ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2003年7号
特集
物流子会社の不安 親会社との関係を180度改める

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JULY 2003 22 原価下げて親会社に貢献 ――五月末にサッポロビール本体のロジスティクス事 業部長から子会社の社長に転じました。
就任に際して 親会社から課せられたミッションとは? 「基本的には、ロジスティクス事業部長としてサッ ポログループ全体の物流を管理していた頃と変わりま せん。
サッポロ本体の岩間社長から与えられたミッシ ョンは大きく分けて二つあります。
一つは親会社に対 して物流品質とコストの面で貢献すること。
要するに 高品質な物流サービスを安い値段で提供してくれよ、 と言っているわけです。
もう一つが『事業会社として 独立採算で生きていけるような体制づくり』です」 ――単価を下げれば当然、子会社の売り上げは減りま す。
本社の物流部門ならそれで良くても、子会社の社 長という立場になると嬉しい話ではないはずです。
「確かにその通りです。
しかし、コスト削減のため に物流の原価を下げていくのはとても大事なことです。
市場での運賃が一〇〇円で推移しているというのに、 『われわれは子会社で原価が高いから一一〇円くださ い』という状況はやはりおかしい。
そもそも原価が高 いうちは物流専業者と対等な競争などできません。
原 価を安くしなければ外販荷主の開拓も無理です。
これ からは物流子会社といえども市場価格で勝負できるよ うにならなければなりません」 ――実際、原価を下げることは可能なのですか? 「当社の力だけではどうにもならない。
現在四〇〇 社ある協力物流業者の努力が欠かせません。
ビールの 物流は季節、曜日、エリアなどの違いでどうしても波 動が生じてしまう。
今後、協力業者にはサッポロがオ フピークの時の仕事を自分たちで穴埋めして、波動を なくしてもらいます。
そのための支援もする。
それに 「親会社との関係を180度改める」 これまで協力運送会社は物流子会社に、物流子会社は親会社に 依存してきた。
その関係を180度改める必要がある。
まずは運賃単 価を下げる。
収入の減少分はベースカーゴを活かした同業種共配と 業務範囲の拡大でカバーする。
既に国際調達物流にも着手した。
親 会社のSCMに貢献することで子会社のビジネスは拡がる。
大川幹雄 サッポロ流通システム社長 よってサッポロ向け業務の原価を下げることが可能に なる。
つまり協力会社に収益構造の見直しを要求して いくわけです。
厳しい言い方かもしれませんが、サッ ポロビールの仕事だけで生計を立てているような業者 さんとはおつき合いが難しくなってくる」 ――協力物流業者のリストラですか? 「そういう意味ではありません。
お互いにこれまでの 仕事のやり方を改めましょう、ということです。
協力 業者がトラックを三〇台持っているとする。
この三〇 台をすべて使ってくれ、というのはナシにしましょう。
サッポロビールおよび当社におんぶにだっこ、つまり ビールに一〇〇%どっぷり浸かったままで儲けさせて くれ、というのは認めませんという意味です。
年間に どれだけのトラックがどの時期に必要になるか。
その ための細かい出荷計画を当社がきちんと提示します。
協力業者にはそれを参考にしながら自分たちで閑散期 に別の仕事を見つけてもらうことを期待しています」 「サッポロと当社、そして当社と協力業者の関係を 一八〇度改める必要があります。
現在、全国の支社 や協力業者を訪問する際に、それぞれ上から言われる ままに仕事をこなすのはやめましょうと私は訴えてい ます。
言われた通りに業務を遂行するのは簡単だし、 楽です。
そうではなくて、日々の業務で気づいたこと やコストダウンにつながる作業改善のアイデアなどを、 立場に関係なく、どんどん提案していきしょうと働き 掛けています。
顧客に近い位置にいるプレーヤーの声 を吸い上げていくことが『バリューチェーン』の実現 に直結すると考えているからです」 ――バリューチェーンの実現? 「サッポログループは七月一日付けで持ち株会社制 に移行します。
サッポロホールディングの傘下に酒類、 不動産、外食、飲料の四つの事業会社が組み込まれ 23 JULY 2003 ます。
酒類事業会社には新たにSCM本部が設置さ れ、その下にSCM部と購買部が用意されます。
ロジ スティクス事業部は、これまで需給調整を担当してき た従来のSCM部と統合され、当社はそのSCM部 の下に位置付けられることになります」 「当社はサプライチェーンを構成する一つの歯車と して機能することを求められています。
そのため当社 内にも『サッポロ業務部』を新設します。
サッポログ ループのSCMの窓口的な役割を果たし、要望を受け るだけでなく、当社からも様々な提案をしていきます」 同業種共配と調達物流に活路 ――前期(二〇〇二年十二月期)は売上高二九〇億 円のうち、外販収入が七〇億円。
外販比率は二五% という結果でした。
「外販収入は年々増えています。
しかし、決して満 足してはいません。
年間約二〇〇億円に上るサッポロ 本体からの仕事、これは当社の強みでもあるのですが、 その二〇〇億円のベースカーゴを活かし切れていない。
ベースカーゴを活かした外販というのは共同輸送や共 同配送のことを指しますが、この共配による収入は五 億円程度にとどまっている。
開拓の余地は多分に残さ れています」 ――三年前に酒類メーカーを対象にした同業種共配を スタートさせています。
以来、参加企業の数を順調に 増やしてきました。
「確かに数そのものは年々増えています。
ただし、ま だまだエリアを限定した局地的な取り組みが多い。
線 から面へ、つまりエリア限定から全国へとカバーする 領域を拡げていくことが課題です。
お陰様で一部企業 とは全エリアを対象にした共配をスタートさせていま す。
徐々に手応えを掴みつつある状況です」 「一括物流センターの運営など外販の手段は色々あ ります。
しかし当社としては引き続き共同配送を強化 していきたい。
私が理想としている物流子会社はキユ ーソー流通システムさんとアルプス物流さん。
両社は 食品と電子部品という分野でそれぞれ共同配送を展 開し、同業者の荷物を取り込み、業界プラットフォー ムを築き上げた。
その結果として外販比率の拡大に成 功している。
両社の取り組みは親会社のベースカーゴ を活かした外販のいいお手本です」 ――外販を強化する一方で、販売物流にとどまってい た親会社向けの業務領域を、調達物流や国際物流に まで拡大する物流子会社も増えてきました。
「当社も例外ではありません。
もともと当社は工場 から先、つまり販売物流を担当してきました。
ビール の原材料の調達などに関係する物流にはタッチしてこ なかった。
輸入を代行する商社と購買部門との間で物 流は完結していました。
しかし、昨年から調達物流に ついても当社が管理するようになりました。
例えば麦芽の取引形態はそれまで『輸入港でのコンテナ渡し』 でしたが、これを『麦芽ベンダーの工場渡し』に改め ました。
それに伴い、海外から日本までの輸送を担当 する船会社の選定、輸入通関などの物流業務を当社 が請け負っています」 ――商社の中抜きですね。
「原材料の価格と物流費を分離させて、それぞれの コストを明確にすることが目的です。
ベンダーや商社 任せだと二つのコスト構造がまったく見えない。
今回 の調達物流への進出は親会社のSCMプロジェクトの 一環です。
調達物流の窓口を当社に一本化してもら うことでコストダウンを実現し親会社に貢献する。
そ して当社は事業領域の拡大で収益の増加が期待でき ます」 特集 サッポロビールのロジスティクス組織の変遷 1993年 1996年 1998年 2001年 2003年 物流部、生産管理部、営業部需給グループを統合して「ロジス ティクス部」を発足 物流改革プロジェクト「ロジスティクス21」をスタート。
工場 や支社の物流部門を「ロジスティクス・センター」化 東部サッポロ物流、西部サッポロ物流、北海道サッポロ物流の 物流子会社3社を合併。
サッポロ流通システムを発足 ロジスティクス部を事業部門化しロジスティクス事業部に 持ち株会社制への移行に伴い、SCM本部を設置。
ロジスティ クス事業部はSCM部に統合

購読案内広告案内