*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。
MARCH 2002 16
ドライバーの派遣業に進出
――グッドウィル・グループの連結業績は医療介護のコム
スンに足を引っ張られる形になっていますが、単体の決算
は堅調ですね。
本体自身は非常に伸びています。 今期に入っても増収
増益基調が続いています。 とくに年末は好調でした。 グル
ープにドライバーの派遣を専門に行うグッドウィル・エク
スプレスという会社がありますが、これが昨年九月に名古
屋と大阪に進出したことで全国五拠点体制になり、予想
以上に成功しています。
――物流分野の人材派遣の市場規模を、どの程度と弾い
ていますか。
きちんとした統計はないんですが、感触としては現状で
六〇〇億円から八〇〇億円くらいかと考えています。 九
九年の七月に当社が業界で初めて株式公開したことによ
ってサービスに対する認知度が急激に上がりました。 同時
に爆発的に市場が広がったという印象を持っています。 当
社が創業した九五年の市場規模はゼロに近かった。 それ
が毎年一〇〇億円ずつだんだん広がってきたというわけで
はなく、九九年の時点でクリティカル・マスを超えた感じ
です。 依頼の内容も、それまでは中小企業のお客様で一
日だけの短期的なオーダー、一名からというのが多かった。
それが今は大手企業の物流センターに毎日かなりの人数
を投入するというタイプの仕事になっている。
――先行きマーケット規模はどのくらいまで拡大すると予
測していますか。
色々な切り口があると思いますが、ホワイトカラーの人
材派遣市場の規模が現在、一兆四六一〇億円です。 これ
はホワイトカラー全体の賃金市場の四・一五%です。 こ
れに対してブルーカラーの賃金市場は実はホワイトカラー
よりも大きくて現在、四四兆八九五〇億円ある。 仮にそ
のうち四・一五%が潜在需要だと考えても一兆八六三〇
億円という数字が出てくる。
ちなみにアメリカでは労働人口に占める派遣労働者の
ウエイトがブルーカラーも含めて一〇%ぐらいと言われて
います。 その意味では日本市場はまだまだ黎明期にあると
言えると思います。
――肉体労働者の派遣というと、もともと「手配師」や
「口利き屋」の仕事であって、ダーティーなイメージがあ
ります。
我々も創業当初は恐る恐るというところがありました。
しかし実際には大きな問題はなかった。 むしろ行政の労働
規制をクリアすることのほうが大変でした。 その後、株式公開を果たしたことで、ようやく世間に正式に認知された
という面があります。 上場するための体裁を整えるのには
だいぶ苦労しました。 そもそも一九九九年の十二月に派
遣法が改正されるまでは、当社は派遣という言葉をうた
ってはいけなかった。 法律的にはあくまでも業務請負業で
なければならなかった。
――規制のきつい分野ですからね。 創業当時と現在とでは
ビジネスモデルに変化はありますか。
設立当時の登録者は学生のウエイトの方が高かった。 純
粋なフリーターではなく、学生アルバイトですね。 全体の
登録者数に占める割合で半分以上が学生でした。 今はフ
リーターの方が半分以上になって、完全に逆転していま
す。
仕事の内容も昔は引っ越しと建築の補助関係が多かっ
たので、土日の売り上げが多くて、月曜日から金曜日の
平日が少ないという傾向がありました。 今は企業物流が
労働力をJIT納品
――
グッドウィル・グループ
川上真一郎
社長
「日本市場はまだ黎明期。
潜在市場は数兆円に上る」
グッドウィル・グループ
川上真一郎 社長
ビジネスモデル
全国五七万人のフリーター、学生を組織化。
物流現場のスタッフを注文翌日に必要なだけ
供給する。 当初は引っ越しや建設現場などのス
ポット的な依頼が多かったが、物量の波動に対
応した労働力の調整が可能なことから、物流セ
ンター単位の定期的な依頼が増加した。 派遣
法の規制緩和を受けて二〇〇〇年にトラック
ドライバーの派遣事業にも進出した。
沿 革
創業者の折口雅博CEOは一九六一年東京
生まれ。 日商岩井時代にディスコ「ジュリアナ
東京」をプロデュース。 その後独立して九三年
には六本木に「ベルファーレ」を設立した。 グ
ッドウィル・グループの設立は九五年。 軽作業
の請負事業に着手した。 実質的には肉体労働
17 MARCH 2002
メインですから月曜日から金曜日の方が断然、ウエイトが
高い。 となると学生は平日の昼間は学校に行くので、そ
の面からもどうしてもフリーターが中心になる。
――成長していく上で何が最大の制約でしたか。
創業からしばらくは資金繰りでした。 顧客からの入金
は一カ月から二カ月先ですが、当社の支払いは仕事の当
日、現金で直接、手渡します。 そのため最低二カ月分の
回転資金がないとやっていけない。 それでも会社の規模を
大きくするには、どんどん仕事を取らなければならない。
結局、資金調達に制約があると、このビジネスでは成長
できない。
それには銀行から借り入れるだけではなく、直接金融の
手段を持たなければダメだと考えました。 実際、九五年の
二月に創業して、その年の六月には既に株式の公開を意
識していました。 そして、その年の七月には興銀インベス
トメントというベンチャーキャピタルからワラント債を発
行しました。 その後、ベンチャーキャピタルから全部で一
億円ぐらい入って、ようやくキャッシュポジションが変わ
りました。
――逆に営業面では苦労はなかった。
当初は苦労しなかったですね。 むしろオーダーを断るの
が仕事みたいなところがあった。 人を集めるのも、バブル
が崩壊した後だったので決定的な制約ではなかった。
大手派遣にはできない
――そうであれば資本力のある大手派遣会社がすぐに参入
しそうなものですが。
今だからこそ言えますけど、かつては大手が手を出すに
はグレーな市場であったことは確かです。 しかし、そうで
なくても、このビジネスは大手派遣会社じゃできませんよ。
もちろん大手派遣会社は体力はありますが、もともと仕事
の仕組みが全く違う。
ホワイトカラーの派遣では、オーダーが来てから実際に
人間を派遣するまで最低でも三、四日はもらいます。 それ
が我々は翌日です。 前日三時までに二〇〇人のオーダー
を頂いたら、それを全て埋めるまでその日は帰れない。 こ
れをマッチングする作業は、かなり体力を使う。 しかも一
般の正社員やホワイトカラーの派遣社員に比べて学生な
ど就業意欲が高いとは言えない人間をきちんと現場に向
かわせるわけですから、その管理は容易ではない。
――その部分はシステム化できないのですか。
もちろん予約を取って電話させるような仕組みですとか、
今であれば携帯電話にeメールを一斉発信してレスポン
スをとるという仕組みも作りましたが、最初の頃は手作業
に近かった。
――そうした課題をクリアした今は、何が最大の課題にな
っているのですか。
今は営業です。 また以前は頭数さえ揃えればいいという
時代もありましたが、サービスが認知されるようになって
からというもの顧客のニーズはどんどん高度化しています。
マッチングの質が問われるようになっています。 そのため
に登録者の管理システムを継続して改善しています。 登
録スタッフは勤怠や能力に合わせて五段階で評価してい
ます。 段階によって給料も違う。 こうした管理の仕組みが、
このビジネスのノウハウの一つです。
――現在、支店を全国に一九四カ所設置していますね。 そ
れぞれの支店というのは、どういう設計になっているので
すか。 支店長のほかにどのくらいの人数が配置されていて、
どういう役割を担っているのか。
場所にもよりますが、人数は最低で支店長を含め四人
くらいです。 それで一〇〇人くらいを管理する。 受注処理
と受注したあとスタッフに対して伝達する係。 日々登録
説明会をやっているので、その面接もしています。 毎日現
金を支払うため、その処理係も必要です。
――既に支店の全国展開は一段落しているのですか。
エリア的には網羅しましたが、IT関連に特化した事
業やドライバー派遣に特化した事業、セールスプロモーシ
ョンに特化した事業など、特定の事業についてはまだ関東
圏が中心で地域が限定されています。 今後はそれを地方
展開していきたいと考えています。
者の人材派遣に近い業態で、当時の派遣法で
はグレーゾーンとされた分野だった。
九九年に業界で初めて株式を公開。 さらに
一九九九年十二月に規制緩和によってブルー
カラーの人材派遣が正式に認められたことで、
市場規模が一気に広がった。 今年一月には業
界三位のラインナップを吸収合併した。 二〇〇
一年六月期の連結売上高は前年比五八%増の
約五一二億円。 経常利益は三八億円の赤字だ
った。 介護ビジネスを手がけるグループ会社、
コムスンが利益面で足を引っ張った。
ただし同期の単独売上高は二一〇億円で前
年比六九%増。 経常利益は二七億円で同九四%
増と急成長を維持している。 現在、業界最大
手。 なお九九年から創業メンバーの一人、川上
社長が代表取締役社長兼COOを務めている。
創業者の折口氏は現在、代表取締役会長兼C
EO。
http://www.gwg.co.jp/
特集その後の物流ベンチャー
1996 1997 1998 1999 2000 2001(年)
(単位:百万円)
売上高(左軸)
経常利益(右軸)
グッドウィル・グループ単体業績の推移
25,000
20,000
15,000
10,000
5,000
0
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
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