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数年内に国際網を完備
――DHLのこれまでのロジスティクス分野における
事業展開を説明してください。
当社のロジスティクス事業の活動は一九九二年に
「グローバル・アカウント・マネジメント・プログラ
ム」としてスタートしました。 当時は、いくつかの大
口得意先や大きなポテンシャルを持った企業など、二
八のカスタマーがその対象でした。 現在は七二の顧客
が対象となっています。 全て「フォーチュン500」
に入っている企業です。
――九二年という時期はEUの統合と関係があります
か。
フォーチュン500企業や日本の多国籍企業など
はEUが統合されたこと、また北米のNAFTAによ
って、貿易障壁が低くなったことに気が付きました。
他にもいくつかの新しいイニシアチブ、例えば中国が
WTOに加入したことなどにより、我々の顧客である
企業にとってグローバルにビジネスをすることが、よ
り容易になってきたわけです。 これに伴い、一つのベ
ンダーがロジスティクスに関する全ての要求に応える
ことを求められるようになりました。 そうしたニーズ
を満たすために我々は積極的な投資を行い、努力を重
ねてきました。
――一社に集約と言われましたが、現状では協力物流
会社を完全に一社に集約する荷主はいません。
確かにあなたの言う通りです。 今日の段階では、ど
のような物流会社であっても顧客をグローバルレベル
で満足させることができると言い切るのは難しいと思
います。 当社を含めて全ての物流会社が、まだ本当の
意味でのグローバル化には対応できていない。 しかし、
当社の最大株主であるドイツポストは、当社を含めス
イスのダンザスや米国のAEIなどとのグループ化を
進め、ワールドワイドのネットワークを作ることに本
気になっています。
WTOへの新たな加入国の増加や貿易障壁がより
低くなるであろう二〇〇三年から二〇〇五年くらいに
かけて、グローバル・ロジスティクスの環境は大きく
変化します。 どの物流会社がそれに備えようとしてい
るのか、荷主企業はよく見極める必要があると思いま
す。 少なくとも我々はワールドワイドのネットワーク
を駆使してグローバルな顧客のニーズに一箇所のコン
タクトで応えられる位置に立つつもりです。
繰り返しますが、現在、顧客が求めているようなグ
ローバル規模でサービスを提供できる企業はありませ
ん。 それはドイツポストでも、UPS、FedEx、
TNTでも同じことです。 しかし、各社の投資状況を
見れば明白なことがあります。 ドイツポストと、その
傘下にあるDHLはライバルの遙か先を走っている。
競合との間に差をつけていると思います。
――最終的にドイツポスト・グループのブランドは一
つに統合されるのでしょうか。
ブランドはきちんと当社のオリジナルをキープしま
す。 必要なのは統一ブランドではなく、グローバルに
統合された最高のITプラットフォームです。
――ドイツポスト自身が日本に本格的な営業組織を持
っていないことを考えると、グループの日本市場にお
ける顧客窓口はDHLということになりますか。
いくつかのオプションが考えられます。 が、日本に
関しては何十年とビジネスを展開してきたDHLとダ
ンザスが強いのは事実です。
――DHLはロジスティクス部門を社内に置いていま
す。 分社化は検討しないのですか。
少なくとも私は、社内でそうした議論を聞いたこと
「現場の最前線は自ら運営する」
2000年9月、DHLは欧州最大の物流会社、ドイツポストワールド
ネットの傘下に入った。 ライバルの国際物流業者が宅配機能とロジ
スティクス機能の分離を進めているのとは対照的に、全機能をグル
ープ内に揃えるアセット型の事業展開を指向している。 日本市場で
も積極的な投資を継続して行い、自社配送網の拡充を急いでいる。
DHLジャパンスチュアート・ワイティングダイレクター
第4 部外資系物流業者の日本展開
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がありません。 ロジスティクスを提供するにはサプラ
イチェーン全般が完全にリンクされていなければなり
ません。 どのように在庫拠点やグローバル規模の輸送、
配送機能をリンクして利用するかが重要なのです。 こ
のうちの一つ欠けても効果的に機能しない。 したがっ
て、これらを切り離して運営することはできません。
もちろん当社も特定のシステム、ITシステムなど
に関しては専門知識を外部から導入します。 物質的な
サービスを提供する企業とも「協働」することは可能
です。 「カスタマー・リレーションシップ・マネジメ
ント」、すなわち、CRMが全てのリレーションシッ
プの中で最も重要なのです。
日本国内でも自社配送網
――日本市場での展開について伺います。 ドイツポス
トの資本が入る前に、DHLジャパンは大規模な投資
を伴う拡大計画を発表していました。 計画に修正はあ
るのでしょうか。
計画を発表した時点で、ドイツポストは既にDHL
のオーナーでした。 その後、持株比率を伸ばしただけ
です。 当社が日本で行った投資は、見方によって多少
の違いは出てきますが、過去二年間で一億二五〇〇
万〜一億五〇〇〇万USドルに上ります。 これは同
じ時期にDHLが行ってきた、他のどの国への投資額
をも上回っています。 それだけ当社は日本市場を重視
しているのです。
――それによって国内の自社配送網を拡充しているわ
けですが、その分だけ佐川急便など国内物流業者との
アライアンスは縮小されることになります。
今でも佐川は我々のよきパートナーです。 サービス
の品質もとても高い。 しかし、今日の荷主企業は、集
荷、倉庫管理、配送の全てを一社に集約したいという
ニーズを持っている。 商品に問題が見つかった場合に
はDHLにその商品を集荷し、修理の過程を経て、配
送するところまで責任を持つことを望んでいる。
我々は過去の経験から、カスタマー・オーナーシッ
プの文化はフロント部分で変化するということを学ん
でいます。 今日、我々のビジネスの中で最も重要な人
材は、日々の集荷や配達で直接、顧客と接するドライ
バーや、カスタマーサービスの電話のオペレーター、
セールスを行う人たちなのです。
そうした現場のスタッフまでDHLの文化が完全に
浸透していなければなりません。 組織が変化したら、
我々上層部はそうした変化を最も重要な人材にまで
落とし込めなければならない。 彼らは我々がなぜそう
しているのか理解する必要がありますし、その中での
自らの役割を知り、その役割がいかに重要なものであ
るかを理解しなければいけません。 しかし、相手がジ
ョイントベンチャーのパートナーであったり、アライ
アンスを組んでいるサービス・プロバイダーである場合には、この考え方は当てはめられません。 そのため
に我々はオーナーシップが必要だと判断したのです。
――このところ日本では大手物流業者の経営破綻や、
売却話が頻繁に話題に上ります。 そうした企業を買収
するという選択肢は検討されていますか。
当社はこれまでに日本市場に莫大な投資をしてきま
した。 そしてそれらの多くが現在、利益を回収できる
段階に入っています。 しかも当初の計画よりも二年早
いペースで利益回収が進んでいる。 もちろん市場のト
レンド、世界経済、また顧客の要求、そして消費者ニ
ーズは常に変化する。 場合によっては、今以上の投資
が必要となることもあるでしょう。 この先、予測され
る投資を否定はしませんが、今現在は当初の計画通り
に進めています。
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