ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2003年11号
ケース
フジサンケイリビングサービス―― アウトソーシング

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

NOVEMBER 2003 36 大型家具の配送に四苦八苦 「これまでは、お客様から『配送業者を変え て欲しい』と頼まれても、『申し訳ありませ ん』と断るしかなかった。
それが現在では、 『分かりました。
次回からはご希望の宅配業 者でお届けします』と即答できるようになっ た。
我々のストレスは多いに減った」 通販カタログ「ディノス」などを手掛ける フジサンケイリビングサービスの山手英幸物 流部長の表情は明るい。
しかし、ここに至る 道のりは決して平坦ではなかった。
大手通販事業者のなかにあってフジサンケ イLSは異色の存在だ。
ライバルのカタログ 通販大手の多くが物品販売や通商などを前身 に発展してきたのに対し、一九七一年に設立 されたフジサンケイLSはフジテレビなどの メディアを母体としている。
一九七〇年に日 本で初めてテレビショッピングを行ったのが、 同社にとっての最初の事業だった。
取扱商品についても特徴がある。
一般的な 通販業者が衣料品や日用雑貨品をメーンに扱 っているのに対し、フジサンケイLSの現在 の主力商品は大型家具だ。
しかも簡単な組み 立て家具ではなく、本格的な大型家具の品揃 えを売り文句にしている。
また、早い時期か ら商品配送時の「代引き(代金引換)」に対 応してきたことも特色の一つだ。
そして、こ うした独自性が長年、同社が宅配業務で苦労 する原因にもなってきた。
競争原理の導入で宅配業務を高度化 業者を柔軟に見直すシステムが奏功 1年間に約450万個の宅配荷物と、数百万冊 のカタログ配布を手掛ける大手通販業者。
競 合他社の多くが自前の物流センターを構築し てきたのに対し、センター業務まで含めた物 流実務をアウトソーシングしている。
柔軟な 管理体制を活かし、最近では大手宅配業者の 競争意識を巧みに引き出しながら物流の高度 化を進めている。
フジサンケイリビングサービス ―― アウトソーシング 37 NOVEMBER 2003 最近でこそ大手宅配業者にとって「代引き」 は普通のサービスだが、七〇年代末には珍し かった。
当時、唯一これを全国規模で手掛け ていたのは、百貨店の商品配送を担っていた 輸送ネットワークだけだった。
このため八〇 年に物流管理に本腰を入れたとき、同社は百 貨店配送の一翼を担うケイヒン配送をパート ナーに選んだ。
センター業務をケイヒン配送に委託し、そ こから全国の顧客に商品を出荷する。
実際の 輸送業務は、百貨店宅配に参加している各地 の運送業者が行う。
それ以降、二〇年以上に わたって、ケイヒン配送はフジサンケイLS の主要物流パートナーとして機能し続けるこ とになる。
ただし、徐々に主力商品として育ってきた 大型家具だけは、百貨店配送を手掛ける事業 者にとっても簡単な仕事ではなかった。
一時 期は家具専門の配送業者を試したりもしたが、 納得のいくサービスは受けられなかった。
同 社は八二年になるとコンペを開き、当時のリ ッカーミシンの物流子会社「リッカートラン スポートサービス(RTS)」に大型家具の配送を一任することを決めた。
当時のRTSはほぼ全国に配送網を持ち、 親会社のミシンだけでなく家電製品の配送や エアコンの脱着なども手掛けていた。
このノ ウハウを使って、有料で顧客に提供する家具 の「組み立てサービス」まで含めて任せたの である。
ようやく大型家具の全国・代引き配 送にメドをつけたわけだが、また数年後に予 期せぬ事態に見舞われることになる。
リッカ ーミシンが倒産したのである。
このときフジサンケイLSは思い切った決 断を下した。
RTSを自社化し、社名を「リ ビングトランスポートサービス(LTS)」と 改めて自らの物流子会社とした。
大型家具の 全国・代引き配送を配送業者に委ねるのが、 それほど難しかったという時代背景があった。
しかし、この体制も長くは続かなかった。
自ら物流子会社を持った以上、そこに仕事を 集めるのは当然だ。
フジサンケイLSとして も、ケイヒン配送には一部の配送業務だけを 残してLTSに配送業務を集約しようと試み た。
だが宅配業者と違い、LTSのネットワ ークは全国を細かく網羅してはいなかった。
このため配送リードタイムが長いという弱味 を、どうしても克服できない。
品質面でも他 の物流業者より見劣りしていた。
結局、フジサンケイLSだけの物量で、全 国配送のネットワークを維持するのには無理 があった。
やむなく同社は八〇年代後半に配 送業務を全面的に外注するように方針を再転 換した。
そしてケイヒン配送に次ぐ物量を任 せる業者として日本運送(後のフットワーク デリバリーサービス)を新たに採用した。
相 変わらず選択肢の少ない中での判断だったが、 その後の一〇年近くフジサンケイLSはこの 配送体制を大枠で維持することになった。
日通の「集荷直送方式」を採用 同社の配送体制に劇的な変化をもたらした のは、宅配業者の成長だった。
七六年に業務 を開始したヤマト運輸の「宅急便」が順調に 成長し、その年間取扱個数が郵便小包を逆転 した頃から、宅配事業は大手物流業者の主戦 場の一つに変わった。
それとともに宅配業者 によるサービス競争が激化し、代引きサービ スを全国で提供する会社も出てきた。
宅配業界の変化を受けて、九〇年代半ばか らフジサンケイLSにとっての配送業務の位 置づけも変わり始めた。
選択肢のない中で事 業者を選んでいた時代には、ある意味では運 んでくれるだけで?御の字〞だった。
リード タイムなどの問題が相変わらず存在していた にもかかわらず、顧客に対しては、それ以外 のメリットをアピールすることで納得しても らうしかないといった面があった。
しかし、実力を付けた宅配業者が、既存の 配送業者にはない高付加価値サービスを提供 するようになってくると話は違った。
実際、 フジサンケイLSも、九八年頃に要冷食品の フジサンケイリビングサービス 物流本部の山手英幸物流部長 NOVEMBER 2003 38 取扱を強化するにあたってヤマトを使い始め た。
フットワークDSの配送網を試したこと もあったが、品質面で明らかにヤマトの方が 優れていたため、要冷食品についてはヤマト を使う体制に段階的に移行していった。
フジサンケイLSにとってさらに画期的だ ったのは、二〇〇〇年八月から大物家具の配 送業務を日本通運にシフトしたことだった。
それまで自社化に踏み切ったりと散々、苦労 させられてきた大物家具の配送を、代引きか ら組み立てサービスまで含めて全国規模で日 通に委託したのである。
「実は当時から通販業者のほとんどが、取 引先からの直送によって大物家具を届けてい た。
すべての商品をいったん自分たちの物流 拠点に持ち込み、検品してから改めてお客様 に届けるという我々のやり方は、リードタイ ムが長いうえにコストが掛かるという意味で、 すでに遅れていた」(山手部長) ライバル企業の多くは、取引先に配送業務 までを委ねるというかたちで直送を実現して いた。
だが大物家具を主力とし、そこでライ バルと差別化しているフジサンケイLSにと って、それはできない相談だった。
配送業務 の管理まで取引先まかせにすれば、配送品質 や配送状況の管理は難しくなる。
コア業務だ からこそ取引先に丸投げするような真似はで きなかった。
にもかかわらず、このとき日通に任せるこ とを決めた最大の理由は、日通が新たに開発 した情報システムにあった。
「集荷直送方式」と呼ぶこの配送方法では、まずフジサンケイ LSから日通のシステムにEDIで集荷と配 送の指示を出す。
これを基に、ある取引先の ところに日通が集荷に出向き、それを直接、 顧客のところに届ける。
もちろん全国での代 引き配送や、有料の組み立てサービスまでを 日通のドライバーが行う。
フジサンケイLSの家具の組み立てサービ スには、その複雑さに応じてランクがある。
最も難易度の高いEランクは、「一個につき 組み立てサービス料金が二万円、組み立て時 間の目安は一二〇分以上」だ。
このランクを 含む組み立て時間六〇分以上のサービスは、 日通の配送ドライバーには難しすぎるとして 除外した。
しかし、それ以外の大型家具は、 基本的にすべて日通に委ねることを決めた。
さらに、従来はフットワークDS(このと きは軽貨急配の傘下)に委託していた大型商 品を中心とするセンターの運営を、ケイヒン 配送に移し替えた。
そして輸入品などのよう に日通の「集荷直送」の対象にならない大型 家具や、日通には取り扱えない高難易度の組 み立てを要する家具を、ケイヒン配送に任せ ることにした。
「ケイヒン配送は従来から百貨店の仕事で 大型家具を扱っていた。
だから我々の方から、 センター運営を任せるから高難易度の組み立 て配送をやってくれとお願いした。
事実上、 彼らのお陰で我々のサービスが成立している 状態ともいえる」と山手部長。
こうして二〇 〇一年頃には、ケイヒン配送、日通、ヤマト の三社体制による役割分担ができあがった。
柔軟な業者選択でコスト二割減 この頃になると、過去に較べればフジサン ケイLSの配送業務はかなり洗練されてきた。
だが、まだまだ大きな課題も残されていた。
大手通販業者の多くは自前の物流センター を構えている。
このためセンターから先の配 送については、柔軟に業者を変更できる。
エ リア別に使い分けたり、全国を一社に集約し たりと工夫の仕方は様々だが、配送業者を入 れ替えることで物流管理の高度化を図ってい るのは、どの通販業者も同じだった。
ところがフジサンケイLSの場合は、そう した見直しが簡単にできない体制になってい た。
とりわけ百貨店ルートで届けていた小物 商品に関する問題が大きかった。
センター業 務と配送業務をセットでケイヒン配送に委ね ていたため、配送業者を簡単に変えることが できなかったのである。
競合他社は大手宅配業者の新サービスを取 り込んで、どんどん配送サービスを高度化し ている。
フジサンケイLSとしても指をくわ えて見ているわけにはいかなかった。
そこで 同社は今年一月から、受注時に最適な配送業 者を選択できる機能を自分たちの情報システ ムに組み込み、社内で「複線化」と呼んでい る新たな仕組みをスタートした。
39 NOVEMBER 2003 理屈は簡単だ。
あらかじめ各配送業者の持 つサービスや、サイズごとの配送料金など業 者選定のルールを設定しておき、注文ごとに 配送業者を変えるのである。
最も優先される 条件は顧客による配送業者の指定だ。
特に指 定がない場合は、僻地での代引きサービスの 可否や時間指定など顧客の要望に合致する業 者を選ぶ。
対象業者が皆、同様のサービスレ ベルなのであれば、契約している配送料金が 一番安い配送業者を自動的に選択する。
「ようするに『複線化』の仕組みでは、品質 の悪い配送業者が淘汰されるはずだし、料金 の悪い業者も淘汰される。
我々が若い頃には、 やりたくともできない仕組みだった。
それが、 ようやく実現できた」(山手部長) 実際、この「複線化」の効果は絶大だった。
まず冒頭にもあるように、顧客の要望に応え ることが可能になった。
また、業者選びの優 先順位としては三番目ながら、最も安い料金 の配送業者を選ぶというのが効いた。
各配送業者が扱った荷物の個数は毎日、複 線化に参加している配送業者には他社分も含 めて開示している。
つまり業者別の取扱シェ アが日ごとに分かり、もし配送業者が運賃の 値下げを申し出れば、すぐにシェアの移動と いう結果になって反映される。
現にある配送 業者が値下げした翌日には、取扱個数のシェ アが何十%も移動したことがあったという。
このことは、配送業者間で冷徹に競争原理 が働くようになったことを意味している。
以 受注センターに寄せられる商品配送に関連するクレーム  フジサンケイリビングサービスでは、受注センターに 寄せられるクレームの中で特に問題が大きいと判断した ものを関係者にメールマガジン「聞いてよ!ディノス」 で配信している。
以下は9/ 23 〜 10 /8に配信された分 からの抜粋。
文中の太字の部分は、同社が改善すべきと 感じたポイントを示している。
本稿では業者名を伏せた が、実際の配信メールでは、クレーム対象となった配送 業者の実名が文末のカッコ内に明示してある。
■商品が届かないのでディノスに確認したところ、「すで に出荷済みのため間もなく届くはずです」との案内を受 けた。
しかし、その後、いくら待っても商品は届かず、 そのかわり無言電話が何件も入るようになった。
ナンバー ディスプレイで電話番号を確認し、その番号にかけ直し てみたところ大手宅配業A社の番号だった。
配送前の連 絡ならちゃんとメッセージを残して欲しいし、また不在 なら不在票を入れていただきたい。
(A社) ■不在票も入れられないまま、勝手に商品を返送されて しまった。
(B社) ■午後に届けてもらうよう時間指定をしていたが、 15 時頃 に配送担当者から「他の配達があるので届けがかなり遅 くなる」と電話が入った。
その態度があまりにも悪かっ たため、頭に来て「もう商品は要りません」と受け取 りを拒否した。
(A社) ■商品の配送時に、ポケットに両手を突っ込んだままの配 送員に近所中に聞こえるような大声で凄まれ、聞くに堪 えない言葉で何度も怒鳴られた。
二度とこのような不 愉快を味わいたくないので、もう金輪際ディノスは利用 しない。
(B社) ■連絡も不在票もないまま、梱包2つの大型商品を隣の家 に預けていった。
社宅でいろいろ気遣いが必要な環境 なので、絶対にやめてもらいたい。
簡単に隣り近所に預 けてしまうような配送体制なのであれば、今後は利用を やめようと思う。
(A社) ■届いた時に配送員が破損部品に気づいて商品を持って帰っ たようだが、その後、何の連絡もなかった。
(A社) ■午後の届けを依頼していたのに午前7時 30 分に電話が入 り、これから届けると言われた。
(A社) ■代引きなのに事前のTELなしでいきなり夜の8時過 ぎに届けに来た。
以前の分も含めると、事前のTELな しで来ることが既に3回も続いている。
(B社) ■届いた商品は、ダンボールが潰れていて中身にも傷が付 いていた。
家が八丈島なので交換してもらうのも気の毒 と思いそのまま使用しているが、業者に注意して欲しい。
(A社) ■注文の際に「組み立てサービス」を依頼したところ、オ ペレーターから「2人で 40 分程かかるため、組み立て専門 の者が行きます」と案内された。
しかし、実際に来た配送 員の手際があまりにも悪いため、問いただすと実は組み 立て作業は初めてだという。
有料サービスなのだから、 きちんと作業できる配送員をよこして欲しい。
(A社) ■商品を有料の「運び込み」で注文したところ、配送員が 1人で来たうえ、商品をゴロゴロ転がしていた。
傷が 付かないか不安になり、結局手伝う羽目になった。
ちゃ んと2人以上で運び込み作業を行って欲しい。
(A社) ■不在票がポストの中ではなく、管理人室の前に落ちてい た。
宅配業者の担当営業所に連絡すると、非常に横柄な 態度で感じが悪く怒ったような口調で午後届けると言わ れた。
だが実際に届いたのは午前だった。
こんな配送だ と今後の注文を躊躇してしまう。
(A社) ■9月 20 日の午前中という時間指定で商品を注文した。
当 日は午前中ずっと待っていたが、商品が届かず困った。
その後、ずっと待っていたのに商品は届かず、たまたま 16 時に宅配BOXをのぞいたら商品が入っていた。
こち らが留守をしていたのならともかく、ずっと待っている のに一度も連絡も無く、宅配BOXに入れていくとは、 どういうことなのか。
時間指定不履行をとがめられる のが嫌で宅配BOXにいれたのですか?(A社) ■配送員が、付き合いのない近所に勝手に商品を預けてし まい非常に迷惑した。
前回は不在票に記入されていた連 絡先が、使用されていない電話番号だったりと、いつも 迷惑している。
配送業者に注意して欲しい。
(C社)       ■「事故報告書」という紙が入れられて、ガラスが粉々に 割れている商品が届いた。
商品の破損を知っていて、何 も言わずに置いて帰るのはおかしい。
幸い怪我はしなかっ たが、非常に危ない。
(A社) ■不在の場合、勝手に実家に商品を届けてしまう配送員が いる。
特に指示をしていない場合は、不在票対応にして 実家には届けないで欲しい。
ありがた迷惑です。
(業者 名の指定なし) ■先日、返品の依頼をしたところ「2、3日中に配送所か ら連絡を入れさせてもらう」と案内された。
ところが連 絡のないまま突然、配送員が商品を取りに来て、更には 送料を請求された。
(A社) NOVEMBER 2003 40 前は一体だったセンター業務と配送業務を分 離し、「複線化」によって配送業者を案件ご とに最適化する。
こうして業者選定に本格的 な競争原理を導入した結果、今年の一月以降、 配送業者との契約単価は平均約二〇%も下が った。
百万個単位の荷物を扱っているフジサ ンケイLSにとっては、極めて大きなコスト 削減だった。
メール便市場の加熱が追い風に 従来のフジサンケイLSの物流管理には競 争が不足していた。
特殊な条件を満たせる配 送業者の選択肢が限られていたという事情が あったためだが、物流業界で進む熾烈な競争 を利用しない手はない。
すでにかなりの成果 を上げているが、同社は他の分野でも同様の 取り組みを進めている。
一つは昔から悩みのタネだった大型家具の 組み立て配送だ。
前述した通り、この分野で は二〇〇〇年以降、配送の大半を日通に任せ て、一部だけをケイヒン配送に委ねてきた。
だが今年一〇月からは、関東地区だけの実験 ながらも佐川急便を参入させる。
小物配送で 効果のあった「複線化」を、主力の大型家具 でも機能させようという狙いだ。
ただし、この分野で行っている「集荷直送 方式」は、これまで日通の情報システムに依 存していた。
このオペレーションを一部変更 する必要があった。
そこで従来は集荷・配送 指示を日通に出し、日通の拠点で配送伝票を プリントアウトしていた作業を、出荷元の家具メーカーなどに直接やってもらうように変 更した。
これによって集荷と配送を日通以外 に委ねることが可能になった。
新方式を実現するためには、パソコンやプ リンタを持っていない取引先にコスト負担が 発生する。
取引先に強制することはできない ため、件数の少ない取引先のなかには新方式 への移行を渋るケースもあり得る。
それでも 山手部長は、「これは我々の業務の高度化に 協力してくれる調達先とのパイプを太くして いく取引先政策でもある」と意に介さない。
三年前に大型家具の配送を日通の「集荷直 送方式」に委ねたとき、フジサンケイLSは 従来の不安定な配送体制からの脱却を歓迎し た。
しかし、期待の多くは裏切られた。
「日 通ががんばってくれているのも、大型家具が 難しいのも理解できる。
だが、どうしてもミ スが減らない。
我々としては有力顧客が配送 のクレーム絡みで離れていくのを黙って見過 ごすわけにはいかなかった」と、山手部長は 「複線化」に踏み切った理由を明かす。
佐川が大型家具の組み立てを本当にこなせ るのか見極めるのは今後の話だ。
しかし、フ ジサンケイLSとしては、大型家具にも業者 間の競争意識を導入することで、コストと品 質の双方に効果が出ることを期待している。
現に最近では、日通の営業所長たちが集まる 場にフジサンケイLSの担当者が参加し、互 いにミスを減らす努力をするという従来はな かった空気が現場に生まれてきている。
カタログ配送についても、今年四月の日本 郵政公社の発足で追い風が吹いている。
先日、 ある地域で試験的に一〇万部のカタログ配布 を郵政公社に委ねたところ、これまで使って きた配送業者に較べて返本率が圧倒的に低い ことに驚かされたという。
転居の際に郵便局 に住所変更の届けを出す人が多いという強み が、実績で示された格好だった。
さらに郵政公社の本格参入は、カタログ配 送の価格競争も激化させた。
フジサンケイL Sが各配送業者の見積もりの最安値ばかりを 選ぶシミュレーションを実施したところ、従 来よりコストを三割も削減できるという結果 が出た。
数百万冊のカタログを配布すること を考えれば、その削減額は数億円に上る。
もっとも同社としても、「カタログ配送の品 質は通販業者にとって生死を決するほど重要。
すべてを最安値の配送業者にするつもりはな い」。
これからはカタログ配送でも、各社の配 送品質を見極めながら競争原理の導入による 業務の高度化を進めていく方針だ。
本来、フジサンケイLSの物流は、センタ ー運営までアウトソーシングしているという 意味で、競合他社に較べて業者管理の柔軟性 を持っている。
だが従来は、配送業者の選択 肢が少ないなどの理由から、この強みを活か せずにいた。
激化する宅配業界のサービス競 争が、通販業者の物流管理を新たなレベルに 押し上げようとしている。
(岡山宏之)

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