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MARCH 2002 60
時価総額は過小評価
「総合物流企業から流通情報企業へ」
というキャッチフレーズを掲げて、セ
ンコーはこの数年間、懸命に事業改
革を進めている。 コスト削減計画や有
利子負債削減計画に対して、まじめ
にかつ地道に取り組んでおり、その達
成の確度や信頼性は同業他社に引け
を取らない。
ただし、海上運送事業や通運事業
を中心に、国内化学・住宅メーカー
(特に旭化成、積水化学、積水ハウス、
チッソグループの関係四社の売上依
存度は四〇%強)に依存してきた事
業ポートフォリオは、国内経済の停滞
によるダメージを真正面から受けるこ
とになる。 資本市場の期待する利益
水準には及んでいない、というのが同
社に対するマーケットの評価である。
現在の時価総額(約二五〇億円)
は過去の一〇〇〇億円近い水準に対
して、過小評価されている部分もあ
ると思われる。 だが、今中間期の減
収減益決算から少なくとも増収決算
に転じ、それを継続するまではこうし
た評価も受け入れざるを得ないだろ
う。 厳しい環境下であるが故に、さ
らなる改善施策の実現に加え、事業
ポートフォリオを抜本的に見直すよ
うな大胆な施策が必要である。 小池
洋社長の思い切った舵取りに注目し
ていきたい。
この数年間の経営はやるべきことを
やっているという印象を受ける。 具体
的には?住宅関連物流の減収をカバ
ーするための同事業内での新領域の
創出、?石油化学メーカー向けSC
Mの領域の拡大、?量販店、小売店
向け物流サービスといった第三の柱へ
の注力、?こうした事業を支える物
流システムの構築、?有利子負債の
削減など財務体質の改善――などに
取り組んでいる。 それぞれの進捗状況
について整理して見よう。
有利子負債四九五億円に
第一は、住宅関連物流の減収をカ
バーするための施策である。 品目別の
売上高を見ると、住宅関連及び建設
資材関連の売上高は全体の二〇%強
を占めている。 しかし、住宅着工件数
の減少に伴い、住宅メーカーの工場
発の住宅資材輸送が徐々に減少して
きた。
これに対して、同社は住宅メーカー
の調達物流領域の拡大を模索した。 す
なわち、旭化成や積水ハウスの住宅
輸送以外の、住宅資材メーカーの調
達輸送に関わる分野の深堀りを進め
てきたのである。 住宅全般が低調な中
では、減収分を全てカバーするには至
っていないが、調達分野が住宅関連
売上高のうち約一五%強を占めるま
で伸長しており、今後の拡大が期待
されている。
第二に石油化学メーカー向けSC
Mである。 石油化学業界では国内の
減産体制が強化され、リストラの一
貫として物流効率化策が進行してい
る。 こうした流れを受けて、センコー
では荷主の物流子会社に代わってS
第12回
センコー
これまでセンコーは化学、住宅関連メーカーへの依存度が高かっ
た。 しかし、ここ数年は流通業向けサービスを強化。 事業ポートフ
ォリオの見直しを進めている。 有利子負債の圧縮も順調で、財務
体質も改善されている。 ただし、事業の絞り込み余地が残っている
など課題も少なくない。
北見聡
野村証券金融研究所
運輸担当アナリスト
社だけでは解決できない事も多いかも
しれない。 こうした問題意識に対し、
合従連衡施策等を通じて?時間を買
う〞ような、大胆な施策が今、求め
られているのではないだろうか。 繰り
返しになるが、まじめな人柄の小池社
長の決断が、将来を占うのではないか
と感じており、その時期は目前にある
のではないだろうか。
61 MARCH 2002
CMの観点から効率的な物流オペレ
ーションを提供している。
第三は量販店、小売店向け物流サ
ービスの強化である。 この分野は五年
前と比較しても、売上高がほぼ倍増
している。 当初はホームセンター向け
のオペレーションが中心であったが、
その後ドラッグストアやイオングルー
プに代表されるGMS(総合スーパ
ー)まで顧客層が拡大し、新規取引
も増えている。 連結売上高の一〇%
程度を占めており、第三の収益の柱
として育成してきた成果がようやく出
てきた。 PDセンター(物流センタ
ー)の全国展開も進み、業務ノウハ
ウも培われ、収益貢献度も高まって
いる。 中期的には、この分野の貢献
がひとつのカギとなるだろう。
第四に、こうした物流展開を支え
るために構築してきた物流システム
「ベスト・パートナー・システム」で
ある。 主に量販・小売系、工場系、住
宅系、一般汎用系、国際物流・海運
系の五つのベーシックなシステムがあ
り、それぞれを顧客に合わせてカスタ
マイズしている。 全国五〇カ所を超え
る事業所への導入を進め、サプライチ
ェーン全体の効率化を実現するとと
もに、顧客の囲い込みを図っている。
第五に、財務体質の改善である。 九
八年度の連結有利子負債総額は七五
九億円だったが、これを二〇〇一年
九月期には四九五億円にまで圧縮し
ている。 特に昨年、一〇〇%子会社
のセンコーリースの全株式をオリック
スに譲渡したことに伴い、財務体質
と資本効率の改善が進んだ。
こうした財務面での判断と
その実績からは同社の危機
感や経営スピードが感じら
れ、好感が持てるところで
ある。
インフラ不足が
懸念材料
これだけの施策がありな
がら、同社が業績回復に苦戦しているのは何故か。 同
社が目指す「流通情報企
業」とは次のように定義さ
れている。
「?企業が消費者に最大
の価値を提供するために、
生産から消費まで、サプラ
イチェーン全般の効率化を
目指す〞企業であり、流通
全般に関する情報をリアル
タイムで収集・分析し、I
T(情報技術)を駆使した
システムと統合することで、最適なソ
リューションを実現する企業」
現在の姿と照らし合わせてみると、
二つ足りない点がある。 まず、目指し
ている企業の姿に対し、もう一段の事
業の絞り込み余地があるのではないか。
また、不足しているインフラがあるの
ではないか、という点である。
いずれにしても、中期的には当社一
(円)
出来高
センコーの過去5年間の株価推移
センコー
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