ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2002年1号
特集
世界水準のロジスティクス 国境を越える3PLサービス

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JANUARY 2002 18 日本HP&KWEの3PL 多国籍企業では近年、国際輸送キャリアとグローバ ル契約を結ぶことが一般的となっている。
それをさら に一歩踏み込む形で、米ヒューレット・パッカードは 二〇〇一年十一月の組織改革で、物流サービスの ?購買〞をグローバルに管理する専門の調達部門 ( Procurement )を設置した。
その狙いを、日本HPの饗場文惠物流センタ長は 「ここ数年で物流業者のサービス内容は大きく変わっ た。
かつては物流のモード別にサービスの提供者が別 れていた。
それが今では3PLとして複合サービス、 『ドア・ツー・ドア』のサービスを提供するようにな っている。
これによってロジスティクス・サービスの 調達の良し悪しが、コストに与えるインパクトは非常 に大きくなっている。
そこで当社は3PLへの発注を 全体管理しやすい組織体制に整備した」と説明する。
その先駆けとも言える取り組みが既に日本HPで実 施に移されている。
同社は二〇〇〇年八月、一般消 費者向けパソコンとプリンタのオペレーションを全て 近鉄エクスプレス(KWE)にアウトソーシングした。
HPの生産拠点のあるシンガポールで在庫を受け渡し た時点から、国内顧客に納品するまでの全ての業務を KWEが一手に引き受けるグローバル3PLだ。
日本HPの担当ビジネス事業部門では当初、国内 の配送機能を重視して大手宅配業者を中心に協力物 流業者を検討していた。
しかし、アドバイスを求めら れた物流センタは計画案を一蹴。
海外拠点を出荷す るところからのグローバル・ロジスティクスを管理す る視点がないと、トータルリードタイムやコストを最 適化できないと指摘した。
計画を再検討した事業部門はパートナー候補の対 象を改め、二〇〇〇年五月に日本通運、ヤマタネな ど、KWEを含む五社に対して提案依頼書を提出。
最 終的にKWEを選択し、同八月には運用に入った。
この3PLでは輸出入通関、輸送、保管、配送と いった物流業務だけでなく、受注処理もKWEのグル ープ会社、近鉄e ―サポート(KeS)が担当してい る。
量販店など顧客からの注文に対して、KeSが在 庫を引き当て、納期を回答する。
「一〇〇台の注文に 対して五〇台の在庫しかないといった場合の人間系の やりとりもKeSで対応している」とKWEで同案件 を担当した小林泰彦マルチ・ナショナル・コーポレー ション・センター(MNCセンター)所長は説明する。
これにより日本HPの担当ビジネス事業部門では日 常のオペレーションが全く不要になり、在庫政策や新 製品の準備、古い製品の廃棄などの管理業務に特化 できるようになった。
輸送キャリアはHPがグローバ ル契約を結んだ業者を使っているが、その管理もKW Eから報告を受けるだけで済むようになった。
国際輸送中の在庫に引き当て 3PLの導入に伴い、日本HPはサプライチェーン も組み替えている。
従来は量販店で販売される一般消 費者向け製品の注文を卸経由で受けていた。
納品も 卸に届けていた。
この体制を改め、量販店からの注文 をKeSで直接受け付け、納品も卸を経由しないで 直接配送する形にした。
配送が小口化することで支払い運賃自体は増加し た。
それでも、トータル物流コストは二〇%低減でき た。
しかも、「小口対応になったことからオーダー件 数は従来の四倍近くに膨らんでいる。
これを社内で処 理していたらコストはかなり膨らんでいたはず」と饗 場物流センタ長はいう。
国境を越える3PLサービス 欧米の物流市場では現在、3PLのグローバル化が最 大の焦点になっている。
各国の有力3PLは今後2003年 から2005年までの間に、3〜4のグループに収れんされる ことが予測される。
その結果、多国籍企業と多国籍3P Lによる1対1のパートナーシップが可能になる。
その影響 は当然、日本市場にも及ぶ。
第2 部 19 JANUARY 2002 従来、日本HPの受注センターが休みにしていた土 日の対応が可能になったこともあって、受注から納品 までのリードタイムは四八時間から一八時間に六二% 短縮された。
加えて国際輸送中の製品在庫に注文を 引き当てる「仮想在庫方式」を新たに導入したことで、 国内に在庫がない場合の納期まで正確に回答できるよ うになった。
この「仮想在庫方式」はKWEが今回のプロジェク トのために新たに開発したシステムで、輸送中在庫の トラッキング情報から、納品までに必要な残りのリー ドタイムを算出して納期を回答する仕組みになってい る。
KWEが国際輸送を請け負っている貨物であれば 全てに適用できる。
小林MNCセンター所長は「当社は現在、日本H Pが輸入する貨物の九五%の輸送を担当しているが、 残りの五%についても通関時点で引き当て可能となっ ている。
今回のプロジェクトで最も苦労したのが、こ うしたシステム構築だった。
しかし、システムを荷主 と完全にリンクしたことで、どんなニーズが新たに発 生しても柔軟に対応できるようになった」という。
実際、プロジェクトが安定稼働したのを確認した日 本HPは、二〇〇一年十二月には一般消費者向け製 品に加え、新たにネットサーバーやビジネスPC、レ ーザープリンタなど業務用製品の一部も、この仕組み に乗せるべくアウト・ソースした。
これに対してKW E側ではシステムに製品ラインを追加しただけで済ん だが、扱う物量は一気に膨らんだ。
差が付く国際物流 饗場物流センタ長は「同じ仕組みを使いたがる荷主 は当社以外にもいくらでもあるはず。
今後、KWEに はHPグループの海外法人なども含め、どんどん他社 にも仕組みを売り込んで欲しい。
それによって全体の 効率が上がったら、今度はサービス料金を下げてもら う。
そうなった時に初めて当社とKWEはWin ―W inの関係になれる」と考えている。
既にその期待は一部、現実のものとなっている。
と りわけ二〇〇〇年六月に設立されたばかりのKeSに とって、日本HPのプロジェクトは初仕事であり、か つ格好のモデルケースとなった。
オーダー管理と在庫 管理を一体化させた日本HPでの実績を他の荷主に ピーアールすることで、創業から一年余りで「電子部 品商社や機械メーカー、釣り具メーカーなど六社の契 約を受注できた。
他にも引き合いが多く、かなりの手 応えがある」(KeSの検見崎栄営業部長)という。
輸送機関とロジスティクス管理技術の進歩によって 今日、物理的な距離が、物流に必要なリードタイムと は乖離してきた。
このことがロジスティクスのデザイ ン自体にも大きな影響を与えている。
最終的に顧客に 納品する部分のリードタイムさえ競争力があれば、後は距離による制約なしにサプライチェーンを構築でき る環境が整ってきた。
そこではグローバルな3PLの 活用が一つのカギになる。
UPSロジスティクスの小林淳子日本支社長は「二 〇〇一年に入って、グローバル・ロジスティクスの一 元管理を求めるコンペが欧米で頻繁に開かれるように なっている」という。
同社の日本支社でも二〇〇二年 の上半期には日本をベースとしたグローバル3PLの 案件がいくつか運営段階に入る見込みだ。
運賃や国内オペレーションのコスト削減は各社とも 既に一定のレベルに達している。
今後、差が付くのは グローバル・ロジスティクスの分野だ。
グローバル・ ロジスティクスにはコスト削減の余地がまだ大きく残 されている。
日本HPの饗場文惠物流 センタ長 ●日本HPは消費者向け製品のオペレーションを3PLに全面委託した HP(海外) 日本HP HP(海外) 日本HP 3PL(KWE)の業務範囲 卸 卸 オーダー 納期回答 従 来 現 在 量販店 量販店 フォワーダー 配送業A 配送業B 受注センター 物流センター 物流センター 物流センター 受注センター 物流センター オーダー 納期回答 近鉄eサポート 国際輸送 国内配送(直送)

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