ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2002年5号
ケース
マスターフーズリミテッド―― 取引条件

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

MAY 2002 58 浮いた物流コストを顧客に還元 マスターフーズリミテッド(以下、MFJ) は米国系食品メーカー・マース社の日本法人 で、主にスナック食品やペットフードを扱っ ている。
チョコレートの「M&M's 」「SNICKERS (スニッカーズ)」、ペットフードの 「 Pedigree (ペディグリー)」などのブランドで 有名だ。
日本進出は一九七六年。
以来、ペットフー ド市場を中心にその勢力を拡大してきた。
同 社のペットフード製品の日本市場におけるシ ェアは現在、犬向け(ドッグフード)で約五 〇%、猫向け(キャットフード)で約三〇% を超えると言われている。
MFJは自社の生産拠点を持っていない。
マ ースグループ内でMFJはセールス&マーケ ティングユニット(会社)という位置付けで、 生産はすべてソーシングユニットである海外 製造会社(米国、オーストラリア、タイなど) に委託している。
ペットフード製品だけで年間輸入量はコン テナ一万本に上る。
その物流体制は海外工場 から船便で送られてくる製品を陸揚げ後、札 幌、東京、横浜、名古屋、大阪、福岡、沖縄 の計七カ所の倉庫で在庫。
そこからオーダー に応じて国内の日雑卸やペットフード専門卸 などに製品を配送している。
納品先は卸の物 流拠点が中心だが、一部小売りの物流センタ ーに直接納品することもある。
ただし、小売 コンテナを港から顧客倉庫に直送 VMIの導入で普及拡大を図る 物流コスト削減のため、顧客に対してコ ンテナ単位での購入を勧めてきた。
ところ が、リードタイムや納期の問題で思うよう に浸透しない。
そこで、サプライヤーが納 品先の在庫を管理して製品を自動補充する VMIを採り入れた。
マスターフーズリミテッド ―― 取引条件 「コンテナ直送化によって浮いたコストはボリュームディスカウントというかたちで顧客に 還元する仕組みになっている。
二〇フィート もしくは四〇フィートコンテナ一本単位の大 ロット注文が利用条件だが、出荷工場が同じ であれば複数の商品アイテムを一つのコンテ ナに混載することも可能だ。
この物流改善策は 当社と顧客の双方にメリットをもたらす」と 鈴木勝ロジスティクス部企画課長は説明する。
リードタイムがネックに ところが、この「ダイレクトコンテナ」シス テムはほとんど浸透しなかった。
年間総売り 上げに占めるコンテナ直送分の割合は二〇〇 〇年で〇・七%。
二〇〇一年で一・五%とい う水準にとどまっていた。
営業マンの評価指 標にコンテナ直送化への貢献度という項目を 盛り込むなど普及に力を入れてきたが、思う ような効果を上げることはできていなかったと いう。
ネックは注文から納品までのリードタイム だった。
MFJでは「ダイレクトコンテナ」シ ステム利用の製品を、顧客の注文を受けてか ら海外工場に出荷指示を出す、「受注生産」体 制で調達していた。
それでも工場に在庫があ る場合はすぐに出荷されるため、比較的リー ドタイムは短かった。
ところが、工場に在庫 がない場合は、次の生産が行われるまで製品 が出荷されないため、納品までのリードタイ ムが一〜二カ月に及んでしまうこともあった。
りの直接取引は行っていない。
帳合いは必ず 卸を通すことになっている。
ここ数年、MFJでは顧客に対して海上コ ンテナ一本単位での購入を勧めてきた。
それ によって、陸揚げ港〜卸の物流拠点間のコン テナの直送化(「ダイレクトコンテナ」システ ム)が可能になり、倉庫で発生する保管料や 庫内作業料を削減することができるからだ。
同社の売上高物流費比率は六%前後で推移 している。
売上高が非公開なため具体的な金 額は明らかではないが、物流費の半分は倉庫 関連コストで占めているという。
59 MAY 2002 しかも納期は不安定だった。
船便の運航ス ケジュールの変更などによって受注時に回答 した納期よりも一週間程度遅れるケースも少 なくなかったという。
これに対して、従来型の倉庫経由の製品供 給は安定していた。
製品は受注前に海外工場 に出荷指示を出す「見込み生産」で調達し、国 内の倉庫で在庫していた。
そのため、リード タイムは一〜二日と短かった。
当然、顧客から支持されたのは倉庫経由の ほうだった。
リードタイムが長いと需要を読 み違えた場合、無駄な在庫を抱える恐れがあ る。
また、納期が遅れると品切れが発生して 小売りに迷惑を掛けてしまう。
MFJの営業マンにしても納期変更のたび に顧客と連絡を取らなければならないなど使 い勝手が悪いため、「ダイレクトコンテナ」シ ステムのセールスには消極的だったという。
「例えば、一カ月トータルでコンテナ三本分の 製品を注文してもらっている顧客がいるとす る。
本来、コンテナ一本ずつ三回の発注で購 入すれば、顧客はボリュームディスカウントに 鈴木勝ロジスティクス部企画課長 従来体制新体制 ●「ダイレクトコンテナ」システムの業務フロー MAY 2002 60 よって調達コストを低く抑えることができる。
しかし実際にはリードタイムや納期の問題で 発注回数が減らなかった。
倉庫〜顧客間の配 送頻度も減らず、顧客と当社双方ともコスト 削減が進まなかった」と川辺亜紀子ロジステ ィクス部ダイレクトコンテナーコーディネータ ーは説明する。
疑似VMIを顧客に提案 そこで、MFJは今年一月、「ダイレクト コンテナ」システムのセールス方法を改め た。
顧客からコンテナ単位で発注されるの を待つのではなく、MFJ自身が顧客の在 庫を管理してコンテナ単位で製品を自動的 に補充する仕組みを提案することにした。
「VMI(Vender Managed Inventory ): ベンダー主導型在庫管理方式」と呼ばれる 在庫管理手法の導入だ。
VMIではサプライヤーと納品先との間で あらかじめ在庫水準を決めておき、それを下 回らないように、サプライヤーが製品を自動 補充する。
これによって納品される側は在庫 リスクを負わなくて済むようになり、煩雑な 在庫管理業務や発注業務から解放されるとい う利点がある。
一方、サプライヤー側では、より市場に近 い在庫動向を把握することで需要予測が立て やすくなる。
同時に、納品先への製品供給の 回数を減らすことで、物流コストを削減でき る。
現在、ハイテク業界の部品メーカーと組 み立てメーカー間、アパレルメーカーと小売 り間などで広く活用されている手法だ(本誌 二〇〇一年十一月号参照)。
このVMIの導入によって、「ダイレクトコ ンテナ」システムのMFJ〜顧客間の受発注 の仕組みは大きく変わった。
まずMFJが、顧 客ごとにどういう周期でどのくらいの量を注 文しているか、発注トレンドを細かく分析す る。
続いて、そのデータを基に需要予測を立 てて海外工場に出荷指示を出す。
在庫水準は 顧客の経営規模によって異なるが、おおよそ 十〜十四日分で設定されているという。
「当社に製品の供給を任せた結果、顧客側の 在庫負担が増えてしまうのでは意味がない。
小 売りとの取引において欠品を発生させず、な おかつ在庫リスクを負わなくても済む在庫水 準を設定しているつもりだ」と川辺コーディ ーネーターは説明する。
MFJからのオーダーを受けた工場が生産、 荷揃え、船の手配などの出荷準備を終え、納 期が確定した段階で、顧客に対して納入計画 を提示する。
納入計画の中身は、例えば「○ 月×日にA商品を四〇〇〇ケース、B商品を 二〇〇〇ケース、購入したらどうですか」と いった具合だ。
そして、最終的に顧客からの 発注を受けてから製品を納入するわけだが、仮 に提案内容を顧客に拒否された場合は、全国 七カ所のいずれかの自社倉庫に製品を転送す る仕組みになっている。
受発注のやり取りは新たに稼働させた「イ ンターネットオーダー」システムを通じて行わ れる。
このシステムは従来、電話やファクス で行われていたMFJ〜顧客間の受発注のや り取りをインターネット経由に置き換えるた めに開発された。
まず顧客はMFJのホームページにアクセ スして、MFJの提案内容を確認する。
値引 率や製品のケース数、納期などMFJの提案 内容に納得したら、画面上の購入ボタンをク 川辺亜紀子ロジスティクス部ダイ レクトコンテナーコーディネータ ー ●インターネットオーダーシステム 顧客はこのホームページにアクセスして、コン テナの納期などを確認してから注文することがで きる リックして注文する。
これに対して、MFJ が受注確認を電子メールで返信する、という 流れだ。
顧客はこのシステムを利用することで翌週、 翌々週までの納品計画を把握することができ るようになっている。
また、複数の納品可能 日から希望納品日を指定できたり、登録さえ しておけば複数の配送先の中からコンテナの 受け取り場所を選択することも可能だ。
A商品だけを対象に 一般にVMIでは納品される側の発注を伴 わずに、自動的にサプライヤーから製品が補 充されるケースが多い。
これに対して、MF JのVMIは製品を補充するかどうかの最終 決定を、あくまでも顧客に委ねている。
そのため、MFJでは「今回の取り組みは 広い意味でいうと、VMIやCRP(連続自 動補充方式)なのかもしれない。
だが、納品 先から販売実績データや在庫データを提供してもらっているわけではない。
在庫管理は発 注実績をベースに行っている。
製品を購入す るかどうかの決定権は顧客にあるので、VM Iとは言い切れない面もある。
一種の提案型 営業という認識だ」と鈴木課長は説明する。
現在、MFJではコンテナ単位で製品を購 入できる比較的経営規模の大きい日雑卸や専 門卸を中心に数十社とVMIを構築している。
「ダイレクトコンテナ」システムの対象製品と しては定番品の中でも特に回転の速いA商品 二五アイテムを用意している。
全アイテム数 の一〇%程度に過ぎないが、売り上げ構成比 では七〜八割を占める。
VMIでは対象企業や対象製品アイテムの 数が多くなればなるほど、サプライヤーの在 庫管理作業の負担は増す。
その点、MFJの 場合は対象とするアイテムを絞り込むことで 管理の手間を低減している。
実際、ダイレク トコンテナの在庫管理や工場への発注などの 作業は川辺コーディネーター一人で対応でき ているという。
もっとも試みはまだ始まったばかり。
数十 社と実施しているといっても実際にVMIの 仕組みに乗っているのは扱いのごく一部に過 ぎない。
依然として、製品供給は在庫経由が 中心だ。
「現在は海上コンテナのみの取り扱いとなって いるが、近い将来にはJR五トンコンテナ一 本で購入できるようにするなど利用しやすい 仕組みに改良していくつもりだ」と川辺コー ディネーターは説明する。
MFJでは二〇〇四年までにコンテナの直 送率を総売上の一五%までに拡大させたい考 えだ。
直送化が進めば倉庫の在庫も減らすこ とができる。
同時に現在七カ所ある倉庫の集 約も可能になると期待している。
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