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MARCH 2007 82
国際宅配便の歴史
国際宅配便とはクーリエ・サービス
(Courier Service)と、スモール・パ
ッケージ・サービス(Small Package
Service=SPS)を指します。 クーリ
エ・サービスとは信書以外の書類およ
びそれに類する物品の複合一貫輸送で
す。 一方、スモール・パッケージ・サ
ービスとは少量・小型貨物の複合一貫
輸送で、対象となる貨物は設計図、パ
ンフレット、カタログ、ギフト品、機
械やコンピュータの関連部品などとな
ります。
もともとクーリエ・サービスとスモ
ール・パッケージ・サービスは米国内
限定のサービスとして誕生したもので、
それが国際間輸送へと発展しました。
その特徴は航空輸送やトラック輸送な
どを組み合わせることで、ドア・ツ
ー・ドアのサービスを提供する点にあ
ります。
国際宅配便は一九六九年、米国サン
フランシスコで三人の弁護士が米国西
海岸〜ハワイ間の書類の緊急輸送需要
に応えるために会社を設立したのが最
初と言われています。 従来、同区間で
は書類も船積みで輸送されていました。
新会社は三人の名前であるDalsay、
Hillbram、Lyndの頭文字を取ってD
HLエクスプレス(DHL Express)と
名付けられました。
国際宅配便の発展は、カーター政権
時代に米国で推進された運輸全般にお
ける規制緩和によって後押しされまし
た。 九七年には「Cargo Reform Act」
が成立したことで参入規制が撤廃され、
米国内航空貨物輸送事業は自由化され
ました。
その結果、既存の航空フォワーダー
が新たに航空機を保有してエアライ
ン・キャリアを兼業することが可能に
なったほか、米国内のクーリエ・サー
ビス業者やスモール・パッケージ・サ
ービス業者のエアライン・キャリア化
が進みました。
また、トラックによる急便輸送を展
開する業者が航空機を所有し、新たに
国際宅配便市場に進出するケースも相
次ぎました。 UPSはその代表格です。
さらに航空フォワーダーから国際宅配
便事業に参入したケースもあります。
ドイツポストやTNTは郵便事業から
の進出組です。
日本における国際宅配便事業は、海
外への新聞輸送を一手に担う機関とし
て海外新聞普及(OCS)が七五年に設
立されたのが最初です。 それに先立つ七
二年にはDHLが香港に「DHLイン
ターナショナル(DHL International
)」
を設立し、同時に日本支社を立ち上げ
て日本での営業を開始しています。 そ
の後、同社は七九年に日本法人として
「DHLジャパン(DHL Japan)」を置
き、日本での営業を本格化しました。
さらにエメリー、エアボーン、TN
Tをはじめとする外資系国際宅配便業
者が相次いで日本市場に進出。 日本の
トラック運送会社や航空フォワーダー
もこの事業に参入しました。 現在、日
本でサービスを提供している国際宅配
便業者の数は外資系を含めて約三〇社
最終回
企業活動がグローバル化し、それに伴い航空貨物の輸送需要が
高まりつつあります。 すでに現在では世界の貿易総額の三〇%以
上が航空輸送で運ばれています。 フェデックス、UPS、ドイツ
ポスト(DHL)、TNTといった国際インテグレーターの活躍に
は目覚ましいものがあります。 連載の最終回は国際宅配便とイン
テグレーターについて解説します。
国際宅配便とインテグレーター
83 MARCH 2007
に達しています。
インテグレーターとは?
最近よく耳にするインテグレーター
とは、航空機を運航するキャリアであ
ると同時に、フォワーダー機能を有す
る物流事業者を指します。 フォワーデ
ィングや貨物代理店など全ての機能を
持ち、自社で複合一貫輸送サービスを
完結できる企業です。 国際宅配便では
パッケージ運賃を設定してドア・ツ
ー・ドアの一貫輸送サービスを提供し
ますが、必ずしも航空機の保有を前提
とするわけではありません。
代表的なインテグレーターとしては
米国のUPSやフェデックス、ドイツ
ポスト傘下のDHLやTNTなどが挙
げられます。 これらの企業はいずれも
航空輸送だけでなく、3PLを含めた
ロジスティクスサービスの提供にも力
を入れています。 インテグレーターは
総合グローバルロジスティクス企業で
あるとも言えるでしょう。
もともと航空貨物は荷送人
(Shipper)と荷受人(Consignee)の
間に航空会社(Carrier)と航空会社
の貨物代理店(Cargo Agent)が介在
する構造になっていました。 航空会社
は空港から空港までの輸送のみを担当
し、通関業務や空港までの輸送は貨物
代理店が請け負う分業体制でした。 こ
の仕組みでは貨物に対して航空会社の
航空運送状(Air Waybill
)が発行さ
れました。
ところが、航空フォワーダーの登場
でこの仕組みに変化が生じました。 航
空会社の運賃は重量逓減方式で、重量
が増すごとに運賃単価が低くなります。
フォワーダーは複数の荷送人に対して
自社のフォワーダー運送状である
House Air Waybill
を発行することで、
自らが航空会社に対する荷送人となり
ます。 これが混載輸送(コンソリデー
ション)です。 フォワーダーは航空会
社に支払う運賃と個々の荷送人から受
け取る運賃の差額を利益とします。
米国における一連の規制緩和によっ
てフォワーダーと航空会社の垣根が取
り払われ、すでに航空機を保有してい
たエメリー、エアボーン、バーリント
ン、そしてUPSやフェデックスとい
ったフォワーダーたちが相次いで航空
宅配便市場に進出しました。 彼らのう
ちハブ・アンド・スポーク方式の輸送
システムを武器に急成長を遂げたのが
UPSとフェデックスです。
ハブ・アンド・スポーク方式とは、
米国各地で集荷した貨物をいったん拠
点空港(ハブ)に集めて方面別に仕分
けした後、航空機で地方空港に輸送し
て翌朝には目的地に配送するシステム
です。 拠点空港と地方空港を結んだネ
ットワークを自転車の車輪に見立てて
ハブ・アンド・スポークと呼んでいま
す。 ちなみにUPSは米国ケンタッキ
ー州のルイビルに、フェデックスはテ
ネシー州メンフィスに拠点空港を設置
しています。
従来の航空貨物輸送では荷送人から
荷受人に貨物が届くまでの作業が四〇
工程に達していましたが、インテグレ
ーターはこれらをすべて自社で行うこ
とで一〇工程にまで減らすことができ
ました。 一社完結型で輸配送を行うこ
との最大のメリットは情報システムの
活用で貨物追跡の一元管理が可能にな
ったことでした。
インテグレーターの業務は郵便業務
と重なる部分があります。 そのため、
ここ数年はインテグレーターと郵便事
業者による融合が進んでいます。 例え
ば、フェデックスは二〇〇一年に米国
郵便(US Postal Service)と契約を
交わし、航空郵便の輸送業務を引き受
けました。 現在では米国内すべての郵
便局にフェデックスのドロップボック
スが設置されています。
先述した通り、米国では航空分野の
規制緩和を契機にインテグレーターが
誕生しました。 これに対して欧州では
民営化された郵便会社が国際宅配便事
業者を買収してインテグレーターへと
進化しました。 その代表格はドイツポ
ストとオランダポストです。 ドイツポ
ストは民営化後にDHLを傘下に収め、
一方のオランダポストはオーストラリ
アのTNTを買収してインテグレータ
ーとしての地位を確立しました。
航空貨物のアライアンス
世界最大の航空機メーカーであるボ
ーイングでは、国際航空貨物の輸送量
が今後一五年間にわたり年平均六・
四%の伸びで推移すると予想していま
す。 とくに小口航空貨物は一〇%以上
の伸びが期待されています。 こうした
背景から航空会社は勢力を拡大しつつ
あるインテグレーターへの対抗策とし
て、新商品・新サービスの開発、販売
を急いでいます。
MARCH 2007 84
そのうちの一つがタイム・デフィニッ
ト・サービス(Time Definite Service
=時間厳守サービス)です。 このサー
ビスは、航空会社が?貨物の指定便へ
の搭載を保障、?出発の締め切り時刻
を延長、?到着後の空港での待ち時間
を短縮、?到着時刻を確約――すると
いうものです。 通常よりも割高な運賃
が設定されますが、約束通りのサービ
スが提供されなかった場合は、通常運
賃との差額が利用者に返却される仕組
みになっています。
タイム・デフィニット・サービスは
ルフトハンザカーゴが「td.-Flash」と
いう商品名で売り出したのが最初です。
そして他社も自社路線を対象に同様の
サービスを開始してルフトハンザに追
随しました。
航空会社ではこのタイム・デフィニ
ット・サービスや通常の国際小口貨物
サービスについて他の航空会社とアラ
イアンスを構築することで、相互乗り
入れや地上ハンドリングの共通化など
に取り組んでいます。 こうして対イン
テグレーターへの競争力強化を図ろう
としているわけです。
もっとも、インテグレーターのサー
ビスがドア・ツー・ドアの一貫輸送で
あるのに対し、集荷・配送機能を持た
ない航空会社のタイム・デフィニッ
ト・サービスはエアーポート・ツー・
エアポートの輸送にすぎません。 イン
テグレーターとのサービスレベルの差
は歴然としています。
航空会社は旅客と同様、貨物分野に
おいてもアライアンスを通じて競争力
を高めようとする動きを活発化してい
ます。 二〇〇〇年四月にはルフトハン
ザ航空、シンガポール航空、スカンジ
ナビア航空によって「ニュー・グロー
バル・カーゴ」という貨物アライアン
スが発足しました。
同アライアンスは翌年一〇月に「W
OW」という名称に変わり、さらにそ
の翌年には日本航空(JAL)が加盟
しました。 アライアンスの中身として
は商品開発、輸送品質の標準化、シス
テム開発の共同化などが含まれていま
す。 WOWは世界五大陸、一〇〇カ国
以上、五〇〇都市にまたがるネットワ
ークを構築しています。
WOWに対抗するのが「スカイチー
ム・カーゴ・グループ」です。 エール
フランス、アリタリア航空、デルタ航
空、大韓航空、アエロ・メヒコ、KL
Mオランダ航空、ノースウエスト航空
がメンバーとなっています。
その他の航空会社も個別にコードシ
ェアリングや共同運航などを展開して
いますが、今後は旅客同様、アライア
ンスによるグループ化の動きがさらに
活発化すると見られています。 一社単
独で世界中にインテグレーターや両ア
ライアンスに対抗できるネットワーク
を張り巡らせるのは困難だからです。
続いて世界の主要インテグレーター
について紹介しましょう。
■フェデックス
フェデックスは通関手続きを含めた
ドア・ツー・ドアのサービスを、航空
機を使って提供する、まったく新しい
概念を導入した企業として知られてい
ます。 現在、約二二〇カ国を対象に二四〜四八時間以内で書類やスモールパ
ッケージなどを配送しています。 一日
当たりの取扱個数は三一〇万個を超え
ています。
グループ全体の売上高は二九四億ド
ル、営業利益は約二五億ドル(二〇〇
五年度)。 従業員数は二五万人に及び、
約六四〇機の航空機と約七万台の自社
配送トラックを保有しています。 サー
ビスの対象エリアは世界約二二〇カ国
で、貨物の持ち込みポイントは約五万
カ所に達しています。
本社は米国テネシー州のメンフィス
にあり、香港(アジア・太平洋)、ト
ロント(カナダ)、ブリュッセル(欧
州)、マイアミ(中南米)に地域統括
本部を置いています。 さらにアジアで
は香港、東京、シンガポールに地域本
部を設置し、九五年九月以降はフィリ
ピン・スービックベイにハブを置き、
アジア一八都市への翌日配送を展開し
ています。
フェデックスはフレデリック・スミ
ス(Frederick W. Smith)氏によっ
て設立されました。 七三年四月、メン
フィス空港を拠点に小型機一四機を用
いて宅配便事業を開始しました。 スタ
ート初日の取扱個数はわずか一八六個。
これを米国二五都市に配送しました。
スミス氏はエール大学の学生だった六五年に、学期末レポートで航空機を活
用した宅配便サービスのアイデアを披
露しています。 そしてそのレポートを
ベースに事業を立ち上げました。 ちな
みに担当教授が下したレポートに対す
る評価は低かったそうです。
スミス氏は米国航空分野での規制緩
和推進に自ら積極的に関与し、それを
追い風にしてビジネスを拡大していき
ました。 サービスを開始した一〇年後
の八三年には早くも売上高一〇〇億ド
85 MARCH 2007
ルを達成しました。
■UPS
UPSでは現在、自社所有機二六八
機、チャーター機三〇九機を用いて、
世界約八〇〇空港を対象に一日当たり
約一八〇〇区間を運航しています。 自
社所有機の規模は航空会社として世界
第九位です。 約二〇〇カ国に約一八〇
〇カ所の拠点を持ち、一日当たりの取
扱量は一四八〇万個、年間では約三七
億五〇〇〇万個に達しています。 従業
員数は約四一万人。 配送車両はバイク
などを含めて約九万二〇〇〇台を保有
しています。 二〇〇五年度の売上高は
四二六億ドル、営業利益は六一億ドル
でした。
UPSの歴史は一九〇七年、当時一
九歳だったジェームズ・ケーシー
(James E. Casey)氏が友人から借りた
一〇〇ドルを元手に、「アメリカン・メ
ッセンジャー・カンパニー(American
Messenger Company)」を設立、メッ
センジャーおよびデリバリーサービス
をスタートしたことから始まります。
一九一九年に現在の社名となりました。
八八年には米国航空局(FAA)から
自社による航空機の運航が認められま
した。
八九年にはヤマト運輸との合弁で
「UPSヤマトエクスプレス」を設立。
日本進出を果たしました。 その後、日
本ではこの合弁会社を中心に事業を展
開してきましたが、二〇〇四年にはヤ
マト運輸から合弁会社の株式をすべて
買い取って完全子会社化しました。 現
在はUPSジャパンとして日本市場の
開拓を単独で進めています。
近年はM&A(企業の合併・買収)
にも積極的で二〇〇四年十二月にはメ
ンロワールドワイドのフォワーディン
グ部門を買収しました。 アジアへの進
出も強化しており、とりわけ中国への
投資を加速させています。 アジア地域
のハブ拠点はもともとフィリピンに置
いていましたが、これを二〇〇六年に
は中国に移管しました。
■ドイツポスト
ドイツポストの歴史は一四九〇年に
フランツ・ボン・タクシスが近代郵便
制度を創設した時に始まりました。 タ
クシス家は一六世紀末までに郵便配送
網を構築。 その後は国営ドイツ郵便が
事業を展開してきました。
国営ドイツ郵便は一九八九年の第一
次郵便制度改革で公社となり、続く九
五年の第二次改革で民営化され、ドイ
ツポスト(Deutsche Post AG)とし
て再出発しました。 ドイツポストは二
〇〇〇年にフランクフルト市
場への上場を果たしています。
ドイツポストは相次ぐ買収
によって事業規模を拡大して
きました。 九八年にグローバ
ルメール(米国)を買収した
のを皮切りに、九九年にはダ
ンザス(スイス)およびエ
ア・エクスプレス・インター
ナショナル(米国)をグルー
プ傘下に収めました。 二〇〇
二年にDHLの全株を取得
(九八年に二五%を取得済み)
したのに続き、二〇〇三年に
はエアボーン(米国)を買収。
さらにシノトランス(中国)
の株式取得(五%)に踏み
切ったほか、二〇〇五年には
約五五億ユーロを投じてエクセル(英
国)を買収しました。 その間にポスト
バンクの全株式を取得して子会社化
(九九年)することで、郵便・物流だ
けでなく、金融部門も確立しました。
従業員数は約五〇万人。 二〇〇五年
度の売上高は四四六億ユーロでした。
DHLが国際宅配便およびフォワーデ
ィング事業を、「DHL Danzas Air &
Ocean」と「DHL Solution」がSCM
や3PLに関連するロジスティクス事
業をそれぞれ担当する体制になってい
ます。
ドイツポストグループでインテグレ
ーターとして機能しているDHLの従
業員数は約一四万人で、世界各地に約
四四〇〇カ所のオフィスを構えていま
す。 サービスの対象地域は世界二二〇
カ国、約六四万都市で、車両保有台数
は約七万二〇〇〇台に上ります。
一方、ロジスティクス事業を担当す
る従業員の数は約三万二〇〇〇人。
「DHL Danzas Air & Ocean」の貨物
取扱実績(二〇〇四年度)は航空貨物
が二二〇〇万トン、海上貨物が一一〇
〇万TEUです。 一六〇カ国に約六〇
〇支店を構えて営業展開しています。
■TNT
TNTは一九四六年、ケン・トーマ
ス(Ken Thomas)氏がオーストラリ
アでトラック一台からスタートした
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「Thomas Nationwide Transport」が
始まりです。 九六年にKPN(Royal
PTT Nederland NV=オランダ郵便
・一九八九年に民営化)に買収された
ことで、TPG/TNTグループとな
りました。
TNTは、エクスプレス事業すなわ
ち国際ビジネス宅配便事業を中心とす
るTNTエクスプレス(TNT Express)
と、3PLおよびロジスティクスを担う
TNTロジスティクス(TNT Logistics)
の二つの部門に分けられます。 ただし、
このうちTNTロジスティクスは二〇
〇六年に突然、売却されることが発表
されました。
TNTのグループ全体の従業員数は
約一六万人です。 二〇〇五年のグルー
プ売上高は約一〇一億ユーロで、営業
利益は約十一億ユーロでした。 事業別
の売上高は郵便事業が約四〇億ユーロ、
エクスプレス事業が約五三億ユーロ、
ロジスティクス事業が約八億ユーロと
なっています。
和製インテグレーターの可能性
航空貨物の需要拡大を背景に、日本
でも航空会社を中心に物流業界全体を
巻き込んだ合従連衡の波が押し寄せて
います。 例えば、佐川急便は二〇〇五
年にギャラクシーエアラインズを設立。
自ら航空機を保有することで、国際イ
ンテグレーターに向けた第一歩を踏み
出しました。 同社は当面、日本国内で
の事業に専念するかたちとなりますが、
いずれは中国などアジア地域へ進出す
ることも視野に入れています。
ギャラクシーにはJALも出資して
います。 ただしJALは航空貨物アラ
イアンスのWOWに加盟するとともに、
フォワーダーとの連携強化を進めるな
ど航空貨物分野にも力を入れています
が、インテグレーターを目指すという
意向ではないようです。
和製インテグレーターへの道を歩ん
でいるのは佐川だけではありません。
日本郵船、そして全日空(ANA)とジャパンポスト(日本郵政公社)の連
合体はインテグレーターに向けた動き
を活発化させています。
日本郵船は二〇〇五年、ANAと海
運会社などの共同出資で設立された貨
物専門の航空会社である日本貨物航空
(NCA)を完全子会社化しました。 日
本郵船は海外でトラック運送会社の買
収を着々と進めているほか、日本国内
ではヤマト運輸と業務・資本提携を締
結しました。 こうした陸海空のハード
およびソフト面での機能強化は、日本
郵船が国際インテグレーターを志向し
ていることの表れと言えるでしょう。
一方、NCAを手放したANAは、
民営化を控えて国際航空貨物を含めた
ロジスティクス事業の強化を目指すジ
ャパンポストとアライアンスを結び、
貨物航空会社の「ANA&JPエクス
プレス」を設立しました。 この新会社
には二社のほかに商船三井や日本通運
が出資しています。
ANA&JPエクスプレスはANA
が保有する中型貨物機三機に新たに三
機を加えて合計六機で運航を開始しま
した。 現在、六機は主に日本〜中国間
を運航しています。 ANA&JPエク
スプレスは、日本を含むアジア地域を
メーンの市場とした「世界規模の国際
インテグレーターを目指す」と公言し
ています。
現在、世界市場ではフェデックス、
UPS、ドイツポスト(DHL)、T
NTの四大インテグレーターが圧倒的
な存在感を示しています。 これに匹敵
する和製インテグレーターが誕生する
のか。 現在のところ、その有力候補は
佐川急便(ギャラクシー)、日本郵船、
ANA&JPエクスプレスの三社であ
ると言えるでしょう。
もり・たかゆき流通科学大学商
学部教授。 1975年、大阪商船
三井船舶に入社。 97年、MOL
D i s t r i b u t i o n G m b H 社長。
2006年4月より現職。 著書は、
「外航海運概論」(成山堂)、「外航
海運のABC」(成山堂)、「外航海
運とコンテナ輸送」(鳥影社)、
「豪華客船を愉しむ」(PHP新書)、
「戦後日本客船史」(海事プレス
社)など。 日本海運経済学会、
日本物流学会、日本港湾経済学
会、日本貿易学会、C S C M P
(米)等会員。
世界の四大インテグレーターはM&Aを通じて事業規模
を拡大させている(写真はTNTの自社保有機)
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