*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。
年間利回り約三〇%
――二〇〇六年十一月末に第一号ファンドの運用を
終了しました。
「第一号ファンドは二〇〇四年三月に立ち上げたも
ので、当初は運用期間を五年間に設定していました。
しかし、足元の不動産市況がよくなってきたため、フ
ァンドに組み込んでいた物件を売却し、予定よりも早
く投資家の皆さんにお金を返すことにしました。 二一
億円を集めて、分配金の総額は三九億円。 投資倍率
は一・八六倍。 総投資額は六〇億円で、対象は物流
施設が七つと商業施設が四つの計十一物件でした」
――第一号ファンドの特徴は?
「比較的規模の小さい物流施設を対象にファンドを
組成した点です。 恐らく日本の物流不動産ファンドで
は初めてのケースだったのではないでしょうか。 既存
の物流不動産ファンドに組み込まれている物流施設は
三〇〇〇坪超の大規模な物件がほとんどです。 当社
のように小規模の物流施設をターゲットにした企業は
他に見当たりません」
――敢えて規模の小さい物件を狙うことに何か理由が
あったのですか?
「生い立ちが影響しています。 もともと当社は、オ
ーナーから自分たちで物件を借りて賃貸保証し、その
物件をテナントに貸すサブリース事業から出発してい
ます。 今も主力はサブリースです。 現在、全国で約七
六〇の物流施設をサブリースしているのですが、扱っ
ているのは一物件当たりの延べ床面積が三〇〇〜四
〇〇坪程度と小規模なものが中心です。 サブリースし
ている物件の稼働率は九八%を超えています。 つまり
当社は小規模物件のテナント探しで他社よりも優位
性がある。 そのため小規模物件でポートフォリオを組
むファンドを立ち上げることができました」
「一般に小規模物件はファンドに向かないとされて
います。 例えば一〇〇〇億円規模のファンドを組む場
合、一物件が一〇〇億円の資産なら一〇物件の管理
で済む。 これに対して一物件が一〇億円の資産だと一
〇〇物件の管理が必要になるからです。 しかし当社は
七六〇物件を日々マネジメントしているサブリース部
隊をインフラとして持っている。 そのため小規模物件
でファンドを組んで管理対象が増えても、十分に対応
できるのです」
――すでに第二号、第三号のファンドを立ち上げてい
ますが、運用のスタンスに変わりはありませんか?
「第一号では既存物件を取得するかたちでファンド
を組成しましたが、第二号以降では開発型に力を入れ
ています。 既存物件はテナントの付いているケースが
ほとんどで、新たにテナントを探す必要がないため、
物流不動産のノウハウに乏しいファンドでも購入でき
てしまう。 誰でも買えるため、入札になると、どうしても金額の跳ね上がる傾向がある。 高い値段で購入す
れば当然、利回りは低く設定せざるを得なくなる。 既
存物件のデメリットです」
「これに対して開発型は新たにテナントを見つけな
ければならないというリスクがある分、参入者が少な
い。 開発型を手掛けることができるファンドや事業会
社は数が限られているため、きちんとテナントさえ見
つけられれば、既存物件よりも大きなキャピタルゲイ
ンが見込めます」
――二〇〇七年春以降に相次いで稼働する開発型物
件はいずれも従来に比べ規模が大きくなっています。
「全国に散らばっていた物流拠点を数カ所に集約化
する荷主企業や、3PLビジネスである程度まとまっ
たボリュームの仕事を請け負う物流企業は、規模の大
コマーシャル・アールイー――
中小型物件にもニーズはある
JANUARY 2007 24
亀山忠秀コマーシャル・アールイー
取締役AM事業本部ファンド事業部長
小規模物件を対象にしたファンドを立ち上げて、短期間
で大きな成果を上げた。 現在はサブリース事業で囲い込ん
だテナント向けに開発型拠点を提供している。 今後は年に
100〜200億円規模の投資を計画している。
(聞き手・大矢昌浩、刈屋大輔)
日本の物流資産を始末する
きい物流施設を欲しています。 テナント候補のそうし
たニーズに応えようと開発を進めていった結果、物件
の規模が大きくなりました。 ファンドの規模が膨らめ
ば運用益も大きくなる。 そのために意識的に大規模物
件の開発を進めているファンドも少なくありませんが、
当社の場合はあくまでもニーズありきでそうなってい
るということを理解してもらいたい」
「投資家に対するファンドのセールスの仕方も改め
つつあります。 以前はお金だけを集めて『投資先につ
いては当社を信じて任せてください』というやり方で
したが、最近は『こういう物流施設を開発し、このく
らいの利回りで運用していくつもりなので投資しても
らえませんか』とアプローチしている。 物流不動産の
取引が活発になって入札に参加するファンドが増えて
きたため、狙っていた物件が手に入らないケースも少
なくない。 物件の価格が上昇し、それに伴って利回り
も低下しており、いわゆる『おまかせファンド』は運
用が難しくなりつつある。 これに対して当社は?大化
け〞を狙うのではなく、安定した利回りを長期間にわ
たって続けていく息の長いファンドを目指しています」
――低い利回りでも投資家は集まりますか?
「例えば損保会社などコンサバティブ(保守的)な
投資を指向する投資家も存在します。 利回りが低くて
も、きちんとテナントが付いて安定的な収益を見込め
れば、彼らは投資してくれます」
プロパティマネジメントが強み
――ファンド事業の投資計画は?
「今後は年間に一〇〇〜二〇〇億円規模の投資を続
けていきたい。 現在、走っている二本のファンドの資
産残高合計は約一三〇億円。 二〇〇七年三月には新
たに一〇〇億円弱のファンドを立ち上げる予定です」
――控えめな計画に聞こえます。
「他のファンド会社は『何年までに数百億円、いや
数千億円やるぞ』と鼻息を荒くしていますが、それに
比べれば、当社は大人しいほうだと思う。 大手のよう
に資金力があるわけでもないので、入札になったら勝
ち目はない。 相対の取引で土地を押さえ、テナントを
見つけ、施設を開発してファンドに組み込んでいく。
これをコツコツとやっていくしかありません」
――ファンド事業での強みは?
「物流施設のPM(プロパティ・マネジメント)ノ
ウハウです。 日本ではこれまで物流施設は所有が基本
で、賃貸で利用されるケースは限られていました。 そ
のため物流施設のPMに強い不動産会社がほとんど
存在していないのが実情です。 ファンド事業を成功さ
せるためには、PMの数ある機能の中でもとくにテナ
ント集めの能力が重要になります。 いくら立派な物件
を用意しても、テナントが見つからなければ、ファン
ドはうまく機能しません。 当社の場合、サブリースを通じてテナントの候補企業と接点があったり、物流施
設管理の経験が豊富な分だけ、他社よりも有利だと
自負しています」
――物流不動産をターゲットにしているファンドには、
資金集めは得意でも、PMを苦手としているところが
少なくありません。
「実は他のファンドから『PMの部分だけをお願い
できないか』という依頼が結構寄せられています。 そ
して当社はそうした要請にも応じている。 自分たちで
も物流施設を開発してファンドを運営していく一方で、
他のファンドからのPMの仕事も増やしていきたいと
考えています。 他のファンドは必ずしも競合相手では
なく、パートナーという位置づけになる可能性もあり
ます」
25 JANUARY 2007
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