ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2006年6号
物流産業論
トラック運送業を知ろう?

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

フレッシュマンのための JUNE 2006 64 懸念される労働力不足 トラック運送事業のコストは大き く「運送費」と「一般管理費」に分 けられます。
その比率はおよそ八五 対一五になります。
運送費にはドラ イバーの人件費、燃料油代、修繕費、 減価償却費、保険料、施設使用料、 自動車リース料、事故賠償費、道 路・フェリー利用料などがあります。
このうち最大のコストは人件費で、 運送費全体のおよそ四七%を占めて います。
バブル崩壊後の貨物需要の低迷を 背景に、トラック運賃の下落が続い ています。
それに伴い、ドライバー の給与も下降傾向にあります。
厚生 労働省の調査によると、二〇〇四年 のトラック運転手の平均給与は月額 三〇万三八五〇円で、全産業平均で ある三三万二七八四円を一割程度下 回っています。
こうした賃金格差は、長期的には トラック運送業界の労働力不足を招 く原因の一つとなるでしょう。
労働 力を安定的に確保していくためには 賃金の引き上げが不可欠です。
しか し、労働集約型産業で運送費全体の 半分近くを人件費が占めるトラック 運送業界にとって、賃金の上昇は競 争力喪失を意味します。
トラック運 送会社はこのようなジレンマを抱え ているのです。
環境対策も大きなテーマになりつ つあります。
温暖化防止など地球環 境保護の観点からトラック運送業界 にはNOX(窒素酸化物)やCO2 (二酸化炭素)の排出抑制が求めら れるようになりました。
九七年に京都で開催された地球温 暖化防止会議では二〇〇〇年以降の CO2削減目標が決定しました(京 都議定書)。
わが国の目標は二〇二 〇年までの間に九〇年比で六%の削 減を実現することです。
日本のCO 2排出量は全体の約二割を運輸部門 が占めています。
そのうちトラック 運送が占める割合はおよそ三割で、 さらに営業用と自家用の比率は半々 となっています。
NOXやCO2の排出抑制を課せ られることは、トラック運送会社に とって今後の事業発展を阻害する社 会的制約要因となっていくことが考 第3回 過去二回にわたってトラック運送業の基礎知識を整理しました。
今回は トラック運送業が抱えている課題とその対応策について解説します。
環境 負荷の軽減や交通渋滞の緩和など、社会との共生を目指すトラック運送 業の解決すべき課題は山積しています。
(本誌編集部) トラック運送業を知ろう ? 図1 輸送機関別二酸化炭素排出割合(平成14年度) バス1.8% タクシー1.8% 営業用貨物車 16.2% (注)「日本国温室効果ガスインベントリ報告書(2004年10月)」 及び「総合エネルギー統計(平成15年度版)」による 自家用自動車 49.4% 航空4.2% 鉄道2.9% 自家用貨物車18.5% 内航海運5.3% 65 JUNE 2006 えられます。
それでも社会との共生 を掲げるトラック運送業界では環境 問題を前向きに捉えて、アイドリン グストップや自動車NOX法への対 応(首都圏、阪神圏での車種規制)、 スピードリミッター導入といった対 策を積極化しています。
エネルギー利用の効率化を進める ことも課題の一つです。
運輸部門は エネルギーの最終需要の二四%を占 めています。
トラックは運輸部門の エネルギー消費の四〇%を占めてお り、このうち貨物部門では自家用お よび営業用トラックが全体の九〇% に相当します。
トンキロベースでの輸送量全体に 占めるトラック輸送の割合は約半分 です。
そのことからも、いかにトラ ック輸送のエネルギー効率が悪いか が理解できます。
そこで現在、政府 を中心にトラックから鉄道、内航海 運に輸送モードを切り替える「モー ダルシフト」の取り組みが進められ ています。
その一方で、電気自動車やメタノ ール車、CNG(圧縮天然ガス)車 といった低公害車の導入・普及にも 力を注いでいます。
とくに日本通運 やヤマト運輸、佐川急便といった大 手は低公害車の導入に積極的です。
しかし、中小零細のトラック運送会 社にとって低公害車導入はコスト負 担が大きく、業界全体としてはまだ まだ浸透していないのが実情です。
渋滞の経済的損失は十一二兆円 高速道路や大都市圏道路の渋滞が 慢性化していることもトラック運送 業界にとっては無視できない問題の 一つです。
交通渋滞による経済的損 失は十二兆円にも上るとされており、 早急な改善が求められています。
交 通渋滞は輸送時間の増加や配送時間 の不確実性を招く要因であるため、 長年にわたってトラック運送各社の 頭痛のタネとなってきました。
渋滞緩和策としてITS(高度道 路交通システム)などの情報技術・ システムの導入が進んでいます。
具 体的にはVICS(道路交通情報通 信システム)やETC(自動料金収 受システム)といったサービスが順 次スタートし、対象エリアが徐々に 拡大しつつあります。
このうちET Cは高速道路の料金所での混雑緩和 に大きく貢献しています。
トラックの積載効率や運行効率を 改善するための取り組みも進んでい ます。
その一つが「求貨求車情報シ ステム」です。
これは「帰り荷が見 つからない」トラックの空車情報と、 「荷物の運び手が見つからない」貨 物情報をマッチングすることで、ト ラックの空荷走行をなくして運行・ 輸送効率を高めようという試みです。
「求貨求車情報システム」の代表的 なものとしては、全日本トラック協 会が開発し、日本貨物運送協同組合 連合会が運営している「WebKI T」があります。
同システムは会員 数や情報の登録件数で最大規模の求 貨求車情報システムの一つと言える でしょう。
大都市間の幹線輸送では全日本ト ラック協会のバックアップの下、九 四年から特別積み合わせ業者による 共同運行が実施されています。
一方、 都市内ではトラック運送会社が共同 で集配業務を行う共同配送事業が展 開されています。
都市内共同配送で 有名なのは博多・天神地区の事例で す。
トラック運送会社の共同出資で 設立された「天神地区共同輸送」が 同地区で発着する貨物を一元管理す ることで、違法駐車の排除や交通渋 滞の緩和などを実現しています。
さ らに最近では高層ビル内で発生 する貨物の集配業務を共同化する動 きが出始めています。
この分野では 東京・西新宿の超高層ビルを対象に した「摩天楼スタッフ便」(実施主 体は協同組合新宿摩天楼)が広く知 られていますが、このほかにも徐々 に事例が増えつつあります。
ここ数年で相次いで立ち上がって いる超高層ビルを中核とした大規模 商業施設では、何らかのかたちで集 配業務を共同化しているケースが少 なくありません。
施設内で発生する 「館内物流」の管理を、ある特定の トラック運送会社に一括で委託する ことによって納品車両の削減や施設 のセキュリティー向上を図るのが目 的です。
現在、日本通運、ヤマト運 輸、佐川急便といった大手がこのサ ービスに積極的です。
大手が熱心な のはサービスを通じて施設内にオフ ィスや店舗を構える企業の囲い込み が可能になるからです。
図2 輸送機関別二酸化炭素排出原単位(平成14年度) 営業用トラック 自家用トラック 鉄道 内航船舶 航空 (注)「日本国温室効果ガスインベントリ報告書(2004年10月)」及び 「総合エネルギー統計(平成15年度版)」による 0 500 1000 1500 2000 161 971 22 37 1500 1トンの荷物を1km運ぶのに 排出するCO2の比較 (g−CO2/トンキロ) APRIL 2006 66 運賃競争からの脱却を 九〇年の規制緩和以降、トラック 運送業への新規参入は年々増えてい ます。
それに伴う輸送力の供給過多 が原因で、トラック運賃は荷主企業 による値下げ圧力に晒されています。
トラック運送会社のほとんどが中小 零細規模であることは前号で触れま した。
中小零細のトラック運送会社 は特定荷主への依存度が高いため、 常に従属的な立場にならざるを得ま せん。
そのことが運賃低下に拍車を 掛けています。
運賃下落による収入減を補う目的 で、トラック運送会社は物流センタ ーの運営や代金決済の代行など、輸 送以外のサービスの拡充に力を注い でいます。
特に近年は3PLといっ た高度な物流サービスを提供するト ラック運送会社が増えてきています。
単なる運賃競争からの脱却、すなわ ち「量」よりも「質」を重視する経 営へ大きく舵をきっています。
トラック運送会社が「輸送」から 「物流・ロジスティクス」へとカバ ーする領域を拡げていく一方で、倉 庫会社や海運会社、航空フォワーダ ーたちも同様に「物流・ロジスティ クス」へと守備範囲を拡げつつあり ます。
その結果、業種間の垣根がな くなり、トラック運送会社は物流企 業すべてを競争相手として捉える必 要が出てきました。
海外の有力物流 企業の日本市場進出も本格化してい ます。
トラック運送会社を取り巻く 環境は年を追うごとに厳しくなりつ つあると言えるでしょう。
もり・たかゆき流通科学大学商学 部教授。
1975年、大阪商船三井 船舶に入社。
97年、MOL 
庁 stribution 
韮蹌癸 社長。
2006年4月より現職。
著書 は、「外航海運概論」(成山堂)、「外 航海運のABC」(成山堂)、「外航 海運とコンテナ輸送」(鳥影社)、 「豪華客船を愉しむ」(PHP新書)、 「戦後日本客船史」(海事プレス社) など。
日本海運経済学会、日本物流 学会、CSCMP(米)等会員。
東 京海洋大学、青山学院大学非常勤 講師。
今月のポイント

購読案内広告案内