ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2002年6号
メディア批評
メディア規制法が招く「言論の死」左右を問わず試されるジャーナリズム

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

五月二日付の『産経新聞』に作家の高杉良 の「日本から経済小説が消える日」という論 考が載った。
メディア規制法案に反対し、こ れが通ったら、経済小説が書けなくなるとい うものである。
この中で高杉は「法案の廃案を求めてやま ない城山三郎氏の獅子奮迅の行動力は、鬼気 迫るものがある」と指摘している。
そして、 「言うまでもなく城山氏は経済小説の先駆者 だが、昨年八月三〇日に首相官邸で小泉純一 郎首相と会い、廃案を強調したのみならず、 首相宛ての私信でも『一点だけ答えてほしい。
治安維持法下で、言論の自由があったと思う か』と質したところ、返事はなかったという」 と続けているのである。
特に、個人情報保護という名の権力者疑惑 隠し法案に反対する城山の姿は、四月二六日 付の『朝日新聞』に次のように書かれている。
〈二四日、東京のホテルで公明党の太田昭宏 国対委員長ら二人の代議士と、作家の城山三 郎氏、吉岡忍氏が会った。
法案に反対する城 山氏らに公明党側が「説明したい」と言って きたという。
太田氏らは「心配されているような『メデ ィア規制法』ではありません。
なんとかご理 解を」「拡大解釈されないように努力します」 と従来の主張を繰り返した。
城山氏が口を開いた。
「もし法案が通ったら私は『言論の死』の碑を建てる。
そこに法案に賛成した議員全員の 名前を記すつもりだ」 太田氏ら二人は沈黙するほかなかった〉 実は、この時、城山から、私もその会合に 誘われたのだが、公明党側から、私の参加は 断られたのである。
二〇万部以上出たテリー伊藤と私の共編著 『お笑い創価学会』(光文社)によって、私は ?敵〞と目されているらしい。
公明党のバッ クの学会のドン、池田大作がこの法案の成立 に最も熱心だとも聞く。
前掲の論考で高杉は「万一、法案が成立し たときは、『言論の死』の碑を建てる側に私も ぜひ参加させてください、と城山氏にお願い するつもりだが、その前に公明党には連立与 党を割ってでも、廃案に与 くみ してもらいたいと 思う」と書いている。
しかし、それは無理な のだろう。
通信傍受法という名の盗聴法の時も私はこ の党に煮え湯をのまされた。
最初は反対を明 言していたのにクルリと引っくり返って賛成 に転じたのである。
だから私は公明党をコウ モリ党と呼んでいるが、いつまでも与党であ りたいということで、下駄の雪のようにどこ までもついていく同党は?下駄の雪党〞とも 言える。
それはともかく、小泉純一郎ならわかって くれると思って、手紙を書いたり、対談した りした城山は、いま、小泉に落胆し、怒って いる。
その城山と櫻井よしこの対談「この『悪法』 生かしてなるものか!」は『諸君!』六月号 の掲載。
個人情報保護法をはじめとする言論統制法 に異議を唱えているが、櫻井はとりわけ、人 間に番号をつける住民基本台帳法の改正に反 対し、「国民共通番号制に反対する会」を組織 している。
そして、ある企業に説明に行った ら、開口一番、 「櫻井さん、あなたともあろう人が何ですか。
?左の連中〞と一緒になって飛び跳ねて」 と言われたという。
「この会には左から右まで、ジャーナリズム に関わる人は左右に関係なく広く参加してい ます。
佐高信さんもいれば佐々淳行さんもい る」 櫻井はこう反駁したらしいが、『朝日』から 『産経』まで反対しているこの法律が通ってし まうのかどうか、まさにメディアの力が試さ れている。
佐高信 経済評論家 73 JUNE 2002 メディア規制法が招く「言論の死」 左右を問わず試されるジャーナリズム

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