2003年11月号
特集

流通問題の解答 ITでチェーン本部機能を強化する

NOVEMBER 2003 24 CRPに不足していた機能 ――久保田さんは滋賀県の平和堂にCRP(連続自動 補充方式)を導入した頃から流通分野のIT化に携 わっていますね。
「私がサプライチェーン・マネジメント(SCM)に 初めて取り組んだのは九四年です。
米国でP&Gとウ ォルマートが製販同盟とかECRと呼ぶ取り組みを進 めていたのですが、そこからCRPの仕組みが生まれ た。
これを日本に持ってくる事業を担当していました。
ただ当時のIBMが、中間流通で何かをやろうという 強い意志を持っていたとは思えません」 「それが去年あたりから変わってきました。
IBM の社内では『トレーディング・パートナー・コラボレ ーション(TPC)』と呼んでいるのですが、流通分 野でより新しいビジネスモデルやサービスを提供しよ うという動きがグローバルレベルで出てきた。
企業間 の商取引や、CPFRと呼ばれる情報共有、それにロ ジスティクスまで包含するソリューションをIBMの 戦略として手掛けようという動きです」 ――流通をITで効率化するということですか? 「企業間にまたがる業務プロセスをエンド・トゥ・ エンドで統合しなければ、もはや自分たちの会社だけ では変化に対応しきれないという状況が元々のベース になっています。
TPCの活動には既存のパッケージ ソフトを使う部分も含まれていますが、これはあくま でもツールに過ぎない。
顧客が求めているのはパッケ ージにはできない領域のソリューションです」 ――そのなかで「CPM(カテゴリー・プロフィッ ト・マネジメント)」というソフトが出てきた。
「そうです。
CPMは花王販売さんと某大手小売業 者のカテゴリー・マネジメントの取り組みから生まれ ました。
簡単に言ってしまえば、店頭の在庫管理です。
稼げる商品が常に棚にあるという状態を維持すること が目的です。
そのためには店頭に何を並べるかという 品揃えから、日々の補充発注まで、全ての活動を統 合する必要があります」 「これを実際にやろうとしたら小売業だけでは情報 が足りません。
卸やメーカーといった取引先と一緒に 取り組む必要がある。
そこで二〇〇一年秋くらいから 花王販売さんと小売業者が一緒になってプロジェクト を実施しました。
それ自体はPwCコンサルティング (現IBMビジネスコンサルティングサービス)が立 ち上げ、約半年間の実験を経てPwCがソフトウエア を構築していった。
これがCPMの原型です」 ――花王販売には以前からあった仕組みなのですか。
「いや、まったく新たに開発したものです。
CPM は、主に自動発注、需要予測、販促、カテゴリーの分 析といった機能からなります(図1)。
例えば、対象と なるのがシャンプーというカテゴリーなのであれば、卸 なりメーカーというカテゴリー・パートナーと小売り 業者が共同でシャンプーの売り場を作り、そこでの利 益の最大化を目指すことになります」 「その際、CPMは基幹系のシステムにのっかる計 画系のソフトという位置づけになるため、導入するの は小売業でも取引先でも構いません。
POSデータや 店頭の在庫データなど必要なデータさえ揃えばいいわ けです。
こうしたデータを使って最適化の計算をする エンジンがCPMです。
そのうえで需要予測から発注 までを自動で行うことが可能です」 ――商品の自動補充となると、CRPとの違いは? 「CRPでは小売業専用の物流センター(DC)で あったり、卸の倉庫への商品補充を自動化します。
こ れに対してCPMでは、店頭を元にした発注をいろい 「ITでチェーン本部機能を強化する」 日本では発注権限を店舗に持たせている小売業者が多い。
一 方、欧米の有力小売り業者の大半は、すでに店頭の実需に基 づく自動発注を導入している。
日本市場で自動発注を実現す るための新しいツール「CPM(カテゴリー・プロフィット・ マネジメント)」を構築した。
(聞き手・岡山宏之) 久保田和孝 日本アイ・ビー・エム e-ビジネス・オンデマンド事業 SCM営業推進 部長 25 NOVEMBER 2003 ろな形態で行うことができる。
店からDCへの発注も 可能だし、一括物流センターが通過型で在庫を置いて いない場合には直接、仕入れ先に発注することも可能 です。
DCの在庫データを取り込めば、CRPと同様 にDCへの補充発注もできる。
ようするにバリューチ ェーンの発注業務を全てまかなえるソフトです」 自動発注は日本にも根付く ――日本では、店舗からの人手の発注こそ小売りの生 命線と考えているチェーンストアが少なくありません。
「確かに日本では店頭の在庫を見ながらEOSで発 注を出すのが主流です。
しかし、すでに米国の小売業 者の大半は自動発注を行っています。
その場合には、 分析まで含めて本部主導でやるという前提がある。
さ らにカテゴリー・パートナーとの情報共有によって、 取引先のノウハウをいかに引き出すかという米国流の 考え方があります。
過去の日本にも同様の発想はあっ たのですがシステマティックな動きではなかった。
日 本では、あいまいな形で卸がカバーしてきました」 ――CPMで実現できることを簡単に説明して下さい。
「CPMの切り口は三つあります。
『売り場の活性化 および生産性の向上による利益の最大化』、『商品ライ フサイクル管理の最適化』、『ローコスト・オペレーシ ョンの推進』です。
小売業にとって店舗スペースは無 限ではありません。
限られたスペースのなかで、いか に大きな利益を上げるかという話です。
その品揃えで あったり補充発注を、人間がやるのではなくて、コン ピューターでより効率良くローコストで実施する。
こ れまでのように多数のパートさんたちを使ってやる方 法が本当にいいのか。
商品のカテゴリーによっては自 動発注でいいんじゃないのかということです」 「もう一つの特徴は、カテゴリー単位で品揃えを最 適化する点です。
同じカテゴリーのなかにA商品とB 商品があったら、Aがたくさん売れるからといって、 Bを置くスペースすべてにAを置いたのでは意味がな い。
CPMでは、あるカテゴリーに属する商品全体の 利益を最大化できるように需要を予測をします。
そう いう相対的な比較が、従来の需要予測のツールにはで きなかったんです」 「小売り業者がメーカーや卸などと共同でカテゴリ ー・マネジメントに取り組む場合のインフラにもなり えます。
Webですべての情報を見ることのできるシ ステムですから、このサーバーを置けば取引先と情報 を共有化しながらCPFRを実現できるんです」 ――具体的な導入事例は? 「昨秋、名古屋のあるドラッグストアチェーンが導 入しました。
一店舗だけでも数万アイテムを扱ってい るチェーンです。
全店舗では在庫管理の対象アイテム は数百万に上る。
ここで従来は人間が発注していたの を、すべてCPMによる自動発注にしてしまった。
結果として欠品率は五〇%減り、在庫回転率は十三% 向上しました。
ある家電量販店でも欠品率四二%減、 在庫回転率二五%向上という結果が出ています」 ――小売業者が導入すれば、中間流通を自らのコント ロール下におけるようになるのですか。
「物流の機能はなくせませんから、そのための中間 流通は必要です。
結局、CPMの狙いは、チェーンオ ペレーションの本部機能を強化することにあります。
あるカテゴリーの管理については卸に任せた方がいい かもしれないが、別のカテゴリーについてはメーカー と直接やった方が有利かもしれない。
日本の小売業者 も今後はそういう考え方になっていくはずです。
その 機能を、我々はパッケージ・ソフトのようなかたちで 導入コストまで含めて数千万円で提供します」 特集 図1 CPMによって実現できる機能の概要 組織間情報共有 図2 CPMによる自動発注の範囲 (店頭の実需に基づいた自動発注をマルチメディアで行う) 最終需要予測に基づいて発注数を算出 タイプと発注方法 店舗在庫商品の発注 スルー型 DC 仕入先 店 舗 備蓄型 備蓄型 カテゴリー計画 需要管理機能 業績管理 商品ライフサイクル管理 カテゴリー 目標設定 進捗管理 カテゴリー 戦術の見直し ・カテゴリー業績進捗 ・販促テーマ別予実管理 ・マークダウン意志決定 ・四半期業績予想 と目標の設定 ・カテゴリースコ ア ・カテゴリーポー トフォリオ分析 ・改善すべき売 場の摘出 ・売場再編(資源 配分の最適化) ・商品構成 ・販促テーマ作 成 ・最適フェイス棚 割り DC備蓄商品を店舗 に配分するための 発注 配達型 配 達 型 備蓄型 備蓄型 配達型 (店舗発注) 展示品の売れ行き に応じてDC在庫を 発注 店舗での売れ行き に応じてD C に備 蓄品を一括発注 最終需要(消費者) ・一括投入品の 店別配分 ・最適基準在庫 に基づく自動 発注在庫管理 ・最適売価シミ ュレーション ・在庫消化率 ・発注抑制管理 カテゴリー 実績分析 カテゴリー 戦略 カテゴリー 戦術 最適基準在庫の 自動計算 需要予測と 連動した商品計画 商品計画を 反映した自動発注 一括投入 管理 自動発注 在庫管理 販促管理 売切り管理 スルー型

月刊ロジスティクス・ビジネス

購読のお申し込みはこちらから