ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2007年6号
SOLE
技術書の翻訳を足がかりにロジスティクスを再構築

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JUNE 2007 78 コンピュータを利用したロジスティ クス支援)の推進、RCM(Relia bility Centered Maintenance:信 頼性重視の保全)に発展している。
元々、ロジスティクス技術・工 学は兵站から始まった。
対象とする システムが大規模・複雑化するのに 伴い、ライフサイクル全体の最適化 を目指してシステムの具現化と運用 を中心に展開されるようになった。
欧米では、膨大な軍事産業を中心 に大規模システム製品を開発・設 計・導入・運用するうえで、システ ムの設計段階から保全・整備を含め て準備せざるを得なかった。
こうし た状況のもと、ロジスティクスをシ ステムの準備と捉え「実現のための 科学・手法」の確立を図ってきた。
翻って我が国の製造業・流通サ ービス業・ネットワーク産業(電 力・水道・鉄道・航空など)を眺 めてみると、システムの運用は個々の企業が事業毎に連携できる範囲 に限定されており、大規模で複雑な システムの開発・運用は苦手である ように見受けられる。
昨今問題とな っている原子力発電所やエレベータ ーの事故を考えても、システムライ フサイクル全体におけるメーカーと ユーザーの関わり方が不透明である。
我が国でロジスティクスと言えば、 生産プロセスのロジスティクスが中 当し、「整備」は対象システム・製 品の保全を意味している。
SOLEが目指すロジスティク スは、いわゆる物流(物的流通)、 SCMも対象に含んでいるが、供 給された製品・システムの運用・ 保全を支援する機能をも対象とし ている点に特徴がある。
システムを具体的に作り込み、シ ステムの性能を効果的に維持するた めのライフサイクル全体の機能・働 き・効果と経済性を追求する。
即 ち、複雑な構造を有するロングライ フの製品・システムのライフサイク ルを通じてなされなければならない 支援活動を対象としているのである。
対象とする製品が消費財であれば、 顧客(利用者)の手元に5R(注) のもとに届ければよい。
だが、シス テム製品の場合、手元に届いただけ では顧客は満足しない。
顧客はその システム製品が、必要とする時に稼 働(可動)し、必要とする期間稼働 し続け、かつ、所期の機能・性能を 発揮し続けることを求める。
供給側 は、システム開発・設計段階からシ SOLE日本支部は毎月「フ ォーラム」を開催し、ロジスティ クス技術およびロジスティクスマ ネジメントに関する活発な意見 交換・議論を行い、会員相互の 啓発に努めている。
フォーラム開催日の午前中ま たは夕刻には「RAMS研究会」 を開催している。
二〇〇七年四 月号で既報の通り、研究会では、 有名なロジスティクス技術書で ある『LOGISTICS ENGINEER ING & MANAGEMENT, Sixth Edition』(米バージニア工科大学 ベンジャミン・S・ブランチャー ド教授)の日本語化・要約作成 を一年がかりで行い、SOLE 日本支部RAMS研究会の調査 研究基礎資料として完成させた。
ロジの保全機能に注目 ロジスティクスは元来「補給と 整備」と言われてきた。
「補給」は 現在で言えば物流、サプライチェ ーンマネジメント(SCM)に相 SOLE日本支部フォーラムの報告 技術書の翻訳を足がかりに ロジスティクスを再構築 The International Society of Logistics ステム要件・条件を洗い出し、設計 開発・運用・更新していかなければ ならない( 図1)。
システムのライフサイクル活動と ロジスティクスの基本的な支援要求 事項を、ライフサイクルの各ステッ プにおいて常に設計・変更すること が求められる。
程度の違いはあるが、 システムを提供する側と使用・運 用する側で、状況の認識を常に共 有し、ライフサイクルの各ステップで手直しを加えることが必要となる。
製品・システムの設計・開発の 作り込み→運用→廃棄に至るライフ サイクル全体を通して価値の提供と 資源・資産(アセット)投入の適切 さや経済性を追求することが大切だ。
SCM+メンテナンスの必要性 ロジスティクス技術・工学では、 一九六〇年代にLCC(Life Cycle Cost)が着目され、米国国防総省 中心にLCCベースでの契約の義 務化が進められた。
それに伴い、ラ イフサイクルコストを算出できるL CCエンジニアの養成が急がれ、S OLE設立につながった。
その後、一九七〇年代にはIL S(Integrated Logistics System :統合ロジスティクスシステム)が 注目され、以後、CALS(Com puter Aided Logistics Support: 79 JUNE 2007 心に語られている。
いわゆるシステ ム・ロジスティクスは、ごく一部の 関係者が取り扱ってきたに過ぎな い。
我が国のロジスティクス技術・ 工学は、航空機産業などの分野を 除いて 相当遅れている。
これから は、「SCM+メンテナンス」の考 え方を取り入れざるを得ないだろう。
システムを具現化し、そのシステ ムの性能を維持するために効果的な保全・整備を 行っていくこと が求められる。
ロジスティクス 先進国の欧米で ビジネスの基礎 的素養となって いるロジスティ クスエンジニア リング&マネジ メント(LE& M)をきっちり 受け止め、シス テム(しくみ) で仕事をするこ とを改めて学ぶ 必要がある。
RAMS研 究会は今後の活 動計画として、 当面は?『L E&M』解説書 の作成と解説者 の養成、?RC M保全業務の調 査研究、?CP L(資格制度) の調査に取り組みたいと考えている。
?『LE&M』解説書の作成と解説 者の養成 『LE&M(第六版)』日本語化・ 要約作成では、延べ一六人の研究 会メンバーが、準備六カ月、実質 六カ月で基礎資料を完成させた。
今 後は、この基礎資料を元に各章の 担当者自らが解説できるようなア ブストラクト(概要)・テキスト・ 教材を作成する。
更に、第三章の「ロジスティク スとシステム支援の評価指標」に 資源・資産のマネジメント指標を 追加し、システムKPI(Key Performance Indicator:主要業 績評価指標)の体系を整えたい。
?RCM保全業務の調査研究 第四章「システムエンジニアリ ング」、第五章「支援性解析」にR CM調査研究を加え、保全業務設 計運用モデルを誘導したいと考え ている。
そのためには、大規模シス テムの設計運用保全に関する欧米 の先進的な取組を調査研究し、学 ぶべきことをしっかり学び、我が国 のビジネス・仕事の取組の良さを 活かした新たな保全業務システム 開発を考察していくことが必要だ と考えている。
?CPL資格制度の調査 SOLEにはロジスティクス専門 家としてのCPL(The Certified Professional Logistician Program) 資格制度があるが、日本支部ではそ の制度や実態を把握していない。
CPL資格制度を調査すること により、『LE&M』の理論やコン テンツをどこまで拡充すればよいか 分かってくるはずだと考えている。
いわゆる物的流通に偏った我が 国のロジスティクスの世界で、シス テム・ロジスティクスの再構築を 目指す。
サプライチェーンとシステ ム・メンテナンスを含めてロジステ ィクス技術者が成長してゆける基 盤作りを始めたい。
(注)5R:必要とするもの(Right Ma terial )を、必要とする時(Right Time) に、必要とする場所(Right Place)に、 必要とする量(Right Quantity)を、妥 当なコスト(Right Cost)で届けること。

購読案内広告案内