ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2006年7号
物流産業論
国際競争に晒される倉庫業

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

フレッシュマンのための JULY 2006 74 倉庫の定義とは? 倉庫は我々の生活に必要な物品や、 企業の生産活動に欠かせない原材料、 部品、製品を保管して各方面に送り 出す拠点として機能しています。
も ともと倉庫にとってメーンの業務は 保管でした。
しかし近年では時代の 変化とともに、輸配送はもちろん、 在庫管理や流通加工などユーザーか ら求められる機能がより高度化して います。
言うまでもなく、こうした ニーズにきちんと応えていくことが 倉庫業の発展に欠かせない要素とな っています。
倉庫とは何か? 本題に入る前に倉 庫の定義を考えてみましょう。
大辞 泉によると、倉庫とは「貨物・物品 などを貯蔵・保管するための建物、 くら(蔵)」を意味しています。
つ まり工場や商店の倉庫だけでなく、 農家の納屋や家屋の物置でも物品を 保管するための建物であれば、倉庫 であると解釈することができます。
しかし、こうした一般的な概念と 法律的概念は異なります。
大辞泉に は次のような説明も付け加えられて います。
倉庫とは「倉庫営業者が他 人の物品を保管するために設けた建 物、その他の設備」――。
さらに 「倉庫業法」(昭和三一年第一二一号、 第二条)には、「倉庫とは物品の減 失もしくは損傷を防止するための工 作物または物品の減失もしくは損傷 を防止するための工作を施した土地 もしくは水面であって、物品の保管 の用に供するものをいう」と記載さ れています。
したがって法律の面から倉庫を考 えると、倉庫とは物品を保管する施 設としての建物だけでなく、土地や 水面も含まれることになります。
ま た、単に貯蔵することのほかに、物 理的管理を行い、物品の価値を維 持・増加させることが必要条件であ ると言えます。
倉庫業法では「倉庫業を営もうと する者は国土交通大臣の行う登録を 受けなければならない」と規定され ています。
このルールが設けられて いるのは倉庫業が国民生活の基盤を 支える公共性の高い産業であるから です。
倉庫業者として登録を受ける ためには倉庫の種類ごとに定められ た施設・設備基準を満たすとともに、 事業を適切に運営・管理するための 「倉庫管理主任者」を置くことが義 務付けられています。
倉庫の分類とは? 倉庫には、?製造業・流通業が自 ら物品を保管する「自家用倉庫」、 ?倉庫業法による登録を受けた倉庫 業者が他人の物品を扱って保管する 「営業倉庫」、?農業倉庫業法による 認可を受けた農業協同組合が営む 「農業倉庫」、?事業協同組合や漁業 協同組合などが組合員の物品を保管 する「協同組合倉庫」――の四つが あります。
このうち一般に倉庫業と いう場合の倉庫は、?営業倉庫を指 しています。
第4回 明治時代に金融ビジネスとしてスタート。
原木を水面で管理するスペー スを水面倉庫と呼ぶ――。
今回は、市場規模一兆六〇〇〇億円超の倉庫 業について、その歴史や現在直面している課題などを整理していきます。
トラック運送業などと同様、倉庫業も物流ニーズの多様化に的確に対応し ていくことが生き残りの条件となっています。
(本誌編集部) 国際競争に晒される倉庫業 75 JULY 2006 さらに営業倉庫は大きく普通倉庫、 冷蔵倉庫、水面倉庫の三つに分類で きます。
それぞれの特徴は以下の通 りです。
■ 普通倉庫 ――法律上の分類の一〜四 類、六類、七類倉庫の総称。
農業、 鉱業(金属、原油、天然ガスなど)、 製造業(食品、繊維、化学工業、 紙・パルプなど)といった様々な 産業の貨物および消費者の家財、 美術品、骨董品などの財産も保管 ■ 冷蔵倉庫 ――法律上の分類は八類 倉庫に相当。
食肉、水産物、冷凍 食品などを一〇度以下で管理する ことが適切な貨物を保管 ■ 水面倉庫 ――法律上の分類は五類 倉庫。
原木を水面で保管 このうち普通倉庫は五つに分類で きます。
・ 一〜三類倉庫 ――普段目にするこ とが多い倉庫。
建屋型の倉庫で施 設・設備基準によって一〜三類に 分類されています ・ 野積倉庫 (四類)――棚や塀で囲 まれた野積場。
鉱物、材木、自動 車などを保管 ・ 貯蔵槽倉庫 (六類)――サイロや タンクと呼ばれる。
サイロには小 麦、大麦、トウモロコシなどの穀 物を保管。
タンクには石油などの 液体貨物を保管 ・ 危険品倉庫 (七類)―― 建屋、野 積、貯蔵槽、冷蔵などの倉庫に危 険物や高圧ガスなどを保管。
倉庫 業法だけでなく、保管する物品の 種類によって消防法、高圧ガス保 安法などの関連法規を満たす必要 があります ・ トランクルーム (一〜八類)―― 家財、美術骨董品、ピアノ、書籍 など個人の財産を保管。
一〜八類 のどの倉庫でも営業できます 倉庫業のマーケット規模 続いて倉庫業の市場動向に触れて おきましょう。
まず事業者数ですが、 国土交通省の資料によると、普通倉 庫が三九〇二社と最も多く、全体の 七七%を占めています。
次いで冷蔵 倉庫が一一六九社で約二〇%。
水面 倉庫は十二社で全体の一%未満にす ぎません(二〇〇三年実績)。
九〇年代は事業者数が年率二〇% 程度、倉庫の面積・容積および保管 残高が同三〇%程度という高い伸び を示しました。
しかし、二〇〇〇年 代に入ってからは横ばいもしくは微 増で推移しています。
倉庫業はトラック運送業などと同 様に中小企業が多いのが特徴です。
中小企業の割合は約九一%に達して います。
また、兼業比率が高いこと も特徴の一つと言えるでしょう。
現 在、倉庫業者の多くが港湾運送業、 国際輸送業、トラック運送業、不動 産業などを兼業しています。
倉庫業 者の多くは運送業者としての顔も持 っているのです。
国土交通省のデータ(二〇〇四年) によると、物流業界全体の営業収入 は二〇兆七五二四億円でした。
この うち倉庫業は一兆六二一七億円で全 体の七・八%を占めており、トラッ ク運送業、外航海運業、内航海運業 に次ぐ規模です。
事業者数は物流業 界全体が七万二四九八社であるのに 対し、倉庫業は五〇八三社で約七% に相当します。
従業員数は物流業界 全体が一三六万七〇〇〇人であるの に対し、約十一万人、約八%となっ ています。
倉庫業の歴史を知ろう 倉庫は古代から人の営みがある場 所には必ずといっていいほど存在し ていました。
具体的には、米などの 農産物や農具・工具の保管庫として 利用されてきたと考えられています。
江戸時代には各藩や幕府の年貢米を 貯蔵するための蔵が、大阪(坂)や 江戸とその中継地に置かれるように なりました。
また、有力な商人たち も各地に蔵を持っていました。
ただ し、現代のような倉庫業が確立され るのは明治時代以降のことです。
次に、明治時代から今日に至るま での倉庫業の変遷を辿ってみます。
■明治時代近代倉庫業は明治十三年(一八八 〇年)、三菱為替店(現在の三菱東 京UFJ銀行と三菱倉庫の前身)の 設立を機にスタートしました。
同店 には金融部と倉庫部があり、この二 つの部署では保管業と貸庫業からな る蔵敷業務というサービスを提供し ていました。
そしてこの蔵敷業務こ そ日本の倉庫業の始まりだとされて います。
図1 営業倉庫の種類 営業倉庫 普通倉庫 1〜3類倉庫・・・農業・鉱業・製造業・消費財など幅広い物品の保管倉庫 野積倉庫(4類)・・・柵や塀で囲まれた野積場。
鉱物、材木、自動車などを保管 貯蔵槽倉庫(6類)・・・サイロ・タンク。
サイロは小麦・大麦・トウモロコシを保管、 タンクは液状のものを保管 危険品倉庫(7類)・・・危険物・高圧ガスなどを保管 トランクルーム(1〜8類) (8類)食肉・水産物・冷凍食品など10℃以下で保管するのが適切な貨物を保 管する倉庫 (5類)原木を水面で保管 冷蔵倉庫 水面倉庫 JULY 2006 76 当時の保管業とは、倉庫に担保品 を保管して、その代わりに金銭の貸 し出しを行うことを意味していまし た。
利用者からは保管料ではなく、 金利のかたちで利用料を徴収すると いうルールです。
つまりこの頃の倉 庫業は、現在のような物流業という よりも、むしろ金融ビジネスという 意味合いが強かったようです。
担保品を預けた利用者には倉荷証 券という有価証券を発行・提供して いました。
ちなみに、あまり知られ ていませんが、現在でも倉荷証券は 存在します。
もっとも、最近では実 際に倉荷証券が発行されることは滅 多にないようです。
■大正時代 日清戦争と日露戦争を経て、倉庫 業は大きく発展しました。
港湾倉庫 業がスタートしたのはこの頃です。
港湾地域に倉庫や上屋が相次いで建 設され、さらに船舶が接岸して荷役 ができるよう桟橋が造られました。
また、港湾内には鉄道の引き込み線 が敷設されました。
こうして周辺の インフラ整備が急速に進んだことで、 港湾倉庫は海と陸をつなぐ重要な役 割を果たすようになっていきました。
政府系倉庫や冷蔵倉庫が数多く建 設されたのもこの時代です。
政府系 倉庫とは政府が販売を統制していた 米、塩、タバコなどを保管するため の倉庫です。
鉄道駅においては鉄道 省の運営する倉庫が東京・秋葉原や 大阪・梅田に作られました。
さらに 東京、大阪の卸売市場では冷蔵倉庫 の兼営がスタートしました。
■昭和初期〜第二次世界大戦 昭和一〇年(一九三五年)に倉庫 業法が制定されました。
そして倉庫 はこの頃から生産財や消費財、農産 物の需給調整機能を担うようになり ました。
もちろん倉荷証券の発行を 通じて金融機能も果たしていました。
鉄道輸送のための倉庫が内陸部に数 多く設置されたのもこの時代です。
昭和十二年(一九三七年)七月に勃 発した盧溝橋事件を境に日華事変、 太平洋戦争へと進んでいく中で、倉 庫業における規制が強まり、戦時中 は 倉庫も国家統制下に置かれました。
■戦後〜昭和三〇年代 戦後の復興期には運輸省主導によ る倉庫の復興・再建が急ピッチで進 められました。
昭和二三年(一九四 八年)に普通倉庫復興五ヵ年計画が 策定、実行されたこともあって倉庫 の建設が加速しました。
昭和三一年 (一九五六年)には新倉庫法が制定 され、倉庫の営業は許可制になりま した。
こうした倉庫の復興が戦 後の経済成長を支えてきた ことは言うまでもありませ ん。
また、ばら積みの穀物 を保管するためのサイロの 利用が一般的になったのも 昭和三〇年代でした。
実際、 各地の臨海地域には多くの グリーンエレベーターやサ イロが建設されました。
■昭和四〇〜六〇年代 日本の高度経済成長を背 景に倉庫需要が拡大する中、 倉庫業者は新たな物流サー ビスへの対応を迫られるよ うになりました。
海上輸送 におけるコンテナリゼーシ ョンが進展し、輸入貨物が 増えました。
それに伴い臨 海倉庫での保管業務や倉庫での流通 加工業務が増加。
トラックによる配 送の小口化も進みました。
こうした物流ニーズの変化に合わ せて倉庫内の作業方式が大きく変わ りました。
ユニット・ロード・シス テムが普及し、フォークリフトとパ レットによる作業が中心になりまし た。
コンテナの普及によって多くの 倉庫業者がコンテナターミナルの運 営やコンテナ陸送など新たな事業に 進出しました。
モータリゼーション の進展を背景に、郊外型の大規模団 地倉庫が建設される一方で、大都市 の交通渋滞による物流機能低下への 懸念から都市周辺の高速道路の隣接 地に相次いで流通団地が設置されま した。
■平成元年〜現在 平成三年(一九九一年)、 輸入促 進を目的としたFAZ(フリーアク セスゾーン)が全国二二カ所で立ち 上がりました。
これを受けてFAZ 88.3 89.3 90.3 91.3 92.3 93.3 94.3 95.3 96.3 97.3 98.3 99.3 00.3 01.3 02.3 03.3 04.3 2,789 2,853 2,972 3,037 3,168 3,282 3,384 3,469 3,509 3,610 3,727 3,795 3,826 3,852 3,843 3,842 3,902 23,049 24,063 25,395 26,781 27,877 29,741 31,251 32,277 33,048 33,842 35,223 36,424 37,078 37,419 37,111 37,444 37,274 234 232 247 252 263 268 277 291 301 302 308 343 355 362 401 406 373 4,069 3,967 4,001 4,031 4,233 4,338 4,464 4,499 4,455 4,491 4,457 4,442 4,393 4,184 4,199 4,021 3,870 8,259 8,787 8,994 9,398 9,542 9,731 10,058 10,066 10,131 10,262 10,359 10,364 10,476 10,496 10,576 10,664 10,548 21,444 26,071 27,933 29,201 29,070 34,152 38,288 42,897 42,250 47,489 47,939 47,896 47,903 47,876 47,828 47,748 7,869 事業者数 1〜3類倉庫 危険品倉庫 野積倉庫 貯蔵槽倉庫 危険品タンク 年.月 社 千m2 千m2 千m2 千m3 千m3 図2 普通倉庫事業者数および面容積の推移 注) 危険品タンク所轄容積の大幅減は、石油公団法 等の廃止により、2004年2月より国家石油備蓄会社 が倉庫事業者でなくなったため 出典:「数字で見る物流2005年」 77 JULY 2006 地域には輸入貨物を対象にした定温 倉庫や流通加工の設備を持った国際 物流センターが建設されました。
九〇年代後半以降、荷主企業の多 くがSCMなど新たな経営手法を採 り入れています。
結果として従来以 上に在庫削減の圧力が強まっていま す。
物流アウトソーシングが加速す る中で、倉庫業は保管のみならず、 顧客企業の物流全体を請け負う能力 が問われるようになりました。
物流 ニーズの高度化・複雑化への対応策 として3PL事業への進出が求めら れるなど倉庫業自身が変革の時代を 迎えています。
競争相手は同業者だけでない 倉庫業はこれまで国内産業の典型 だったと言えるでしょう。
しかし、 いまや倉庫業も国際化の波を避けら れなくなっています。
外資系企業が 顧客リストに名前を連ねていること だけではありません。
近年ではAM Bブラックパインやプロロジスとい った物流施設に特化した不動産業者 の日本での活動が活発です。
大手倉 庫業者の中には自ら倉庫を保有せず に、こうした不動産業者が開発した 倉庫を借りてオペレーションを提供 している会社も少なくありません。
このように自らアセットを保有して 倉庫業を営むといった従来型のビジ ネスモデルは徐々に減少する傾向に あります。
もう一つの大きな変化は、業界の 垣根がなくなりつつあることです。
先に述べたように倉庫業の特徴の一 つは運送業などを兼営する会社が多 いことでしたが、最近ではトラック 運送会社、船 会社、航空会 社でもあらゆ る物流サービ スをメニュー に加えようと しているのが 実情です。
企 業買収および 提携によるも のなどその戦 略にこそ違い はありますが、ゴールは共通してい ます。
あらゆる顧客ニーズに応えら れる体制を構築することです。
したがって倉庫業における競争は 業界内に限定されたものではありま せん。
倉庫業者にとって物流業界に 身を置くあらゆる企業が競争相手と なります。
もちろん、国内企業のみ ならず海外企業も競争相手です。
最後に、倉庫業が抱える課題や問 題点を整理しておきましょう。
まず課題の一つは?人手不足です。
労働力の高学歴化と高齢化が進んで いることが背景にあります。
これは 倉庫業に限らず、トラック運送業な ど物流業界全体が今後直面する可能 性 が高いテーマです。
従来、倉庫業では預かっている貨 物の出荷について「庫前渡し」が原 則でした。
しかし近年では貨物のト ラックへの積み込みを倉庫業者側が サービスと称して無料で請け負うこ とが一般化しています。
こうして? 作業の範囲や責任の所在が曖昧にな っていることも倉庫業者にとって悩 みのタネとなっています。
?顧客ニーズの拡大や複雑化に的 確に対応していくことも今後のテー マの一つです。
作業のダウンサイジ ング化が進み、流通加工など本来は 顧客が自ら行っていた作業が倉庫業 者にアウトソーシングされています。
守備範囲が拡がったことで、倉庫業 者には物流に関する知識はもちろん、 顧客の商品や商慣習についての知識 を深めることが要求されるようにな りました。
こうした課題を克服し、倉庫業が 発展するために欠かせないのは人材 育成です。
労働力としての人手では なく、ロジスティクスの専門知識を 持った優秀な人材です。
顧客のニー ズを掴み、物流効率化・改善の提案 ができる能力が問われます。
今後もますます物流のアウトソー シングは拡大すると見られています。
3PLなど新しい領域の物流サービ スに取り組んでいくうえで、いかに 優秀な物流マンを確保できるかが倉 庫業者にとって会社発展のカギとな るでしょう。
もり・たかゆき流通科学大学商学 部教授。
1975年、大阪商船三井 船舶に入社。
97年、MOL 
庁 stribution 
韮蹌癸 社長。
2006年4月より現職。
著書 は、「外航海運概論」(成山堂)、「外 航海運のABC」(成山堂)、「外航 海運とコンテナ輸送」(鳥影社)、 「豪華客船を愉しむ」(PHP新書)、 「戦後日本客船史」(海事プレス社) など。
日本海運経済学会、日本物流 学会、CSCMP(米)等会員。
東 京海洋大学、青山学院大学非常勤 講師。
今月のポイント 図3 倉庫で行われる主な作業 出 庫 仕分け ピッキング 流通加工 保 管 入 庫 検 品 データ:日本倉庫協会ホームページより

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