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APRIL 2005 60
の時点で、すでに丸紅はダイエーと包括提携を
結ぶ関係にあった。 しかも丸紅は、ダイエー株
の約四%、マルエツ株の約二九%を握る大株主
で、ダイエーグループとは七〇〇億円の取引が
ある。 誰の目にも明らかなダイエー問題の当事
者である。
しかし、仮に、ダイエーが複数の金融機関か
ら計四〇〇〇億円の債権放棄を受けた三年前に
会社更生法の手続きをとっていたとしたら、丸
紅にそれを吸収できる体力はなかった。 この当
時は丸紅そのものが苦しく、ダイエー再建に主
導権を発揮できる状況ではなかった。 その丸紅
が、時を経てダイエー再建のスポンサーになる。
結果だけを見れば、これまでのダイエーのリス
疑問だらけのスポンサー決定
産業再生機構が選定を進めていたダイエーの
スポンサー企業が丸紅に決まった。 そしてダイ
エーは今後、スーパーマーケット事業を柱にす
るという。
多くの企業を巻き込み、膨大な時間を費やし
た挙げ句に出された、あまりにも常識的な結論
に唖然とさせられてしまった。 一次入札や二次
入札などという煩雑な手続きが、はたして本当
に必要だったのかという疑問すらわいた。 すべ
てはダイエーが会社更生法による手続きを避け
たことに端を発している。
ダイエーの経営破綻が明らかになった六年前
トラや債権放棄は、丸紅のために時間稼ぎをしてきたかのような格好になってしまった。
さらに素朴な疑問が残る。 はたして丸紅に、
問題を抱えたダイエーの再建スポンサーが務ま
るだけの体力と知恵はあるのだろうか。 遮二無
二に機構案に擦り寄った丸紅の行動をみている
と、そう問い掛けざるを得ない。
ダイエーのスポンサー選びを巡る丸紅のスタ
ンスには、まるで一貫性がなかった。 同社は一
次入札では投資ファンドの米リップルウッドが
基幹会社となっていた連合に名を連ねていた。
それが二次入札の段階で一転、自らが基幹会社
となって投資ファンドのアドバンテッジパート
ーナーズと連合を組んだ。
プリモ・リサーチ・ジャパン
鈴木孝之 代表
第7回
いよいよ大再編時代の幕開け多くの疑問点を残しながら、ダイエー再建のスポンサー選びが終わった。
再建策の柱にスーパーマーケット事業を据えることも決まり、マルエツの
掲げる「首都圏一兆円構想」が現実味を帯びてきた。 関東と関西の二大消
費地を震源とするスーパーマーケットの大再編劇が始まる。
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つまり、当事者でありながら、最初から基幹
会社として入札に参加していたわけではない。
本当にダイエーに強い関心を持っているのであ
れば、最初から自ら企業連合を組むのが筋だろ
う。 それとも最初は本気ではなかったのが、途
中から本気になったとでもいうのだろうか。 い
ずれにしても、企業再建という腰を据えて取り
組まなければならない案件を前にして、丸紅の
行動はあまりに軽すぎる。
このタイミングで、スーパーマーケットを今
後の主力事業に据えた理由も解せない。 西友の
場合も、ダイエーの場合も、総合量販店業態の
経営の難しさから、スーパーマーケットへの注
力は、いの一番に
進むべき方向とし
て挙げられていた。
しかし、できる限
り多くの総合量販
店を残し、雇用を
維持したいという
狙いから、この案
は脇に置かれた。
そして既存店舗の
活用力と雇用力
の二つの要因を満
たすスポンサー企
業を探そうとして
きた。 にもかかわ
らず、最終的にス
ーパーマーケット
に落ち着くというのは一体どういうことなのか。
丸紅の関心は、あくまでもダイエーのスーパ
ーマーケット事業と食品部門にある。 総合量販
店をどうするかについて妙案を持ち合わせているわけではない。 こんなことで、雇用をできる
だけ確保するというダイエー再建の難問に対処
できるのだろうか。 何度でも繰り返すが、小売
業ダイエーの最大の問題は総合量販店をどうす
るかにある。 この点をどうするかが、丸紅から
は伝わってこない。
再生機構の案では、非食品部門には外部のテ
ナントを導入するという。 しかし、そんなこと
はずっと以前から考えられていたことで、どん
どん進めればよかっただけの話だ。
今回、ダイエーのスポンサー選びの過程で何
度となく出てきた表現がある。 「あそこの会社
は再生機構に嫌われている」とか「ダイエーが
嫌っている」といった類の言葉である。 経営が
破綻して計一兆円にも上る債権放棄を受けた会
社が、好き嫌いを言える立場だろうか。
再生機構の姿勢自体に、ビジネス性や中立性
を欠いた恣意的な面があった。 このような接し
方がダイエーを甘やかすことにつながったと思
われる。 これまでダイエーは通常の破綻企業に
は考えられないような手厚い扱いを受けてきて
おり、過保護と言わざるを得ない。 それが現在、
ダイエー社内の危機意識の欠如として表れてい
る。
それにしても、入札に参加した多くの企業は、
再生機構に引き回されたと苦々しく思っている
に違いない。 今は冷ややかに、お手並み拝見と
いった心境だろう。
金融庁案件から経産省案件へ
超法規的な過保護によって、ダイエーの再建
はビジネスベースの話ではなくなり、ある種の
国家プロジェクトとなった。 スポンサー企業が
丸紅に決まったことで、正確には経済産業省プ
ロジェクト的な性格を強く持つに至った。 ビジ
ネスベースに乗っていない話だけに、今後の再
建が順調に行くかどうかも疑問だ。
ダイエー問題の処理は、再生機構が関わるこ
とが決まった時点から、それまで以上に政治臭
の強い案件になった。 さらに、二次入札の結果
として残ったイオン、丸紅、キアコンの三つの
企業連合の性格が全く異質だったことで、最終
的なスポンサー企業の予想はまったくつかなく
なってしまった。 いま思えば、実は再生機構には最初から狙っていた結論があって、常識的に
見て理解しやすいイオンの存在は、それをカモ
フラージュする当て馬に過ぎなかったのではな
いかという疑念すらわく。
ダイエー問題の処理は、金融庁と経済産業省
の綱引き案件という性格が色濃い。 当初、この
問題は、銀行の不良債権処理に関連してスター
トした。 ダイエーの主力行である、みずほ、U
FJ、三井住友と、金融庁の関係から問題処理
が始まった。 従って最初は、ダイエーの有利子
負債残高の圧縮を巡る金融案件だった。
そこでの当事者はあくまでも銀行であり、経
産業再生機構による入札の最終結果
丸紅
イオン
キアコン
イトーヨーカ堂
ウォルマート
リップルウッド
カーギル
アドバンテッジパートナーズ
京セラ、三菱商事
伊藤忠商事、オリックス
三井物産、三井不動産、ファーストリテイリング
住友商事、サーベラス、ゴールドマンサックス
当 選
二次入札で
落選
一次入札で
落選
中核企業 連携企業
三菱地所、コールバック・クラビス・ロバーツ、
カルチャー・コンビニエンス・クラブ
シージーシジャパン、アークス、ケネディ・ウィ
ルソン・ジャパン
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脆弱だ。 ダイエー処理が丸紅の手に負えないよ
うな事態になれば、当然、経産省の支援がある
だろう。 さらに、そのずっと先の話として、丸紅と伊藤忠との合併を経産省が視野に入れてい
たとしてもおかしくはない。
いずれにせよ、丸紅がダイエーのスポンサー
企業に選ばれたことによって、大手総合商社と
大手小売りとのグループ化はひとまず完了した。
改めて整理すると、三菱商事&イオン、三井物
産&イトーヨーカ堂、住友商事&西友/ウォル
マート、そして丸紅&ダイエーとなる。
ここに名前の挙がらなかった伊藤忠は、コン
ビニエンスストアのファミリーマートを持って
いるが、大手小売りとの関係は希薄だ。 ミレニ
アムリテイリング(西武百貨店・そごう)にも
出資してはいるものの、ミレニアムは野村證券
グループの野村プリンシプルのコントロール下
にあり、伊藤忠は支配的な立場にない。 伊藤忠
食品、日本アクセス、西野商事といった有力卸
を持っている商社だけに、大手小売りに直接関
わっていないのが目立つ。
また、伊藤忠とは対照的に、丸紅はライバル
に匹敵する有力卸を持っていない。 三菱商事の
菱食、三井物産の三井食品、伊藤忠の伊藤忠
食品などに対して、丸紅の卸は山星屋とナック
スナカムラ。 他の総合商社と比べて力不足であ
ることは否めない。 ダイエー支援が決まった今、
丸紅が川中の卸をどうしていくのかが改めて注
目される。 一部の報道によると、系列にこだわ
らずに商品調達を行う姿勢を見せているが、実
産省の出る幕はなかった。 ところが再生機構に
支援を要請したのを境に、ダイエーは金融庁か
ら経産省の手に移った。 そして最終段階の企業
スポンサーを決める段階になって、決定的に経
産省案件に変わった。
ダイエー問題に関して経産省は、なりふり構
わずという印象を受けるほど積極的に関与しよ
うとしてきた。 近年の経産省の地盤沈下を食い
止め、存在感をアピールしようとする姿勢があ
りありと見えた。 この問題の処理を復権の足場
にしようとしているのだろうと勘ぐりたくなる
ほど、スポンサー選びからは経産省の強い意思
を感じた。
今回の一件で、丸紅は経産省に大きな借りを
作った。 ある意味では経産省のコントロール下
に入ったとすらいえる。 先に述べた、丸紅にダ
イエーを支援する体力とノウハウがあるのかと
いう設問に対する答えは、経産省がついている
から大丈夫だろうということでしかない。
丸紅には、ダイエーとマルエツを足がかりに
しながら、他の総合商社に伍して本格的に流通
の川下戦略を展開したいという狙いがある。 し
かし、現在の丸紅の喜びは、同社に対する経産
省の影響力の増大と引き換えにもたらされたこ
とを忘れてはならない。 丸紅と経産省の今後の
関係については、経産省から丸紅への天下り人
事を注視する必要があろう。
流通のグループ化が一段落
丸紅の経営は、大手総合商社のなかでは最も
際にどのような選択をするか見物だ。
今後は、総合商社によるスーパーマーケット
の囲い込みや、関係強化を図る動きも活発にな
総合商社の流通への関わり
三菱商事
三井物産
伊藤忠商事
丸 紅
住友商事
戦 略 コンビニエンス
ストア 卸 日本進出外資
総合量販店
スーパーマーケット
百貨店
首都圏
スーパーマーケット
1兆円構想
首都圏
スーパーマーケット
2兆円構想
ローソン(30.6%)、
am/pm 菱食、サンエス
三井食品
伊藤忠食品、
日本アクセス、
西野商事
ウォルマート
ファミリーマート
(30.7%)
ローソン(5.7%)
(イオングループと友好関係)
ライフコーポレーション
(イトーヨーカ堂グループと包
括提携)
山星屋、
ナックスナカムラ
メトロ・キャッシュ・
アンド・キャリー
(20%)
サミット、マミーマート
(20.0%)、西友(9.3%)
(ダイエーと包括提携)ダイエー
(3.9%)、マルエツ(28.8%)、
東武ストア(12.5%)、すえひろ
ミレニアムリテイリング、
シェルガーデン
63 APRIL 2005
るはずだ。 本来の総合商社のビジネスを考えれ
ば、特定の小売業に肩入れせず、幅広く付き合
っていく方が懸命だ。 しかし、ダイエー問題を
巡る動きの中で、グループ間の企業の色分けが
鮮明になってしまった。 その結果、敵か味方か
という色分けがなされ、グループを外れたビジ
ネスはやりにくくなっている。
こうしたことから、今後は水平的な連携より
も、垂直的な関係強化へと向かう動き方が強ま
ると思われる。 言い換えれば、総合商社は、特
定の大手小売業との関係強化を深めていく一方
で、商社本来の幅広いビジネスも続けるという
矛盾した行動を迫れられることになる。
株価はイオンの落選を好感
ところで、二次入札で落選したイオンの反応
はどうだろうか。 不思議に聞こえるかもしれな
いが、スポンサーに選ばれなくてよかった、ホ
ッとしたという雰囲気が社内には漂っている。
ちょうどヨーカ堂が落選したときと同じだ。 実
は丸紅に内定する直前まで、イオンが落ちるように力を貸してくれ、とマスコミ関係者に迫る
複数のイオン幹部の姿が目撃されたという。
つまり、イオンもヨーカ堂と同様、表面的な
動きと本音は別のところにあったということな
のだろう。 長期的に見ればダイエーを傘下に収
めるのはプラスかもしれないが、短期的にはリ
スクが大きい。 しかも二次入札の選考過程は、
イオンが二〇〇五年二月期の単体営業利益が二
九・二%減の大幅減益になると発表した直後だ
った。 イオン社内の危機感は高まっていたもの
と思われる。
このときイオンが発表した減益幅は、同社に
先立って業績を下方修正したヨーカ堂の七一%
減と比べるとマイナス幅こそ小さかったが、大
幅減益には違いない。 ヨーカ堂もイオンも大手
総合量販店の業績は厳しい状況にある。 両社と
も我が身に降りかかる火の粉を払うのに必死で、
そんな時にダイエーに関わっている余裕などな
いというのが本音だろう。
当初から分かっていたことだが、そもそも再
生機構のスキームに、ヨーカ堂やイオンのよう
な上場会社が関わるリスクは大きい。 これにつ
いては丸紅も同じ立場だ。
会社更生法の手続きによる再建の場合は、ス
ポンサー企業から管財人を出しても、スポンサ
ー企業の決算にはまったく影響しない。 業績に
影響するのは、債権の弁済が完了し、更生手続
きが完了してからだ。 だからこそ旧ヤオハンや
マイカルの例で示された通り、スポンサー企業
の連結決算に大きく貢献した。
ところがダイエーは会社更生法による再建で
はないため、コストの引き下げが不十分で、赤
字店舗の閉鎖数も足りない。 今後、ダイエーが
継続して利益を出せるかどうかは不透明だ。 つ
まりダイエーへの出資比率いかんでは、スポン
サー企業の連結決算へのマイナス要因になりか
ねない。 これが株主にとって好ましくないこと
は言うまでもない。
このような株主の立場を反映するかのように、
二〇〇五年二月期業績予想の大幅な下方修正
と、ダイエーのスポンサー選びからの落選が重
なったにもかかわらず、二月末から三月初旬に
かけてイオンの株価は上昇した。
昨年の春以降、イオンの株価は右肩下がりで推移してきた。 業績不振とダイエーのスポンサ
ー候補に名乗りを上げたことの二つが懸念材料
とみられていたためだ。 しかし、ダイエー問題
の重しがとれた結果、株価は反発した。
イオンの立場から考えると、結果としてダイ
エーは最も心配していたウォルマートの手に渡
らず、ヨーカ堂にもいかなかった。 丸紅に行っ
たことで、ある意味では目的を達成したとすら
言えるかもしれない。
みずほが後退し主力二行体制へ
銀行業界が再編される以前、ダイエーの主力
企業名 展開エリア (億円)
ライフコーポレーション 関西・関東 3,800
平和堂 関西 3,750
イズミヤ 〃 3,730
マルエツ 関東 3,550
オークワ 関西 2,300
東急ストア 関東 2,680
いなげや 〃 2,270
カスミ 〃 2,110
ヤオコー 〃 1,675
オリンピック 〃 1,330
エコス 〃 1,083
関西スーパーマーケット 関西 1,015
相鉄ローゼン 関東 1,008
東武ストア 〃 805
ベルク 〃 762
マミーマート 〃 701
オオゼキ 〃 542
マルヤ 〃 490
図1 関東・関西の上場スーパーマーケット
APRIL 2005 64
五行並列という特異な対銀行政策をとってきた。
これらの主力行は、銀行業界の再編によって、
みずほ、三井住友、UFJの三行に変わった。 そして、ダイエーの支援先が丸紅に決まったこ
とに伴い、みずほはダイエーに対する債権二三
〇〇億円を再生機構に売却する。 金融機関のダ
イエーに対する債権の総額一兆二〇五億円のう
ち、再生機構は計三九四三億円を買い取る。
みずほを含めた主力三行は合計で四〇五〇億
円の債権放棄を行うが、債権の買い取りを再生
機構に申し入れたのは主力行ではみずほだけだ
った。 これを見る限り、ダイエーを支える銀行
の中から、みずほが後退し、三井住友とUFJ
の二行体制に変わる。 他行と比べて流通分野で
の存在が目立つみずほは、ダイエー処理に合わ
せてその辺を調整するということなのだろう。
首都圏での大競争が始まる
スーパーマーケットを柱にするダイエー再建
の方向性が明確になったことで、スーパーマー
ケット業界、とくに首都圏では一気に業界再編
に突入することになる。 これまでのリストラの
結果、ダイエーの店舗展開は首都圏と関西地区
に集中している。 そのうえ更にダイエーは、今
後五年間で首都圏と近畿圏に合計一〇〇店の
スーパーマーケットを出店する。
ダイエーグループのこの分野の既存戦力とし
ては、マルエツと東武ストアがある。 二社の売
上高合計は約四四〇〇億円。 すでにマルエツは
「首都圏一兆円構想」を持っているが、ダイエ
行は第一勧銀、三井銀行、住友銀行、三和銀
行、東海銀行の五行で、融資残高は各行とも同
額だった。 一般的にメーンバンクは一社が普通
だ。 ところがダイエーの場合は、これを持たず
ーの新規出店がこれと呼応しながら進むのは間
違いない。 最大の攻め所は首都圏だ。
とくに首都圏と近畿圏、そして中京圏の三大
都市での動きが活発になり、各地でスーパーマ
ーケットの再編が進むと思われる。 いよいよ小
売業の競争が大都市を舞台に新たな段階に移る
ことを明確に認識すべきだ。
スーパーマーケット業界には現在、ニチリュ
ウ、CGC、AJS、八社会、セルコチェーン、
全日食チェーンなどの共同仕入機構があって、
それぞれにグループを形成している。
各グループのうち会員会社が比較的大型なの
がニチリュウだ。 ニチリュウの会員企業は全国
に散らばっていて、他のグループに比べると首
都圏、近畿圏の会員企業が少ない。 これと対照
的に、他のグループは大都市圏に多数の会員企
業を抱えている。 いずれにしても、ダイエーの再生計画が本格化すれば影響を受けることは必
至だ。
スーパーマーケットに注力しようとしている
のは、何もダイエーだけではない。 今後、小売
業界全体のスーパーマーケットへの傾斜を一段
と強めるはずだ。 そして、この動きが、首都圏
と近畿圏を二大震源地とするスーパーマーケッ
ト業界の大再編に発展する。 イオンやヨーカ堂
の総合量販店事業の業績不振も、食品部門への
注力を促すことになる。
大都市における大手スーパーマーケット各社
の戦略目標としては、当面は売上高一兆円の実
現が共通課題となる。 すでにマルエツが掲げて
図2 スーパーマーケット業界の共同仕入機構
ニチリュウ 16社 2兆3000億円
平和堂、イズミ、ライフコーポレーション、オークワ、サンエー、近商ストア、ヤマザワ、サニーマート、さとう、キン
カ堂、グランドタマコシ、仁科百貨店、ニチェー、コープこうべ、コープさっぽろ、フレンドリー、両備ストア
CGC 221社 3兆4400億円
オリンピック、三和、アークス(ラルズ、福原、ふじ)、オギノ、スーパーマルヒロ、フレッセイ、原信、マミーマート、
マルヤ、ユニバース、ベルク、アルビス、やまか、丸和、ハローフーズ、ジョイス、北雄ラッキー、ウオロク、大和(鹿
児島)、三徳、伊徳、マルト、ツルヤ、リオンドールコーポレーション、ユアーズ、成城石井、カネスエ、サンプラザ、
ぎゅーとら、タカヤナギ、フレスタ、タイヨー(茨城)、西鉄ストア、ニシザワ、藤三、山形屋ストア、ヤオマサ、川口屋
スーパーチェーン、マルエー、スズキヤ、トップ、ヤオマサ、さえき、たまや、静鉄ストア、ベルセンター
AJSオール日本スーパーマーケット協会 68社 1兆5000億円
サミット、関西スーパーマーケット、とりせん、丸久、天満屋ストア、千葉薬品、トキハインダストリー、キョーエイ、
マルヨシセンター、ニッショー、スーパーアルプス、クイーンズ伊勢丹、オータニ、マツヤ、スビナ、中村ストア、紅屋
商事、松坂屋ストア、いちやまマート、藤越、ダイイチ、ナルス、マツモト
八社会 16社 1兆円
東急ストア、相鉄ローゼン、東武ストア、小田急商事、アップルランド、遠鉄ストア、札幌東急ストア、名鉄パレ、京成
ストア、京急ストア、京王ストア、新交ストア(新潟)、旭川電気軌道、エイチジーシー(札幌)、よこまち(八戸)、神奈
中ストア
セルコチェーン 85社 5200億円
全日食チェーン 1700店 2800億円
エコス、ひのや、与野フードセンター,ヤオヨシ,さえき、サンシャインチェーン、ユーアイストア、鍛治商店、三崎ストア、
ライフストアー、豊月、堀田屋、公正屋、ハナマサ、たからや、ホクセイスーパー、松菱商事、吉田商店、セルバ、岡島
65 APRIL 2005
いる通りである。 そのための再編の動きは、既
存の共同仕入機構の性質を変えるはずだ。 現状
から一歩踏み込んで、資本関係を伴った統合が
避けられまい。
さらに、一兆円を売り上げるスーパーマーケ
ットが誕生すれば、メーカーとの関係も新たな
段階に入ることになろう。 こうしてダイエー問
題の処理が、スーパーマーケット商材の流通構
造を変革する大きなエネルギーへと転化されて
いく。
首都圏と近畿圏のスーパーマーケットは、こ
れまで肥沃な市場に助けられて、本格的な淘汰
と再編の荒波を免れてきた。 しかし、ダイエー
再建をトリガーとする大都市攻略戦の本格化は、
既存業態の進化と、新業態の成長を促す。 大手
小売業の競争は新たな段階に突入した。
(すずき・たかゆき)東京外国語大学卒業。 一九六八年
西友入社。 店長、シカゴ駐在事務所長などを経て、八九
年バークレーズ証券に入社しアナリストに転身。 九〇年
メリルリンチ証券入社。 小売業界担当アナリストとして
日経アナリストランキングで総合部門第二位が二回、小
売部門第一位が三回と常に上位にランクインし、調査部
のファーストバイスプレデント、シニアアナリストを最
後に二〇〇三年に独立。 現在はプリモ・リサーチ・ジャ
パン代表。 著書に『イオングループの大変革』(日本実業
出版社)ほか。 週刊誌などでの執筆多数。
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