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FEBRUARY 2006 22
全国のカメラ販売店に直送
――近年の業績から伺います。 二〇〇三年の富士フイ
ルムロジスティックスと富士ゼロックス流通の合併に
よって翌三月期は売上規模が従来の約二倍に当たる
六四〇億円強になりました。 その後も売上高は上昇傾
向にあります。
「増収要因の一つは全国のカメラ販売店に対する直
送が始まったことです。 これまで親会社の富士写真フ
イルムは、フィルムを始めとした関連商品を特約店経
由でカメラ販売店に供給していました。 その体制を二
〇〇四年一〇月に変更してメーカー直販に切り替え
たんです。 これに伴って全国に数万店あるカメラ販売
店や家電
販売店に直接納品する物流を当社が担うこ
とになりました」
「また二〇〇五年三月期は、富士ゼロックス系の仕
事でも、大手コンビニが数年に一回の周期で実施する
複写機の入れ替えという特需がありました。 全国の店
舗に設置してある一万台以上の複写機を入れ替える
わけですからかなりの仕事量です」
――二〇〇六年三月期の売り上げは?
「まだ集計中ですが対前年で横這いか、それを少し
超える程度にはなりそうです。 今期は複写機の入れ替
え特需がなくなりますが、カメラ販売店への直送が通
期で効い
てくること、富士ゼロックスの国内販売が見
込み以上に堅調だったことなどで規模を維持できそう
です。 また今年度末には熊本に富士フイルムの偏光板
保護フィルムの新工場が稼働しますので、来期はその
分の増収効果を期待しています」
――渡邊さんが富士フイルムから転籍されたのは合併
した二〇〇三年の約一年後ですね。 親会社からは何を
言い渡されたのですか。
「当面は合併後の社内の融合を進めて、シナジー効
果を得ることがトップとしての使命です」
――統合のステップは?
「私が赴任する前の段階で給与や待遇
などの労働条
件や人事評価制度の整理は済んでいました。 新会社
としてのビジョンも初年度から出来上がっていた。 私
が直接手掛けたのは、一つは組織体制の再編です。 フ
イルム系とゼロックス系の二系統に分かれていた営業
組織を国内事業本部として一本化しました」
「しかし、まだ形を整えただけで、今後は中身の融
合を進めていかなければならない。 物理的にも、国内
の主要都市に二カ所ずつ拠点があったものを、可能な
限り集約していく必要があります。 幸い当社は完全な
ノンアセットです。 そのため整理はしやすい」
「基幹システムも二系列に分かれています。 今後
内
部的には二つのシステムをつなぐインターフェースを
開発し統合していく必要があります。 また現場の実行
系のシステムは、各拠点でかなりカスタマイズしたも
のを使っているのが現状です」
――協力物流会社のパートナーの顔ぶれはフイルムと
ゼロックスでかなり重なっていたのですか。
「いや、だいぶ違います。 そこも統合の必要がある」
――フイルムと複写機では、配送先などはあまり重複
しないのでは? 合併によるシナジー効果は期待でき
ますか。
「確かに配送先としてはあまり重複しません。 しか
し機能としては融合できるものがたくさんある。 例え
ば複写機のハンドリングのノウハウは、フイルムで手
掛けている現像用機械や医療用機器などにもそのまま
使えます。 フイルムの小口配送ネットワークも複写機
のサプライ品と一本
化したいと考えています」
――中長期の目標はありますか?
親会社の富士写真フイルムが富士ゼロックス
を連結子会社化したことを受けて、2003年に富
士ゼロックス流通と合併。 車両や施設を所有し
ないノンアセット型3PLとして、グループのほ
ぼ全ての物流業務を管理している。
(聞き手・大矢昌浩)
注目企業トップが語る強さの秘訣
富士フイルムロジスティックス
――富士ゼロックス流通との合併で売上倍増
総合4位
総合7位
総合11位
総合15位
渡邊清司 社長
「フイルムと複写機の
物流を統合する」
23 FEBRUARY 2006
「グループ全体の経営計画に合わせる形で当社もこ
れまで向こう三カ年にわたる計画をローリングさせて
きましたが、それとは別に当社独自で二〇〇六年度か
らの五カ年にわたる中期経営計画を策定している最中
です」
――株の公開は。
「考えていません」
――柱になるのは?
「経営指針の一つ目がグループへの貢献です。 富士
フイルムと富士ゼロックス向けの仕事が当社の売り上
げの九〇%を占めていますから、これは当然です。 そ
のためにコスト面、品質面の改善を進める。 コスト面
では合併によ
ってボリュームが倍になりましたから、
バイイングパワーを活かしたい。 そして二つ目が外販
比率の拡大です。 現在の一〇%を五年以内に三〇%
まで拡大したい」
――外販のターゲットは?
「当社には一般の物流企業にはない二つの特徴があ
ります。 カメラ販売店への納品ネットワークと複写機
を中心とした精密機械の物流です。 国内の約八〇万
サイトに対し製品だけでなくトナーや紙などの消耗品
の供給やリサイクルを
手掛けている。 これを
武器として当面は精
密機械を扱っている
隣接業界や同業者に
アプローチしていきま
す。 充分、外販に耐
え
るノウハウがあると
考えています」
「例えば複写機は寒
冷地では結露を起こ
します。 それを以前は納品時にドライヤーのような温
風器で結露を溶かして処理していましたが、専用の保
温車を独自開発しました。 既に実用新案も申請しま
した。 保温車で輸送することで結露しなくなり、一台
当たりの設置時間を大幅に短縮できました。 これはお
客様にも大変喜ばれた。 結露は複写機だけの現象では
ありません。 他の積み荷にも応用できます」
親会社の物流は全て担う
――国際展開は?
「富士フイルムグループ全体で中国での生産が拡大
しています。 我々もそれに対応する。 既に昨年二月、
香港に現地法人を設立しました」
――国際物流に関してはアセットも実績もないところ
を、これから出ていくことになります。 勝算はありま
すか。
「海外に工場を新設すれば、それに伴って調達物流、
構内物流、販売物流といった様々な課題が発生します。 それに関して、少なくともグループ内では当社が
一番知見を持っている。 一般の物流専業者と比べて
も、例えば日本の物流体制をそのまま中国に移管する
といった場合には当社のほうがスムーズに仕組みを立
ち上げることができる。 工場周りの物流には機密事項
も多い。 その点も身内だけに安心してもらえる」
「既に富士フイルムおよび富士ゼロックスの両社は、
物流のほぼ一〇〇%を当社にアウトソーシングしてい
ます。 今後も親会社の物流ニーズには全て応えていき
たい。 そのために当社の唯一のアセットとも言える人
材の育成に力を入れていきます。 今後もプロパーの新
卒社員を定期的に採用し、意欲のある人材には積極
的に教育の機会を与えて組織の活性化を進め
ていくつ
もりです」
特集 《平成18年版》
売上規模
100
80
60
40
20
0
利益伸び率
利益規模
売上高
伸び率
1人当たり
収益
累積
利益率
【業績】富士フイルムロジスティックス
【企業概要】
(単位:百万円)
売上高 利益
解 説
親会社の構造改革への対応が焦点に
親会社の富士フイルムグループは現在、構造
改革の真っ最中。 デジタルカメラの急速な普及に
よってフィルム市場は縮小。 7割の国内シェアを握
っていた富士フイルムは事業構造の転換を迫られ
ている。 富士ゼロックスの子会社化もその一環。
これに準じる形で物流子会社も2003年4月1日付
けで合併することに。 合併時点の売上高は、富士
フイルムロジスティックスが292億円、富士ゼロッ
クス流通が340億円。 従業員数はそれぞれ211人
と440人。 事業所数は17カ所と24カ所だった。
親会社が従来の特約店制度を廃止し、直販に
移行したのは、子会社の業績にはプラスに働いた。
今後も親会社の構造改革を上手く自らのビジネス
に取り込むことができるかが業績を左右することに
なる模様。 フイルム系ではカメラ販売店向け納品
配送網のプラットフォーム化、複写機系ではリサイ
クル物流にチャンスがありそう。
所在地 東京都
設立 1963年
資本金 7870万円
従業員数 638人
株主 富士写真フイルム61%、富
士ゼロックス39%。 (富士
写真フイルムは2006年10
月に持ち株会社化の予定)
荷主 富士写真フイルム、富士ゼ
ロックス、外販比率は約10
%
03.03 30,351 579
04.03 64,444 2,377
05.03 67,109 1,680
輸送中の結露を防
ぐ保温車を開発し
た。 届け先での設
置時間が大幅に短
縮された
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