ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2002年5号
特集
物流IT 先進企業はココが違う ITの戦略的役割

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

MAY 2002 42 顧客はITをベースとしたどんなサービスを必要と しているのか。
それに3PL業者はどのように対応し ているのか。
その答えを探ることが本年の研究の主な 目的の一つだった。
前回説明した通り、IT関連のサ ービスは、今後アウトソーシングの対象となる最も重 要な領域の一つとして3PL関係者に認識されている。
そこで今回は、特定のテクノロジーをベースとした サービスに対しての現在そして将来にわたる顧客ニー ズを検証することで、インターネットとeコマースが 顧客企業にどのように作用しているのか、また3PL 業者は顧客が重要視しているニーズに対応しているの か、といったテーマを掘り下げた。
荷主は満足していない 二〇〇〇年の研究結果と同様、二〇〇一年の調査 でもアンケート回答者は、3PL業者によるITサー ビスの利用に対して大きな期待を抱いているという結 果が出た。
このことは、二〇〇一年の回答者は3P L業者がこの領域において十分なリーダーシップを発 揮していないと感じていることの裏返しとも言える。
ITにおいてのリーダーシップを3PL提供者にた くしているかという問いに対して、六六%は「はい」、 もしくは「多少」と答えている。
また、七二%が「e コマース能力は3PLの専門的技術(知識)の必要 要因である」と答えている。
しかし「3PL業者はe コマースに関してリーダーシップの役割を果たしてい る」と感じているのは四〇%のみだった。
ITは3P L業者がいち早く改善しなければならない領域なのは 明らかだ。
3PLのITサービス 表1は、3PL業者が現在提供しているITサー ビスと、将来求められるサービスの要約である。
現状 で最も利用されているサービスは「倉庫・配送センタ ー管理(七〇・三%)」であり、「配送トラッキング・トラッキング(六八・五%)」「輸送管理(六六・ 七%)」「輸出入貨物フォワーディング(六六・七%)」 そして「ウェブ上でのコミュニケーション(四八・ 一%)」と続く。
このうち「ウェブ上でのコミュニケ ーションの利用」は、将来求められるサービスとして も三五・二%を集めている。
この表には現在は利用されていないが、将来3PL に求められることになるだろうITサービスも指摘さ れている。
二つの例として、「サプライチェーン計画」 と「サプライヤー管理システム・テクノロジー」(そ れぞれ三三・三%と四四・四%)が挙げられている。
また「顧客注文管理」、「輸送・ロジスティクスeマー ケットプレース」、そして「商品特定産業eマーケッ ト」などの重要な伸びも予想される。
米国3PL研究 2001年アンケート調査より《第2回》 ITの戦略的役割 ジョージア工科大学のC・ジョン・ラングレーJr.博士、キ ャップジェミニ・アーンスト&ヤングのギャリー・R・アレ ン、ライダー・システムのジーン・R・ティンドールの3氏 がまとめた、米国3PLの研究報告書を紹介する。
集中連載 第2回目の今回は、3PLにおけるITの役割についての結果 報告をまとめた。
短期集中連載 表1 ITに基づいたサービス:現在 vs 将来 倉庫、配送センター管理 配送トラッキング/トラッキング 輸送管理 輸出入貨物フォワーディング ウェブ上でのコミュニケーション 顧客注文管理 輸送―ロジスティクスeマーケット サプライヤー管理システム サプライチェーン計画(予測など) 商品特定産業eマーケット 70.3% 68.5% 66.7% 66.7% 48.1% 20.4% 20.4% 9.3% 1.9% 0.0% 現在利用可 7.4% 18.5% 11.1% 9.3% 35.2% 27.8% 37.0% 44.4% 33.3% 18.5% 将来求め られる 43 MAY 2002 先進企業は ココが違う 特 集 ITベンダーに軍配 二〇〇一年の研究には、「あなたはITの活用を向 上するために3PL業者を利用しますか、それともI Tプロバイダーに直接、頼みますか」という興味深い 質問も含まれている。
マニュジスティックス、i2テ クノロジーズ、マンハッタン・アソシエイツ、オプタ ム、EXEテクノロジーズ、そしてインサイトなどが ITプロバイダーの候補である。
図1は、そのアンケート結果を表している。
3PL が二〇%、ITプロバイダーが六九%、そして社内が 十一%となっている。
eマーケットの利用 二〇〇〇年と二〇〇一年はIT分野の企業にとっ て試練の時だった。
独立系eマーケットプレースを含 むインターネットをベースにしたITは特にそうだっ たといえる。
二〇〇〇年の同研究では初めて、現在および将来 予想される独立系eマーケットプレースの利用に関わ る一連の質問が紹介された。
その中で最も注目され たのは垂直型調達産業(例:ShipChem 、 Steel.com 、 Converge 、そしてCovisint )と、輸送・ロジスティ クスサービス(例:Nistevo 、 Elogex 、 NTE 、そして Logistics.com )の二つのeマーケットプレースであ る。
図2と図3は、二〇〇〇年と二〇〇一年の研究に 含まれていた独立系eマーケットプレースの利用に関 する質問の回答結果を要約したものである。
二〇〇〇 年の調査結果では、eマーケットプレースの利用につ いて、多くの回答者が非常に楽天的で、熱心だという 結果になっている。
ところが、図2に示されるように今回の調査では、 垂直型調達産業におけるeマーケットプレースの場合 で、報告された利用率は一四%から一一%へ減少し ている。
また、将来の利用についても六〇%から二 80 70 60 50 40 30 20 10 0 (%) 図1 IT提供元 3PL ITプロバイダー 社内 11 69 20 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 (%) 図2 3PL顧客企業の垂直型調達市場産業の利用 2000 2001 28 60 11 14 将来予想される利用 現在利用している 先進企業は ココが違う 特 集 MAY 2002 44 八%に減少した。
輸送・ロジスティクス分野のeマーケットプレース (図3)の場合、報告された現在の利用率は二〇〇〇 年の一〇%から二〇〇一年の一三%に増加している が、将来予想される利用は七一%から五〇%に減少 している。
これを評価すると、輸送・ロジスティクス分野にお けるeマーケットプレースの利用は二〇〇〇年から二 〇〇一年にかけては比較的安定していたが、将来の利 用について荷主は意欲的ではないと言うことができる。
回答者のほとんどはおそらく今も「SCMによる継 続的な競争優位を確立する力を、インターネットが飛 躍的に高める」という二〇〇〇年の観測に同意するだ ろう。
しかし、その実現の方法は一年前よりも、もっ と方法論的、構造的に確立されたものでなくてはなら なくなっているようだ。
3PLによるITサービスの顧客満足度 全般的に回答者はITにおける3PL業者のリー ダーシップを認めていない。
それは回答者が、3PL 業者がこの分野にITプロバイダーと同じくらい深く 関与している、もしくは強みを持っていることに気付 いていないからなのかもしれない。
それが事実であるなら、多くの3PL業者は競合と の差別化のためにテクノロジーを使っているのだ。
3 PLによって提供される能力の高い輸送管理ソフトウ ェア、もしくはWMS(倉庫管理システム)、あるい はその両方が顧客に期待され、それが3PL業者を選 別する要素になっているのかも知れない。
実際、二〇〇一年の回答者の八四%は「正しいソ フトウェアを保有すること」が3PL業者にとって大 きな競争力を持つ優位性であると感じている。
同時に 回答者に、「3PL業者のソフトウェアに満足してい るか」を尋ねたところ、「はい」と返答したのは十二% のみで、五〇%の回答者は「多少は」と答えている。
そして残りの三八%は、3PL業者のソフトウェアに は「満足していない」と答えている。
まとめ しかし、3PL業者とITプロバイダーによる戦略 的提携を考慮すると、3PL業者のITサービスは、 それが3PL業者自身によって開発されたものであろ うとなかろうと、顧客に大きな利益をもたらすことが できる。
それが顧客への最終的結論になる。
3PL業者が彼らの使うソフトウェアの能力をうま く市場に引き出すことに成功するかも知れないという アイデアは、どこか「インテル・インサイド(本来は パソコンを構成する部品に過ぎないインテルのブラン ドが製品自体のPRに使われている)」を思わせる。
そ れはとても望ましいことなのかも知れない。
100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 (%) 図3 3PL顧客企業の 輸送/ロジスティクスeマーケットの利用 2000 2001 50 71 13 10 将来予想される利用 現在利用している

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