ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2005年4号
管理会計
在庫問題と管理会計

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

SCM時代の 新しい 管理会計 APRIL 2005 74従来の物流コスト管理の限界物流コストという概念が日本に導入されてからすでに四半世紀が過ぎた 現在では多くの日本企業が定常的に自社の物流コストを算出している 過去にその啓蒙に取り組んだ先達の功績といえよう も とも 管理会計は自らの経営を管理するための実態把握の一手段であり どういう範囲で物流コストを把握したいのかは会社によ て異なる 算出方法について行政によるガイドラインも提示されてはいるものの まだスタンダ ドとして認知されているとは言い難い状況だ 実際 日本では各社の算出範囲の違いにより他社比較が難しい ベンチマ キングに使用できないという問題が依然として残 ている 一方 物流はその管理範囲を広げ ロジステ クスとなり 現在ではサプライチ ンマネジメント SCM という考え方が浸透している 物流とロジステ クスの違いが端的に現れているのは ロジステ クスには会社全体での在庫の適正化という役割が追加されている点である そのため物流と比較すると管理すべきことも格段に多くなる 例えば販売計画の精度向上 実需に合わせた生産数量の設定 生産サイクルの短縮化 物流サ ビス水準の適正化などは 在庫適正化の施策として上が てくる代表的なものである 物流コストが対象としている範囲と ロジステ クスが対象としている範囲には齟齬がある ここに大きな問題がある もちろん 物流コストは現在でもオペレ シ ン管理には有効であり ぜひ把握すべきものである だが 物流コストの範囲だけでとらえていたら ロジステ クス施策は検討できない ロジステ クス さらにはSCMという範囲に応じた管理会計手法を導入する時期に来ている 拠点集約でコストが増加?物流コストといわれているものの問題点を具体的事例で説明しよう 物流と言われている範囲でも 在庫適正化に貢献できる施策はある その一つ 物流拠点集約は すでに多くの企業が取り組み 効果が実証されている施策である 過剰在庫が目に見えるようになり 生産変革への動機が明確化される 拠点間での横もちが削減される 横もちというイレギ ラ な処理を行わないでも在庫引当ができるようになるため販売機会損失が削減され 顧客サ ビスも向上する とい た効果が期待できる しかしながら 最初に実施の可否を判断するときに問題となるのが 現状で広く認知された物流コストの算出方法なのである 物流拠点を集約すると 小口配送の足が長くなるため輸送コストは上昇するケ スが多い 筆者の経験した複数の事例では いずれも輸送・倉庫・荷役の範囲のみでとらえたコストは上昇するという結果とな ている これは 後から考えれば成るべくして成 在庫問題と管理会計従来の物流コスト管理では ロジステ クスの意思決定をカバ できない 物流からロジステ クスへ 対象領域が拡大したことで 管理会計にも革新が求められている 今日のロジステ クス担当者が知 ておくべき会計の基礎知識をSCMのスペシ リストが解説する 第1回梶田ひかるアビ ムコンサルテ ング 製造事業部 マネ ジ 75 APRIL 2005た結果である そもそも物流拠点を増やしたのは 顧客サ ビスを向上しようという目的だけではない 特に物流負担力の低い商品の場合は 工場から納品先までのト タルの輸送・保管・荷役コストが低減するという理由で設けたケ スが多か たと想定される そのような場合 拠点集約により期待される倉庫や管理人件費の削減では 拠点集約を営業に納得させるだけの金額的効果は出ない このようにロジステ クスの意思決定を行うためには もはや物流の範囲だけでのコスト計算では適切な判断ができなくな ているのである 財務会計と物流コストSCM時代のロジステ シ ンには 基本的な財務会計の知識が要求される SCM時代に求められる管理会計を理解するためにはまず 物流とロジステ クス さらにはSCMの違いを 財務会計と照らし合わせて理解する必要がある 端的にいえば 物流コストとは物流といわれている範囲 つまり生産ラインを出た時点から顧客に届けるまで 社内・販売物流 あるいは調達品の供給地から生産ラインに入るまで 調達物流 最近ではこれに静脈物流 返品・回収・廃棄物流 も加えたものがその範囲とされている これを財務会計とマ ピングしたものが図1となる 社内物流のコストは企業によ て損益計算書 P/L 上のどこにマ ピングするかが異なる 製造原価に含める会社 販売管理費に含める会社がある 販売物流の大半は販売管理費に計上される 調達物流はほとんどの場合 製造原価に計上される それらの一部が一般管理費など他の費用に計上されている可能性があることは 周知のとおりである 物流コストにおいて唯一 貸借対照表 B/S を使用するのが在庫金利である 在庫金利を物流コストに含める企業は多くない 金利という言葉が示すように ここには今問題にな ている欠品による販売機会損失や不良在庫による損失はほとんどの場合 計上しない 日本の現状では 算出している場合でも 在庫金額に対して会社としての資金調達金利や長期プライムレ トなどを乗じた額を在庫金利としているケ スがほとんどである この物流といわれる範囲のコストは 製造原価と類似する性格を持 ている 製造原価は製造部門が主となりコストを管理できる 物流コストもまた 物流部門が主となりコストを管理できる コストを上昇させる起因部門が他にあ ても その因果関係を示すこと図1 財務諸表と物流コスト 輸送費 保管費  在庫金利    包装費   流通加工費   情報処理費   物流管理費  調達物流費 社内物流費 販売物流費 返品物流費 回収物流費 廃棄物流費 物流コスト 該当するものを抜き出して配賦 金利を乗じて配賦 損益計算書(P/L) 売上高 売上原価  売上総利益 販売管理費 一般管理費  営業利益 営業外収益 営業外費用  経常利益 特別利益 特別損失  当期未処分利益  貸借対照表(B/S)  流動資産  売掛債権  棚卸資産    その他流動資産    現金・預金    有価証券 固定資産    設備等  繰延資産 流動負債    買掛債務    未払費用    その他流動負債 短期有利子負債 固定負債 特定引当金 資  産  負  債 資  本  APRIL 2005 76は可能である つまり 物流といわれる範囲でコストを把握することは 充分に意義がある 物流部門がコントロ ルできるか否かという基準で考えれば 日本における物流コストに含まれる在庫コストが先に述べた範囲でしか計上しないことにも納得がいく 物流部門がアイテム別の生産量をコントロ ルできないのであれば コントロ ル可能なのは 物流拠点における在庫量のみである そうであれば 物流部門に起因する販売機会損失や不良在庫はたかが知れている むしろほとんど責任がないものを たとえ金利が非常に安いとはいえ在庫金利という形で物流コストに計上することのほうがおかしいことになる 財務会計と在庫問題物流からロジステ クスへと変わ たことにより ロジステ クスの管理会計はどのように変わ たのであろうか その大きな違いは在庫問題の扱いである 在庫の問題は財務諸表上の各所に現れるが 物流コスト以上にその正確な把握は難しい 図2 最も問題となる不良在庫は 廃棄や減耗を行えば営業外費用に現れる しかしながらこのような処分をタイムリ に行な ているケ スはまれで 資産という形でB/S上に載 ている場合が多い 次に問題となる欠品は 売上減という形でP/Lに影響するが その実態を正確に掴んでいる企業はごく一部でしかない 双方ともコンピ タにてル チン的に算出できるものではないため 手間をかけて実態を定期的に把握することが望まれる さらに在庫増加に伴う資産の増加は キ シ フロ の悪化を招く 自社物件で倉庫を保有しておりそこに在庫が保管されているのなら その設備もまたキ シ を固定化させる一因となる このキ シ フロ を便宜的にコストに置き換える手段が 金利 なのである 先に事例として取り上げた物流拠点削減は 不良在庫の発生抑制 キ シ フロ の向上 販売機会損失削減による営業利益増加を加味すれば ほとんどの場合 効果の見込める施策 であることが費用対効果計算にて説明できる 欧米ではこれら在庫にかかるコストを簡便に算出する方法として 在庫保有レ ト Inventorycarryingrate を会社として予め設定し 在庫金額にそれを乗じることにより 在庫を持つことによる損失 を算出している この在庫保有レ トは 日本の企業が物流コスト計算上で用いている在庫の金利よりははるかに大きく 少ない企業でも二〇% 多い企業では一〇〇%程度になるといわれている 在庫保有レ トを用いてはじめて 物流コストを簡便にロジステ クスに対応したものにできるのである 図2 在庫問題と財務諸表 損益計算書(P/L) 売上高 売上原価  売上総利益 販売管理費 一般管理費  営業利益 営業外収益 営業外費用  経常利益 特別利益 特別損失  当期未処分利益  貸借対照表(B/S)  流動負債    買掛債務    未払費用    その他流動負債 短期有利子負債 固定負債 特定引当金 資  産  負  債 資  本 流動資産  売掛債権  棚卸資産    その他流動資産    現金・預金    有価証券 固定資産    設備等  繰延資産 顕在化していない不良資産 (把握困難) 販売機会損失による売上高減少 (把握困難) 在庫増加による保管・管理費増加 顕在化された 不良資産 在庫廃棄損 在庫減耗 資産増加に伴うキャッシュフローの悪化 ◆ SCM時代の新しい管理会計 ◆かじた・ひかる 一九八一年南カリフ ルニア大学大学院
錬匳せ亮萋 同年日本アイ・ビ ・エム入社 一九九一年日通総合研究所入社 二〇〇一年デロイトト マツコンサルテ ング 現:アビ ム コンサルテ ング 入社 静岡県立大学非常勤講師 ロジステ クスABC ロジステ クス中長期計画策定 在庫削減プロジ クトなど ロジステ クスの企画・管理に関するコンサルテ ングと研究を中心に活動中  

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