ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2003年10号
特集
共同物流の実践 秋葉原共同物流の実現可能性

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

OCTOBER 2003 36 福岡・天神地区や東京・丸の内地区など数多くの 共同配送事業を支援してきた国土交通省が新たなプ ロジェクトに乗り出そうとしている。
今度のターゲッ トは大小さまざまな電気店がひしめき合う東京・秋葉 原の電気街だ。
再開発プロジェクトが進行中のこの街ではITセン ターや各種商業施設の建設が予定されており、今後の 交通環境の悪化が懸念されている。
今回の共配事業 は、店舗納品や顧客が購入した商品の配送のため同 地区に集まってくるトラックの台数を大幅に削減して、 違法駐車をなくしたり、環境負荷を軽減したりするこ とが目的だ。
そもそも秋葉原にトラックが多いのは電気店がそれ ぞれに物流の仕組みを構築していることに起因する。
中小零細の電気店はメーカーや卸に物流を依存。
一 方、大手家電量販店は専用の物流センターを用意。
そ こから店舗へ商品を供給する体制を敷いている。
利用 するトラック業者、さらに店舗への納品時間は電気店 によってバラバラだ。
そこで国土交通省は各電気店が共同で利用できる 物流施設を同地区に用意。
この施設を起点にして物 流事業者に共同集配を展開させることで、トラックの 台数を大幅に減すという計画を打ち出した。
国土交通省が描いている秋葉原における共同物流 の大まかなデザインはこうだ。
まず秋葉原地区内もし くはその近郊に「共同納品センター」を設置する。
そ してベンダー側である家電メーカーや卸には、このセ ンターに秋葉原の電気店向け商品を一括納品するこ とを義務付ける。
その後センターで商品をピッキング、 仕分けして各店舗に配送する。
秋葉原駅近くには「来街者商品受取センター」を 用意する。
商品を購入した一般消費者は店舗ではな 秋葉原共同物流の実現可能性 秋葉原電気街のど真ん中に共同物流センターを用意し、そこか ら各店舗に商品を供給する――。
国土交通省が2004年度に実証 実験を予定している新たな共同配送プロジェクトの青写真だ。
舞 台の中心となるのは日本通運の旧本社ビル。
今年9月、いよいよ 具体的な検討が始まった。
(刈屋大輔) く、このセンターで商品を受け取る。
店舗側は売り上 げが立つと同時にそのデータを「共同納品センター」 に送信。
「共同納品センター」はデータを基に商品を ピッキングし、「来街者商品受取センター」に配送す る。
購入者はすべての買い物が済んだ後に「来街者商 品受取センター」で商品を受け取るため、買い物をし ている間、重い荷物を抱えながら歩かなくてもいい (次ページ図参照)。
ICタグの実証実験も ベンダー側には商品へのICタグ貼付を義務付ける。
「共同納品センター」での入出荷管理に役立てるため だ。
ICタグの活用によって、センターでは検品レス などを実現。
「共同納品センター」〜店舗間、そして 「共同納品センター」〜「来街者商品受取センター」 間の物流処理スピードを高める。
早くもセンターの具体的な候補地も挙がっている。
「共同納品センター」は今年七月に本社機能を汐留に 移転させた日本通運の旧本社ビル。
電気街の中心部 に位置する同ビルの一部スペースを活用する可能性が 出てきた。
一方、「来街者商品受取センター」は秋葉 原駅前の旧青果市場跡地に建設が予定されている複 合商業施設内に置く、という案が浮上している。
国土交通省は学識経験者、家電メーカーと家電小 売りのロジスティクス担当者、物流事業者ら約五〇 人のメンバーで構成する「秋葉原物流効率化実行委 員会」を発足させ、今年九月にその初会合を開いた。
今後も検討を重ね、二〇〇四年八月から九月にかけ てこの構想をベースにした実証実験を実施。
その結果 を踏まえたうえで、同年十二月に報告書をまとめ、早 ければ二〇〇五年度には「秋葉原共配」の事業化に 踏み切りたい意向だ。
第3部行政主導のエリア共配を検証 37 OCTOBER 2003 集約されれば、当然、その一方で既存の仕事を失って しまうトラック業者が出てくる。
こうした共同配送の 負の側面にもきちんと配慮したうえでプロジェクトを 進めてほしい、という内容だった。
現在、「共同納品センター」の運営委託先として有 力視されているのは、候補地のビルを保有する日本通 運だ。
同社は委員会にも多数の社員を派遣している。
物流業者側はその日通が「共同納品センター」でのオ ペレーション、さらにはその延長線上にある店舗配送 までを一手に引き受けるかたちになってしまうのでは ないかと危惧している。
ある物流業者は「日通にだけ美味しい思いをさせる わけにはいかない。
一社丸受けという事態だけは阻止 したい。
そもそも共同配送は複数の企業が協力しなが ら実現していくものだ。
一括委託はその主旨に反する のではないか」と指摘する。
すでに秋葉原で共同物流の仕組みをパッケージ商品 として売り出し、実績を上げている物流業者も存在する。
そんな彼らにとって国土交通省が打ち出した共同 物流プロジェクトは、行政主導による営業妨害とすら 映っている。
もっとも国土交通省には自らが提示した秋葉原共 同物流のイメージをごり押ししようという意図はない。
「あくまでも案を提示しただけ。
決定事項ではない。
秋 葉原の物流のあるべき姿を決めていくのは実際にそこ で活動している事業者たちだ。
われわれは裏方として プロジェクトを支援することに徹していく」(岡部政 樹政策統括官付政策調整官付調査係長)というスタ ンスを鮮明にしている。
果たして秋葉原電気街の共同配送プロジェクトは 最終的にどのような姿で落ち着くのか。
第二回目とな る話し合いは今年十一月に開かれる予定だ。
これまでに国土交通省が主導してきた共同配送は 物流業者や荷受け側企業など川下を中心としたプロ ジェクトが主流だった。
これに対して、今回の取り組 みは家電メーカーなどベンダー側までを巻き込んでお り、カバーする領域が従来よりも広い。
それだけに物 流効率化という面では今まで以上に大きな成果が出る のではないかと見られている。
実際、国土交通省でも「共同物流を導入すること によって家電サプライチェーンの効率化が進んでコス トダウンに成功すれば、それが秋葉原電気街で販売さ れている商品の価格値下げにつながる可能性もある」 (岡部政樹政策統括官付政策調整官付調査係長)と期 待を寄せている。
しかし、プロジェクトに参画する企業が多いため、 コンセンサスが取れずに、国土交通省のシナリオが絵 に描いた餅で終わってしまう可能性も否定できない。
すでに一部の委員メンバーの間ではプロジェクトを通 じて各社にもたらされるメリットを疑問視する声が上 がっているのも事実だ。
例えば、独自の物流システムを構築して効率的なオ ペレーションを展開しているチェーン系家電小売りの 一部は?総論賛成、各論反対〞という立場を取って いる。
ある委員は「共同納品センターに商品を納品す るという縛りを受ければ、サプライチェーン上に物流 拠点が一カ所増えてしまう。
そうなると現状に比べ、 かえってコスト高になる。
物流の仕組みが出来上がっ ている大手は除き、中小零細の電気店を中心に共同 物流を展開すべきだ」と主張する。
物流業者の意見調整は難航必至 さらに物流業者側からも注文がついた。
共同配送の 導入によって店舗配送の業務が一社あるいは数社に ●秋葉原地区の物流共同化のイメージ メーカー メーカー メーカー メーカー 物流センター メーカー 物流センター メーカー 物流センター 秋葉原 共同納品 センター 顧客 店舗 店舗 店舗 店舗 店舗 店舗 店舗 店舗 店舗 店舗 店舗 店舗 来街者商品 受取センター 共同配送 各店舗からの購入 各店舗からの購入 各店舗からの購入 各店舗からの購入 各店舗からの購入 各店舗からの購入 購入商品受取

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