ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2002年8号
特集
中国的物流 「物流管理レベルは急速にアップしている

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

AUGUST 2002 34 年率三〇%成長を持続 ――中国市場における具体的なサービス内容を教えて ください。
「海上貨物と航空貨物のバンニング。
これが売り上 げの半分を占める。
ほとんどが日中間の物流だ。
残り の半分のうち、さらに半分が生産拠点での構内作業。
生産ラインに人員を配置して生産管理や出荷準備な どの作業をサポートしている。
プラントの据え付け工 事、輸送もそこに含まれる。
残りが一般の倉庫保管と トラック事業だ」 ――現在の売り上げ規模は? 「一億元(一五億円)強だ。
ここ数年三〇%ずつ売上 高が拡大している。
特に日中間のフォワーディング業 務が伸びている。
顧客層は家電、素材(加工品、化 成品)など多岐にわたる。
家電に関しては欧州や米国 向けもボリュームがあるが、基本的には日本向けが圧 倒的に多い」 ――現在の従業員数と拠点数はどうなっているのです か。
「一一〇人いる。
そのうち十二人が日本人スタッフ だ。
その他にも現場担当者を六〇〇人抱えている。
営 業拠点(倉庫)は大規模拠点が四カ所。
上海に三カ所、 無錫に一カ所ある。
さらに連絡事務所を蘇州などに計 五カ所置いてある。
合計で九カ所ということになる」 ――他の日系物流業社も中国に進出し始めました。
「もちろん競争は激しい。
とくに運賃単価が厳しく なっている。
中国の日系荷主企業は料金よりもサービ スの質を重視しているので、これまではあまり料金に は拘らなかったが最近はそうでもなくなってきた」 ――日本の総合商社も中国での物流ビジネスに本腰を 入れています。
「特に三菱商事が強い。
上海の浦東でシャープや松 下向けの倉庫を用意している。
総合商社とも最近は 国内配送の部分で競合するようになってきた」 ――中国物流では?御三家〞と言われる日通、日新、 山九がいまだに有利に見えます。
「確かに当社は中国ビジネスの経験の蓄積があるた め、進出する荷主企業のほうから物流を任せたいと声 を掛けられることが多い。
中国物流のコンペでも、こ れまではたいてい日通と日新が相手だった。
ところが 最近ではそこに商社や船会社が加わるようになってき た。
とくに欧米系の船会社が陸に登り始めたのは脅威 だ。
船会社が内陸部分の輸送までを含めた一貫物流 サービスを提供し始めている」 「今のところ当社の顧客は圧倒的に日系企業が多い。
しかし、中には米国の企業もある。
そこでは欧米系の 物流企業とぶつかることになるが、当社の力のなさを 痛感させられることもある。
欧米系物流企業は独資に よる進出が可能になるまで本格的には攻めてこないだ ろうが、開放されれば一気に競争が激化するだろう。
日系物流企業は現在、四〇社くらいが中国に進出し て小競り合いをしているが、根こそぎやられてしまう ことにもなり兼ねない」 ――対抗策はありますか。
「ようやく当社の中国ビジネスは黒字を計上すると ころまでこぎ着けた。
やっと準備段階が済んだ。
今後 は拠点をどうネットワーク化して、付加価値を持たせ るかという点がカギになる。
うまくネットワーク化で きれば、それがセールスポイントになる」 現地料金で日本並みサービス ――現地の物流企業、中国系物流企業のサービスレベ ルは改善されているのでしょうか。
「物流管理レベルは急速にアップしている」 山九は中国に最も深くアクセスしている日系物流企業の一つに 数えられる。
中国物流のパイオニアとして荷主からの信頼も厚い。
しかし、地元企業のレベルアップ、欧米系物流企業の参入など、 市場競争は激化している。
危機感は強い。
上海経貿山九儲運有限公司(山九) 姫田正規総経理 Interview 35 AUGUST 2002 特 集 「中国の物流業者は遅れているという印象を持って いるようだが、求貨求車システムが登場するなど、凄 いスピードでレベルアップが進んでいる。
確かに貨物 追跡などは、かなりいい加減だったが、そうした部分 の改善も進んでいる。
中小規模の物流業者といえども 力を付けてきている」 「それによって、とくに国内輸送分野での競争が激 しさを増している。
最近は顧客企業から、中国企業並 みの料金で日本と同じ質のサービスを提供しろと要求 されるようになってきた。
もともと料金面では日系企 業よりも中国系企業のほうが圧倒的に安い。
トラック 一台を走らせる時の単純コストではかなわない。
中国 企業がサービスの質を上げて、なおかつ現行の料金を 維持できるようになったら、日系企業は負けてしま う」 地元企業もライバルに浮上 ――地元企業でライバルになりそうな会社は? 「最近とくに評価が上がっている地元企業といえば、 BGLや宝供(バオクン)などだ。
いずれも華南地区 の会社だが、フィリップス向けでは3PLを展開して いる。
これらの地元企業は当然、中国国内のネットワ ークも持っている。
政府の保護政策もあるため、ビジ ネス展開もやりやすい。
全く油断できない」 ――各種の規制の問題など、外資系物流企業が中国 でビジネスを展開していくうえで、阻害要因はありま すか。
「電子通関など仕組みはよくなってきている。
ただ し通関でいうと、地域ごとに運用方法が違うので困る。
日本のように統一されていない。
ルール自体は中央政 府によって統一されているのだろうが、運用レベルで はバラバラだ。
これに翻弄されてしまう」 「特に内陸と港とでは通関のルールが大きく異なっ ている。
通関がスムースにいかないと結局、顧客企業 に迷惑が掛かってしまう。
未だにこの辺はクリアにな っていない」 「またトラックで省をまたいだ輸送をする時などに 突然、意味の分からない通行料を請求されることがあ る。
顧客企業に対して、過去の実績から料金を提示 しているのに、その料金が急に変わってしまうことが 度々ある。
物流に関して曖昧な部分が多すぎる。
まず はタリフの公開をきちんとしてほしい」 ――小口混載サービスに対するニーズは? 「ニーズは増えている。
とくに部品産業が集積して いる華南地区では小口混載の需要が多い。
当社も蘇 州、無錫、上海で輸出入貨物の小口混載サービスを 始めた。
航空貨物の免許もようやく取れた。
これから は航空貨物の小口混載サービスに力を入れていく。
無 錫や蘇州で生産した製品を上海に運んで、そこから日 本などに輸出する混載サービスを航空貨物で展開する」 ――エアのライセンスはいつ取得できたのですか。
「今年三月だ。
昨年十二月に申請したが、取得でき ないかも知れないと思っていた。
過去に海運のフォワ ーダー免許を一度却下され、二年ぐらいかけてようや く取得できたという経緯がある。
しかし、最近ではと くにエアに関しては日系企業でも免許がとりやすくな ったようだ」 ――今後の課題は何ですか。
「当面は中国国内のネットワークづくりだ。
北京、上 海、華南地区の三つの地域に的を絞って進めていく。
強化のポイントは足回りと倉庫。
倉庫も現在は賃貸だ が、いずれは自社倉庫を建設したい。
来年には上海で 新たに二つの倉庫を稼働させる予定だ」 山九は小口混載サービス に力を入れる

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