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29 AUGUST 2003
「新日鐵の社員は官僚に負けず
劣らずの国策的視点から提言」、
「松下の社員は綱領、信条、遵守
すべき精神を毎日唱えているだけ
で、日常の業務行動に結びついて
いない」、「信用金庫では長年、男
性は渉外担当(ないし融資担当)、
女性はテラー(ないし営業店の後
方事務方)という事実上の性差分
業が続いてきた」――。
いずれも『ケースに学ぶ企業の
文化』(白桃書房)という本から
の引用である。 今年三月に刊行さ
れた同書は、千葉敬愛大学の経済
学部で学生向けに講じられた「企
業文化論」をまとめたものだ。 敬
愛大学では本誌に「CLO実践録」
を連載中の川島孝夫氏(味の素ゼ
ネラルフーヅ常勤監査役)も非常
勤講師を務めており、本書には氏
がAGFについて語った講義も収
録されている。
この本のユニークな点は、講師
(執筆者)がすべて当該事業の実
務経験者という点だ。 第一章の鉄
鋼業に関する項は川崎製鐵の出身
者が担当している。 以降、第二章
の「新日鐵とWOWOW」、第三
章「松下電器グループ」、第四章
「味の素ゼネラルフーヅ」、第五章
「電通」、そして第六章の信用金庫
業界のいずれも、当該事業で実務
経験のある講師が実体験に基づい
て執筆している。
本書の編著者の遠山正朗長岡技
術科学大学助教授(執筆時は敬愛
大学助教授)は、『情報通信技術
と取引コスト理論』(白桃書房)と
いう著書もある気鋭の若手経済学
者。 『ケースに学ぶ企業の文化』の
序章では、企業文化論に関する代
表的な書物を適度に紹介しながら、
企業の文化や組織について解説し
ている。
学者と実務家が書いた文章だけ
に、お世辞にも読みやすいとはい
えない。 視点が偏っているのでは
ないかと感じる記述もある。 それ
でも、ここには一般の経済ジャー
ナリズムに登場する、記者のフィ
ルターを通した情報とは異なる
?生〞の企業像がある。 情報とし
ても玉石混淆だが、こうしたなか
にこそ思わぬ発見が含まれている。
学生気分に戻って読んでみるのも
悪くないだろう。
『ケースに学ぶ企業の文化』遠山正朗編著
(白桃書房、税別価格三四〇〇円)
実務家が大学生に語った企業文化論
鉄鋼から食品、広告まで幅広く網羅
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