ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2002年6号
特集
最新3PL理論 マネジメントとリレーションシップ

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JUNE 2002 42 ジョージア工科大学のC・ジョン・ラングレーJr.博士、キ ャップジェミニ・アーンスト&ヤングのギャリー・R・アレ ン、ライダー・システムのジーン・R・ティンドールの3氏 がまとめた、米国3PLの研究報告書を紹介する。
連載第3 回目の今回は、3PL業者〜顧客間のリレーションシップに 焦点を当てた。
今日の3PL産業において、優れたリレーションシ ップの形成と、持続に関する能力へのニーズは、非常 に重要な位置を占めている。
3PLプロバイダーと顧 客の双方が、より生産的で効率的、また満足できるビ ジネス・リレーションシップ能力を養いつつあるが、 メディアは未だ多くのリレーションシップの失敗例を 報じている。
そこから、「この分野を改善するために 我々ができることは何なのか」という問いが導き出さ れる。
前回二〇〇〇年度の3PL研究報告の結果は、Cass Information Systems のボブ・ディレーニー氏の指摘 を思い起こさせた。
氏は「二〇〇〇年ステイト・オ ブ・ロジスティクス・リサーチ」の中で「リレーショ ンシップはロジスティクス産業を未来へと導く鍵だ」 と指摘。
さらに、「我々が最新のテクノロジーの力と それによってもたらされる効率化を認識し感謝したと しても、やはり全てはリレーションシップに基づいて いる」と続けている。
優れたリレーションシップ構築 への挑戦は、明らかに今日残された課題の一つである。
二〇〇〇年度の研究でも検証されたように、ロジス ティクス部門の責任者が3PLサービスのニーズを最 も理解していることは明らかである。
また、多くの場 合、社長もしくはCEOと財務担当幹部が3PLサ ービスへのニーズを明確にすることに関わっている。
逆に製造や人事、マーケティング、ITといった部 門の責任者は、それらのニーズに対する認識が低いと 証明された。
ITおよび財務担当幹部は以前にも増 して3PLリレーションシップの履行に関わってきて いるが、今日のロジスティクスとサプライチェーン・ プロセスにおいてのITと財務が果たしている役割を 考慮すれば、これは別に驚くべきことではない。
このような観測は、3PLプロバイダーにとって、 顧客企業の多くのエグゼクティブとの効果的なリレー ションシップの構築を優先することが非常に重要であ ることを裏付けている。
効果的なリレーションシップ を築くための最良の方法はおそらく、「チーム単位」 のアプローチを通して顧客リレーションシップを管理 することだろう。
それによって貴重な知識とスキルを 持った3PLプロバイダーのスタッフが、顧客側のカ ウンターパートと直接関わっていくことが可能となる。
3PLリレーションシップ・プロセス 今回二〇〇一年度の研究では、3PLプロバイダ ーと顧客間のリレーションシップの内情に多角的に迫 っている。
「3PLプロバイダーを使うことは我々の 顧客を満足させる鍵である」との問いに、回答者の八 〇%が「はい」もしくは「多少」と答えている。
また、 3PLプロバイダーと「コラボレート(協働)」して いると考えている回答者は、全体の八二%に上った。
この二つの結果から、顧客は3PL業者との関係を 改善することによって利益を得ていると推測される。
3PLプロバイダーとのより良いリレーションシッ プによって、3PLプロバイダーと顧客企業の双方に、 適切な役割と責任が発生する。
3PLプロバイダーの 利用はしばしば、アウトソーシング企業への全ロジス ティクス業務の譲渡と単純に解釈される。
しかし、二 〇〇一年度の結果は、「ハイブリッド」マネジメント 構造こそ3PLリレーションシップを管理する効果的 な方法だと示唆している。
これは顧客企業が運用業績 や「信頼」要因を十分に獲得するまで、運営をコント ロールすることを望んでいるということだろう。
ほとんどの顧客企業が、戦略的なコントロールと決 定権を持っているが、運用管理のためのこの「ハイブ リッド」アプローチは、3PL〜顧客間の関係をうま マネジメントとリレーションシップ 短期集中連載 米国3PL研究 2001年アンケート調査より《第3回》 43 JUNE 2002 く管理するための革新的な対応である。
アンケートの回答者は、「3PL業者との関係にお いて『成果配分』は重要な要素だと考えるか」、また 「3PL業者との『コスト配分』に協力するか」との 問いに賛同するかを問われている。
これに対して、より多くの回答者が「成果配分」よ りも「コスト配分」に協力的だと答えている。
両質問 に対する回答は全体的にみて積極的であり、八〇% 以上の回答者が「はい」もしくは「多少」と答えてい る。
どちらにしろ、回答者は配分(シェア)を考慮す る姿勢があるという事実が認められた。
図1は、3PLリレーションシップに関わると思わ れる「取引構造」の広範囲における見通しだが、成果 配分とコスト配分が好まれるアプローチであることは 明らかだ。
また、「これら取引構造でパートナーとな る企業」という問いに対し、ほとんどの回答者は3P Lプロバイダーを挙げている。
少数ながら他の回答に は、マネジメント・コンサルタント、金融機関、ソフ トウェア提供者、貿易業者、輸送業者が含まれた。
グローバル化の影響 どのビジネスがよりグローバル化するかは、ロジス ティクスとSCMにも大きく影響する。
市場の拡張、 新しい供給源の構築、継続される改善努力、より効 率的かつ有効なロジスティクスとサプライチェーンの 再構築は、グローバル化の重要な一端を担っている。
二〇〇一年度の回答者の約半数が、3PLプロバ イダーはグローバル・サプライチェーンのソリューシ ョンの提供に貢献していると感じている。
また予測し た通り、3PL業者はメキシコやブラジル、インド、 中国といった発展途上国より、イギリスやドイツ、日 本といった先進国において、はるかに広範囲にソリュ ーション・プロバイダーとして認識されている。
二〇〇〇年と二〇〇一年度の結果を踏まえると、3 PLプロバイダーはグローバルな顧客のニーズに対す るソリューションの提供に少なくとも一定のレベルで 関わっている。
この結果には勇気づけられるが、その 一方で、3PLプロバイダーが今後「グローバル・サ プライチェーン統合への挑戦に歩調を合わせる」こと ができると考える回答者は全体の約半数にとどまった。
現在また将来のグローバルなサービスの改善に大き な余地が残されていることは明らかであり、これは3 PLサービスを提供している企業にとって改善が求め られる分野であると同時に、将来的な研究においても 重要視されるべき点だといえる。
経営コンサルタントの関与 本研究のアンケートでは3PLユーザーの約半数が、 3PLサービスのニーズを査定するために経営コンサ ルタントの関与を望むと答えた。
同時にコンサルタントの関与がそれほど望まれないものとして、3PL部 門プロセスの管理、交渉プロセスの管理、3PL提供 者関与の履行管理、そして複数のプロバイダーが関わ るサプライチェーン・サービスの構成管理の手助けな どが挙げられた。
調査結果はこの通りだが、実際に経営コンサルタン トと現在関わっている、もしくは潜在的に関わってい る3PLサービスの範囲より、いくぶん狭くなってい るようだ。
経営コンサルティング企業にとって、3P L業者と顧客との関係は非常に興味深いものであり、 3PL市場全般における変化の速度を考慮すれば、経 営コンサルタントの知識、技術そしてリレーションシ ップ関連のスキルが、3PLユーザーにとって大きな 利益となることは明らかだ。
図1 3PL業者との「取引構造」 ジョイント・ ベンチャー 売り上げ 配分 成果配分 コスト配分 リスク配分 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 (%) 13 7 47 77 3

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