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89 DECEMBER 2002
「TMS」を日本語にすると、「運行管理システム
(Transport Management System)」になります。 それ
だけだと何の変哲もない言葉に聞こえますが、昔か
らある「運輸管理システム」とは基本的に別モノだと
考えないといけません。 実際、TMSは最近になって
注目されるようになった比較的、新しい言葉なのです。
かつての物流システムは、「在庫管理システム」と
「運輸管理システム」という二つのサブ・システム
によって構成されていました。 在庫管理システムと
は、「台帳」です。 いま倉庫に何が、いくつあるの
か。 そのうち何個、出荷したのか。 その数字を帳簿
に記録して、在庫量を把握するわけです。 倉庫会社
にとっては、それが荷主に倉庫料金を請求するため
の仕組みでもあります。
これに対して「運輸
管理システム」は、運輸
業界向けの仕組みです。
狭義では、運送会社が
荷主に対して運賃の請求書を発行するためのシステ
ムだと考えて構いません。 どんな大きさ・重さの荷
物を、どこに何個運んだのか。 それに運賃を掛けた
ものを毎月、荷主に運賃として請求するわけです。
この2つのシステムが、少なくとも日本では物流
システムの原点でした。 つまり、かつての物流シス
テムは、倉庫業者と物流業者の料金を計算するため
に使われていたのです。 それが今日では、WMSや
TMSに進化したという流れです。
このうちTMSの原型となった運輸管理システム
は、最初はトラックドライバーが手書きした日報を
システムに入力するという形で運用されていました。
しかしその後、タコメーターが使われるようになり、
さらに「デジタコ」と呼ばれるデジタル式のタコメ
ーターが登場し、自動化が進みました。 車両の位置
をリアルタイムに把握するオムニトラックスのよう
な通信装置も出てきました。
一方で配車作業にもITは活用されていきました。
以前の配車業務というのは、スケジュール化にはほ
ど遠い、まさに出たとこ勝負の仕事でした。 毎日夕
方になると、配車マンの机の上に、今日中に出荷し
なければならない荷物の情報と、運送会社や自社の
車両情報が集まってくる。 それをカルタ取りのよう
にマッチングさせるという個人技の世界です。
このやり方だと、処理量が大きくなり、多頻度小
口化が進むと、人の手には負えなくなってきます。
そこでIT化しようということになる。 そこからトラ
ックと荷物をマッチングする仕組みとして配車管理
システムが生まれ、さらに今でいう「求車求貨シス
テム」へと発展していきました。
こうして情報システムが運賃の計算だけでなく、
運送原価や品質管理、安全管理にも利用されるよう
になり用途が拡がると、今度はそれを統合しようと
いう発想が出てきます。 運輸回りの数字の管理だけ
にITを使うのではなく、車両のコントロール自体
にITを活用する。 すなわち「輸送管理システム」を
「運行管理システム」に
進化させようという動
きです。
このような発想で、5
年ぐらい前から「TMS」が本格的に注目を集める
ようになってきました。 さらに昨今では前号で解説
した「Visibility:可視性」という点からも、TMS
がクローズアップされています。 しかし、今のとこ
ろTMS の標準と呼べるような決定版は登場していま
せん。 ベンダーの顔ぶれを見ても、運送の原価管理
や配車管理、貨物追跡などのサブ機能に特化した中
小メーカーばかりです。
TMSという言葉の使い方にもかなり混乱がありま
す。 TMSの要素となる機能別ソフト、なかには20年
以上前からあるベーシックな運輸管理システムもあ
るのですが、それまで一括りにしてTMSと呼ばれて
いることが珍しくありません。 そのため比較的、誤解
を与えやすい、分かりにくい言葉になっているようで
す。 しかし本来のTMSとは、これから統合の進むこ
とが予想される、新しいホットな分野なのです。 (談)
「TMS」って何のこと?
運輸管理・配車管理・動態管理を統合する
運行管理システムとして注目されています
たなか・すみお 物流企業系シス
テムハウスを経て、91年に独立。 エ
クゼを設立し、社長に就任。 製造・
販売・物流を統合するサプライチェ
ーンシステムのソリューションプロ
バイダーとして活動。 2001年10月
に「フレームワークス」に社名変更
フレームワークス
田中純夫社長
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