*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。
図1
は、アウトソーシングに満足している
と考える3PLユーザーの割合の過去六年間
の推移を示したものである。 二〇〇一年度の
調査結果は明らかにそれまでの傾向とは異な
っている。 自らが利用する3PLサービスに
「とても」もしくは「多少」満足していると
評価した回答者は五四%しかいなかった。
興味深いことに、二〇〇〇年度の調査でサ
ービスに満足していると答えた3PLユーザ
ーの八二%という数字も、「過去二年間の増
加傾向からの緩やかな減少を辿っている」と
捉えることができる。
とくに「とても」満足していると答えた、
二〇〇一年度の調査における3PLユーザー
の割合は、前年比で五四%と急激な下降を見
せた。 この割合に対しては考慮すべき点もあ
るが、これは3PLユーザーからの要望が高
まっていることの表れと言えるのではないだ
ろうか。
成功の基準が上昇する中、以前と比べて少
数のプロバイダーだけが大きな成功を収めて
いると予想される。
3PLの成功を計る尺度
二〇〇一年度の研究では、回答者に対して
ロジスティクス業務がどれだけ改善されたの
かについて多くの質問が投げかけられた。 次
に挙げる割合は、個々の回答をもとに算出さ
れたものである。
●ロジスティクス・コストを八・二%削減し
た
●ロジスティクス・アセットを一五・六%削
減した
●平均注文サイクルの長さを一〇・七日から
八・四日に縮めた
●トータル在庫を五・三%削減した
全体的に見てこれらの数字は、二〇〇〇年
同調査によると、3PLサービスに対するユー
ザーの満足度は大幅に減少している。 ユーザーは
「3PLの恩恵」を感じてはいるものの、よりハイ
レベルなサービスを望んでいるようだ。 今後、3
PLプロバイダーに求められる役割とは何なのか、
分析結果を報告する。
顧客価値のフレームワーク
《第四回》
ジョージア工科大学
C・ジョン・ラングレー
Jr.
博士
キャップジェミニ・アーンスト&ヤング
ギャリー・R・アレン
ライダー・システム
ジーン・R・ティンドール
JULY 2002 70
71 APRIL 2002
度の研究結果とほぼ一致している。 二〇〇一
年度の研究で報告された注文サイクルの長さ
は、前年度の研究結果よりも長くなっている
が、報告された改善日数(二・三日)は、前
年度の二・八日とほぼ等しい日数となった。
また、在庫の削減率(五・三%)は、前回
結果の九・九%よりも低い率となっている。
減少傾向がこのまま続くのか注目される。 も
し、引き続き削減率が減少するのであれば、
それはより早い段階での在庫削減が可能にな
ったということなのかも知れない。 時間のみ
ぞ知るというところだろう。
また、注視すべき兆候として、在庫削減が
3PLサービスを利用する企業の財務状況の
改善を手助けしていることが挙げられる。 こ
うした状況から、経済的付加価値(Economic
Value Added=EVA
)や株主価値などを含む
総合的な財務指数もまた、ポジティブに影響
されると予測することができる。
次回以降の調査では、3PLサービスの利
用でどれだけ利益面の改善が進むかに今まで
以上に焦点を当てるべきだろう。
3PL利用に付随した問題点
二〇〇一年度の調査の回答では、い
くつかの鍵となる事項にフォーカスが当
たっている。
●サービス・レベルのコミットメント
が実現されていない
●戦略的管理スキルの欠如
●コスト削減が実現されていない
●横ばいだったコスト、そして料金は、
リレーションシップがスタートする
と同時に上昇する
●継続的な改善提案の欠如
●アウトソースした機能へのコントロ
ール能力の縮小
●コンサルティングやナレッジベース
のスキルの欠如
●技術能力はあるが、顧客に恩恵を与
えるまでに至っていない
●ロジスティクスに費やされる時間と労力
が縮小していない
3PLプロバイダーはこの回答結果を、継
続的改善のためのスタートラインとして見る
べきだろう。 全体的に見てサービス・レベル
とコストの目標を達成すること、そして顧客
との関係がいったん始まったら不必要な価格
上昇を避けることの必要性が示唆されている。
一部の3PLプロバイダーに戦略的管理、
技術、ナレッジベースのスキルの改善が必要
なことも明らかだ。 また、一部の3PLユー
ザーは、ロジスティクスに費やされる時間と
労力が減少せず、外部委託した機能に対する
コントロール能力が減少したと感じている。
3PLプロバイダーが担う責務の「ハイブ
リッド・マネジメント」への移行は、こうし
た現状においては非常に有効かもしれない。
ロジスティクスの
戦略的価値と3PLの役割
3PLサービスの利用者、および利用予定
者の九三%が、「ロジスティクスは、自社の
戦略、また競争力において利益をもたらす」
と答えており、また同数の回答者が「3PL
ユーザーは、ロジスティクスの顧客サービス
に重きを置いている」と考えているとの結果
が出た。
過去の研究でも示されたように、これらの
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
(%)
図1 アウトソーシングに対する顧客評価
1996 1997 1998 1999 2000 2001 (年)
90
83 86 88
82
満54
足
度
結果は3PLサービスを利用することと、企
業にとってロジスティクスが戦略的に重要な
分野だということが矛盾していないことを意
味している。 これは、数多くの企業がロジス
ティクスをコア・コンピタンス、また競争力
における優位性として見ているということだ
が、かれらは同時に、ロジスティクスやサプ
ライチェーン・プロセスを部分的に外部委託
することを選んでいる。
二〇〇一年度の研究では、回答者が3PL
プロバイダーをどう捉えているかという質問
が投げかけられた。
図2
に示されるように、
ほとんどの3PLユーザーは現在のところ、
かれらが利用している3PLプロバイダーを
「リソース提供者」と認識しており、このう
ち約半数が3PLプロバイダーを「リソー
ス・マネジャー」や「問題解決者」と考えて
いる。
低いレベルでだが、3PLプロバイダーは
「輸送戦略家」、「流通戦略家」、「サプライチ
ェーン戦略家」、または「編成者」とも考え
られている。 基本的に、同結果は二〇〇〇
年度の研究結果と非常に似通ったものとな
った。
多くの3PLプロバイダーと顧客の関係は
以前と比較して確実に深まっている。 またユ
ーザーが認識している以上にプロバイダーが
提供しているサービスはより戦略的なものに
なっている。 しかし、まだまだ3PLプロバ
イダーの多くにとって、ユーザーとの協力関
係をより高度化させることが課題となってい
るようだ。
「リード・ロジスティクス・
マネジャー」の必要性
二〇〇一年度の研究では、3PLプロバイ
ダーの将来的な役割は、顧客のビジネスに深
く関わることの要求される、洗練されたもの
になるだろうとの結果が出た。 同観測は、ユ
ーザーが3PLプロバイダーに対して、広範
囲に渡る3PLサービスの提供やIT能力の
構築と利用、そして協働した関係を求めてい
ることを物語っている。
これらのシグナルから、ユーザーが今以上に
「リード・ロジスティクス・マネジャー」とし
ての役割を、3PLプロバイダーに求めてい
るということがわかる。 今後、ユーザーは「リ
ソース提供者」や「リソース・マネジャー」よ
り上をいくレベルで、3PLプロバイダーを戦
略的活用していくことになるだろう。
編成者
サプライチェーン戦略家
流通戦略家
輸送戦略家
問題解決者
リソース・マネジャー
リソース提供者
0 10 20 30 40 50 60%
8
4
8
11
45
21
21
図2 回答者の3PLプロバイダー像
JULY 2002 72
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