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JULY 2003 10
外販拡大に急ブレーキ
目標は日立物流。 親会社やグループ会社以
外の、いわゆる外部荷主を拡大して物流企業
としての自立を果たす。 最終的には上場し、株
式公開益で親会社に貢献する。 当面は日立物
流の上場時の外販比率三〇%を目指す――。 こ
れまで多くの物流子会社が掲げてきた経営の
基本方針だ。 そのシナリオに近年、変化が訪
れている。
このたび本誌が実施した物流子会社実態調
査によると、五九%の物流子会社は「物流事
業者としての自立」よりも「親会社への貢献」
け事業で利益を確保し、それを外部荷主獲得
のための値下げ原資にする物流子会社さえ少
なくはなかった。 親会社も子会社の成長への
期待と、余剰人員を子会社に押しつけている
という後ろめたさから、それに目をつぶって
きた。
しかし今や物流子会社の使命は物流事業化
から親会社のコスト削減にシフトした。 親会
社向け価格を値下げするための外販は歓迎さ
れても、親会社向けより外部荷主向けのほう
が安いという逆転現象は許されない。 これに
よって、価格以外には付加価値を持たない物
流子会社の外販営業に急ブレーキがかかって
いる。
株式の公開についても、企業会計が連結決
算重視に移行したのを機に、親会社のグルー
プ運営に変化が起きている。 株式を公開でき
るほど出来の良い物流子会社であるのなら、自立させるよりも連結対象のままにして、決算
数字を底上げさせたほうが得策だと判断する
親会社が目立ってきた。
左頁の表は、今回のアンケート結果を基に
作成したメーカー系物流子会社の外販比率ラ
ンキングだ。 上位にはさすがに上場企業が目
立つ。 ただし上場物流子会社の株式公開時期
は日立物流が八九年一月、富士物流が九二年
十二月、他のキユーソー流通システム、日鐵
物流、アルプス物流、大和物流はいずれも九
五年に集中している。 それ以降は、現在まで
約八年間にわたり、物流子会社の株式公開は
ストップしている。
日本の株式相場が低迷しているといっても、
を重視していることが分かった。 「物流事業者
としての自立」を優先していると答えた企業
は全体の三分の一にとどまっている。
大手情報機器メーカーの子会社トップは「物
流子会社の置かれた環境は一〇年前とは大き
く変わった。 以前は当社も将来の株式上場を
視野に、外販比率の拡大に躍起になっていた。
しかし今は上場については白紙。 外販も無理
に伸ばそうとはしていない。 外販比率の数値
目標を掲げることもやめた」と説明する。
かつては物流機能を分社化し、事業化によ
って新たな収入源を確保することが、物流子
会社の最大の使命だった。 そのため親会社向
自立と親への貢献はどちらが重い?
使命
物流子会社実態調査――主要
79
社が回答
親会社への貢献
59%
その他
優先順位は 6%
明確ではない
2%
物流事業者
としての自立
33%
●物流子会社としての最大の使命は?
●具体的に何を重視しているのか?
40
35
30
25
20
15
10
5
0
その他
スペシャリストの育成
親会社への事業利益の還元
外販比率の引き上げ
親会社の物流一元管理
親会社の物流コスト削減
37%
25%
11%
10%
6%
4%
11 JULY 2003
特集
ハマキョウレックスやトランコム、軽貨急配
など、独立系の物流会社の株式公開はその後
も続いている。 上場基準を十分に満たしてい
る物流子会社も、まだまだ残っている。 それ
でも子会社の株式公開がなくなったのは、親
会社の子会社戦略が九〇年代の後半に大きく
転換したことの証明だ。
白紙に戻った上場計画
実際、有力子会社経営者の多くが、それま
では株式公開を自らの経営目標として公然と
口にしていた。 ところが現在、未上場の物流
子会社で上場する方針を明確に打ち出してい
るのは、本誌の調べた限り、親会社の持ち株
を子会社の経営陣が買い取るMBO(マネジ
メント・バイ・アウト)によって日産自動車
との資本関係を絶ち、もはや子会社とは言え
なくなったバンテックとゼロ(旧・日産陸送)
以外に見当たらない。
一時期、市場の水面下で活発にやりとりさ
れていた大手物流子会社の売却話も最近はな
りをひそめている。 長引く不況で巨額の赤字
に陥った大手メーカーの中には、物流子会社
の所有する資産や社員を事実上の不良債権と
して、グループ外の第三者に譲渡し、連結か
ら外そうとする動きが少なからずあった。 実
際、既存の子会社社員の受け入れを条件に、
外部の物流会社へのアウトソーシングに踏み
切るケースは珍しくなくなってきている。 し
かし、その規模はせいぜい数十人程度。 大手
物流子会社の本格的な売却にまで至ったケー
スはこれまでほとんどない。
それだけの大きなリスクを負うことを決断
する物流会社がなかなか現れないことに加え、
子会社を売却する側の覚悟にも揺れが見られ
る。 日本では連結決算への移行とほぼ同じ時
期にサプライチェーン・マネジメント(SC
M)が経営課題としてクローズアップされる
ようになった。 SCMに対する経営者の意識
の高まりが、物流子会社の位置付けに再考を
促している。
物流子会社を売却した後、果たして従来通
りにサプライチェーンを運営できるのか。 さ
らには直面するサプライチェーン改革に物流
子会社は必要ないのか。 資本関係のない第三
者へのアウトソーシングに対する親会社の不
安が、物流子会社の抜本的なリストラを躊躇
させている。
SCM子会社の登場
一時期、日本IBMは自らが所有する物流
子会社の株式を子会社の経営陣に譲渡し、3
PLとしての外販拡大を促していた。 しかし
その後、方針を一八〇度転換。 子会社の経営
陣から株式を再び買い戻し、グループ内のロ
ジスティクス部門として位置付けを改めてい
る。
同様にソニーは今年四月、物流子会社のソ
ニーロジスティックスと貿易子会社のソニー
インターナショナルトレーディングを統合し
て、新たにソニーサプライチェーンソリューシ
ョンを立ち上げた。 同社は外販拡大や株式上
場を期待されているわけではない。 ソニーグ
ループのSCMを担うことがその役割だとい
う。
物流からロジスティクス、さらにはSCM
へとマネジメントが進化したのに伴い、物流
子会社に新たな役割を付加しようとする動き
が出ている。 そこではもはや株式公開が物流
子会社のゴールではなくなっている。 しかし、
それに変わる新たなゴールは、いまだ明確に
はなっていない。
●メーカー系物流子会社・外販比率ランキング
(同点の場合は社名アイウエオ順)
会社名 外販比率
キユーソー流通システム
日本レコードセンター
アルプス物流
日立物流
日精サービス
愛知陸運
東京エアーサービス
富士物流
味の素物流
安川ロジステック
日鐵運輸
マルコシ産業
エヌケーケー物流
トピー海運
トヨタ輸送
三協流通興業
新潟輸送
アサヒロジスティクス
リコーロジスティクス
キリン物流
サッポロ流通システム
東芝物流
ナチロジスティクス
ジェイティ物流
ウエスト・ロジスティクス
製鉄運輸
丸定運輸
日産ディーゼルロジコム
NECロジスティクス
レンゴーサービス
72.0
70.0
62.6
59.0
57.2
55.5
49.0
48.0
47.5
38.0
35.0
35.0
33.4
32.1
31.3
29.0
27.0
26.0
26.0
25.0
25.0
25.0
25.0
21.0
20.0
20.0
20.0
18.6
18.0
17.7
順位
※ は株式上場企業
JULY 2003 12
子会社が描く新しい物流業
外販拡大による自立、余剰人員の活用、物
流コストの削減、SCM――いずれも大事な
テーマであることは確かだ。 しかし、実際に
物流子会社を運営していくには、一連の課題
に優先順位が必要だ。 親会社から優先順位を
提示されない子会社は、経営判断の下しよう
がない。 その結果、身動きがとれなくなる。
今回のアンケートに回答した物流子会社の
売上高平均は過去三期にわたり横這いで推移
している。 売上高当期利益率も一・二%〜
一・三%という一定の幅に納まっている。 総
従業員数は二年間で約四%減少した。 人員削
減でかろうじて利益を確保しているという格
好だ。
会社政策も揺れている。 そんな状況下で、物
流子会社はどのように自らの将来像を描いて
いるのだろうか。
左頁には物流子会社が目標としているビジ
ネスモデルについての調査結果を示した。 全
体の約半数、四九%が自社の経営ビジョンを
表すのに最も相応しい言葉として「3PL」
を選んでいる。 次いで「総合物流事業者」が
三九%、「サプライチェーン・サービス・プロ
バイダー」が二八%と続く。 いずれもコンサ
ルティング機能を始めとした高度なマネジメ
ント能力を必要とする業態だ。
親会社のベースカーゴを活かした共同物流
に活路を見出そうと考えている物流子会社は
一九%にとどまっている。 全体として車両や
物流センターなどの資産(アセット)を武器
に事業を拡大していこうという意識は薄い。 物
流子会社の多くは、米国市場に多く見られる、
いわゆる「ノンアセット型3PL」を念頭に
置いているようだ。
しかし、ノンアセット型3PLを日本市場
で成功させるのは容易ではない。 成功事例も
皆無にひとしい。 ノンアセット型3PLを目
指す物流子会社は、勝ち目のない勝負に出て
いる可能性がある。
米国でノンアセット型が成功した理由の一
つは、日本や欧州に比べ、米国は労働組合の
力が弱く、格段に流動性の高い労働市場があ
ったためだと言われる。 実際、米国では企業
側の一方的な都合による?首切り〞が日常茶
飯事のように実施されている。 そのため通常
なら3PLの導入で大きな障壁になるはずの
事業別収入では運送事業が五九%を占めて
いる。 ただし傭車比率が平均で七一・九%に
上る。 自社車両による運送事業は三〇%を切
る。 今後も物流子会社は自社で保有する車両
を減らす傾向にある。 それでも傭車比率は上
がらない。 保有車両台数以上に輸送需要自体
が減少すると見込まれているからだ。
マクロ的に見ても日本国内の輸送需要が近
い将来、回復するとは考えにくい。 景気が好
転することはあっても、在庫削減圧力は今後
も続く。 親会社の物量拡大を期待できない物
流子会社は、従来と位置付けは変わったとは
いえ外販に期待せざるを得ない。 アンケート
でも現在の外販比率が平均で二六%であるの
に対し、三四%が将来目標になっている。
ある回答企業は「親会社もグループ会社も
今後、物量が大きく増
えることなど考えられな
い。 確実に減る。 そのた
めに当社の外販比率が
相対的に上がるというだ
け。 外販拡大といっても
残念ながら前向きな話で
はない」という。
放っておけば、ジリ貧
を免れない。 親会社の子
3PLと呼べる実力はあるか?
業態
物流子会社実態調査――主要
79
社が回答
●物流子会社の事業別収入の平均値
(有効回答50社)
運送事業
59%
倉庫事業
19%
その他
22%
外部販売の現状
外部販売の目標
親会社
49%
親会社
58%
グループ会社
17%
グループ会社
16%
外部荷主
26%
外部荷主
34%
13 JULY 2003
特集
既存従業員の処遇問題が、米国では比較的簡
単にクリアできる。
さらに「物流センターの賃貸市場も日本と
は全く違う。 道路アクセスの良いエリアに行
けば賃貸用の物流センターがズラリと並んで
いる。 必要な時に、すぐに借りられる。 敷金・
礼金・保証金といった日本のような習慣もな
い。 そのため3PLが自分で土地・建物を所
有する必要がない」。 米国3PL市場に詳しい
津村謙一i2テクノロジーズ上席副社長はそ
う説明する。
日本型3PLのビジネスモデル
これに対して日本や欧州では、アウトソー
シングの導入に伴う、荷主企業の既存従業員
の処遇を巡り、3PL側に強く協力が求めら
れる。 多くの場合、荷主の現場作業員を3P
L側で再雇用することになる。 3PLには現
場作業員の労務管理がのしかかる。 物流セン
ターの賃貸でも日本は制約が大きい。 所有す
るのと大きな変わりはないほどの長期契約を
余儀なくされるケースが珍しくない。 こうした市場環境の違いを無視して、ノン
アセット型3PLを日本で展開しようとして
も、契約までこぎ着けるのは困難だ。 既存従
業員の処遇を考える必要のない新興企業や、
新たに日本に参入した外資系企業ならともか
く、老舗の大手企業を荷主に獲得するのは諦
めたほうがいい。
人や土地などの資産を、できる限り所有し
たくないと考えている日本企業は、物流子会
社だけではない。 活用できない物流資産の処
理に苦しんでいるのは、むしろ荷主のほうだ。
そんな荷主のニーズに対して何のソリューシ
ョンも提供できない3PLが大きく飛
躍するとは考えられない。 日本のノン
アセット型3PLは、掛け声倒れの
?絵に描いた餅〞に終わる。
事業縮小や海外シフトで不要になっ
た国内の資産や人材をどう活用するの
か。 それは物流子会社が自ら抱える課
題でもある。 ノンアセット型3PLと
いう形で課題から逃げるのではなく、
物流子会社がアセット問題に正面から
取り組むことで道は開ける。 自らの再
建を成功させたノウハウは、そのまま
他社にも適用できる。 米国とは違う日
本型3PLが、物流子会社の再建と
いう形で拡がっていく。
●経営ビジョンについて
60
50
40
30
20
10
0
シェアード・サービス・
プロバイダー
商社機能を備えた
物流事業者
国際物流事業者
共同物流事業者
サプライチェーン・
サービス・プロバイダー
総合物流事業者
3PL事業者
49%
(%)
39%
28%
19%
15%
11%
1%
●国際物流への対応など顧客ニーズの深耕と新しい物流戦略の提
供(AG物流)
●二四時間体制の確立と無梱包配送システム(環境問題対応シス
テム)の浸透(ウエスト・ロジスティクス)
●WMS、配車計画など物流情報システムを拡充する。 スルーデポ
拠点や基幹物流施設(クロスドックセンター)を整備する(エフ
ピコ物流)
●物流品質の向上。 各輸送モードの強化とアソートによるトータ
ルローコストオペレーションモデルの構築。 提案力の強化とそれ
を担う人材の育成(サッポロ流通システム)
●生産性向上、独自性向上を視点とした物流改善を提案できる人
材の育成(サンデン物流)
●親会社である山陽百貨店の宅配サービスの品質向上を目指す
ため宅配貨物情報の一元化を図る(山陽デリバリーサービス)
●ノンアセット型3PL会社を目指す。 親会社と重複している業
務の効率化を図る(ジェイエスアール物流)
●商品車輸送の周辺業務(納車整備業務、部品架装業務、中古車
輸送業務など)の拡大(スバル物流)
●調達機能と物流機能の融合(ソニーサプライチェーンソリューシ
ョン)
●品質・能力の高い協力業者との連携を強化する(新潟輸送)
●単なる輸送機能ではなく、物流コーディネートができる総合物
流企業を目指す。 物流コンサル、環境リサイクル、国際物流、物
流システム企画に加え、物流設備診断やコンピュータ解析など
のソリューションをベースとした事業展開を進めていく(日鐵運輸)
●親会社のSCMに、できる部分から貢献する。 具体的な内容の
検討も開始した。 また、ソフト物流の範囲を超えた物流事業も
取り込む(日本レコードセンター)
●3PLでは新次元のソリューション商品づくりに取り組む。 具体
的には単一企業システムから業界プラットフォームシステムへ、ま
た国内最適システムからグローバル最適システムへのステップア
ップを図る(日立物流)
●スペシャリストの育成(ピップ物流)
●調達物流機能の強化、商社機能(購買代行機能)の展開、新規複
合物流サービス(外部荷主向け)の受注拡大、さらに受注拡大を
目指したアライアンスの推進、事業拡大を支援する情報システ
ムの開発に取り組む(安川ロジステック)
●グローバルSCM&グリーンをキーワードに、ITをベースにし
たスピーディで「付加価値の高いサービス」を、循環型経済社会
に対応した「グリーンロジスティクス」をグローバルに展開する
企業を目指している(リコーロジスティクス)
●物流専門会社としての自力づくり(ワコール流通)
ビジネスモデル改革の課題は?
JULY 2003 14
目をつぶろうというわけだ。 しかし、リスクの
大きさは実際に直面するまではっきりとは自
覚できない。 赤字事業も時間が経てば収益は
好転するという保証などどこにもない。 量販
業務範囲は拡大の一途
アルプス電気の子会社、アルプス物流は九
六年に生協向けの物流を手がける流通サービ
スを買収した。 電子部品の共同物流を強みと
するアルプス物流にとって、全くの異分野へ
の進出だった。 電子部品共配とは別に新しい
収入源を作り、事業ポートフォリオを組むこ
とで経営を安定させようという狙いだ。
買収した流通サービスは、ここ数年、事業
規模を急速に拡大させている。 親会社のアル
プス物流にも利益面で大きく貢献するように
なった。 しかし同社の長迫令爾会長は「流通
サービスの一件以来、経験のない分野への進
出は考えないことにした。 それより電子部品
物流を深耕するほうが先決だ。 同じ電子業界
の完成品物流にも手を出すつもりはない」と
いう。
流通サービスの買収は結果として吉と出た
ものの、買収後しばらくは問題山積の状態だ
った。 その後、生協の物流改革に上手く乗る
ことで業績は好転したが、多分に幸運が作用
した感は否めない。 いくらアルプス物流が電
子部品の物流に強いとはいえ、市場が変われ
ば勝手も違う。 川下への参入による事業ポー
トフォリオなど机上の空論だと今は判断して
いるようだ。
左頁の図は物流子会社の現在の事業領域と、
今後の事業領域についてのアンケート結果を
集計したものだ。 ほぼ例外なく、全ての物流
子会社が業務範囲の拡大を指向している。 物
流子会社が親会社のスタッフ部門と同等のマ
ネジメント機能を担おうとするのは当然とも
言える。 ただし、物流事業としての収益性を
無視した業務の拡大には大きなリスクがつき
まとうことも事実だ。
このところメーカー系物流子会社に、親会
社の川下に当たる量販店から物流センター業
務を受注しようとする動きが相次いでいる。 実
際に契約までこぎ着けるケースも増えた。 受
注すれば確かに売り上げは増える。 外販比率
も拡大する。 ただし、利益はなかなか付いて
こない。
川下の流通センター業務は、もともと利幅
の薄い分野として知られている。 メーカーの
販売物流とは比較にならないレベルの多頻度
小口化と、物量の変動に対応しなければなら
ない。 経験のない物流子会社が参入して、す
ぐに儲かるほど簡単な事業ではない。
それでもノウハウを蓄積するまでの先行投
資と割り切り、新規参入を図る物流子会社が
後を絶たない。 当初の採算割れには、多少は
国内物流の空洞化にどう対応?
戦略
物流子会社実態調査――主要
79
社が回答
その他
6%
●親会社の海外展開との関わり ●親会社と子会社の進出地域の比較
80
70
60
50
40
30
20
10
0
南米
その他
欧州
米国
中国
東南アジア
22%
54%
(%)
依頼に応じて
参加を検討
関与していない 46%
31%
プロジェクト
には必ず参加
11%
依頼はないが
自ら提案
6%
19%
68%
16%
58%
13%
52%
5%
20%
1%
29%
子会社
親会社
店は物流子会社にとっての荷主で
あると同時に、親会社のメーカー
にとっても顧客だ。 いったん受注
したら簡単には撤退できない。 外
販によって新たな収益源を得たつ
もりが、引くに引けない慢性的な
赤字案件を抱え込むことにもなり
かねない。 経験のない異分野を狙うよりも、
むしろ足元を見直したほうがいい。
過去一〇年の間に、日系メーカー
の海外シフトは急速に進んだ。 そ
の分、国内の物流需要は縮小して
いる。 この傾向は今後も続くこと
が必至だ。 国内市場をメーンとし
てきた物流子会社が今後も成長し
続けるには、親会社と共にグロー
バル市場に打って出るしかない。
本誌のアンケート調査でも、国際
物流は物流子会社にとって当面の
50
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
(%)
●調達物流を手掛けている事業者の事業内容
調達品の購買代行
サプライヤー共同倉庫
(VMI)の運営
サプライヤーからの
納品輸送業務の管理
ミルクラン
(取りに行く物流)の実施
43%
29%
15%
3%
現在
今後
44%
37%
29%
9%
15 JULY 2003
特集
最大の課題になっている。
ただし単純な国際輸送を手がけるだけでは
付加価値は低い。 既存の貿易関連会社と差別
化する手段もない。 物流子会社にとって今後
の焦点となるのは海外における国内物流だ。 日
本国内で培った物流サービスを、そのまま海
外の現地法人に提供する。 さらにはVMI
(
Vendor Managed Inventory:
ベンダー主導
型在庫管理)の導入など、日本市場では馴染
みの薄いプロジェクトにも、メーカーのスタッ
フに代わって物流子会社が取り組むといった
展開が求められる。
歴史的に日本メーカーの国際物流では総合
商社が大きな役割を担ってきた。 総合商社は
物流だけでなく、拠点の確保から資材調達先
の選定、ファイナンス、さらには現地政府と
の交渉まで含めたフルサービスをパッケージ
としてメーカーに提供してきた。 そんな総合
商社を向こうに回し、さらには国際物流業者
や地場の物流業者と競争して、物流子会社が
どこまで荷主に入り込むことができるのか。
グローバル化の進んだ大手メーカーの有力
物流子会社といえども、親会社の国際展開に
関しては、長らくカヤの外に置かれてきたの
が実状だ。 今回のアンケート結果(右頁図)
でも、親会社の海外拠点進出と物流子会社の
それには大きな開きが出ている。 しかし、国
内物流だけでは成長どころか現在の規模を維
持することさえ難しくなった多くの物流子会
社にとって、国際化への対応は将来的な課題
から、待ったなしの絶対条件に位置付けを変
えているのだ。
●事業領域(現状と今後)
100
90
80
60
70
50
40
20
30
10
0
庫内業務
二次輸送(拠点〜)
物流改善の提案
一次輸送(工場〜)
完成品の在庫管理
その他の流通加工
調達物流
工場生産物流
製品回収など
情報システム
ネットワーク設計
国際物流
受注業務
需給調整
現在すでに手掛けている
今後手掛けたい
(%)
●領域拡大を期待している業務
(現状と今後の差より)
国際物流
需給調整
製品回収など
情報システム
ネットワーク設計
受注業務
調達物流
二次輸送(拠点〜)
その他の流通加工
物流改善の提案
庫内業務
工場生産物流
完成品の在庫管理
一次輸送(工場〜)
20%
15%
14%
14%
11%
11%
9%
9%
8%
6%
5%
4%
4%
4%
|