ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2001年10号
特集
ヤマト・佐川二強時代 国内ネットワークを国際事業に活かす

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

OCTOBER 2001 36 UPSとは営業スタイルが違う ――八六年の米国UPSとの業務提携は国際事業に とって転機になりましたか。
「提携以降も米国以外の地域では、従来通り当社の現 地法人が引越、海運貨物、航空貨物を扱ってきたの ですが、米国だけは扱いが変わりました。
米国ヤマト 運輸の航空貨物の業務を、UPSと現地に設立した 合弁会社に移行させました。
しかし、今年一月からは 再び米国現地法人も航空貨物を扱う体制に戻してい ます。
ヤマトの米国現地法人がUPSとは別に米国で 航空貨物の営業をしています」 ――昨年のUPSとの提携見直しに伴い、元の体制に 戻ったわけですね。
「その通りです。
ヤマトとUPSはパートナーシップ 延長に合意したわけですが、その時に再びヤマトが米 国で航空貨物の営業を開始することを確認しました」 ――日本では合弁会社だったヤマトUPSを機能ごと に三つに分社化しています。
目的は何ですか。
「UPSは、UPSブランドのブラウンの自社車両 で、書類などの企業発荷物を集めたいという意識が強 かったようです。
UPSに限らず、DHLとかフェデ ックスもそうなのですが、外資系の宅配便会社には少 なからずそういう傾向が見受けられます」 「もともと、ヤマトは個人発の荷物を集める会社で すから、UPSとは営業のスタイルが多少違う。
ヤマ トとUPSの共同商品である『UPS宅急便』の競 争相手は(C to Cをメーンとする)郵便ですが、UP Sの直接的な競争相手は企業発貨物を集めるDHL やフェデックスなのです。
UPSは日本から海外に出 る貨物については自社ブランドを前面に出して営業展 開したほうがいいと判断したのでしょう」 ――そのための会社としてUPSが五一%の株を保有 して主導権を握るユーピーエス・ヤマト・エクスプレ スを設立したわけですね。
同社は国内で自社配達もす るのですか。
「集荷を自社でやるわけですから、当然配達も自社 でやっています。
そのほうが効率がいい。
拠点のある 地域についてはブラウンカーで集配しています。
ただ し、拠点のない地域についてはヤマト運輸のネットワ ークを活用するという体制です」 ――一方、ヤマトが主導権を握るヤマト・ユーピーエ ス・インターナショナル・エアカーゴの特徴は。
「こちらでは主に一般航空貨物、要するに大口貨物 を中心に扱っています。
とはいえ、中には大口と小口 を一緒に出したいというお客さんもいますので、本来 はユーピーエス・ヤマト・エクスプレスで扱う小口貨 物も一部引き受けています。
特徴はヤマト流で経営し ている点でしょうか。
車両もブラウンカーではなく、 ヤマト運輸のものを使っています」 ――ヤマトとUPSという強者同士のアライアンスに しては、これまでの実績は物足らない気がします。
分 社化の効果は出始めていますか。
「もっと高飛びしてもいいはずなのでしょうが、まだ まだです。
数字的な効果が表れてくるにはもう少し時 間が掛かりそうです」 ――宅急便の拠点投資は一段落つきました。
ヤマト運 輸の次の一手が注目されていますが、その一つは国際 部門の強化という見方があります。
本格的な海外進出 はあるのですか。
「かつてヤマトは海外現地法人のある国だけに限定 して、国際宅急便というサービスを始めたことがあり ます。
そのサービスは現在も続いているのですが、過 去に当社が世界ネットワークを構築しようという計画 特集 ヤマト・佐川二強時代 「国内ネットワークを国際事業に活かす」 昨年4月、ヤマト運輸は86年以来アライアンスを組んできたUPS との関係を抜本的に見直した。
事実上、国際宅配貨物の営業活動 を両社が独自に手掛ける体制に組織を改編した。
B to B貨物をメー ンとするUPSに対し、ヤマトは海外から国内の消費者宅に輸入され るB to Cに注目している。
国際事業でも、国内のキメ細かなネット ワークを事業の核に据えている。
ヤマト運輸越島国行専務取締役国際統括本部長 Interview 37 OCTOBER 2001 を持っていたのは事実でしょう。
ただし、今となって はその構想も非現実的です。
日本では二七〇〇以上 もの営業所でネットワークを構築していますが、この きめ細かさを世界でやろうとすると、何万もの営業所 が必要になる。
それを今から時間を掛けて構築してい く余裕はありません」 国際B to C分野の拡大を視野に ――そうなると、ヤマトの国際戦略がますますイメー ジしにくくなります。
「結局、当社の強みは一つしかないんです。
国内の きめ細かいネットワーク。
それだけです。
現在、世の 中では海外で生産したものを日本まで運んで、末端の 消費者にまで配達するという総合的なロジスティクス のニーズが高まっています。
しかし当社はそれに応え きれていません。
せっかく持っている力が国際分野に は活かされていない」 ――つまり、ヤマトの国際部門のターゲットは海外か ら輸入される「B to C」分野の開拓なのですか。
「これまで当社が通販のようなまとまった荷物に、あ まり興味を示していなかったのは確かです。
企業発の 貨物を意識し始めたのも一〇年ぐらい前からです。
し かし、近い将来、海外の倉庫から直接消費者にまで 届くB to Cの物流が大きく伸びる時代が必ず訪れると 見ています。
国内のサービスばかりに固執していると、 頭の上を荷物が飛び越えていくことになる。
国際部門 ではそういう危機感を持っています」 ――日通には日通航空がありますし、佐川は近鉄エク スプレスと提携しました。
このライバル二社に比べ、 ヤマトの国際事業には航空貨物のフォワーディング機 能が欠けています。
UPSはキャリアとしての色が強 い。
この部分をどう担保していくつもりですか。
「小口貨物については既にUPSと提携関係にあり ますので、現在の関係を維持していきたいと考えてい ます。
課題は一般の航空貨物、つまり大口貨物を今 後どう強化していくかです。
今から日通や近鉄と肩を 並べるようになるのは不可能に近い。
この部分を自社 で展開するのか、それとも他社との提携で補うのかを 決めるのはもう少し先になりそうです」 「もっとも、UPSが持っているのは小口のネット ワークだけではありません。
彼らは大口貨物のフォワ ーダーでもあるし、キャリアとしての機能も持ってい ます。
現在は小口貨物での提携にとどまっていますが、 この関係をどう発展させていくか、これから方向付け しなければならないと思っています」 ――具体的な方向性を打ち出すのはいつ頃になりそう ですか。
「来年四月からの次期経営計画で何らかの方向性を示 したいと考えています」 ――海外の生産工場から国内の末端配送までの物流を支援していくとなると、当然顧客からはロジスティ クスの機能も求められるようになります。
ヤマトの場 合、ロジスティクスの分野でも同業他社に比べ、多少 出遅れた感があるのですが。
「ロジスティクスは国内だけで完結するものもあり ますが、これからは国際輸送と密接に結びついている サービスが主流になるでしょう。
そういう意味では国 際部門としてもロジスティクスを強化していく必要が あると認識しています。
昨年は別会社としてYLP (ヤマトロジスティクスプロデュース)を立ち上げ、今 年四月には本社にロジスティクス事業本部を設置しま した。
これらの機能と国際部門の機能をうまくつなげ ることができれば、十分に顧客のニーズに応えられる はずです」

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