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SEPTEMBER 2006 20
3PLマーケット成長のカギ
中国で3PLマーケットが成長するうえでの主な課
題としては、?物的インフラ、?品質管理、?政府の
統制の三つが挙げられる。
?物的インフラ:輸送インフラが未整備。 例えば航
空輸送では、主要都市間では航空路線が増えてはい
るものの、大部分は未だに部分的である。 また、旅客
輸送が貨物輸送よりも優先されている。 最も広範囲に
渡っている輸送インフラは鉄道であり、バルク輸送の
九〇%以上に使われている。 トラックは完成品の主要
な輸送手段だが、全国的なネットワークがない。 全国
規模の高速道路は二〇一〇年の完成を待たなければ
ならない。 また、通行料金が全体の輸送コストの二
〇%を超えるという問題もある。
?品質管理:中国のサプライヤーは品質面で問題
がある。 低コストの調達をとりまく環境は、必要とさ
れるレベルまで達していない。 原材料から最終製品に
至るまでの環境が整備されていない。 知的所有権の保
護も課題の一つだ。
?政府の統制:輸入税が高い。 また、税関の手続
きが複雑で透明性に欠ける。 担当者によって異なる当
局の対応に手を焼いた経験を持つ人は少なくない。
これらの課題に加えてもう一つ忘れてならないのが、
中国では地域によって経済レベルが大きく異なる点だ。
沿岸地域の経済は著しく発達しているが、内陸部では
経済レベルが非常に低い。 ロジスティクスの課題も、
内陸に行くほど多くなる。 地域ごとの違いを理解する
ことが、中国戦略を成功させる鍵となる。
当社の親会社であるキャタピラーは、中国で三十年
以上の歴史を持つ。 製品サポートセンターの設立、販
売特約店の設立、技術移転、製造のジョイントベンチ
ャー設立など、着々と中国での存在を強めてきた。 九
七年には、三峡ダムの建設にキャタピラーの機器が使
用された。 近年、キャタピラーにとって中国の重要度
は高まっている。 二〇〇三年以降、工場や関連会社、
イノベーションセンターの設立など、投資を加速させ
てきた。
キャタピラー製品の競争力は、大きく二つに要約で
きる。 一つは品質、つまり信頼性と耐久性だ。 そして
もう一つは物流ネットワークだ。 機器の正常な稼動を
保ち、価値を最大限に引き出すためには、我々の物流
ネットワークが欠かせない。
上海に拠点を新設
昨年まで、中国市場向けの補修用部品の供給はシ
ンガポールから行っていた。 中国向けの販売特約店は
三四あり、機器と補修用部品を扱っている。 シンガポ
ールから出荷する場合、通関も考慮すると船便だとお
そらく三週間、航空便でも四、五日かかる。 中国市場においてキャタピラーが成長するに伴い、現地顧客
の要求が厳しくなった。 中国でも、キャタピラーのキ
ー・コンピテンシーである、信頼と品質、機器の価値
をさらに高めたいと考えた。
調査と検討の結果、「チャイナ・ディストリビュー
ション・センター」の設立を決め、二〇〇六年三月に
正式稼働した。 場所は上海の臨港地区。 洋山深水港、
浦東空港、虹橋空港、鉄道駅といった主要な輸送タ
ーミナルの近くに位置している。
現在は中国と香港のディーラーに向けてサービスを
提供している。 年末までに韓国向けにも拡大し、来年
にはモンゴル向けにも拡大していく計画だ。 当面は親
会社の専用施設として機能する。 センターの設立以来、
中国のディーラーは、高いアベイラビリティー(入手
CATロジスティクス
――補修用部品の拠点を上海に
CATロジは、フォードやダイムラー・クライスラーを
顧客に持つ3PL企業だ。 上海に拠点を新設し、ビジネス
の拡大に期待を寄せる。 中国部門の責任者が、3PLを取
り巻く環境と自社の取り組みについて解説する。
キャタピラー・ロジスティクス中国鐘暁鳴総経理
第2部CSCMP第2回中国大会報告
21 SEPTEMBER 2006
可能性)と短いデリバリータイムを保証する国内の部
品倉庫の存在を享受している。
新たな通関システムを開発
このセンターは、中国と北アジアのディーラーに向
けたDCであり、グローバルな物流ネットワークにお
いて他の地域DCとつながっている。 キャタピラーの
補修用部品は、世界全体でのアベイラビリティーが九
九・七%だ。 部品をオーダーしたら、九九・七%の確
率でオーダーした部品をすべて手に入れることができ
る。
これを支えるのが、グローバルな物流ネットワーク
だ。 例えば、成都のディーラーは上海のこのセンター
に部品をオーダーする。 在庫がある部品は受注当日の
出荷が可能だ。 在庫がない部品は、情報システムが最
寄りのセンターであるシンガポールのセンターの在庫
をリアルタイムで検索する。 シンガポールにも在庫が
ない場合、緊急オーダーとして世界中のセンターの在
庫を検索する仕組みになっている。
チャイナ・ディストリビューション・センターの広
さは二万一〇〇〇平方メートルで、将来的には五万
平方メートルまで拡張が可能だ。 センター内は保税セ
クションと非保税セクションに分かれている。 自由貿
易区の外側を選んだのは、保税と非保税の両方のオペ
レーションを行いたかったからだ。 中国で製造した部
品を中国のディーラーに販売するケースもあれば、米
国やシンガポール、日本から輸入した部品を中国や韓
国、香港、モンゴルのディーラーに供給するケースも
ある。 両方のケースに柔軟に対応するため、保税セク
ションと非保税セクションの両方を備えるという選択
をした。
このセンターの設立で、緊急オーダーに対して受注
後二十四時間以内の出荷が可能になった。 とはいえ、
保税セクションの部品を出荷する場合は困難を伴う。
通常であれば、まず税関に申告をして、実際に部品を
出荷する前に税金を支払わなくてはならず、手続きに
時間がかかるからだ。 その対応策が「バッチ通関」だ。
税関への申告を行わずに保税セクションから国内向け
の出荷を行い、事後に週単位でまとめて通関手続きを
行う。 バッチ通関は、税関の営業時間に左右されない、
緊急オーダーへの迅速な対応を可能にしている。
また、上海税関によるトラッキングを可能にする情
報システムも作り上げた。 これにより、上海税関はこ
のセンターにおける在庫の量や動き、履歴を知ること
ができる。 現物を動かした後に申告するとは言っても、
税関はこのシステムによってセンターを監督している
というわけだ。
チャイナ・ディストリビューション・センターを稼
働し、CATロジは中国の将来的な成長に思いを巡
らせている。 中国がグローバルなロジスティクスセンターになると考えているからだ。 中国は多くの企業に
とって製造拠点であり、低コストの調達拠点だ。 今後、
ローカルマーケットの活性化により、中国への投資は
ますます活発になる。
北米・中国間やEU・中国間のエンド・トゥー・
エンドのソリューションを既存顧客と潜在顧客に販売
することを可能にするのは、ワールドワイドなネット
ワークの最適化、補修用部品と製造のための倉庫オペ
レーション、中国全土に渡る輸送マネジメントソリュ
ーション、大陸や国をまたいだ輸送マネジメント、小
量貨物の積み合わせサービスだ。
新興市場における新しい戦略的サービスは着々と進
んでいる。 中国の成長が、キャタピラー及びCATロ
ジの発展に大いに貢献するものと期待している。
CATロジスティクスの
鐘暁鳴総経理
上海に新設したチャイナ・ディストリビューション・センター
※このレポートは2006年度CSCMP中国会議での講義内
容を本誌編集部がまとめたものです。
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