ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2002年6号
ケース
プラネット物流――共同化

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JUNE 2002 54 伸び悩む共同物流 日本に約一〇〇〇社あると言われる日雑メ ーカーがそれぞれ独自の物流インフラを持つ のは非効率だ。
これをまとめることで、メー カー〜卸間の物流を最適化しよう――。
八〇 年代後半に日雑業界でVAN(付加価値通信 網)を運営するプラネットが提唱した「日雑 メーカーの物流共同化構想」だ。
この構想に 沿う形で八九年には、ライオン、エステー化 学、ユニチャームなどの大手メーカー一一社 が出資して共同物流運営会社、プラネット物 流が設立された。
現在、プラネット物流は全国に共同物流セ ンターを五カ所開設している。
八九年八月の 中部流通センターを皮切りに、同年一〇月に は東北流通センター、九四年四月には九州流 通センター、九八年四月には北海道流通セン ターを立ち上げた。
そして今年二月には神奈 川県座間市に「南関東流通センター」を新た に稼働させた(拠点概要などは五六ページを 参照)。
比較的、消費量の少ない地域から始 まった共同化 がついに首都 圏にまで拡大 したことにな る。
しかし、「会 社設立から既 に一〇年以上 日雑メーカーの共同物流プロジェクト 環境激変でTC型センター化も視野に 日雑業界の共同物流運営会社。
89年の発足 以来、メーカー〜卸間の共同物流事業を手掛 けてきた。
今年2月には全国で5番目となる共 同物流センターを稼働させた。
しかし参加メ ーカー数は伸び悩んでいる。
物流共同化の意 義を改めて整理し、拠点政策を再考する時期 を迎えている。
プラネット物流 ――共同化 プラネット物流の古賀明郎社長 由として「(共同物流センターは)融通が利かない。
特に製品の共同保管が義務づけられて いることが足かせとなっている」と指摘する。
実際、プラネットの共同物流センターではこ のほかにも、配送エリアを固定して、対象外 の地域への配送は受け付けないなどの利用条 件を参加メーカー各社に課している。
しかし現実には、「参加メーカーの生産工場 のスケジュールの都合で、どうしても共同物 流センターに商品を午前中に入荷できない場 合は、例外措置として午後入荷を認めている」 (プラネット物流の奈良靖弘南関東事業部長) という具合に、?縛り〞をそれほどきつくして いない。
それでも各社の要望をすべて受け入れてし まえば、共同化することのメリットが薄れて しまう。
コスト削減のためにはメーカー各社 の物流に関するエゴを制限することで、庫内 作業の標準化や平準化を進める必要がある。
だからといって、プラネット側の都合ばかり を押しつけると、今度は参加メーカーの数が 伸びない――。
プラネットは長い間、このジ レンマと闘い続けてきた。
TC機能の付加を検討 現在、プラネット物流の古賀社長は「プラ ネット物流が発足した当時と現在とでは、卸 の淘汰・合併が進んでいたり、小売りの発言 力が強まったりと流通業界の環境がまったく 異なっている。
にもかかわらず、当時のルー が経過していることを考えると、現状の規模 ではとても満足できるレベルとは言えない」と プラネット物流の古賀明郎社長の表情はさえ ない。
実際、物流に先行して八五年に設立し たプラネットのVANには、既に約一九〇社 が参加している。
これに対して、共同物流への 参加企業は今年四月現在、一五社にとどまっ ている。
当初の構想では物流共同化の恩恵を受けや すい中堅以下のメーカーが率先してプロジェ クトに参加すると目されていた。
しかし、実際 に蓋を開けてみると利用者はライオン、エステ ー化学、カネボウなどの大手メーカーが中心 で、中堅以下からの参加がなかなか増えない。
情報インフラの共同利用が比較的順調に進 んできたのに対し、物流インフラの共同利用 が思うように浸透しないのは何故か。
その理 由を、プラネット物流の取締役も務めるプラ ネットの玉生弘昌社長は「物流は通信のよう にスイッチ一つで切り替えられるようなもの ではない。
メーカーにはそれぞれ長年付き合 いのある物流業者が存在する。
その会社との 関係を断ち切るのは容易なことではない。
ま た、プラネットが用意する共同物流センター の立地条件が、必ずしも各メーカーの工場の 所在地や得意先の分布などと合致しないとい う事情もある」と分析する。
共同化のジレンマ 共同物流に加わらないメーカーは、その理 55 JUNE 2002 ルのままで物流共同化を進めていることに、私 自身、違和感を覚えている。
メーカー、プラ ネットの双方が合意できる合理的な妥協点を 見つけることで、参加企業数を伸ばしていく 必要がある」と考えている。
そこで検討を始めたのが「共同物流センタ ーのTC(通過型物流センター)化」だ。
メ ーカー側の「自社の工場倉庫に空きスペース があり、そこをどうしても活用したい。
ただ し、卸までの共同配送には参加して配送コス ト削減につなげたい」(奈良事業部長)という ニーズを受け入れることで、共同物流への参 加企業を増やすのが狙いだ。
前述した通り、これまでのルールでは共同 物流センターに製品を在庫すること(共同保 管)が利用の条件だった。
TC化はこのルー ルを破ることになる。
それでも、「今日のサプ ライチェーン・マネジメントでは在庫の一元 管理が大きなテーマになっている。
しかし共 同保管のルールがあると、メーカーは自社倉 庫のほかに、プラネットの倉庫の在庫も管理 しなければならなくなる。
TCであれば、メ ーカーは在庫を自社倉庫で一元管理しつつ、 共同配送によるメリットも享受できる」と古 賀社長は説明する。
実は一部センターでTC化の実証実験を済 ませている。
具体的には、プラネットのある地 域の共同物流センターで在庫している商品を、 配送を担当する別の共同物流センターまで横 持ち輸送し、そこで在庫している商品と積み 合わせてから得意先に届けるというものだ。
ただし、この試みはうまくいったとは言え なかった。
?横持ち輸送分の商品の到着が出 荷時間に間に合わない、?横持ち輸送分の商 品が得意先別に仕分けされていない場合は、 センター側で仕分けを行う必要があるが、セ ンターはもともと共同保管を前提に設計され ているため、仕分けスペースが確保できない、 ?作業が複雑になったり、得意先への配送ま での工程に複数の事業者が介在することにな るため、荷物事故が発生した場合の責任の所 在を特定しにくい――などの問題が発生し、現 場が混乱してしまった。
この実験事業に携わった奈良事業部長は「クロスドッキング物流の難しさがよくわかっ た。
センター内での作業の進め方やセンター の構造そのものを見直さないと、TC化は実 現できない。
事業化に漕ぎ着けるまでにはま だまだ時間が掛かるだろう」と振り返る。
取りに行く物流を導入 共同物流センターのTC化と同時並行する かたちで、「取りに行く物流」の導入にも取り 組んでいる。
これまでプラネット物流がカバ ーしてきた配送の領域は共同物流センター〜 卸間だった。
これをメーカー生産工場・工場 倉庫〜共同物流センター間にまで拡げようと いう試みだ。
参加メーカー各社に委ねていた共同物流セ ンターまでの配送を、プラネット物流がトラ JUNE 2002 56 保管スペースは参加メーカーごと に区分けされている。
1階部分には 主に回転率が早く、パレット単位で 出荷されるA商品が置かれている。
2 階部分はB、C商品スペース。
ピッキングフォークを計6台導入。
作業員はピッキングリストに従って ロケーションに移動。
必要な商品を ピッキングしていく。
写真では作業 員の左前方部にピッキングリストが ぶら下げてあるが、今秋をめどに無 線LANシステムと連動したフォーク リフト車載端末を導入する計画。
垂直搬送機は計4台導入した。
搬 送能力は1時間当たり150パレット。
2階部分のB、C商品はピッキング後、 1階部分の出荷スペースに運ばれる。
各メーカーからの出荷指示データ を基に配送ルートや積載量、配送委 託先を決める。
出荷依頼の締め切り 時間は午後零時30分。
配車作業は 原則的に午後に行うが、事前に出荷 データを手に入れている場合には午 前中に作業を済ませておくこともあ る。
配車台数は月間約1500台。
一 日平均68台(今年3月実績)。
出荷検品は配送業者の仕事。
ドラ イバーがトラックに商品を積み込む 前にリストを基に最終確認する。
南関東流通センター 所在地 施設所有者 敷地面積 倉庫面積 保管能力 出荷能力 配送担当エリア 参加メーカー 庫内作業委託先 配送業務委託先 神奈川県座間市小松原2-7-1 品川白煉瓦 約22,000平方メートル 約19,000平方メートル 約80万ケース 約100万ケース(月間) 関東甲信越地区(1都9県)+静岡県 ライオン、エステー化学、カネボウ、マン ダム、ホーユーの計5社 バンテック バンテック、東急ロジスティック、スマイ ルライン、酒井運輸、武州運輸倉庫、 長野運輸、山梨総合運輸、信州名鉄 運輸、東海貨物輸送センター、西濃運 輸(路線便) 拠点概要 ックを仕立てて、参加メーカーの工場および 工場倉庫まで商品を取りに行く体制に改める。
そうすることで、トラックの積載効率を高め、 コスト削減に結びつけるという狙いがある。
「取りに行く物流」の導入に踏み切った理 由を、古賀社長は「プラネット物流の年商は 約四〇億円(二〇〇一年七月期決算)。
共同 物流センターの稼働に合わせて業績は伸びて いる。
しかしメーカーの共同出資会社である 以上、当然なのかもしれないが、当社の業績 は日雑業界の動向に左右されやすい。
それを 克服するためにも事業領域の拡大は不可欠だ ろう」と説明する。
既に関西地区の各メーカーの工場から集荷 した荷物を、北海道流通センターまで混載輸 送する取り組みが始まっている。
これによっ て大型トラック一台当たりの積載率が向上し、 配送コストが下がるなどの効果が出ている。
今後は他地域への拡大も検討していく方針だ という。
従来から関係者の間には、プラネット物流がメーカー〜卸間だけでなく、小売りへの納 品まで手がければ、サプライチェーン全体の 最適化が一気に進むという指摘がある。
実際、 兄弟会社のプラネットを事務局とする「業界 サプライチェーン研究会」は九八年に発表し た流通ビジョン「VOES」の中で、メーカ ーと小売り店舗の間に共同物流拠点を一カ所 だけ置いた時、サプライチェーンは最も効率 化されると主張している。
その共同物流拠点の担い手としては卸、物 流業者に並び当然、プラネット物流も候補に 挙がる。
しかし、当事者であるプラネット物 流は「あくまでも当社はメーカー〜卸間の物 流にターゲットを絞るというこれまでの姿勢 を崩すつもりはない」(古賀社長)と全否定し ている。
プラネット物流が卸に代わって中間物流拠 点を運用することになれば、周囲の目にはど うしても、事実上のメーカーと小売りの直接 取引、すなわち「卸中抜き」に映る。
プラネ ット物流に出資するメーカー各社は長年にわ たり特約店経由のサプライチェーンを堅持し ている。
子会社としては、親会社の方針に逆 らって卸を刺激するような真似はできないと いうことだろう。
しかし現在、プラネット物流が進めている 共同物流センターのTC化は、意図したもの ではなくても、その布石になり得る。
立場上、 プラネット物流が自ら直接取引を主導するこ とはできなくても、卸からの依頼に応える形 であれば、帳合いを卸に残したまま物流だけ をプラネット物流に分離するというシナリオ が描ける。
プラネット物流では今後数年以内に北関東 地区や近畿地区にも、共同物流センターを立 ち上げる計画だという。
新センターがどのよ うな仕様になるのか。
それに注目しておくこ とで、今後の展開が見えてくるだろう。
(刈屋大輔) 57 JUNE 2002 EXE TECHNOLOGIES 〒279-0012 千葉県浦安市入船1-5-2 明治生命新浦安ビル ロジスティクス・システムこそSCM成功の鍵に他ならない! 企業の収益向上 、売上の拡大に 直接寄与する経営合理化ツール 全世界500社以上に実績を持つベストプラクティスを導入する あらゆる業界で求められているロジスティクス・システムのニーズに適応するエクシード・ソリューション バリューチェーンを構築する ビジビリティー可視性 ベロシティースピード バリュー・アッドー付加価値 これら3つのVを提供することによって、顧客の価 値を創出し、バリューチェーンを経営パフォーマン スの形で、より高いROIを実現。
●お問い合わせは 商品に関する詳しいお問い合わせ、資料請求はTEL047(382)8015 ビジネス開発部までお電話下さい。
FAXで資料請求の場合は、会社 名、住所、氏名、所属部署明記の上、047(382)3202ビジネス開発部 資料請求係宛までお申し込み下さい。
SCEのグローバルリーダー http://www.exe.co.jp/ 3つのドライバー

購読案内広告案内