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MAY 2002 34
自社開発からパッケージへ
――現在、米国ではマンハッタンのソフトウェアを、
多くの3PL企業が使っていると聞きました。 しかし、
欧米の3PLも、かつては自分でITを開発していた
はずです。 いつの頃から変わってきたのでしょうか。
「確かに五年から十年前まで、多くの3PL企業が
独自にソフトウェアを開発していました。 これは3P
Lに限ったことではなく、荷主企業を含めて当時は、
ほとんどの企業が倉庫を運営するための自分のソフト
ウェアを持っていました。 パッケージソフトウェアだ
と一般に認識されていたものでさえ、実際には独自に
開発されたものでした。 というのも、彼らがパッケー
ジのうち使用していたのは、ほんの少しのソース・コ
ードに過ぎず、実際には個々のクライアントのために、
プログラムのほとんどを作り替えていたのです」
「ところが九五年くらいから傾向が変わりました。 ソ
フトウェアベンダーの能力と商品がどんどん進化し、
自社開発よりも、パッケージが使われるようになって
きました。 加速度的にITの技術要件が増えてしまい、
3PLもパッケージを考慮しなければならなくなった
のです。 もともと3PLのビジネスはロジスティクス
であって、ソフトウェアの開発ではありません」
――ITに特化した企業でないと開発できないくらい
技術的にハイレベルになってきた?
「そうですね。 近い将来、日本の3PLも同じよう
な問題に直面すると思います」
――ただ、3PLがパッケージソフトを使うことにな
ると、ITの部分で他社との差別化ができなくなる。
「WMSはとても柔軟です。 ワープロソフトを考え
てください。 私とあなたが『ワード』を使って、あな
たの方がうまく手紙を書いたとします。 しかし、私た
ちは二人とも同じソフトウェアを使っているのです。
WMSも同じです。 あなたの倉庫を、あなたがどのよ
うにデザインするか、スタッフをどのように管理する
か、そしてソフトウェアのどの部分を使うのか。 こう
したことが、差別化手段になるのです」
――ソフトウェア自身は差別化要因ではない?
「みんなが同じテクノロジーを持っていても、その使
い方は全然違うということです。 プロセスも全て違い
ます。 結局、ソフトはツールに過ぎません。 使い方が
違えば、効率および結果も必然的に変わってきます」
「もちろんソフトウェアが正常に機能しなかったり、
もしくは能力が欠けていたら、ビジネスに打撃を受け
ることになります。 ソフトウェアの能力がとても弱け
れば、他の全ての機能が強くても組織は強くなりませ
ん。 ソフトウェアがボトルネックになっている場合に
は、ビジネスの他の部分にどれだけ力を入れても全く
意味がなくなってしまう」
「多くの企業がパッケージソフトウェアを求める理
由は、電話機の利用と同じようなものです。 電話機は
必要で、なければビジネスは機能しません。 同じよう
に3PLにはソフトウェアがどうしても必要です。 五
〇の顧客を持つ3PL企業には、五〇の異なったビジ
ネスを運営できるソフトウェアが必要なのです」
日米欧の市場環境の違い
――米国と欧州の市場の違いを説明してください。
「3PLに関しては、米国より欧州のほうが、利用
率が高い。 マーケットも成熟しています。 米国の特定
顧客専用倉庫のオペレーションは複雑ではなく、とて
もシンプルです。 そのため3PLは新しいソフトウェ
アを導入する必要もなかった。 汎用倉庫でさえ、オペ
レーションは単純でした。 従って、米国の3PLにと
「3PLのIT活用を支援する」
欧米市場で多くの有力3PLにWMS(Warehouse
Management System:倉庫管理システム)を提供し、同分野
では現在世界最強とされるソフトベンダー、マンハッタンが日
本に上陸した。 同社の創業者に日本における3PL市場の今後
の展望と、3PLのIT武装について尋ねた。
マンハッタンアソシエイツアランJ. ダベーリ会長
第3部ITプロに訊く Interview
35 MAY 2002
先進企業は ココが違う
特 集
って、かつては倉庫を運営するためのテクノロジーが
それほど重要ではなかった」
「これに対して欧州の倉庫運営は米国よりもずっと
複雑です。 だからこそ、欧州では3PLの利用度が高
くなった。 また欧州は地価および人件費が非常に高い。
その点、3PLは従業員の管理に長けているため、荷
主にとって3PLの利用は、とても経済的だった」
「しかし、欧州では現在、3PL業者が増え過ぎた
ため、3PL業者は付加価値を高めることでしかマー
ケットシェアを伸ばすことができなくなっている。 か
れらはコスト削減のために、以前にも増してテクノロ
ジーに焦点を当てています。 テクノロジーをあまり駆
使していない他の3PL業者から顧客を奪うためです。
欧州では効率化によってコスト削減を実現するための
技術開発競争が起こっています」
――それに対して米国は?
「先ほど米国ではもともと配送がとてもシンプルだ
ったと説明しましたが、現在はブラウザーやXMLを
使ったEDIによる情報の共有など、マーケットプレ
イスからの要求が高まっています。 また顧客からも多
くの付加価値サービスが求められるようになっていま
す。 自動車産業などでは、製造ラインの中の特定の場
所への部品配送を指示されるようになっている」
――日本のカンバン方式ですね。
「そうです。 デルなどのコンピュータ産業でもVM
I(Vendor Managed Inventory:
ベンダー主導型
在庫管理)が導入されている。 VMIではコンピュー
タ本体に部品が組み込まれるまで、部品はベンダーの
所有となります。 したがって、多くの企業がデルの施
設の真横に倉庫を共有している」
「つまり今日の米国では在庫管理とロジスティクス
がより複雑になっているのです。 荷主企業が自分で運
営できたかつての非常にシンプルな物流が、もはやシ
ンプルではなくなった。 その結果、荷主企業は自分で
投資することをやめてしまいました。 荷主企業にとっ
てのコア・ビジネスは商品をデザインし、作ることで
す。 彼らは複雑で自分たちでは対処できそうにもない
ロジスティクスを改善することにではなく、新商品に
経営資源を投入しようと考えるようになった」
――日本の3PL市場の展開をどう予測していますか。
「日本も3PL化に傾いていると思います。 ただし、
米国とは多少、事情は違います。 日本の3PLはスペ
ース、そして欧州の場合と同様に従業員の融通性など
を理由に成長していくでしょう」
――3PLでは荷主との情報インターフェイスの問題
が出てきます。 欧米では大手の荷主企業は基本的にE
RPを使っています。 これに対して日本の場合、手作
りのシステムが多い。 これはボトルネックになります
か。 また標準化の問題をどうお考えですか。
「一般に日本では企業間のシステム統合が進んでいないようです。 いまだにFAXや固有のインターフェ
イスを使っている企業が多い。 これに対して米国では
標準化が進んでいて、より多くの企業が電子上でやり
取りしている。 かなりの違いがあるのは事実だと思い
ます」
「米国ではビジネスをする上でのさまざまな異なっ
た方法に対処できるように、コンピュータのインター
フェイスがよく標準化されていて融通性があります。
全て一つの標準に合うようになっている。 請求書にし
ても標準のものがあります。 日本ではこうした標準化
が米国ほど進んでいません。 そのため日本の3PLは
顧客ごとの違った環境、個性にあわせたカスタマイズ
が必要になります。 そして当社はそれを支援すること
ができるのです」
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