ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2003年7号
特集
物流子会社の不安 日立やソニーとは別の道を行く

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JULY 2003 20 カンパニー制の影響 ――二〇〇一年に東芝物流の社長に就任したとき、何 をやることを期待されたのですか。
「何をやれというのは特別ありませんでした。
ちゃん とやれということだけですよ。
ここにくる以前、私は 京浜事業所で工場長をやっていました。
東芝物流に 物流費を支払う立場だったわけですが、自分が采配を 振るったらもう一工夫できるのになとは感じていまし た。
ですから東芝物流に行けと言われたときは、やる ことは沢山あるなと思いました」 ――原田社長が東芝物流に来たのは、あくまでも東芝 本体の人事だったわけですか。
「そうです。
東芝物流の場合は一〇〇%、東芝が株 式を保有していますから、もう株主人事ですね。
です から私の後任についても、私も推薦はするかもしれま せんが、東芝物流の取締役会ではなく株主が決めるこ とになると思います」 ――前任の山本社長からのアドバイスは? 「すでにその年の四月一日の組織変更で進むべき道 はハッキリしていました。
東芝はこのときカンパニー 制に移行しました。
荷主が東芝だった従来は、利益を 出して配当さえすれば荷主も潤った。
このため利益の 仕切りが生ぬるくて、グループ経営という意味ではど っちの利益でもいいやみたいな部分があった」 「ところがカンパニー制になったことで、カンパニー の利益と東芝本体の利益は明確に別になった。
つまり 東芝と東芝物流の関係が、従来のように『まあ仲良く やろうや』というものから、もっとコマーシャルベー スの関係になったわけです。
そうなると当社が力を付 けなければ、カンパニーによっては東芝物流に仕事を 出すのは嫌だという話が出てくるかもしれない。
だか 「日立やソニーとは別の道を行く」 2000年から大きく動き出した親会社の組織変更に対応 するため、東芝物流の組織も変わり続けている。
東芝グル ープの一員として親会社に貢献するためには、子会社はエ ゴを出すべきではないと言い切る。
東芝物流原田清 社長 ら力を付けなさい、そのために四月一日に組織も変え た――。
そんなことを山本さんから言われました」 ――そのときに東芝物流が行った組織変更とは? 「それ以前は地域統括部と呼ぶ、地域ごとの組織に なっていたんです。
それを四月一日からは親会社のカ ンパニーに対応した事業部制にしました。
ただし東芝 のカンパニーは一〇カンパニーだったのですが、うち は五つの事業部を作って、一つの事業部で東芝の複 数のカンパニーを持つ体制にしました。
お客とダイレ クトに付き合うことでサプライチェーンを効率化して いくという方向に切り替えたんです」 工場を指示する「輸送センター」 ――東芝物流には四つの強みがあると言っていますね。
「大きく言うと五つあって、その四つを総括する ?ゼロ番目〞ともいうべき強みがあります。
これは全 国を網羅する物流ネットワークと、東芝という一〇〇 〇億円分くらいのベース貨物をもっていることです。
これを前提にした一番目の強みが、全国にあるITを 駆使した在庫型の高機能倉庫です。
そして二番目は 『クロスドック』の機能。
これは在庫を持たず通過型 で処理するセンターですが、家電量販店などから請け 負っている業務がその代表的な利用例です」 「三つ目が『輸送センター』です。
いわゆるSCM の頭脳の部分です。
東芝では各工場のなかに輸送セン ターというのがあって、さきほど言った全国の倉庫に 製品を補充してくれというときに、この情報を輸送セ ンターで管理しています。
サーバーが設置してあって、 営業の販売情報と工場の生産情報の両方をみながら 全体をコントロールしている。
出荷が遅れているとか、 品不足になりそうだといった情報をここですべて管理 しています。
しかし、現状では必ずしも理想的に行っ 21 JULY 2003 ていない部分もある。
これを高度化するのは私の役目 の一つだと思っています」 ――工場の生産ラインを止める権限まで持っているの ですか? 「輸送センターは工場に命令できるんです。
輸送セ ンター長というのは東芝物流の人間なのですが、全員 が東芝の工場の生産部長付けの兼務発令になってい ます。
つまり、工場の生産部の人間でもあるため、こ こでの情報を工場の生産部長を通して流すことができ る。
これは東芝の凄いところです。
こうした仕事の仕 方は、恐らく東芝が真っ先に始めたものです」 ――四つ目の強みとは? 「国際物流です。
いま東芝の生産活動がどんどん海 外に移っています。
ここで船や飛行機で運んでいる東 芝の荷物に他社の荷物を加えれば、もっと価格競争 力が発揮できる。
当社が海外進出した一番最初は、東 芝物流フィリピン社を立ち上げた七年前です。
二番目 が東芝物流タイで四年前。
昨年は中国の杭州、大連、 インドネシアの三カ所に現法を作りました。
今年も香 港と上海とアメリカに現法を立ち上げます」 いずれは分割される可能性もある ――御社が日立物流のように独立路線を進むのか、ソ ニーサプライチェーンソリューションのように親会社 のためだけに生きようとしているのかが見えません。
「どっちにも行きません。
姿勢はあくまでもソニー 型ですが、機能を認めてくれる外部荷主の方とは一緒 に仕事をしていきます。
ただし日立物流さんのように、 積極的に外販を拡大するつもりはありません」 ――さきほどの話で輸送センターが大きな可能性を秘 めていることは分かりました。
しかし、物流子会社が 需給調整まで担うのは現実的ではないのでは。
「そこまではできません。
ようは正しい情報を発信 することが大切なんです。
例えばソニーの場合は、本 体が地球規模で管理する仕組みを作っています。
一方、 東芝は電球から原子力までやっていることもあって工 場単位で動いている。
だからこそ各工場のなかにある 輸送センターの役割が重要なんです」 ――となると輸送センターはSCMが進展すれば不要 になってしまう機能なのでは? 「確かに要らなくなりますね。
実は東芝は今年四月 から、事業を四つのグループに分けてグループCEO を四人置く体制に変わっています。
とくに画期的なの は『コンシューマーエレクトロニクスマーケティング 統括』という部署を設置した点です。
場合によっては、 東芝の商売のウェートが今後、製造側からこうした部 門に移っていくかもしれません。
そのときに当社は、 従来はこれだけの仕事をもらっていたなどというエゴ を言ってはならないと私は考えています」 ――そうなれば御社の役割も大きく変わりますね。
「場合によっては、東芝物流が四つのカンパニーご とに分割されるなんてこともあり得るかもしれません。
そして、それぞれ東芝のカンパニーに統合されてしま うかもしれない。
まあ現業だけは、分割された東芝物 流に残されるかもしれませんけどね」 ――物流子会社の経営者としては厳しい立場ですね。
「いえいえ。
何度も言っているように当社はあくま でも東芝グループの一員です。
だから東芝物流が生き るとか死ぬとかいう話ではない。
仮に東芝本体のなか に統合されて、現業部門だけが残されたときに、物流 専業者と比べて競争力がないのであれば、これが消滅 するのは仕方がありません。
ムダなのであれば、やは り閉めていかざるを得ない。
そうなってはいけないか らこそ必死にやっているんです」 特集 はらだ・きよし1944年生まれ、67年横浜国 立大学工学部卒業、同年東京芝浦電機(現東芝) 入社、89年京浜事業所 水力機器部長、95年 生産・資材部長、96年京浜事業所副所長、98 年京浜事業所所長、2001年東芝物流の代表取 締役社長に就任 ■■■■■■■■■■■■ 94 年 3 月 95 年 3 月 96 年 3 月 97 年 3 月 98 年 3 月 99 年 3 月 00 年 3 月 01 年 3 月 02 年 3 月 03 年 3 月 東芝物流の業績の推移 1,200 1,000 800 600 400 200 0 40 30 20 10 0 −10 −20 売上高 当期利益 当期利益(億円) 単体売上高(億円) ※2001年3月期は特別損失(退職給与引当金繰入額13.6億円 と厚生年金基金等過去勤務費用償却費6.6億円)を計上

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