ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2006年10号
特集
激安物流 1個1 0 0 円の当日配達便――シズナイロゴス

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

一〇〇円でペイさせるアイデア 札幌市に本社を置くシズナイロゴスは年商約二四 億円の中堅物流会社だ。
主力は食品メーカーの物流 センター運営などを手掛ける3PL事業で、売上高 全体の約五八%を占める。
次いで特別積み合わせ事 業が約二二%、一般貨物運送事業が約一六%という 構成比になっている。
このうち特積み事業は、規制緩和が実施された九 〇年以降、苦戦を強いられてきた。
取扱量はピーク時 の三分の一程度に激減した。
「3PL事業は順調に成 長している。
ただし、特積みの落ち込みは予想以上。
巻き返しの必要があった」と伊藤昭人社長。
将来の 株式上場を目指す同社にとって、3PLに並ぶ収益 の柱として、運送事業をどうやって再構築するかが経 営の大きなテーマとなっていた。
競合他社の出方を伺いながら、運賃を上げたり下げ たりする従来のやり方ではいつまで経ってもお客さん から信頼されない。
これからはヤマト運輸の「宅急 便」のように、きちんと値段の決まった物流商品が支 持されるようになるだろう――。
そんな意識の強かっ た伊藤社長が中心となって新たに開発したのが「一〇 〇円ロゴス便」だ。
「一〇〇円ロゴス便」はそのネーミングの通り、集 荷〜配達までの運賃を一〇〇円に設定した格安物流 サービスだ。
昨年十一月にサービスを開始して以来、 取り扱い個数は順調に拡大している。
現在では約五 〇社と契約を交わし、月間の売り上げは二〇〇〜三 〇〇万円を確保。
「不振の続く特積み事業に代わる新 たなビジネスとして大化けするかもしれない」と伊藤 社長は期待を寄せる。
それにしても、わずか一〇〇円という料金で本当に OCTOBER 2006 20 商売として成り立つのか。
物流の専門家ならずとも、 疑問を抱くに違いない。
しかし、その商品規格や集荷 〜配達に至るまでのオペレーションの仕組みを知れば、 一〇〇円という価格設定でもきちんと採算が取れてい るということが理解できるはずだ。
商品規格から説明しよう。
「一〇〇円ロゴス便」に は、?集荷・配達エリアは札幌市内のみ、?配送距 離は三〇キロメートルまで、?貨物の重量は一個一 〇キログラム以下、?配達時間の指定はナシ、?個 人宅への配達や日曜祝祭日の配達は不可、?月に一 〇〇個以上を出荷してもらう契約を交わし、一〇〇 個に満たない場合でも月額一万円を徴収する――な どサービスを利用するうえでの様々な制約が設けられ ている。
このように対象となる貨物を絞り込むととも に、コスト要因となる付帯サービスをできるだけ省く ことによって、一〇〇円という破格な料金設定を可 能にした。
続いてオペレーション。
こちらにもコスト抑制のための工夫が随所に見られる。
「一〇〇円ロゴス便」の 集荷〜配達までを担当するのは札幌市内に配置され ている路線便の集配トラックだ。
ドライバーたちは通 常行っている路線便の集荷業務の傍らで「一〇〇円 ロゴス便」の集荷・配達を処理している。
具体的には、 顧客Aや顧客Bから路線貨物を集荷した後、顧客C から「一〇〇円ロゴス便」を集荷。
顧客Dに路線貨 物を取りにいく途中で顧客Cから預かった「一〇〇円 ロゴス便」を指定の納品先に配達するという流れだ。
つまり「一〇〇円ロゴス便」は路線便の集荷トラッ クの走行ルート上で、集荷〜配達を完結できる貨物だ けを対象にしている。
「路線便のトラックが集荷で立 ち寄るのは一日に四〜五カ所程度。
ただ走行している だけの集荷と集荷の間にロゴス便の仕事を差し込むこ 1個1 0 0 円の当日配達便 ――シズナイロゴス シズナイロゴスの「100円ロゴス便」が好評だ。
配送距離 30キロメートル以内、重さ1個10キログラム以下の貨物を 対象にしたサービスで、運賃はたったの100円。
営業マンが 商品配送を兼務するなど自家物流を展開している業種をタ ーゲットに取扱量を伸ばしている。
(刈屋大輔) 第2部物流アイデア商品の使いみち ` W 21 OCTOBER 2006 とで、トラックの稼働率を高めている。
ロゴス便の集 配を加えても路線便の通常業務には影響がない。
トラ ックは従来通りの時間にターミナルに戻ってきている」 と伊藤社長は説明する。
「一〇〇円ロゴス便」が支持される理由の一つに、路 線便に比べて輸送品質が高いという点がある。
一台の トラックが集荷〜配達までを担当し、途中で積み替え などの作業を必要としないため、荷痛みが発生しない。
さらに一人のドライバーが集荷と配達を行うため、誤 配も起こらない。
実は収益性の高いビジネス このように「一〇〇円ロゴス便」は知恵と工夫で一 〇〇円という運賃を実現している。
にもかかわらず、 同業他社からは「明らかなダンピング行為であり、運 賃低下を助長する恐れがある」といった非難の声が上 がっているという。
しかし、批判は的外れであると言 わざるを得ない。
きちんと計算すれば、「一〇〇円ロ ゴス便」はダンピングどころか、むしろその運賃単価 は現在市場で取引されている水準に比べ割高であるこ とが理解できる。
例えば、北海道では現在、路線便の運賃が個建て の場合、配送距離六〇キロメートルで一ケース(重さ 三〇キログラム)二五〇円前後とされている。
一キロ グラム当たりの運賃は約八・三円だ。
これに対して 「一〇〇円ロゴス便」は配送距離が二分の一の三〇キ ロメートルであるうえに、一キログラム当たりの運賃 は一〇円だ。
両者のどちらが収益性の高いビジネスで あるかは改めて説明する必要がないだろう。
もっとも、シズナイでは「一〇〇円ロゴス便」の営 業ターゲットを競合相手の少ない分野に絞り込むなど 市場を混乱させないように配慮もしている。
発売して 以来、同社がアプローチを続けているのは営業マンが 商品配送など物流業務を兼務している自家物流を展 開する企業が中心だ。
「営業マンを本業である営業に 専念させ、物流はアウトソーシングする。
そのほうが コストメリットは大きい」といったセールストークで、 「一〇〇円ロゴス便」の利用を促している。
最近ユーザーとなった米の販売会社ではドラッグス トアや食品スーパー向けの緊急配送や小口配送に「一 〇〇円ロゴス便」を活用している。
当初、同社は一日 当たり一〇キログラムの米俵を一〜二個出荷する程 度にすぎなかったが、サービスの利便性を評価し、現 在では委託物量を徐々に増やしつつある。
同社では従 来、緊急時には自社社員がハンドルを握って商品を納 品するケースもあったという。
現在、シズナイでは「一〇〇円ロゴス便」の新たな ターゲットの一つとして医薬品業界に目を向けている。
医薬品卸から病院や調剤薬局への商品供給は依然と して商物一体型で処理されており、大きなビジネスチャンスがあると見ている。
医薬品は人命に関わる緊急 性の高い商品も多く、受注当日納品を求められること が少なくない。
それだけに「集荷当日配達のロゴス便 がマッチするはずだ」(伊藤社長)。
さらに百貨店やホテルなどに商品を供給している地 場の総菜メーカーやパン・ケーキ専門店にもニーズが 眠っていると踏んでいる。
この二つの業種はいずれも バン型車などを使った自家物流を基本としているから だ。
ただし、温度管理が必要な商品であるため、事業 化する場合には新たに定温トラックや保冷ボックスを 用意しなければならない。
ドライ貨物よりもコストが 掛かるだけに、さすがに「一〇〇円」という料金体系 ではペイしそうにない。
新商品「二〇〇円ロゴス便」 が誕生する可能性もありそうだ。
シズナイロゴスの 伊藤昭人社長 札幌市内に配置している路線便の集配トラッ ク10台で「100円ロゴス便」を扱っている

購読案内広告案内