ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2003年8号
特集
ICタグ狂想曲 バーコードにさようなら

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

AUGUST 2003 10 究極の物流管理システム JRの定期券「スイカ」にも使用されている非接触 型の自動認識装置「RFID(Radio Frequency Identification System )」が、SCMを飛躍的に進化 させるツールになるとして注目を集めている。
バーコ ードに代えて、一ミリ以下の超小型のチップを埋め込 んだ「ICタグ(荷札)」を商品に添付することで、人 手を介さずにモノの動きを完全に把握することが可能 になるという。
ICタグはバーコードのように一つひとつのタグに リーダーをあててスキャンする必要がない。
リーダー を搭載したゲートにケースを通過させるだけで、ケー スの中の全ての商品のタグを一瞬にして読みとること ができる。
保管スペースにリーダーを設置すれば常に 正確な在庫量を把握することも可能になる。
検品や棚 卸しの手間が一切省ける。
しかも、印刷した後では書き込みのできないバーコ ードとは異なり、ICタグは発行後にも新たな情報を 書き込んだり、データを書き換えたりすることができ る。
回収すれば、繰り返し使える。
記録するデータ量 もチップ次第でいくらでも大きくできる。
物流システム構築から現場のオペレーションまでを 手掛けるベンチャー企業の先端情報工学研究所(L iti)は、こうしたICタグの特徴を活かした3P L事業によって倍々ゲームで業績を伸ばしている。
二 〇〇二年度の売上高は約二二億円で前年比二二〇%。
経常利益も二億四〇〇〇万円を確保した。
今期も大 幅な増収が見込まれている。
同社の主要荷主の一つ、アパレル大手のフランドル のケースではICタグを活用した物流システムの構築 によって物流コストを約三割削減できたという。
最初 バーコードにさようなら 全てのバーコードをゴマ粒大の無線ICタグに置き換える。
それ によって夢のようなサプライチェーン・マネジメント(SCM)が 可能になる――米マサチューセッツ工科大学に本部を置くオート IDセンターの構想だ。
バーコード以来の画期的ツールの出現に日 本の産業界も沸き返っている。
(大矢昌浩) はケース単位でICタグを使用した。
まず物流センタ ーでICタグを発行し、店舗納品用のケースに張り付 ける。
そして端末の表示に従い、アイテム別の種まき 式に商品をケースに分配する(左頁写真)。
投入した商品の商品番号と数量はケースを移動す る際にICタグに自動的に書き込む。
全て投入し終え たら、ケースに添付されたICタグのデータから配送 伝票を自動作成して出荷する。
新システムの導入によ り商品のバーコードを一つひとつスキャンせずに済む ようになったため、現場担当者をそれまでの五人から 二人に減らすことができたという。
この七月からは商品の一つひとつにも直接、ICタ グを付けている。
店舗販売員を物流業務から解放する ことが狙いだ。
「アパレルの店舗人件費の約三割は、荷 受けや月末の棚卸しなどの物流業務に掛かっている。
商品自体にICタグを付けることで、店舗のほとんど の物流業務は解消できる」とLitiの高橋良明取 締役経営企画部長は説明する。
工場でICタグを商品に添付し、店頭での販売時 点で商品から取り外す。
ICタグの値段は一個一〇 〇円程度。
ラベルに印刷するだけのバーコードと比較 すればコスト増になるが、取り外したタグを店舗から 回収し、データを書き直して繰り返し使うことでコス ト負担を軽減している。
このほかにもLitiは現在、 エルメスやフェラガモといった高級アパレルの日本法 人を主なクライアントに抱えている。
今後は他産業に も対象を拡大していく計画だ。
既に外食チェーンのサ プライ品の物流管理にICタグを利用するプロジェク トも進んでいるという。
海外に目を転じると米ウォルマートは今春、主要な サプライヤーに対し、二〇〇五年までにウォルマート に納品する全てのケースとパレットにICタグを添付 第1部 11 AUGUST 2003 するよう要請した。
「バーコードの導入から今や三〇 年が経過している。
既に機は熟した」と、ウォルマー トインターナショナルホールディングスのジェフ・マ カリスターシニアバイスプレジデント兼COO。
同社 の動きに合わせてカミソリメーカーのジレット社はI Cタグ五億個を購入し、米国市場向けに実験を行う という計画を発表している。
狙いは単純な物流コスト削減だけではない。
ICタ グによって完全な在庫情報をリアルタイムに把握でき るようになれば、欠品のない自動補充や売れ行きに合 わせた生産が可能になる。
さらには店頭レジの自動化 や、顧客行動の把握によるマーチャンダイジングまで が視野に入ってくる。
まさに夢のSCMが実現する。
ICタグはSCMの効率化だけでなく、商品トレー サビリティの問題も一挙に解決する。
二〇年近く前か ら存在したRFIDが今日、にわかに脚光を浴びるよ うになった理由の一つは、商品トレーサビリティにI Cタグを利用しようとする動きが出てきたからだ。
米国で「九・一一」の同時テロ事件が起きたちょう ど前日の二〇〇一年九月一〇日、日本では狂牛病(B SE)が発覚している。
きっかけは全く違うものの、 日米両国はいずれも喫緊の課題としてトレーサビリテ ィ問題に直面した。
その解決策として米国政府はI Cタグに目を付けた。
一つひとつの商品をリアルタイ ムで把握するICタグは、そのままテロ対策用のトレ ーサビリティにも利用できると考えたわけだ。
これによって、ICタグの標準化団体として九九年 にマサチューセッツ工科大学に設置されていたオート IDセンターの活動に、新たな注目が集まるようにな った。
もともとオートIDセンターは、バーコードに 代わる次世代物流システムの開発を目的としてICタ グの標準化に取り組んでいた。
そこにテロ対策用のト レーサビリティ問題が後付けされた格好だ。
日本政府も動いた。
BSE問題を抱える農林水産 省、電波を管理する総務省、そして経済産業省がそ れぞれ予算を付けてICタグの実証実験に乗り出した。
さらには今年三月、米国のオートIDセンターに対抗 する形で、日本主導でICタグの標準化を図ろうとす るユビキタスIDセンターが東京大学に発足。
同セン ターの下、六月には国内大手企業を中心とした約一 八〇社がICタグの規格統一に向け合意したという。
入り乱れる関係者の思惑 ユビキタスIDセンターとオートIDセンターの規 格を巡る主導権争い。
新興市場の取り込みを狙うベ ンダー。
そして夢のSCMの実現に期待するユーザー。
さらには関係省庁の思惑まで入り乱れて、今やICタ グ・フィーバーが産業界に巻き起こっている。
それぞ れ異なる立場で、全くレイヤーの違うテーマを抱えて いる関係者が、ICタグ問題を共に議論している。
その結果、様々な誤解と混乱が生じている。
経産 省が中心となって組織した「商品トレーサビリティの 向上に関する研究会」のメンバーで、日用雑貨品の業 界VANを運営するプラネットの玉生弘昌社長は「少 なくとも日雑商品のトレーサビリティにICタグが利 用できるようになるのは、ずっと先の話。
SCMの革 新についても話題ばかりが先行していて中身に乏しい。
現状ではリアリティがない」と切り捨てる。
玉生社長と同様、ICタグの実状を良く知る人ほ ど、現在のブームには否定的な意見を口にする。
話題 先行のバブルだという指摘だ。
果たしてロジスティク スの実務家は、ICタグというツールをどう評価すべ きなのか。
そしてトレーサビリティを、どう実現すれ ば良いのだろうか。
特集 ICタグ狂想曲 先端情報工学研究所の 高橋良明取締役経営企画部長 ケースのICタグから出荷伝票を自動 発行する コンベヤ上のケースに種まき式に商 品を分配する 当初はケース単位でICタグを 導入。
タグは回収している 7月から商品単位のICタグも導入した

購読案内広告案内