ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2003年7号
海外論文
サプライチェーンの評価方法《後編》

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JULY 2003 40 メトリクス確立への枠組み サプライチェーン・メトリクスの確立を阻ん でいるのは、?複雑さ〞である( 図5 )。
たとえ ばコルゲート・パルモリーブ、P&G、ユニリ ーバといった企業は、同じ消費者へ商品を販売 し、同じサプライヤーから原材料を購入してい る。
競合するサプライチェーン同士はそれぞれ 独立した?サプライチェーン vs サプライチェ ーン〞ではなく、相互に絡まりあったネットワ ークを形成している。
サプライチェーン間で、 在庫・サービス・施設を共有する例が多いのは このためである﹇注 49 ﹈。
したがって、ある特定の企業がサプライチェ ーン・パフォーマンス全体におよぼす影響を見 きわめるのは、経営者たちにとって容易なこと ではない。
前編で言及したように、在庫回転率 ひとつをとっても、参加企業の合計値がそのま まサプライチェーンのトータルとはならないの である。
大多数のサプライチェーンが複雑な網状組織 であるにせよ、共通するビジネスプロセスのパ フォーマンスを一元的に管理するメトリクスは 確立し得る。
われわれがここに提案する枠組み では、それぞれのリンク(サプライヤー/カス タマーのペア)ごとにパフォーマンスを統一す る。
まず、あるひとつの企業に焦点をあて、その 企業と他の企業との結びつきをたどると同時に、 さらにその先へとリンクを伸ばす。
リンクごと のアプローチをとることにより、サプライチェ ーン全体と各企業の株主価値の最大化という 目的に沿ったかたちで、サプライチェーンの起 点から消費地点にいたるまでの全パフォーマン スを統合できる。
この枠組みには七つのステップがある。
1 鍵となるリンクはどこにあるか、サプライ チェーンの起点から消費地点までくわしく マッピングする ダグラス・M・ランバート オハイオ州立大学/ノースフロリダ大学教授 テレンス・L・ポーレン ノースフロリダ大学教授 サプライチェーンの評価方法《後編》 VMIの導入など、パートナー企業と のコラボレーションによる改革の効果を 測定するには、サプライヤーとカスタマ ー双方に与える影響を評価しなくてはな らない。
本論文後編では、その具体的な 方法として「サプライヤー/カスタマー 複合収益分析」が紹介されている。
*本稿はダグラス・M・ランバート博士の同名の論文「Supply Chain Metrics 」を、博士の許可を得て本誌が翻訳したもの です。
本号と前号の二回に分けて掲載しています。
図5 サプライチェーンの多重構造 ティア2 サプライヤー ティア1 サプライヤー メーカー ティア1 カスタマー ティア2 カスタマー 1 2 3 n 2 3 4 n 2 n 1 1 1 n 1 3 1 1 消費者/エンドユーザー 41 JULY 2003 2 
達劭佑硲咤劭佑離廛蹈札垢魍萢僂靴謄螢鵐 ごと(サプライヤー/カスタマーのペア)の 分析をし、さらに価値を付加できるのはどこ かを見きわめる 3 カスタマー/サプライヤーの関係が、各々の 収益と投資価値に与える影響を評価するた め、両者の損益計算書を入手する 4 目標達成へ向け、機能とプロセスを再編成 する 5 個々人の行動がサプライチェーンの目指すも のと収益目標に一致するよう、非会計帳簿 的なパフォーマンス評価基準を確立する 6 株主価値と市場資本価格をサプライチェー ンの目標と照らしあわせ、プロセスとパフォーマンス評価基準の見直しを必要に応じて 行う 7 サプライチェーンのすべてのリンクで同様の 作業を繰り返す サプライチェーンのマッピング この枠組みは、サプライチェーンの起点から終 点までをマッピングするところから始まる。
マッ プは、起点から最終消費者にいたるモノと情報の 経路を表す(前編図4参照)。
このマップにより、 サプライチェーンがさまざまな企業の結びつきで 成り立っていることを、マネージャーたちは再確 認することになる。
鍵となるリンクとは、目標達成にもっとも寄与 する一対の組み合せのことである。
まず手をつけ るべきなのは、収益改善と競争力の維持強化に もっとも貢献しうるペアを管理することである。
カスタマー・リレーションシップ・マネジメント (CRM)とサプライヤー・リレーションシップ・ マネジメント(SRM)のふたつは、カスタマー とサプライヤーの関係を把握する主要なプロセス であると同時に、サプライチェーン全体を結びつ ける紐帯でもある。
リンクごとの分析 もし自分がサプライヤーであれば、カスタマー との関係構築・管理に、CRMプロセスを用い る。
まず主要カスタマーを特定し、ついでサプラ イヤー側のCRMチームが彼らと製品のカスタマ イズやアフターケアの取り決めをおこない、しか るのちにパフォーマンスのレベルを設定する﹇注 50 ﹈。
CRMプロセスは、カスタマーと協働しながら パフォーマンスの改善をめざす( 図6 )。
たとえ ばVMI導入のため、CRMチームがカスタマー 側のチームと交渉をするようなこともあるだろう。
導入が成功すれば、割当増による収益改善効果 が期待できる。
その関係性によってコストが下が り、最終製品の価格引き下げにつながれば、サプ ライチェーン全体の売り上げが増え、収益が改善 する。
あるいはサプライチェーンの最下流に製品 を適切に補充できる在庫管理の体制があり、結 果的に収益が改善されることもあるだろう。
原材料調達の適切なスケジューリングと、生産 能力・労働力の効率的利用で、売上原価は下が る。
VMI導入後、カスタマー在庫が底をつく時 点で、サプライヤー側は一度だけ売り上げの減少 に見舞われる。
いままでカスタマーが管理してい た在庫の所有権と責任を肩代わりすることで、サ プライヤー側の経費は増加するが、注文処理と需 要予測にかかる費用は減る。
需要予測と安全在 庫に代え、POSデータを利用して出荷計画を 立てれば、在庫維持コストは抑えられる。
設備の有効利用と、生産計画・需要予測を共 同で行うことで、カスタマーが持つ特定の設備が 不要になる。
ただし、コスト削減のトータルが増 加分と相殺しない場合は、たとえばカスタマー側 がサプライヤー側に小切手を切るなど、なんらか の利益分配が考慮されねばならない。
海外論文 図6 CRMが経済的付加価値(EVA)に与える影響 経済的 付加価値 利益率 純利益 売上高 売上高 純利益 資本 コスト × = + + ÷ % 売上原価 売上高 在庫以外の 流動資産 在庫 経常費用 粗利益 固定資産 流動資産 資産合計 主要カスタマーとの関係の維持強化 売り上げの拡大 利益率の高い製品の販売 カスタマーの“棲み分け” 費用とサービスの最適化 生産性改善 セグメント化されたマーケティング 重要度の低いカスタマーに対するサービスレベルの抑制 事務処理コスト改善 利益率の低いカスタマーに対するサービス停止または抑制 人的ネットワーク/設備の最適化 オルターナティブな別の配送網の利用 カスタマーサービスとオーダー管理コストの低減 一般管理費の削減 人件費の削減及び効率アップ 需要予測の改善 安全在庫の圧縮 メイク・トゥー・オーダー/在庫カスタマイゼーションの集約 サイト短縮による売掛金の圧縮 設備の有効利用及び合理化 投資の計画と配分見直し 商品開発と設備投資の改善 CRMのもたらすインパクト JULY 2003 42 図6に示したように、CRMを通じて得られ るプロセス改善は、経済的付加価値(EVA) モデルを介して株主価値の増大へと読みかえる ことができる。
こんどは逆にカスタマーの立場からサプライ ヤーとの関係を管理する場合には、SRMプロ セスの出番となる。
サプライヤーの貢献度と重 要度に応じてカスタマーがサプライヤーを選択 し、関係を構築する。
SRMはCRMの合わせ 鏡である。
SRMがEVAにどのように現れる かはCRMの場合と同様、計測可能である( 図 7 )。
CRMの場合を参考に、VMI導入の得失 をSRMプロセスによって解明してみよう。
選 びぬかれたサプライヤーと協働することで得ら れるコスト削減・販売価格抑制・品質改善に より、収益が改善する。
サプライヤー集約によ る大量仕入で、売上原価も下がる。
一方、発注と在庫管理をサプライヤーに肩代 わりさせることで、経費は減る。
在庫を上流の サプライヤーに肩代わりさせると、相対的な在 庫評価額が低くなるため、カスタマーとサプラ イチェーン全体にとっての在庫維持コストが減 るのである。
CRMとSRMは、金融費用の軽減や、サ プライヤー/カスタマー関係が生む総体的な価 値を表す。
図6と図7で示したことは、他の六 つのサプライチェーン・プロセスにも同様にあ てはまる。
損益計算書の活用 両者の関係が各々の収益性にどのように反映 するかは、カスタマーとサプライヤーの損益計 算書に如実にあらわれる( 図8 )。
他の六つの プロセスによるパフォーマンスの改善(前編図 3参照)と同じく、カスタマー/サプライヤー の両者で取り組む結果は、それぞれの損益計算 書に見てとることができる。
八つのプロセスの適切な行動指針として、パ フォーマンス評価基準の確立は欠かせないが、 すべてのプロセスの会計上の帰結は、カスタマ ーごとの損益計算書に現れるのである。
全カス タマーそれぞれの損益計算を合算し、取引にか かわるコストを差し引けば、自社全体のパフォ ーマンスがわかる。
図8はメーカーが卸もしくは小売りに販売す る際の「サプライヤー/カスタマー複合収益分 析」である。
サプライヤー(メーカー)の場合、 生産工程そのものの貢献を評価するため、まず 売上高から製造原価を引く。
つぎに貢献利益を 出すため、販売関連の変動費と物流費を引く。
そして当該カスタマーにおける管理可能な貢献 利益を出すのに、固定費のうちから棚スペース 代や在庫費用といった管理可能な部分を差し 引く。
最後に設備使用費を引いた残りが、当該 図7 SRMが経済的付加価値に与える影響 × = − + − + ÷ ̃̃ ̃̃ 価格引き上げ(よりよい品質またはサービス) 販売量の増加(注文充足率の改善) サービス内容とコストバランスの見直し 生産工程の効率化 原材料費の圧縮 工場の生産性改善 生産性の向上 雇用の抑制 運賃・間接労働、倉庫費用の削減 人的配置/設備の最適化 オルターナティブな流通網の活用 顧客サービス/オーダー管理費の削減 一般管理費の削減 情報システム費の削減 人件費削減 原材料・貯蔵品在庫の圧縮 半製品・仕掛品在庫の圧縮 商品・製品在庫の圧縮 設備合理化と操業率の向上(倉庫&工場) 投資計画と配分の管理 SRMのインパクト 経済的 付加価値 利益率 純利益 売上高 売上高 純利益 資本 コスト % 売上原価 売上高 在庫以外の 流動資産 在庫 経常費用 粗利益 固定資産 流動資産 資産合計 図8 カスタマー/サプライヤー複合収益性分析:設備使用の変動を加味した貢献利益アプローチ サプライヤー 売り上げ  売上原価(製造原価) 生産工程における貢献利益 販売関連の変動費と物流費  セールスコミッション  輸送費  倉庫費用  特殊梱包費  売掛金に対する金利  注文処理 貢献利益 管理可能な固定費  給与  当該部門の広告宣伝費  棚スペース代  在庫維持費 当該部門における管理可能な貢献利益 設備使用費 実質貢献利益 カスタマー 売り上げ  仕入原価 グロス貢献利益 プラス:値引き  市場開拓協賛金  棚スペース代  メーカー負担の販売促進費 ネット貢献利益 販売関連の連動費と物流費  輸送費  荷受け  注文処理 貢献利益 管理可能な固定費  給与  広告宣伝  在庫維持費:マイナス  買掛金負担 当該部門における管理可能な貢献利益 設備使用費 実質貢献利益 カスタマーA サプライヤーA 43 JULY 2003 カスタマーにおける実質貢献利益である。
一方、カスタマー(卸/小売り)の場合は、 売り上げから仕入原価を引いてグロスを出し、 そこに値引き分などを足してネットの貢献利益 を出す。
残りの手順は、サプライヤーの場合と 同様である。
この計算には、売掛金・在庫費用・設備使 用料などの機会費用が含まれる。
したがって、 これまでの損益計算書にくらべ、はるかにキャ ッシュフロー表に近い性質をもつ。
また、売上 総額からは、売り上げがなければ発生しないコ スト(回避可能費用)が控除されている。
もしそのサプライヤーが別のメーカーにも汎 用品を売っているとすれば、カスタマー自身の 売り上げがサプライヤーに左右される(高品質 や低い返品率など)ことがないかぎり、そのサ プライヤーに関するカスタマーのレポートは、 トータルコスト分析となる。
カスタマーがパフ ォーマンスの違いを見るには、その期のトータ ルコストを前年同期や他のサプライヤーの場合 にあてはめてみればよいのである。
評価基準の再編成 損益計算書はサプライチェーン・パフォーマ ンスを評価する最善の指標であり、諸々のプロ セスや企業間のパフォーマンス統一に役立つ。
先に挙げたVMIの例では、有用性を増大させ ると同時にコストは削減しなければならないと いう課題を、サプライチェーンは負っている。
サプライヤーにとってVMIの導入は、ある部 分でのコスト増大であるとともに、他の部分で のコスト削減でもある。
サプライヤー自身の損益計算書に現れる変化 は、設備費(設備使用料が変わるため)・売上 高・収益だけではなく、トータルコストに見て とることができる。
同様にカスタマー側の損益 計算書にも、VMI導入による変化が反映され る。
複合収益分析はすべての成果をはっきりと 浮かびあがらせる。
また経営陣にとっては、サプライチェーンの 目標と自らの行動を一致させることが、どれほ ど自社の収益力を高めるかということを理解す るための指針となる。
こうして得られる情報が あってこそ、サプライチェーン・プロセスの見 直しで生じる新たな負担や受益について、公平 な分配を主張することができる。
あるプログラ ムの検討にあたり、当事者たちの損益を試算す ることが可能となるからである。
このアプロー チにより、正確なサプライチェーン・パフォー マンスの評価基準が得られる。
在庫回転率といった機能別あるいはロジステ ィクスの評価基準では、トレードオフの関係に あるコスト同士を、経営のすべての要素を考慮 に入れたうえで比較検討することはできない。
前編で述べたように、より適切な基準である在 庫維持コストにしても、在庫削減によって生じ るコストは反映されない。
在庫維持コストの管理を通じて得られるコス ト削減分が、生産のセットアップ、輸送、受発 注、販売機会損失などのコスト増に追いつかな いこともあるうる。
在庫削減のサプライチェー ン全体に対するインパクトは、小売段階でのも のが通常もっとも大きい。
一般的にいえば、受 注生産や在庫場所・所有権を上流に移すこと は、サプライチェーン・パフォーマンスを向上 させる。
カスタマー/サプライヤー複合収益分 析が、在庫再配置のサプライチェーン・パフォ ーマンスに与える影響を浮き彫りにするのに対 し、在庫回転率という基準は、いかなるトレー ドオフ・コストをも反映しない。
非会計的評価基準と 損益計算書の関連づけ サプライチェーン・パフォーマンスや機能の 向上には、損益計算書と経済的付加価値だけ で充分というわけではない。
評価基.準を組織 の最末端にまで行き渡らせるため、サプライチ ェーンと企業の多様な評価基準を段階的に配 置換えしなければならない。
たとえば、注文充足プロセスのパフォーマン ス評価基準を確立するのに、マネージャーは 図 9 で示した諸目的から着手する。
倉庫作業員や 注文充足プロセスに関する責任者たちには、効 率的で正確なオーダー・ピッキングが、収益や 株主価値におよぼす影響についての説明はでき ないかもしれないが、所用時間やミスの削減に 注力することはできる。
オーダー・ピッキング にかかる時間を減らす一方、生産性を上げてオ ーダーごとのコストを引き下げる。
ミスが減れ ば売掛金回収が早まり、返品にまつわるコスト も減る。
オーダー・サイクルタイムの短縮は、競 争力の強化を通じて売り上げの増大をもたらす。
サプライチェーンの各リンクにおいて収益と 株主価値を改善するのに必要な諸目標が、個々 の評価基準と結びついていなければならない。
活動基準原価計算の導入や、すべての収益と 海外論文 JULY 2003 44 資産の意味するものの解析、さらにこうして得 られた情報をEVAや収益分析にインプットす ることなどで、諸活動をコストへと読みかえる。
こうしてはじめて、非会計的パフォーマンスと 株主価値とを結びつけることが可能となるので ある。
企業同士の比較と反復作業 この枠組みにおける最後のステップは、関係 する全企業の株主価値と市場資本価格を比較 し( 図 10 )、そしてサプライチェーンのすべて のリンクごとにいままで述べたステップを反復 することである。
総合的なパフォーマンス判断のよりどころと なるのは、サプライチェーン各社の市場資本価 格である。
卸売業者Bの、サプライヤーとして のCに関する損益計算や、生産者であるCがサ プライヤーとしてのDから得るコスト削減分は、 ダブルカウントを避けるために市場資本価格に は含めない。
なぜなら、サプライヤーから得る 利益の増加やコスト削減分は、カスタマーとし て見た場合の損益計算として、サプライヤー側 がカウントするからである。
小売りやエンドユーザーの場合、カスタマー ごとの損益計算書が手に入ることはほとんどな い。
そこで、サプライヤー各社の損益計算書か ら取引関連費用を差し引き、総合的な収益を 判断する。
経営の究極目的は株主価値の増大にあるの だが、景気動向やその他の要因によって、短期 的には株価収益率が落ちこむこともある。
こう した状況下では、単純に純利益の推移を集めた ほうがよい場合もあり得るだろう。
図 10 に示し た例では、すべての会社の利益が増えているが、 これは経営陣が会計的なデータを活用し、公平 なコストと利益の分配について合意しあった結 果である。
プロセス変更と評価基準の導入によって、目 標とした収益と株主価値が実現したかどうか、 責任者たちは判断を下すべきである。
目標達成 のためには、プロセス改良や見返り条件の再検 討が必要となるかもしれないからである。
多くのケースで、マネージャーたちはサプラ イチェーンの上下流の末端にまで視線を伸ばさ なければならない。
彼らにとって「ティア2 (二次取引先)」や「ティア3」に位置するカス タマー/サプライヤーが、さらなるコスト削減、 品質向上、商品開発促進の機会をもたらすかも しれないのである。
サプライチェーンの判断として、価値の付加 に寄与しない中間業者を排除したり、なんらか のセグメントにおいて収益性を向上させる企業 を組み入れたりすることもあるだろう。
たとえ ば、大量の小口顧客に対するサービスや遠隔地 での流通に、しかるべきディストリビューター を起用するといったことである。
カスタマー/サプライヤー複合収益分析は、 サプライチェーンのリンクごとにおこなう必要 がある。
リンクごとのプロセス分析と、それぞ れのリンクが生みだす価値への理解があってこ そ、消費者/エンドユーザーへ価値を還元し、 各企業に最大の収益と株主価値をもたらすプロ セスの再編が可能となるからである。
この枠組みで得られるものとは、自分たちの 会社が、サプライチェーンによって作られる総 体的な競争力と価値にどのように貢献している か、ということに対する経営陣の理解と、サプ ライチェーンのダイナミックな再編成への機運 である。
経営者がそれぞれのリンクにおけるパ フォーマンスを最大化していけば、会社は徐々 にベスト・パフォーマンスへと近づく。
ついに は全プロセスがより効率的かつ効果的となり、 各企業と全体にとっての収益が最大化するポイ ントへと、サプライチェーンは自然に移行して ゆく。
そのプロセスはつねに進行中であり、た えまない修正を要する。
総合的なサプライチェーン・パフォーマンス 図9 注文充足が経済的付加価値に与える影響 経済的 付加価値 利益率 純利益 売上高 売上高 純利益 資本 コスト × = − + + ÷ % 売上原価 売上高 在庫以外の 流動資産 在庫 経常費用 粗利益 固定資産 流動資産 資産合計 注文充足のインパクト ̃̃ ̃̃ リピート・ビジネスの獲得 販売量の増大 市場・顧客シェアの拡大 利益率の高い顧客の維持・関係強化 配送完了率の向上 ダメージとトレーシングの削減 利益率の低い顧客へのサービスレベルの抑制 ハンドリングコスト削減 一般管理費の削減 配送コスト削減 人員配置・設備の最適化 オルターナティブな流通網の活用 単純なミス、クレーム、返品率の抑制 オーダー・サイクルタイムの短縮 人件費圧縮・人的効率のアップ 在庫回転率の向上 商品・製品在庫の圧縮 陳腐化した在庫の処分 サイト短縮による売掛金の圧縮 設備合理化と操業率の向上 45 JULY 2003 を向上させるには、他社との交渉ごとだけでな く、社内における積極的なアクションが求めら れる。
経営者たちは、各リンクそれぞれのプロ セスでどんな価値が創造されているかを理解し、 価値向上のための協力的アクションをとり、そ してそうした全ステップをサプライチェーン全 体にわたって繰り返す。
結局のところ、あるサプライチェーンの競争 力と収益力を決めるものは、カスタマーである 小売業者やエンドユーザーである企業へ還元す る価値(製品またはサービスとその価格)なの である。
今後の課題 ここで提起した枠組みを、実際のビジネスの 現場で検証することが今後の課題である。
導入 への障害となるものを特定し、それらをいかに して乗りこえられるかを見定める必要がある。
非会計的な評価基準を確立し、それが会計的 パフォーマンスへと反映されねばならない。
特 定の評価基準を確立するのではなく、それぞれ の置かれている状況にもっとも合致した評価基 準確立の枠組みこそが、終着点であらねばなら ない。
もっとも、別々のサプライチェーンで同じよ うな評価基準が見られるとすれば、その限りに おいては標準的な評価基準とも呼びうるであろ う。
ここで述べた損益計算をいったん採用すれ ば、コストと受益の公正な配分のため、経営者 たちには将来にわたってそうした損益計算が必 要となる。
このことは、他の分野でのさらなるリサーチ が必要であることを示唆している。
最後に、こ の枠組みを採用する際のコストとそれによって 得られる長期的利益を把握するため、進捗状況 を常に見守ることが大事である。
おわりに サプライチェーン・メトリクスとよばれてい る評価基準の大部分は、ロジスティクスに関す る内向きの指標に過ぎず、サプライチェーンの 価値と収益への貢献度を示すものではない。
実 質的には、他のメンバーを犠牲にして自社のパ フォーマンスだけを最適化することに専念する ことになり、結局はサプライチェーン全体の価 値を損なうことになる。
カスタマー/サプライヤーの複合分析は、こ うした事態を回避する。
収益の分析のみならず、 相互にトレードオフ関係にあるコスト同士の把 握ができ、いずれの側のアクションも両者の損 益計算書にあらわれる。
それがサプライチェー ンにおけるパフォーマンス改善の、堅固な基礎 になるのである。
特定の企業のコスト負担が増えるにしても、 そのプロセス改善にかかるコストが、より多く のカスタマー獲得やサプライチェーンの競争力 強化につながること明確にする。
各リンクにお ける収益を最大化することこそが、サプライチ ェーン・パフォーマンスを、経営上の目標や全 体のパフォーマンスへとつなげていく要となる ものなのである。
海外論文 図10 サプライチェーン4層にわたる利益と市場資本価格の増加 サプライヤーD  △売上 −△コスト  △利益  ×株価収益率  ↑Dの市場   資本価格 △コスト △プロフィット メーカーC CRM SRM 卸/ディストリ ビューターB CRM SRM 小売り/エンド ユーザーA CRM SRM カスタマーと してのCに対 する損益 サプライヤー としてのDに 対するトータ ルコスト・レ ポート カスタマーと してのBに対 する損益 サプライヤー としてCに対 する損益 カスタマーと してAに対す る損益 サプライヤー としてBに対 する損益  △売上 −△コスト  △利益  ×株価収益率  ↑Cの市場   資本価格  △売上 −△コスト  △利益    △売上 −△コスト  △利益  ×株価収益率  ↑Aの市場   資本価格  △売上 −△コスト  △利益  ×株価収益率  ↑Bの市場   資本価格 サプライチェーン・パフォーマンス=A、B、C、Dの市場資本価格の増加 《注》 [49] Rice James B. Jr. and Richard M.Hoppe, Supply Chain vs. Supply Chain: The Hype & The Reality, Supply Chain Management Review,Vol. 5, No. 5 (2001), pp.46-54. [ 5 0 ] L a m b e r t , D o u g l a s M . a n d M a r t h a C . C o o p e r , I s s u e s i n S u p p l y C h a i n Management,Industrial Marketing Management, Vol. 29, No. 1 (2000), pp. 65-83; Martha C.Cooper, Douglas M. Lambert and Janus D.Pagh, Supply Chain Management: More Than a New Name for Logistics, The International Journal of Logistics Management, Vol. 8 No. 1 ( 1 9 9 7 ) , p p . 1 - 1 4 ; a n d , D o u g l a s M . Lambert,Martha C. Cooper and Janus D. Pagh, Supply Chain Management: Implementation Issues and Research Opportunities, The International Journal of Logistics Management, Vol. 9, No. 2 (1998), pp. 1-19.

購読案内広告案内