ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2006年1号
特集
物流の「見える化」 見えない課題は解決できない

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JANUARY 2006 6 在庫削減はゴールじゃない 日本では一部上場企業であってもグローバルな在庫 量とロケーションを把握できている会社は数えるほど しかない。
「さすがに連結会計がこれだけ進んできた ため、在庫の金額だけは掴むようにはなってきた。
し かし具体的なモノとしての在庫は把握できていない。
欧米企業と比較するとかなり見劣りがする」と、アビ ームコンサルティングの梶田ひかる製造事業部マネジ ャーはいう。
もちろん各現場では自分の管理する在庫を把握して いる。
毎日、注文を引き当てている以上、リアルタイ ムのステータスが分からなければ仕事にならない。
し かしそのデータが経営レベルの意思決定には使われて いない。
各現場で数字を月末に締め 、それを集計して 翌月の中頃になって、ようやく経営陣に報告されると いう時間軸では今や手の打ちようがない。
集計されて上がってくるデータの信頼性にも疑問符 が付く。
例えば顧客に納品済みでも検収をクリアして いない製品は帳簿上、資産として計上されている。
そ れをどう把握するか。
「検収待ち」や「貸し出し」な ど、同じステータスが現場によって違う用語で定義さ れている。
逆に同じ用語が、異なるステータスを表し ている場合も少なくない。
ITを導入することでは問題は解決 しない。
管理用 語は、各現場の業務プロセスを反映している。
システ ムに入力する項目データの定義を上から強制しても、 現場は勝手に判断して入力するだけだ。
それでは実態 は見えない。
業務プロセスも変わらない。
結果として 在庫は減らない。
「そもそも在庫削減は最終的な目的でさえない。
実 際、経営者が本気で減らせと指示すれば、一時的には SCM改革を成功に導くのは最新のITツールや高 度な管理テクニックではない。
どのような課題であ っても今やソリューションは用意されている。
それよ りも問題の存在を直視することができるかどうか― ―「見える化」が問われている。
(大矢昌浩) 解説 見えない課題は解決できない 7 JANUARY 2006 在庫は減る。
しかし、業務プロセスが変わらない限り、 すぐに元に戻ってしまう。
それでは意味がない。
業務 プロセスを効率化することこそ大事なのであって、在 庫はそのための指標に過ぎない」。
五年がかりの改革 で在庫を三分の二に減らすることに成功したリコーの 大門一永SCM推進室室長はそう指摘する。
リコーの改革は、各現場のデータを実際に現場で使 っている管理用語のまま報告させることから始まった。
その結果、同じグループ会社でも現場によって実に 様々な管理をしていることが分かった。
そこからプロ セスごとのベストプラクティスを抽出。
理想的なモデ ルを開発し、 それを各地の現場に導入することで大き な効果を上げた。
見えることが改革のトリガーだった。
同じアプローチで現在は物流コストの削減に取り組 んでいる。
在庫と同様、コストも当初は見えなかった。
財務指標には支払物流費が記載されている。
しかしそ の中身は分からない。
営業マンが自分で納品している 分のコストや、生産部門で発生している物流関連コストなど、社内のどこを探しても見当たらなかった。
半年がかりで物流コストの「見える化」に着手した。
何にどれだけかかっているのか。
材料を集めて、半ば 手作業で実態を整理した 。
その過程で改善のアイデア は自然と生まれてきた。
同時に、トータルでは売上高 に対して七.八%の物流コストがかかっていることが 判明した。
財務諸表上の物流費より一ケタ大きい。
一般的な組み立てメーカーが今日、生産工程で生 み出している付加価値は一〇%にも満たない。
それに 匹敵するコストが物流で発生している。
「工場で血の 滲む思いで改善を繰り返しているのと同じ規模の財源 がそこにある。
見えないことで今までそれが放置され てきた。
見えれば、何をすればいいかは分かる」と大 門室長は意 欲を見せている。
出荷輸送費 在庫精度 注文充足率 完成品在庫回転率 指定時間納品 顧客クレーム 過不足/損傷 欠品(完成品) 入荷輸送費 品目充足率 返品/値引き 未捌き注文(バックオーダー) 在庫陳腐化 入荷品の品質 注文サイクルタイム 顧客満足全般 在庫維持費用 賃貸倉庫料 売掛金回収日数(DOS) 予測精度 送り状の精度 労働力利用の対最大能力比 設備の不稼働時間 作業プロセスの正確性 単位労働当たりの注文処理数 完全注文充足率 ケース充足率 単位時間当たりの製品処理数 荷受けコスト 単位時間当たりの注文処理数 設備利用の対最大能力比 問い合わせ応答時間 単位輸送力当たりの製品処理数 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 60 50 40 30 20 10 0 70 60 50 40 30 20 10 0 (%) (%) (%) 指標類をベースとした検討・ 判断・意思決定のプロセス見直し 指標の元になる データベースの整備 入力データの正確さ マネジメントに関する 教育研修の充実 情報リテラシーの向上 現状のレポートラインの見直し その他 改善すべき部分(担当組織、業務 プロセス)を「見える」ようにする 対応・対処すべき重要性、 緊急性を「見える」ようにする 目標数値に対する進捗度合いを 「見える」ようにする リアルタイムに経営実態を 「見える」ようにする 戦略の進捗度合いを 「見える」ようにする 問題の原因究明がしやすい (ドリルダウン分析) 組織間や地域間などの比較を 「見える」ようにする 要素間の因果関係が 「見える」ようにする 指標間の関連性を 「見える」ようにする IR資料などを通して社外に 対して「見える」ようにする その他 「経営の見える化」推進に向けた目的・切り口 64.6 10項目未満 10項目以上 62.4% 20項目未満 25.6% 20項目以上 30項目未満 6.3% 30項目以上 50項目未満 3.2% 50項目以上 2.6% 0.3 9.5 16.2 22.6 26.6 38.7 42.6 47.2 47.3 57.3 単位当たりロジスティクス コストの対予算比 単位庫内労働当たりの 製品処理数 キャッシュ to キャッシュ サイクルタイム 1.6 17.2 19.2 42.1 46.4 49.6 50.8 22 30 32 36 36 37 37 39 40 43 45 46 47 48 52 52 86 87 79 80 81 77 69 69 69 71 72 63 64 54 59 59 60 61 62 62 見える化ツールの 有効活用に向けた課題 会社内で把握している測定指標 現在活用 している 指標の数 資料:三菱総合研究所「有識者オピニオン調査―組織・経営の『見える化』度」(2004)より 資料:CSC/テネシー大学「ロジスティクス調査1998」より

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