
小沢への屈服イ ンタビューは一〇月一五日付の紙面に載り、 その影響か、翌年二月、信じられない事件が 起こる。
青森県知事選投票直前に『朝日』が行った 選挙情勢調査の生データが、新進党担当の同 紙記者から同党幹部に流れたのである。
フリーの松田に取材対象との緊張関係があ り、『朝日』の記者たちにそれがないのはどう いうことなのか。
松田はこう書く。
〈一連の出来事から、朝日新聞は小沢に利用 され、もてあそばれているとしかみえない。
なぜ、こうなったのか。
ある朝日新聞記者は、 匿名を条件にこう語ってくれた。
「そもそも?手打ちインタビュー〞で『どの 女と……』発言以降の小沢氏の朝日新聞攻撃 に決着をつけずうやむやにしたことが、今回 の生データ流出問題の根底にある。
つまり小 沢氏は、朝日新聞はオレの言うことを黙って 聞くんだと足元をみてきているんです」 勘ぐれば、小沢が意図的に朝日新聞の名が 入ったファックスをそのまま流すことで、朝 日新聞は意のままになるんだと力を誇示した と受けとめられても仕方なかろう〉 『朝日』は再び昇るのだろうか? 不可解な妥協を繰り返す最近の朝日新聞 小沢一郎への屈服にみるマスコミの堕落

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