2002年4月号
SCC報告

日本語版『SCOR入門編』ハイライト

73 APRIL 2002 事の仕方のちょっとした違いが、できあがっ たサプライチェーンの効率や最適化度の大き な問題となってきました。
その理由として、 ?プロセス名称とその定義がバラバラ ?プロセス表現の構成単位(プロセスとプロ セスの境界)がバラバラ ?プロセス表現手法が企業毎に、あるいは企 業内でも部門毎に、あるいは人によってバ ラバラ などが挙げられます。
そのため、 ?用語の意味の違いから会話が出来ているよ うで真のコミュニケーションが出来ない、 他部門間・複数企業間での統一的プロセス 設計ができない。
?標準的なプロセス定義が無く、組み合わせ 本来『SCOR入門編』の内容は、SCC メンバーに対してのみ公開されるものなので すが、少しでも多くの方々にSCORの内容 とその活用方法についてご理解頂きたいとい う理由から、第1章と第2章の一部につき以 下でご紹介させて頂きます。
ご一読の上、S CCへの加入と御社におけるSCORの活用 をご検討頂ければ幸いです。
SCOR開発の背景 S C O R ( Supply Chain Operations Reference model )はどのような背景のもと で開発されたのでしょうか? 一九九〇年代から欧米で、サプライチェー ンマネジメントシステムの報告が相次いでな され、日本でも九〇年代中頃から話題となり 始めました。
サプライチェーンの範囲は、企 業(サプライチェーンオーナ)の直接のサプ ライヤのみならずその先のサプライヤ、また 供給先では直接のカスタマとその先のカスタ マを含む、広範囲な広がりを持ちます。
複数 企業間にまたがる広範囲なサプライチェーン を構築する上での問題点は何でしょうか? 同一企業内でのサプライチェーン構築では、 用語や仕事手順(プロセス)、仕事の進め方 (ビジネスオペレーション)といったビジネス 環境、使用用語は比較的均一で、標準的表 現や明確に定義された用語は必要ないかもし れません。
ところが、複数企業が参加するサプライチ ェーンとなると状況は変わってきます。
ビジ ネス環境・文化の違いによる用語の意味や仕 第13回 日本におけるSCOR活用のヒント 日本語版『SCOR入門編』ハイライト 前号に続き日本語版『SCOR入門編』について解説する。
今回は同書の導入部分、第一章と第二章を基に、そのエッセン スを紹介する。
SCORを活用したSCMとは、どのような活 動なのか。
本稿を読むことで理解できるはずだ。
SCC日本支部 SCOR普及・啓蒙分科会編 APRIL 2002 74 によるプロセス設計ができない。
?プロセス設計の標準的手順がなく、担当者 毎やプロジェクト毎に別の表現で、結果の 比較ができない。
?プロセスが標準言語で記述されていないた め、改良を行うことができない。
といった問題点が発生しました。
また、結 果としてサプライチェーンに対する標準的理 解、プロジェクトの進め方や階層化の概念が バラバラで属人的になり、効率の良いサプラ イチェーン設計の阻害要因になってしまった のです。
そこで、これらを統一した標準的な サプライチェーン構築の標準的手法の確立を 目指して、サプライチェーンカウンシルが設 立され、標準プロセスモデルとしてSCOR が開発されました。
SCORの効用 SCORははじめから、複数企業間でのサ プライチェーン設計時に発生しがちな用語の 不統一や定義の曖昧さをなくすことを目的に 作られました。
たとえば、各企業でリードタ イムという同じ言葉を使用していても、どこ からどこまでを指しているかは企業毎に異な り、定義が明確ではありません。
また、プロセス設計の方法論もまちまちで、 属人的な手法で設計されていたため、その方 法論になれていない参加者には何をどう決め ればよいかの基準が分からず、深い議論に至 ることなしに全体設計を進め、結果としてプ ロジェクト進行に支障をきたしていました。
また、最初から参加者の得意な分野の細かい 点の議論に終始しすぎて、全体のバランスを欠いたシステムになっていました。
このようなSCMプロジェクトにおいて直 面する問題を解決するため、SCORでは、 以下の点に着目して開発が進められました。
?サプライチェーンモデルを階層化し、各階 層で何を決めるかを明確にした ?複雑な課題を整理するためにサプライチェ ーンを五つのマネジメントプロセスに分類 した ?階層化されたプロセス名に、記号をつけ、 階層化された記号でオペレーションの流れ を記述する事を可能にした ?各プロセスの良さを評価するメトリクス (これも階層化されている)を導入、どこ でも誰でも同じ評価ができるようにした ?各プロセスにベストプラクティスを導入し、 そのプロセスや使用する情報技術等の指針 を示した ?各階層でのAs-Is 、 To-Be のサプライチェー ン全体系を記述するための図表を導入した ?全てのオペレーション項目、考慮点が上げ られている辞書的機能としてのレファレン スモデルの構築 このような標準化された手法と標準言語を 用いて、辞書を参照しながらサプライチェー ンを表現することで、漏れが無くかつプロジ ェクトの全員のコミュニケーションを容易に したのです。
階層化記述を可能とするプロセ ス記述ツールとしては、IDEFO、ARI S等がありますし、意味論を無視するならV ISIOでも階層記述は可能です。
しかし、SCORとこれらの手法との違い を列挙すれば、 ?サプライチェーンに限定してはいるが、そ の階層化設計手順と各階層での決定事項 を示している ?プロセスのメトリクス、ベストプラクティ スを示し、これらを用いてベンチマーキン グ、BPRを統合的に行う唯一の手法であ る ?プロセス毎にプロセス定義と入出力データ、 管理項目(Enable )を示しており、プロセ スの組み合せでサプライチェーン設計を可 能としているという点が挙げられます。
SCORの手法概要 SCORでは、トップダウンのサプライチ ェーン設計を可能としています。
トップダウ ンで、各企業のサプライチェーン改革のため には何をすべきかを論じて行くことは重要で す。
もちろん、SCM設計は流れに沿ってト ップダウンに行えばできあがるほど単純では ありません。
また、サプライチェーンは最適化を目的と しているため、単に順番に機能を選択してい けばできあがるものでもありません。
各階層 (レベル)間での後戻りによる設計も不可欠 です。
しかし、各レベルでの決定事項が決め られているので、現在何を議論すべきか、戻 75 APRIL 2002 る際はどこまで遡るか、といったことが誰で も明確にわかる点も特徴です。
以下にSCO Rの各階層を概説します。
レベル1:サプライチェーン改革全体の方向 付け(俯瞰)、改革すべき経営項 目の全体バランス(SCスコアカ ード)の可視化 レベル2:サプライチェーンの再構築(物理 的サプライチェーンの全景(製造 拠点、販社、倉庫等の配置と流 通経路等の可視化)、各拠点等で の大まかなオペレーションによる 問題点分析 レベル3:BPR(Business Process Reengineering )(問題点を解決し、 それを最適に実施するオペレーシ ョン手順、ワークフロー、情報流 の設計)と組織設計 これらの具体的手法については、第2章以 降で解説致します。
SCOR活用企業例 インテル社、IBM社は米国の年次SCC 大会【サプライチェーンワールド(SCW)】 において、SCORモデルにより経営改革を 成功させた事例を報告しています。
これらの 企業では社内から選りすぐった数十名のメン バーでSCORチームを結成し、対象となっ た部門のサプライチェーンを、SCORモデ ルをベースとした手法で改革し、目覚しい成 果を上げたと報告されています。
日本においても次第にSCORモデルの活 用事例が聞かれるようになってきており、一九九九年日立がGenSym で開発したe―SC OR(当時はD ―SCORと呼ばれた)を使 って、プロセス設計をした例が報告されてい ます。
また、松下電器産業が経営革新の一つ の手法として、SCORモデルの指標を活用 したベンチマーキングを実施していることが、 二〇〇〇年のSCC日本支部の『SCW-Japan 2000 』で報告されました。
ヤマハも全社サプ ライチェーン改革にSCORの利用を進めて おり、ベンチマーキングやSCOR手順に従 ったSCM設計、プロセス記述を進めており、 メンバー会議やSCWでその内容が報告され ています。
二〇〇〇年度の米国SCWでの報告から、 SCORの活用企業をリストアップすると以 下のようになります(SCORの概説(二 件)、ベンダー(三社)とSIGからの報告 を除く)。
同様に、二〇〇一年度では以下の企業が発 表しました。
(概説(六件)、ベンダー(二社) からの報告を除く) SCORのスコープ ?SCORにおける サプライチェーンの捉え方 SCORモデルは顧客にプロダクト(製 品)を届けるまでのあらゆる企業活動を表現するためのツールです。
ここでいう「プロダ クト」とは、モノとサービスの両方を指し、 表現される「企業活動」とは、企業毎に異な る部署や部門がそれぞれの役割として持つ業 務の「機能」という視点から捉えた活動では なく、顧客にプロダクトを届けるまでの過程、 すなわちどのような業態においても必ず発生 する「プロセス」の観点から捉えた活動です。
具体的には、SCORではサプライチェー ンを五つの主要なマネジメントプロセスから 構成されるモデルとして定義しています。
す なわち、材料や製品を購買、調達するSOU RCE製品を作るMAKE、その製品に対す る受注から納入までのDELIVER、およ び製品の返品、カスタマサポートを扱うRE TURNと呼ばれるの四つの実行系プロセス 1. Cargil 2. DaimlerChrysler 3. AT&T 4. Raytheon 5. Imation 6. Intel  7. United Defense 8. Oputum 9. Siemens 10. Gold’n Plump Poultry 11. IBM (順不同) 1. Edifecs 2. Grainger 3. PROMATIS 4. DaimlerChrysler 5. Siemens 6. United Space Alliance ※『SCOR入門編』第2章 「SCORのスコープと体系」より抜粋 APRIL 2002 76 と、実行系のプロセスを統制する計画プロセ スであるPLANの計五つです。
実際のサプライチェーンとはこれら四つの 実行系プロセスが繰り返しの鎖のように連な り、その鎖を束ねる計画プロセスから構成さ れるのです。
すなわち、モノの流れとしての サプライがチェーンのように繋がり、それを 計画と言うプロセスでマネジメントする、正 にサプライチェーン・マネジメントの体系が 形づくられるのです(図1)。
?SCORモデルの範囲図1が示すように、SCORモデルで定義 されるサプライチェーンの両端は、サプライ ヤズ・サプライヤ(ある企業に原材料を供給 する企業にとってのさらに調達先)からカス タマズ・カスタマ(自社製品を納入する顧客 にとっての顧客)という形になっています。
このようにサプライチェーンの始点はサプラ イヤのサプライヤと言う具合にどんどん上流 に遡り、終点はカスタマのカスタマと下流に 降りて行くわけですが、その範囲は自社の取 り組むサプライチェーンの範囲がどこからど こまでかによって決めることができます。
一旦対象となるサプライチェーンの範囲が 定まれば、前述した五つのプロセスブロック を組み合わせることで、対象となるサプライ チェーンの構造を世界共通の定義で記述する ことが可能になります。
ただし、現行のSC ORモデル(バージョン4・0)では、セー ルスやマーケティング、製品開発、研究開発、 品質保証、及び納入後のカスタマサービスの 一部、さらには企業活動における人事、研修 といった分野は対象外としています。
?SCORモデルにおける 各プロセスの定義 前述の通り、SCORではサプライチェー ンを構成する五つのマネジメント・プロセス を定義しています。
繰り返しになりますが、 重要なことはSCORで記述されるものは 「プロセス」であり「機能」ではないというこ とです。
つまり、ある事業部や課の業務(機 能・役割)を垂直的に分断して記述したもの ではなく、各部・課が協業して製品を顧客ま で届ける過程(プロセス)を記述したものな のです(図2)。
五つのマネジメントプロセス (PLAN、SOURCE、MAKE、DE LIVER、RETURN)が扱うプロセス の概要は以下の通りです。
《PLAN》計画 サプライチェーンに関わる計画の 立案プロセス 顧客からの需要(要件)と供給側のリソー スを特定し両者間のバランスを把握した上で 図1 SCORモデルの基本コンセプト PLAN Deliver Source Make Deliver Source Make Deliver Source Return Return SOURCE MAKE DELIVER RETURN Return サプライヤズ サプライヤ サプライヤ 社内/社外 カスタマ 社内/社外 カスタマズ 自社 カスタマ 出典:Supply Chain Council 図2 SCORにおけるプロセスの考え方 A事業部 従来の業務の捉え方 プロセスで見た業務 B事業部 C事業部 製品a-1 製品a-1 製品a-1 サプライヤー 資材調達部門 物流部門 国内/海外販売部門 販売店 ユーザー 出典:小野耕司『SCORで解るSCM』に加筆修正 77 APRIL 2002 実行計画を作成するプロセス。
製品、販路別 の販売予測、資材計画、生産計画、在庫計 画、配送計画、ならびにこれらを行うための 能力計画の立案、確定、通知を行う。
《SOURCE》購買・調達 プロダクトの製造に必要な資材を 調達するプロセス プロダクトの製造に必要な原材料、部品、 仕掛品等の調達、受入、検査、受領、保管、 及び製造場所への払出を管理するプロセス。
《MAKE》生産 プロダクト製造を実行するプロセス プロダクトを製造するためのスケジューリ ング、原材料、部品、資材の投入、製造、テ スト、梱包、完成プロダクトの仮置、及び完 成プロダクトをDeliverプロセスへ移 管するための作業を管理するプロセス。
プロ ダクトの設計を管理する場合もある。
《DELIVER》受注・納入 顧客からの引合、受注と完成した プロダクトの納入を行うプロセス 顧客からの提案依頼、見積依頼、在庫問、 合せへの対応と正式オーダの受注、及びMa keプロセスからの完成プロダクトの移管、 顧客への納入のための積載計画、出荷ルート 作成、輸送業者の選択と料金決定、ピッキン グ、出荷書類作成、請求書発行と代金受領 を管理するプロセス。
プロダクトの形態によ っては、顧客先での受領と照合、据付、試験 等のプロセスも扱う。
《RETURN》返品 プロダクトの返品を管理するプロセス 顧客からの返品、及びサプライヤへの返品 を管理するプロセス(バージョン4・0にお いては、その概念が第五のプロセスとして追 加された段階で、その詳細な定義等について は記載されていない)。
以上、SCOR及び『SCOR入門編』の エッセンスをご紹介して参りました。
多少な りともそのご理解に繋がれば幸いです。
本書 で皆様の疑問や障害の全てに対する回答を提 供しているとは言い難いのですが、これから 版を重ねる毎に充実した内容にしていきたい と考えています。
本書はSCORの第4版に 基づいて書かれており、SCORの改訂に合 わせて本書も逐次改訂していく予定です。
※SCORの利用は、SCCの会員であるこ とが条件です SCC日本支部ご加入のお申し込みに関し ては、下記までお願い致します。
《SCC日本支部加入申し込み・お問合せ》 サプライチェーンカウンシル(SCC) 日本支部 住 所:〒一〇八―〇〇一四 東京都港区芝五 ―三一―一九 田町全日空ビル五F TEL:〇三(五四一九)五五八八 FAX:〇三(五七六五)六三七七 e-mail:info@supply-chain.gr.jp URL:http://www.supply-chain.gr.jp SCOR解説本の活用方法 SCOR バージョンアップに 対応した内容 SCMプロジェクト を推進する人の 為の参考書 SCOR プロジェクトの 成功事例集 SCMとは何かを 理解するための 教科書 初めてSCORに 接する人の為の 入門書 『SCOR入門編』 SCC会員向けに1部2,800円で販売 されている (連絡先:info@supply-chain.gr.jp)

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