ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2002年3号
特集
その後の物流ベンチャー 最後の求貨求車システム――トラボックス

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

MARCH 2002 22 ――昨年末に「日経インターネットアワード二〇〇一」を 受賞されましたね。
反響はどうですか。
投資会社など金融関係の会社からの問い合わせはいく つかありました。
しかし、会員の運送会社は静かですね。
あまり日経新聞は読んでいないのかも知れません。
(笑) ――九九年十一月に、インターネットに求貨求車サイト 「Tr@Box」を立ち上げる前から、携帯電話を使った 求貨求車サービスを手掛けていたそうですね。
その五カ月ぐらい前からiモードを使った同報サービス をやっていました。
もともとは仲間内の運送業者が、互い に電話などで荷物に関する情報をやりとりしていたのがき っかけです。
まあ「水屋(帰り荷の仲介業者)」みたいな もので、自分達の儲けになる話を探して、それ以外の情報 は仲間に渡すというようなことをしていたんです。
――そうした場合、運賃はどうやって決めていたのです か。
僕らの場合は仲間内ですから、互いの信頼関係のなか でやっていました。
「これ二万円しか運賃もらってないん だけど、五〇〇円だけちょうだい」とか、「今回は運賃が 安いからそのまま任せるよ」という具合です。
そうすると、 この間は安い運賃で頼んだから、今回はうちが泣こうとか ね。
ある意味では一番やりやすい形でしたね。
それが高じて、いつの頃からか毎朝みんなに電話をして 情報を集めるようになってきました。
それならいっそのこ と、掲示板のようなものに情報を集めて、みんなが見られ るようにすれば手っ取り早い。
情報を共有できる仕組みを 作ろうということになった。
それがトラボックスを作った きっかけです。
――現在、会員たちはシステムをどういう形で使っている のですか。
東京〜大阪や東京〜名古屋など、中長距離の幹線輸送 の帰り荷がメーンですね。
エリア内のニーズも強いのです が、その部分は本当に今日、当日の仕事になりますので 現状では相当システムを使い慣れた人でないと難しい。
そ の点は今、改善しようとしています。
有料化に踏み切る ――昨年十一月にシステムの有料化に踏み切りましたね。
その後、年末の利用状況はどうですか。
昨年十二月は荷物の量が一日四〇〇件ぐらい。
繁忙期 なので通常の三倍ぐらいに膨らみました。
逆に正月明けの 一月は一気に一〇〇件を切る日もあるという感じです。
そ の分、今度は運送会社の新規登録が増える。
――今年の三月一日までトラボックスの利用料金は月三〇〇〇円の「固定制」と一件いくらの「従量制」に分かれ ているわけですが、そうした繁閑差は経営的には、どう影 響するのですか。
年末の繁忙期は従量制の収入が跳ね上がるんじゃない かと期待していたのですが、実際にはそうでもなかった。
運ぶほうも忙しいから、荷物を探す人も少ないんですね。
かえってヒマな時のほうが仕事が欲しくなるので従量制の 利用件数が通常の倍ぐらいに増える。
――サイトの有料化について当初は二〇〇〇年三月から会 費を月額一〇〇〇円とるという話でしたが、何度か仕切 り直しをしました。
そうですね。
まず最初は一年間延期して二〇〇一年三 月まで無料ということにしました。
そして、二〇〇一年の 三月になってと再び有料化を延期しました。
マッチング率 を高めるためには、やはりある程度、数を集める必要があ ります。
いくら信頼している仲間がいても、数が少なくて 最後の求貨求車システム ―― トラボックス 藤倉泰徳 社長 「けっこうしょっぱい ビジネスなんです」 トラボックス 藤倉泰徳社長 ビジネスモデル インターネット上の掲示板に荷主と運送業 者が情報を登録。
安く運びたい荷物と、空いて いるトラック車両のマッチングを行う。
主な収 入源は、? 参加運送業者が詳細情報を利用する 会費、? バナー広告掲載料、? 決済手数料、 ? ASP事業、? 中古トラック販売の仲介手 数料。
沿 革 九九年十一月、東京都足立区の運送業の二 代目経営者二人が手弁当で求貨求車サイト「T r@Box」を立ち上げた。
中小物流業者の コミュニティの場として人気を集め、毎月ほぼ 一〇〇社ずつ会員を増やしてきた。
二〇〇〇 年三月に株式会社化。
同年一〇月には約一万 社の会員を抱える中小製造業者のポータルサイ 23 MARCH 2002 は話にならない。
マッチング率も上がりません。
もうちょ っと無料で頑張ろうということになったんです。
――有料化に踏み切る前にアンケート調査をしていました ね。
やりました。
以前から「運賃の五%とか一〇%とか取 られちゃうとやってらんない」という意見は耳にしていま した。
しかし、アンケートをしてみると、月に五〇〇〇円 から一万円を支払うぐらいであれば問題ない。
それより、 こういうツールがなくなってしまうのが一番困ると言って くださる方が多かったので勇気付けられました。
これまではお金を貰っていなくても一生懸命やってきま したが、いつまでもそういうわけにはいかない。
いつまで も無料だと、安かろう悪かろうになりかねません。
皆さん が使いやすいようにと自信を持って提供しているサービス なのだから、自信をもってお金をいただいてもいいんじゃ ないか。
そう考えたんです。
荷物を出していただく方は、まだ当面無料にしましたけ どね。
それに対して情報を見る人を受益者と位置付けて、 その人から利用料をいただくことにしたわけです。
――昨年十一月に導入した約一八〇〇社ぐらいある運送 会社のうち、固定制の会員になったのは何社ぐらいになり ましたか。
現状でまだ二五〇社くらいです。
収支トントンが見えてきた ――従量制のほうは? 従量制で課金しているのは現状で約五〇〇社弱くらい です。
少ないケースで数百円、多いケースでは固定制の三 〇〇〇円を超えてしまう場合もある。
従量制の上限の六 〇〇〇円まではいきませんが、四千数百円という会社も ある。
こうした人は慌てて固定制に切り換えています。
それよりも見込みが狂ったのは事務処理にかかる手間 です。
料金の請求はNTTの自動同時引き落としサービ スを使っているため、面倒はないはずだったのですが、会 員の中にはNTTとの契約内容の制約で、このサービス が使えないところが少なからずあった。
その結果、予想し ていた以上に、こちらから請求書を発送するケースが増え てしまいました。
一八〇円とか二五〇円とかいった単位 の請求書を発送し、入金のチェックなどをする事務処置 が大量に発生してしまったんです。
これが、予想以上に大 変だった。
十一月から三カ月間やりましたが、とにかく細 かい事務処理で忙しい。
システムの更新などに手が回らな くなってきた。
――それで、三月からは固定制に一本化するわけですね。
そうです。
三月一日から固定制一本にさせていただき ます。
今まで通り、検索さえしなければお金はいただきま せんが、今後は検索ボタンを押すと、申し込み頂いていな い方には、自動的に申し込みして下さいというメッセージ が出るようになります。
――固定制の利用料の他に、どんな収入源があるのです か。
決済手数料というのがありますが、まだわずかです。
そ れにウチの取り分は実質一%弱ですから、取扱料が一億 円を超えても一〇〇万円も入ってこない。
あくまでも会員 へのサービスに過ぎません。
けっこうしょっぱいビジネス なんです。
ただ、こうした収入を合算すれば、三月には収 支トントンになるかなという感じはしています。
――二月一日から本格稼働した中古トラックの仲介も、新 たな収入源として期待できるのでは。
契約が決まれば手数料として、だいたい一〇%ぐらい をもらえることになっていますから、うまく回れば、それ なりの収益源にはなるはずです。
――社長は今も無給ですか。
そうです。
このビジネスは固定費のラインを超えれば後 は全部利益になる。
ただし、それまでが大変です。
だから 今はなるべくお金をかけないでいこうと考えています。
ち ょうど実家(の運送会社)のほうに部屋が空いているので、 事務所も引き払ってそっちへ移ろうと考えています。
賃貸 料もばかにならないですから。
無理をしないで今は継続す ることが大事な時期だと考えています。
ト「エヌシーネットワーク」と提携。
トラボックス自体には二月一九日現在、荷 主企業四一六社、運送業者一九四二社が会員 登録している。
インターネットを使った求貨求 車システムで最大の会員数を誇るサイトとして、 昨年一〇月には「日経インターネットアワード 二〇〇一」を受賞した。
スタートから二年間は、入会金・会費・手 数料を一切とらずに、会員数の拡大を最優先 してきた。
二〇〇一年十一月に一部機能の利 用を初めて有料化した。
中古車販売のジー・ トレーディングと提携し今年二月から中古トラ ックの買い取り仲介も開始した。
資本金は四九〇〇万円。
株主は創業者二人 と事業関係者、地場の運送業経営者など。
ベ ンチャーキャピタルなどの資本は入れていない。
いまのところ株式を公開する予定はないという。
http://www.trabox.com 特集その後の物流ベンチャー

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