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段ボール使用量は年一二〇万個
オンワード樫山の躍進が続いている。 とり
わけ九〇年代に相次いで投入した「組曲」「二
三区」「ICB」など婦人服ブランドの急成
長ぶりが目立っている。 民間調査機関による
と、婦人服市場での販売シェアは年を追うご
とに拡大し、九九年にはワールド、イトキン
に次ぐ業界第三位に浮上。 二〇〇一年には
四・〇%(前年比〇・六ポイント上昇)のシ
ェアを確保した。
もともと同社の主力事業は紳士服だった。
しかし今日では、婦人服が収益基盤を支えて
いる。 二〇〇二年二月期の売上高構成比(連
結ベース)は紳士服が三二・一%(前年比
四・六%減)。 これに対して、婦人服が四九・
八%(同十二・〇%増)という内訳になって
いる。
婦人服の中でも特に販売が伸びているのは
シャツやニットなど比較的単価の安い?洋
品〞と呼ばれるカテゴリーだ。 逆にこれまで
得意としてきた高額商品のスーツやコートと
いった重衣料の比率は年々低下しているとい
う。 単価の安い商品を大量に販売してトータ
ルで利益を確保する「薄利多売型」へとビジ
ネスモデルは変化しつつある。
それに伴い、物流面で新たな問題に直面し
ている。 シャツやニットなどいわゆる袋物の
出荷増で、段ボールの年間使用量が増加傾向
にあるのだ。 同社の商品出荷量は年間一五〇
アパレル業界初のオリコン本格導入
梱包費削減と作業効率向上を実現
これまでアパレル業界ではハンガーに吊さ
れて納品されるもの以外は段ボールが梱包材
として利用されてきた。 折り畳み式コンテナ
(オリコン)は回収費用がネックになって、
普及していなかった。 しかし、段ボールは使
い捨てで、組み立て作業にも時間がかかる。
業界の常識に逆らって、オリコンの導入に踏
み切った。
オンワード樫山
――梱包改善
あり、何度でも繰り返し使用することが可能だ。 コスト面だけでなく、段ボールの廃棄ロ
ス削減など環境対策としての効果も期待でき
る。
しかし、こうした意見が現場から上がって
きても、当初はオリコンの導入効果に対して
懐疑的だった。 一〇回程度繰り返し使用でき
る強化段ボールを使用しているアパレルメー
カーは既に存在していたが、オリコンを活用
しているケースは皆無に等しかったからだ。
「オリコンは工業用部品などを保護するため
の梱包材で、アパレルのような柔らかい製品
には段ボールが適しているという認識だった。
入社以来、段ボールしか使用したことがなか
ったため、アパレルにオリコンを採り入れる
という発想自体、まったく頭に浮かんだこと
もなかった」と佐竹部長は振り返る。
オリコンが普及しない理由
加工食品や日用雑貨品などの業界では早い
時期からオリコンが幅広く梱包材として利用
されてきた。 それによって梱包材費用の抑制
や段ボールの廃棄ロス削減などの成果を上げ
てきた。 既にオリコンは段ボールに代わる梱
包・輸送用資材として定着しつつある。
これとは対照的に、アパレル業界での普及
が遅れているのは何故か。 その理由の一つと
して、物流体制の違いが挙げられる。
例えば、食品卸とコンビニエンスストア間
の納品にオリコンを活用する場合、配送車が
〇万点に達する。 依然としてハンガーに吊し
て店舗に納品する商品が全体の約六割を占め
ているが、徐々に段ボールに箱詰めして納品
するケースが増えているという。
段ボールの年間使用量はグループ会社を含
めると約一二〇万個に上る。 調達費用は一個
当たり一三〇〜一五〇円。 平均一四〇円で購
入すると、年間に一億六八〇〇万円の費用が
発生する計算だ。
それでも「他の大手メーカーに比べれば、段
ボール使用量は少ないほうだと思う。 しかし、
婦人服への依存度は年々高まっている。 その
まま放置すれば、段ボールにかかる費用が膨
らむ一方だ。 何らかの策を講じなければなら
ないと感じていた」と佐竹孝物流部事業本部
計数管理部長は説明する。
そんな時、ある地方支店の社員から「段ボ
ールに代わって、オリコンを利用してみては
どうだろうか」という意見が出された。 オリ
コンとはプラスチック製の折り畳みコンテナ
の略称だ。 段ボールが使い捨てであるのに対
し、オリコンはプラスチック製のため強度が
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物流センターから店舗に納品した帰り荷で、
前回納品分の空オリコンを回収するというサ
イクルを確立できる。 ところが、アパレル業
界の場合は、メーカー側に中小零細企業が多
いうえ、一括物流ではなくメーカーごとに店
舗に商品を納品しているケースが一般的で、
多くは特別積み合わせ業者による路線便を利
用している。 そのため帰り荷でオリコンを回
収しにくいのだ。
実際には路線便でオリコンを回収すること
も可能だ。 しかし、その際に必要となる運賃
などを含めた回収コストと、段ボールを使い
捨てにした場合のコストを比較すると、前者
のほうが高くついてしまうことがある。 コス
ト割れしてまでもオリコンを導入しようと考
える会社はまずない。
オリコン自体の値段が単純に段ボールと比
較すれば割高なこともネックとなっている。 オ
リコンが市場に投入された当時に比べると、価
格そのものは今ではたいぶ下がっている。 そ
れでも段ボールが一個百数十円であるのに対
し、オリコン一個当たりの価格はその一〇倍
程度になる。 万単位の数でオリコンを購入す
ると、数千万円規模の投資が必要になる。 中
小零細のアパレルメーカーにとって初期投資
の負担は決して小さくはない。
さらに、アパレルの主要な納品先が百貨店
であることもオリコン導入のマイナス要因の
一つだ。 百貨店ではバックヤードが限られて
いるため、空オリコンを置いておくスペース
オンワード樫山の佐竹孝物流部
事業本部計数管理部長
る。
オリコン購入にかかる
初期投資も重荷ではなか
った。 同社の場合、数千
万円掛けて一気にオリコ
ンを導入したとしても、
長いスパンでもきちんと
投資分を回収できればい
いと判断できる。 「それが
経営規模の大きい企業の
強みだ。 中小メーカーだ
ったらそういう割り切っ
た発想はなかなかできな
い。 当社は同業他社に比
べオリコン導入の好条件
が揃っていた」と佐竹部
長は説明する。
そこで二〇〇〇年に仙
台と福岡の二支店を対象
に店舗へのオリコン納品
を開始した。 当時は試験
導入という位置づけだっ
たが、実際にオリコンを
導入してみると、それまでのオリコンに対し
て抱いていた先入観は誤りであることに気付
かされたという。 作業の効率化、コスト削減、
トラックの積載効率向上、環境負荷の軽減な
ど様々な効果を得ることができたからだ。
段ボールの使用には組み立て作業が伴う。
折り畳まれた状態の段ボールを開いて、底の
部分にテープを貼る。 その作業に従来一個当
たり三〇秒かかっていた。 ところが、オリコ
ンは畳まれた状態のオリコンを持ち上げ、両
サイドの板を内側から押し出すだけで済む。 わ
ずか数秒で組み立てが終わる(写真参照)。
さらに、専用車であるため新たな運賃負担
を回避できただけでなく、トラックの積載効
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を確保することが難しい。 しかもスペースを
確保してもらうためには、百貨店側にそれな
りの対価を支払う必要がある。 また、使用済
みの空オリコンを売り場から保管場所まで誰
が運び、その作業コストをメーカー側と百貨
店側のどちらが負担するのか、という問題も
解消しなければならない。
アパレル業界にはオリコン導入に向けて乗
り越えなければならない壁がいくつも存在し
ている。 こうした状況を踏まえて、アパレル
の業界団体の一つである日本アパレル産業協
会と日本百貨店協会は共同で「百貨店統一オ
リコンBPR協議会」を発足。 オリコンの普
及に向けた話し合いの場を設けている。 しか
しなかなか両者の折り合いが付かない。 期待
されるほど前に進んでいないというのが現状
なのだという。
自家物流が奏功
これに対して、業界大手のオンワードの場
合は比較的オリコンを導入しやすい環境にあ
ったと言える。 まず物流体制。 同社は一部で
路線便も利用しているものの、物流子会社の
契約車両で店舗に納品するかたちがメーンに
なっている。 全国三カ所の保管型物流センタ
ーから同八カ所の支店(出荷センター)に商
品を輸送。 店舗別に仕分けて専用車で納品す
るという体制だ。 そのため加食や日雑業界の
ケースと同じように、納品用トラックの帰り
荷で空コンテナを回収する仕組みを構築でき
オリコンの組み立て手順
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率も高めることもできた。 それまでは段ボールを商品によって数種類使い分けていたため、
トラックの荷台に隙間なく商品を積み込むこ
とが難しかった。 しかし、オリコンの規格を
統一したことで、無駄な空きスペースがなく
なった。
オリコン二万台に拡大
こうした成果を確認して、翌二〇〇一年に
はいよいよ全国展開に踏み切った。 これまで
に全国八支店に計一万個のオリコンの導入を
済ませている。 現在、百貨店を中心とした納
品先一二〇店舗と支店の間でオリコン納品を
展開中だ。
最終的には年間約一二〇万ケース購入して
いる段ボールの半分をオリコン化する計画を
打ち出している。 オリコン数を二万個に増や
し、一個当たり年間に三〇回転させて六〇万
ケース分をカバーする。 まずは通常品を対象
にオリコン化を進め、次の段階でセール品に
まで対象を拡げていくことも検討している。
肝心のコスト削減効果だが、オンワードの
試算ではオリコンを二万台にまで増やすと、年
間に七〇〇〇〜八〇〇〇万円コストダウンで
きると見込んでいる。 今後五年間に累計で四
億円のコスト削減を達成することが当面の目
標だ。 段ボールの廃棄や焼却にかかる費用ま
でを含めると、目標額を上回る可能性もある
という。
「オリコン化というのは地味な現場改善活動
だ。 しかし、その効果は意外と大きいという
ことが確認できた。 物流体制の違いなどによ
って、オリコンを利用できるのは大手メーカ
ーに限定されると見られている。 しかし、何
とかアパレル業界に浸透させるためにも当社
が今回の取り組みを成功させて、業界の手本
にならなければならない」と佐竹部長は気を
引き締めている。
(刈屋大輔)
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