ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2003年8号
メディア批評
有事立法の指定公共機関と化したNHK 公共放送は正しいという先入観を捨てよ

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

佐高信 経済評論家 57 AUGUST 2003 創価学会および公明党に対する厳しい批判 を続ける『フォーラム 21 』の六月一日号に、 「人権抑圧国家・社会到来の危機 それは創 価・公明の政権参画が始まりだった」という 座談会が載っている。
出席者は元NHK記者 で椙山女学園教授の川崎泰資とジャーナリス トの斎藤貴男、それに同誌発行人の乙骨正生 である。
そこで川崎が注目すべき発言をしている。
「よくマスコミ、メディアを第四の権力とい いますけれども、第四権力として独自の価値 観をもっているならまだましですが、日本の マスコミはそうではなくて、政治権力をはじ めとする他の三つの権力の単なる下請けに過 ぎないというのが実状です」 と斎藤が指摘したのを受けて、 「いや、これね、本当に笑えない話なんです よ。
私はNHKにいたから実体験を踏まえて いえるんだけれども、日本のテレビ、新聞と いうのは、さっき記者クラブの話をしました たが、みんな官の下請けになっている。
中で も特にひどいのがNHK。
これはもう有事立 法の指定公共機関を実践しているようなとこ ろがある」 と批判しているのである。
「笑えない話」とは具体的にどんな話か。
川崎は学生にテレビと新聞の報道姿勢につ いての比較検証をさせている。
折りしも、国 会では個人情報保護法案と有事法制についての審議が続いていた。
新聞と違って、テレビは同時に二つを見る わけにはいかないので比較が難しい。
それで 複数の学生に担当のテレビ局を決めてNHK と民放の報道姿勢を比較させたら、NHK担 当の学生が、 「どこか他の放送局をやりたい」 と言ってきた。
なぜかと尋ねると、 「NHKだけ見ていると、他の仲間について いけなくなっちゃう」と答える。
他の学生は、ニュースステーションやニュ ース 23 などを見て、有事法制や個人情報保護 法案についての問題点やらをつかむことがで きるが、NHKはほとんどそうした報道をし ない。
だから、おかしくなってしまうという のだった。
「NHK信仰というのがあってね。
公共放送 だから正しいという先入観を持った視聴習慣 で見ていると、自然のうちにそうした意識が 醸成されてしまうんです。
本当はおかしいん だけれども、テレビの報道姿勢を一々比較す る人はいないから、なかなかそのことが分か らない。
しかし、実際にNHKと民放を比較 してみると、そのことが分かってくる」 こう分析した川崎は、「おかしいところはお かしい」とNHKに言うことを提案する。
気 に入らない記事を書く新聞は取らないのと同 じで、受信料を払っているのだから、もっと 注文をつけるべきだ、と川崎は主張するので ある。
イラク戦争の報道では民放もおかしく、日 本テレビの女性従軍記者が、「わが軍」とか、 「私たちの部隊」とか、まるでアメリカ軍の広 報のようなことを言うので、川崎はひっくり 返りそうになった。
かつてイギリスとアルゼンチンが戦ったフ ォークランド戦争で、イギリスの公共放送B BCは、両軍を「イギリス軍」「アルゼンチン 軍」と呼び、それにイギリスの当時の首相、 サッチャーが激怒して、BBCの会長を呼び、 「けしからん。
敵と戦っているのにイギリス 軍とはなんだ。
わが軍だろう。
アルゼンチン は敵軍だ。
すぐに報道姿勢を改めろ」 と迫った。
しかし、会長は、 「冗談じゃない。
あんたに報道について、と やかく言われる筋合いはない」 と突っぱねたという。
もちろん、NHKの会長にこんな気骨は望 むべくもない。
残念ながら、「わが国」の民放 のトップにも望めないだろう。
有事立法の指定公共機関と化したNHK 公共放送は正しいという先入観を捨てよ

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