ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2003年12号
特集
日本の3PL 世界に誇れるサプライチェーンを実現

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

全国の店頭に工場一カ所から翌日田送 「私は日本のマックスファクターで構築したサプラ イチェーンモデルを、世界のP&G の向級化粧品、も しくはSKU の多い商品に迎川していくべきと考えて いる」l| 。
プロクタl ・7 ノドギャンブル・77 l- イースト・インク(p&G) でカスタマl サービ ス/ロジスティックス部門のトyプ寺務める除問尖デ ィレクターは、こう言つてはばからない。
p&G の持つ化粧品ブランド「マyクスファクタ ー」は、日本ではそれ自体が独立した法人絡を持って いる。
ただしサプライチェーンの俄築と述用は基本的 にP&G が手続けている。
そして必問ディレクターは 日本と緯聞におけるp&G傘下の全ての事業のロジス テイタスを統話する立場にある。
その必悶氏が自貸するのが、二OO 二年一月に山 九を3PL パートナーに立ち上げた化粧品のサプライ チェーンだ。
着手したのは九九年のことだった。
当時、 マックスファクターの位終製品を位く物流拠点は全国 に凶カ所あった。
滋賀県の野洲工場合服のほか、北 海道、東京、大阪に各一カ所である。
大消山首地に在庫型センター(DC)を配世し、それ ぞれにフルラインの製品在庫を持たせる。
ここから顧 客である全国の店舗に受注後、ニ凶時間以内に問け る。
トラック輸送のリl ドタイムを考えて作られた、 ごく一般的な物流ネットワークだった。
しかし、この体制では、どうしても解決できない問 題があった。
衣服である。
P&G の日本法人では化粧 品のトータル・サプライチェーンに関する議論を重ね た末に、同事業の収益伯を向上させるうえで最大の課 題は在雌だという結論に述していた。
とりわけ問題に すべきは、流通の川下にある段終製品在庫だった。
図画P&G ファーインスト•インク&山九 世界に誇れるサプライチェーンを実現 • P&G グループの化経品事業のマックスファクターは、工場 と店舗の聞を保管型倉庫1 カ所で結ぶ「ハブDCJ 繕想を2002 年1 月に実施に移した。
同社が理懇とするサプライチェーン が世界に先駆けて日本で稼働した。
その運用を3PL/~- 卜ナ ーの山九が支えている。
(岡山宏之) 「当時は返品が多かった。
返日叩は段怒だ。
出荷して から一年間近くキャyy ュを眠らせた挙げ句、償却処 分するしかない。
なぜ返口叩が多いのかというと、店頭 に在仰をmmみ過ぎるからだ。
じゃあ、店孤の在仰は何 のためか。
物流センターからの山術がばらばらで欠日聞 が多いためだ。
じゃあ、欠口川はどうして発斗-するのか。
こう考えていくと店頭で在雌を積みm したくなるのも 理解できた。
この状況をサプライチェーン全体として 解決する必裂があった」(徐削ディレクター) DECEMBER2卯3 LOG 卜BIZ 18 skUの少なさ主品地条件が奏功 従来の同社の体制では、工場倉庫のほか全国一ニカ 所でそれぞれに夜山をフルラインで持っていたため、 全国レベルでは在雌があるのに、それが段得りの拠点 にないために欠品扱いになるという事態が避けられな かった。
対応策としては、各エリアにおける需裟の予 測粉俊を尚めるか、在庫を積み上げるしかなかったが、 いずれも現笑的な解ではない。
むしろ在雌拠点を一カ 所に集約したほうが有効だ。
理想的なサプライチェーンを突き詰めていくと、メ ーカーの工場と、小売り店舗の問に一カ所だけ中間流 通拠点を世くときに段も効率が高まる。
これをP&G は「ハプDC」(在庫盟中間流通拠点)と名付けてい る。
日本の化鉱ロ川事業でこの「ハプDC」を具体化し ようとしたのである(図11 一般的な製造業者が「ハプDC」を日本で尖践し ようとしても通常なら、すぐに現実の践に突き当たる ことになる。
歴史的に卸が中間流通を綴ってきた日本 では、特定の業界を除けば卸を除外した・向先は成立し ない。
また以近では小売りチェーンによる専川センタ ーも刷えている。
いずれのパターンでもメーカーの物 流拠点が、工場と店舗を一階層だけで結ぶ「ハプD E-zai i ~目志の3PL 成功事開設主主主主盟JIJ波 c 」とはなり得ない。
その占…、マックスファクターのサプライチェーンは、 メーカーによる直販体制だ。
加えて他の化粧品メーカ ーにはない特徴もあった。
同社は国内で販売する化粧 品の九捌以上を、日本のほぼ中央に位世する滋賀県の 野洲工場で生産している。
この立地を活かし、工場の 近隣に「ハプDC いを設置すれば、そこから全闘に塑 日配送できる。
北海道などの遠隔地には航空便を多 用することになるため輸送費は大幅に嗣唱えるが、在庫 を減らせれば吸収できると踏んだ。
しかもマyクスファクターは息の長い定番-M品が中 心で、取扱アイテムは五OOSKU と他メーカーに比 べ極端に少ない。
そのため「ハプDC」で集中的に処 理することになる大量のピッキングや仕分け業務の負 担も軽い。
環境は揃っていた。
p&G は二000 年四月に、この新しいセンターの 巡営と配送管理を任せる3PL パートナーを選ぶコン ペを実施した。
十討を勉す有力物流業者に戸を掛け、 そのうち五社前後の事業者を対象にコンベを開催。
そ の約二カ月後に、以前から付き合いの深かった大手物 流業者、山九をパートナーに選んだ。
たまたま山九が、マックスファクターの野洲工場か ら約四00 メートルの場所に倉庫を保有していたこと が大きかった。
この施設は従来、まったく異なる顧客 のために利用していたものだが、山九はこれをP&G 向けに燃様替えすることを提案。
既存施設の流用によ るコスト競争力の高きが決め手になった。
周囲の反対を姻押し切り山九を選択 p&G と山九の付き合いは長い。
p&G は八一一年 から紙おむつの生産を明石工場で行ってきたが、この 工場内での構内オペレーションを山九に委託したこと 図1 P&Gが提唱しているrl\ブDCJ 構想 卸戸-{h-~戸 事「口EZご 3 保官 4 販売 え 陶 工D 荷 加殴出 455 L:YI\IH~-戸{ 巨重コ -・I''-j.::w]= t::;~j,j.温.....罰"'~姐- 1 荷畳 2 器官 3 ピッキング 店舗 一…一一 P&G の松田実 ディレヲヲ 店鍋(棚)効率化システム 1 店舗ベスのユニット配送 2 多昂極少量多頻度配送 1 1 小品権大量定期配送 2 愚大容盟トラッヲによる ユニット(J(レツト)配送 メ力工場 規模苅率化システム から取引が始まった。
その後、雑貨分野でも物流業務 の二郎を任せ、九二年にポテトチァプ「プリングルズ」 の日本での直販にp&G が乗り出したときには金物故 を山九に委ねた。
山九は新日本製織の仕事を長く手掛けてきた大手 物流業者だ。
港湾巡送や工場施設のメンテナンスや 補修など独特の鎖械を得意分野としており、鉄鋼や化 学口聞など素材に強い。
p&G との制事では、山九は 多くの新しい業務を経験してきた。
任せられた仕事を 着実にこなすことで徐々に信頼を獲得していった。
その山九は段近、経営の三本柱として「3PM( サ ードパーティ・メンテナンスH第三者として製造設備 の保全や補修を請け負弓事業)」、「3PLH 「中国で の物流事業」を掲げている。
一時期、経営危機説さ えささやかれた同社にとって、従来からの強みの「3 PM 」に加えて、3PL や中国事業を強化することが 最近の重要な経営テ17 になっている。
実際、かなり早い時期に進出した中国事業では、日 本通速や日新とともにH御三家u とも呼ばれている。
最近でこそ他社の攻勢の陰に隠れがちだが、実力派の 一社であることは間違いない。
過去にはあまり聞こえ てこなかった3PL についても、二OO 二年一O 月に 専門部署「3PL 事業持進室」を立ち上げ、攻めの 姿勢を鮮明にしている。
山九の3PL 事業推進室で事業を束ねる古口問均3 PL 事業統指部長は、「当初の場合、お客機と包括的 な契約を交わしているとか、物流管理まで請け負って いるなど、いくつかの条例を満たしている案件を3P L事業としている。
二OO 三年三月期のこの前ず業の 売上笑紋はこ凹O 億円。
今年度はこれを三二O 億円 まで仲ばす計画だ」という。
それまでの山九には化粧品物流の経験がほとんどな 19 u昏GI-BIZ DECEMBER2003 かった。
メーカーに近い一次物流を手胤明けることが多 かったため、流通分野の経験も浅い。
にもかかわらず P&G がパートナーとして山九を選んだのは、過去の 取引災総と、前仰向したコスト而への評価がaMかったか らだ。
「他相が新規で投資する必裂があったのに対し、 彼らは「既存施設を使えるため設備投資は不要』とア ピールしてきた。
結採的にこれが彼らの強みになった」 (P&G の絞削ディレクター) 山九宇選ぶことに対して松削ディレクターが周聞の 意見を求めると、物流のプロはほぼ全貝が反対した。
この分野でまったく経験のない山九に、化粧品事業の 命述を左右しかねない物流拠点の迎営を任せるのは無 謀というわけだ。
それでも必問ディレクターは、ロジ ステイタスの武任者として恥終決断を下した。
「大きな変更は必ずリスクをともなう。
だが最後は 長期的に一帯いいデザインを選ばざるを得ない。
そこ に歪る道のりが平却でないことを理由に判断を変えて しまうと、段初の目標を述成できなくなる。
もちろん 私としても物流のプロの方々が全員、反対したくらい だから相当の不安があった。
最終的には私個人がな志 決定した」 スタート時の混乱を半年で収拾 笑際、二OO 二年一月にセンターが綜働してから 約半年間は、山九の現場はかなり混乱した。
業者選 定に災を州唱えた人たちは、「それみたことか」と口を 備えた。
松問ディレクター自身も、「結川端的にミスジ ヤアジの隔はあったし、私の判断も甘すぎた」と率直 に当時を振り返る。
今問の取り組みでは、マックスファクターの工場か ら凶00 メートルという主近地に物流センターを構え て、擬似的に工場と物流センターを一元化した。
ある パラピッキングの自動化縫器 (フロ型) 自動ピッキングした製品をパケ ットに役入する 金パケットの動告をric タグJ で制御している 自動化でき広い製品はデジヲル ピッキングで処理 な味では、一・刀所だけある工肌明から、全国の顧客に製 品を直送という究艇のサプライチェーンを具体化する という野心的な試みでもあった。
それだけに、これを尖現するためには、北海巡や九 州に塑日配送するための工夫が欠かせなかった。
しか も当初は「笠日中配送」だったのが、スタート後に顧 客の嬰望が相次ぎ「狸日午前中配送」へと条件が厳 しくなるという変更もあった。
山九としては万全の体 制を組んでいたつもりだったが、災際には間に合わな いケl スが山てきてしまった。
例えば、正午までの受注分を、翌朝九時までに札 脱に肌ける容先がある。
当然、航空便を使うのだが、 仮に飛行機が遮れでも顧客には言い訳できない。
そう した場合のパァク7y プをどうするのか、配送業者の 休日の扱いをどうするかなど、やってみて初めて分か った話が数多くあった。
これが初期には現場の混乱に つながった。
それでもスタートから半年して業務に桝削れてくると、 従来の体制で顧客に提供していたサービスレベルをク リアし、一応は合絡点をもらえるまでになった。
その 後は徐々に生産性を高め、現状ではP&G に対して 明らかな武献を来たすまでになっている。
「化粧品事業の在郎は三割近く減った。
しかも在 郎を一カ所にまとめたことで、欠口川市中も従来の一O 分 の一になった。
ここには物流センターを一カ所にした 効栄だけではなく、生産ラインにセル方式を滋入した ことなどの効川市も含まれているが、順測に仰びている 利益の半分くらいはサプライチェーンの改普による成 川市だ」(p&G の松問ディレクター) p&G は化粧品事業の業績を公開していない。
し かし、今回のサプライチェーン改革で手にした利益は、 「何百億円かけて新しいブランドを二つ、一二つ出すの DECEMBER20<のLOG 卜BIZ 20 ~日本の3PL 成功慨に引・J 吋1.'i1lJ法 1111 r炉除he に匹敵する。
しかも、常に投資を続けなければならな いブランドと迫って、サプライチェーンの改善は永続 的な利持改普につながる」と松田ディレクター。
この ことも山九への依頼につながっている。
時聞をn買うuために敢えて自動化 今回の楽刊で山九が3PLパートナーとして向く自 制されているのは、低コストで業務を辺川しているか らだけではない。
山九自身の判断が、p&Gのサプラ イチェーンの改誌に寄与したことが大きかった。
マァ クスファクターの物流センターの中には、一般的な物 流現場では滅多にお目にかかれない特殊なマテハンが 緩んでいる。
これらの自動化機協を自らのリスクで録 用した山九の判断が成功を陰で支えている。
災は3PL業者の選定がニ0004六月に済んだ 後、この取り組みはP&G側の都合で一年以上にわ たって停滞していた。
このとき契約締結時の業務設討 を見直す機会に忠まれた山九は、改めてレイアウトや 導入予定だったマテハンについて検討宇品単ねた。
その 過程でデジタルピyキングとカlトピyキングの組み 合わせという当初の計画を、〈上前的な自動化へと方 針転換した。
もちろんP&Gにも相談はしたが、抜一本 的には征されている業務でありHらのリスクで決めた 稲だった。
「当初、予定していた臼組みでも、人海戦術的にや れば対応できたかもしれない。
だが決して広いとはい えない施設でこれをやれば、現場は混乱する。
全国へ の湖北日配送となると作業スピードと桁皮は絶対条件だ。
上手く自動化すれば人判資も抑えられる。
こうしたこ とを念頭に、改めてマテハンコンペを実施して伊山崎忠 テクス7yクをパートナーに選んだ」と山九の古闘部 長は説明する。
5F の保管スペースからピ ッキングエリアに必要な製 品在補充する 棚パレット折りコンの 告バーコードを読んで製品 移動を管理 山九3PL 事業統括部の 吉田均部長 山九にとって伊藤忠テクスマックとの取引は初めて だった。
同村は繊維機械に狐い専門附相だが、六年 ほど前から物流機器に本腰を入れ、オリジナルの'M 動 ピッキング機を製造販売している。
すでに関内イ数への導入尖績をは刊ち、医薬品や化粧品など向付他尚口川や、コンビニチェーンの閃辿施設など向度なペレーションを必裂とする分野で採川されてきた。
引一的な製品のパラピッキングでは圧倒的な桁皮とードを持つマテハンだ。
山九は二OO 一年にこの伊藤忠テクスマァクと契 約を交わすと、出世山市な述抽出をとりながら半けてP&Gの案刊を詰めた。
そして依終的には、既存 拠点の改装と自動化機協の導入だけで三低円近金を投じた。
このときの山九の判断が、後に瑚耳目のリlドタイムをさらに短縮せよと顧客から求められ たときに活きることになる。
ただ評価は向くとも、山九とP&Gのこの事業の契 約期間は一年と緩めて一知い。
もちろん山九として年以内に解約する場合は、一年目は解約金いくら、二 年目はいくらと契約条例に明示している。
それでも契約そのものを一年叩依で見直すことに変わりはな日本食業の3PL家例としては典例なほど厳しい条 件だ。
そこには契約相手を信頼して互いにリスクる姿勢はあっても、日本的な馴れ合いはない。
p&Gのような荷主と付主』合うことは、山九にとて願つでもない機会といえる。
実はP&Gの日本法人 が九九年一O月にv琳入して話題を呼んだ新収引制度 も、大一光に徽たわっていたコンセプトは前述しプDC」椛惣だった。
こうした段先端のロジステイタ スに緩する機会は望んで得られるものではない。
こ千松一過のチャンスを活かせるかどうかで、山九の3 PL事業の将来は大きく変わってきそうだ。
DECEMBER2003 臼 21 LOGI-BIZ

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