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OCTOBER 2007 64
ロジスティクス・システムは、アベイラビリティというコ
ミュニケーションの循環によって、物理的空間から切り離
された位相空間に生成する。 ただしシステムは物理的空間
における諸活動と無関係ではない。 システムと作業系列と
の間に構造的カップリングと呼ばれる極めて狭い連絡路が
存在する。 これをモデルのなかに組み込むことにより、自己
創出型ロジスティクスの直交する基本モデルが誕生する。
直交する基本モデル
第5章
三つの自己言及
ロジスティクス・システムを作動させてい
るエンジンが「自己言及」であることは既に
述べた。 それは確固たる作業原則であり、そ
れに従って、システムは構築されるのである。
自己言及には、次の三種類があるとルーマ
ンは言う。 (1)
?基底的自己言及
?再帰性(過程的自己言及)
?再帰
この三種類の自己言及において、「自己」
と称されているものと、自己とそれ以外のも
のとを「区別」する基準とは、それぞれ異な
っている。 それを整理すると図
10
のようになる。
図
10
に示しているように、第一段階の基底
的自己言及は、コミュニケーションという要
素の産出に関わるものである。 第二段階の再
帰性は、その要素と要素とを接続して過程を
構成する自己言及である。 そして第三段階
の再帰は、最終的に要素を顧客に到着させ
て、ロジスティクス・システムという統一体を、
産出することに関わっている。
三種類の自己言及が段階的に進むことで、
システムが形成される。 これはマトゥラーナ
がオートポイエーシスの定義のなかで述べて
いる手順と、よくマッチしている。 また、使
用している用語は耳馴れないものであっても、
そこで説明されている行動自体は、ごく普
通のものである。 そのことを理解するために、
自己言及の仕組みについて、もう少し説明を
加えておいたほうがよいだろう。
反射と再参入
繰り返し強調するが、自己言及とは厳格な
作業原則である。 しかも、それには第三章で
紹介したスペンサー=ブラウンによって、確
かなる理論的基盤が与えられている。 (2)
そこでは「反射」と「再参入」という算法が
重用される。
反射とは否定の否定である。 自分自身を指
し示すこと、それは自分と自分以外のものと
を区別して、図
11
の
(1)
のように、空間の中に
図10 3つの自己言及
基底的
自己言及
再帰性
再 帰
自己と称しているもの基準となる区別
個々の要素(オペレ
ーションが産出する
コミュニケーション)
継起する要素から編
成された過程
システム
要素と関係との
区別
要素の前と後との
区別
システムと環境との
区別
過程的
自己言及( (
あぼ・えいじ 1923年、青森市生まれ。
早稲田大学理工学部卒。 阿保味噌醸
造、早稲田大学教授(システム科学研
究所)、城西国際大学経営情報学部教
授を経て、現在、ロジスティクス・マ
ネジメント研究所所長。 北京交通大学
(中国北京)顧問教授。 物流・ロジス
ティクス・SCM領域の著書多数。
65 OCTOBER 2007
囲いを設けることである。 システム理論にあ
てはめると、図
11
の
(1)
の円の中(内容という)
が、「a」というシステムであり、円の外は
環境であって「非a」を表す。
「aではない」という否定は、環境の「非a」
を指し示すということである。 このとき、否
定は囲いを、すなわちシステムと環境との境
界を横断する。 これが図の
(2)
である。
さらに、
(2)
の否定を否定する、すなわち非
aを否定すると、またaに戻る。 このとき境
界をもう一度横断することになる。 これが
(3)
である。
これを算法では次のように書く。
これが反射である。 そして円のなかの空間
を「S
0」としたとき、円の外の環境を表す空
間をS
-1
「一度浅い空間」と呼ぶ。 (3) つ
まり(5・1)式は一度浅い空間S
-1
から元
の空間S
0に再参入しているのである。
この式は具体的には何を指しているのだろ
うか。 それは、自己にもとづいて自己を指し
示しているといっても、ただ単に唯我独尊を
奨励しているわけではなく、一度、自己でな
い、すなわち環境である空間S
-1
に飛び出して、
そこでより広い情報を取り入れた自己になっ
て、その上で図
11
の
(3)
のように再参入したな
らば、一層質の高いシステムとなることがで
きることを意味しているのである。
さらに反射と再参入は一度きりの活動では
ない。 否定の否定によって境界を二度横断
するとまた自己に戻る。 このように偶数回の
横断は自己を維持する。 非常に多くの再参
入の後でもそれは変わらない。
このことを次のように書く。
さらに(5・2)を次の式に置き換える。
(5・3)は表現の全体が、それが区別を
与えている空間の内部に再参入していること
を表している。
大変理屈っぽい言い回しに聞こえたかも知
れないが、そこで行われているのは、ごく当
たり前のことである。
われわれはある活動をする。 その活動の途
中においても、終了後も必ず経過を、また結
果を反省する。 「このやり方以外にも他のや
り方があったのではないか」「他のやり方でや
ったらどんな結果になっただろうか」──恐
らくわれわれはこの反省を何度も繰り返しな
がら事を進めている。 また結果についての反
省も自己の体験として行動システムに取り込
み、そのシステムの内容を豊富にしている。
これが、反射と再参入が示しているオペレ
ーションの内実なのである。 ひらたくいって
しまうと、この操作が自己言及なのである。
基本モデル改造論
さて本論に移ろう。 第三章におけるロジス
ティクス・システムの説明では、二つの疑問
図11 反射
(1) (2)
a
非a
(3)
a
OCTOBER 2007 66
点が拭いきれない。
第一点は、「システムの諸要素(アベイラ
ビリティ)の産出には、物質的・エネルギー
的作業系列が関わっている」というが、この
「関わっている」という表現が不明瞭である。
それはどんな関係なのかを明確にしなければ
ならない。
第二点は、リードタイムやロットという顧
客サービス要素を区別のなかに取り込んで、
「所定のリードタイム内にアベイラブルにでき
るか、できないか」「所定のロットでアベイ
ラブルにできるか、できないか」という複合
的なコードとして利用するというアイデアは、
原理的にも問題があるし、現実のオペレーシ
ョンとしても不可能ではないかという疑問で
ある。
区別はあくまで「アベイラブルであるか」
「アベイラブルでないか」というシンプルなデ
ジタルの二元コードでなくてはならない。 上
記の複合コードで作動を制御することは実行
不可能であろう。
とすると単純にロジスティクス・システム
が単独でロットやリードタイムという顧客サ
ービス(差異)を産出しているのではない。
もっと複雑なメカニズムを活用して、そのよ
うな差異を作り出していると考えられる。 そ
れではそのメカニズムとは何か。
この二つの疑問はわれわれ研究者を大いに
悩ました疑問であった。 しかし答えは簡明な
ものであった。 それは、「構造的カップリング」
という概念を活用することであった。
すなわち「ロジスティクス・システム」と「連
続的作業系列」とは、構造的カップリングを
介在して連結しているというのが第一の疑問
に対する答えだ。
そして第二の答えとなるメカニズムとは以
下の通りである。 すなわち、アベイラビリテ
ィというコミュニケーションは構造的カップ
リングに媒介されて連結している「ロジステ
ィクス・システム」と「連続的作業系列」
の連合体におけるオペレーションの連続的過
程において、次第に意味を獲得していく。 そ
れらの意味を顧客サービスという差異として
顧客が受け取るというものである。
これは顧客サービスだけにとどまらない。
これまでロジスティクス活動のアウトプット
として評価されていた多数のパフォーマンス
の多くの部分が、この連合体の活動成果であ
ることが次第に分かってきた。 このような事
実が判明するにつれて、第二章で提示してい
た「二階建ての基本モデル」を「直交する基
本モデル」へと改造する必要が生じてきたの
である(図
12
)。
直交する基本モデル
実は、二つの基本モデルとも同一のロジ
スティクス現象を表現しているものであって、
その本質は違わない。 見方を変えて、違った
観点から観察しているに過ぎない。
二階建て基本モデルでは、ある時点に、連
図12 基本モデルの改造
物理的
空間
物理的
空間
位相空間
連続的作業系列位相空間
ロジスティクス・システム
(アベイラビリティの循環)
構造的カップリング
構造的カップリング
構造的カップリング
活動
コミュニケーション
連続的作業系列
ロジスティクス・システム
(アベイラビリティの循環)
コミュニケーション
仕分
ピッキング運搬
活動
2階建基本モデル直交する基本モデル
67 OCTOBER 2007
空間でロジスティクス・システムという社会
的なレールの上を走っていく。
このようにみていくと、ロジスティクスの
活動の意義が分かってくる。 連続的作業系列
はひたすら回転することによって、活動を続
けている。 そこでは、自らの作業効率を高め、
マネジメントの構造の下で在庫管理や配送管
理や、物流センターの運営等の経営管理に協
力している。 その結果、顧客が要望する顧客
サービスを低コストで供給しようとしている。
しかし、それは経営内部の努力なのである。
それ自身では企業外の環境のなかで、どの方
向に走っているのかを自覚することはできな
い。 それらの努力が社会的意義をもつためには、
ロジスティクス・システムという、供給者と
需要者との間に敷かれている社会的軌道の上
を走っていくことが必要なのである。
なお、「直交する」とはどういう意味をも
っているか補足が必要であろう。 この言葉も
マトゥラーナに由来している。 彼は「構造的
カップリングはシステムのオートポイエーシス
には関係していない」という事実を強調して、
「構造的カップリングはオートポイエーシスと
直交している(4)」と表現した。
ここで最近指摘されるようになった重要な
事項を確認しておきたい。 それは、連続的
作業系列はアナログの世界であるが、ロジス
ティクス・システムはデジタルの世界であり、
構造的カップリングがアナログな関係をデジ
タル化している(5)というものである。
コミュニケーション
構造的カップリングのメカニズムを盛り込
んだ「直交する基本モデル」によって、ロジ
スティクス・システムの働きはより理解しや
すくなる。 これまでの論考を振り返って説明
しよう。
ロジスティクス・システムにおける基本的
要素はコミュニケーションである。 システム
の要素であるコミュニケーションを、そのシ
ステム自体が産出する。 その発見がオートポ
イエーシス理論の核心となるメルクマールで
あった。
このコミュニケーションについてルーマン
は、郵便配達員が郵便を各家庭に配達する
ように、単に情報を他者に送り届ける行為で
はなく、「情報」「伝達」「理解」という三つ
の選択を構成要素とする統一体である、とし
ている。 つまり「情報」「伝達」「理解」が
統一体となるとき、コミュニケーションが産
出されるのである。
これはどういうことか。 図
12
に戻って具体
的に説明しよう。
図のピッキング─仕分け─運搬という一連
の工程で考えてみる。 今、ピッキング作業が
終了したとする。 その時点で、次の工程であ
る仕分けがアベイラブルになり、その情報が
次工程に伝わる。 アベイラビリティというコ
ミュニケーションが産出されたわけである。
次にt時点になって財貨は仕分け工程に
続的作業系列とロジスティクス・システム、
それぞれの全体の活動状況をスナップ・ショ
ットした画像なのである。 実は、この図にも
構造的カップリングは現れていた。 各活動と
各コミュニケーションを結ぶ破線は、すべて
構造的カップリングを表している。 このモデ
ルを静止画ではなく、廻り燈籠の天辺と底辺
とが、ぐるぐると同じ回転運動をしているよ
うに動的にとらえることで、構造的カップリ
ングの働きを補足することは可能だろう。
一方、直交する基本モデルの方は、より立
体的に、よりダイナミックな表現になっている。
これは、ある特定のロジスティクス対象物(財
貨)に着目して、時間の経過につれて、その
財貨がたどる運動の軌跡を表している。
図
12
は時刻tにおけるスナップ・ショットで、
ちょうど「仕分」という活動が構造的カップ
リングによってコミュニケーションの産出に
立ち会っていることを示している。 この図で
は連続的作業系列は矢印の方向、時計回り
に回転している。
時刻(t
-1
)では、財貨は「ピッキング」
のところでコミュニケーション産出と構造的
カップリングしていた。 また(t
+1
)時刻にな
ると、財貨は「運搬」のところで構造的カッ
プリングにより、コミュニケーション産出現
象に立ち会う。
このように、連続的作業系列は時計回りに
ぐるぐるとひたすら回転を続けている車輪の
ようなものである。 同時に、その車輪は位相
入る。 仕分け作業がアベイラブルになったの
で、作業系列は仕分け作業を開始する。 こ
こで財貨を荷主の方面別に仕分けることによ
って、配送作業を効率的に行うことが可能に
なる。 この仕分け作業が「伝達」という行為
である。
仕分作業が終わって次工程の積込場までの
運搬がアベイラブルになる。 運搬工程がこの
アベイラビリティを受け取る。 その時に運搬
工程が仕分け工程から受け取るアベイラビリ
ティは、財貨が方面別に仕分されているために、
ピッキング工程から仕分け工程にコミュニケ
ーションされたアベイラビリティより配送が
便利になっているという、社会的意味での差
異が付加されている。 この区別の認識を「理
解」と称している。 かようにして運搬工程に
もコミュニケーションが伝わったのである。
各活動はロジスティクス・システムの構造
とカップリングしない限り作動することはし
ない。 ピッキングや仕分けや運搬が何の目的
意識もなしに活動するということなどあり得
ない。
○×卸店から注文が来た。 今日中に納入
しなければならない。 活動が開始される。 そ
れは、この企業と○×卸店との社会関係が確
定しているからこそ、社会的意味を持つ。 繰
り返すが、各活動が社会的意味を持つのは作
業系列とコミュニケーション・システムが構
造的カップリングしているからである。
連続的作業系列において、各自は自らの作
業に専心している。 しかしロジスティクス・
システムは、作業の遂行・終了に関するアナ
ログ情報を構造的カップリングによってデジ
タルに変換し、それを入手することにより、「ア
ベイラビリティ」のもつ社会的意味を次第に
付加していき、最終的に顧客に到達したとき
には、顧客の期待を満足させるものになって
いることを目指している。
このようにみてくると、形式の形成、「ア
ベイラブルかアベイラブルでないか」を支配
しているのはロジスティクス・システムであ
るが、顧客サービス等の形式の内容を決定し
ているのは、連続的作業系列であることが分
かる。
基底的自己言及
連続的作業系列は「マネジメント構造」の
統制下にある。 物流センターの運営を始めと
してロジスティクス部門の活動は、長期的な
経営方針とロジスティクス戦略、そして部門
の管理方針や組織の編成方針などが構造とし
て規定されている。 各作業が利用している設
備・機器も、その構造が具体化したものであ
る。 作業標準等の現業における詳細な事項ま
で、マネジメント構造が規定しているのである。
しかし、作業者や管理者は、作業標準や
マニュアルや作業指示に依存し、受身の態度
に終始しているだけでは良い成果は得られな
い。 また、仕事の内容や仕事の量は日々変化
する。 これは不確実性の公理が示していると
ころでもある。 そこで、自らを取り巻く周囲
の状況を判断しながら、自分なりに工夫する。
大げさに言えば、理想・希望・使命感をも
って作業してこそ、一人前になれるのである。
これこそが既に説明してきた「自己言及」の
実践なのである。
システム理論で自己言及といっているのは、
主としてコミュニケーションの世界の話であ
って、それを物理的空間にまで拡張するのは
やり過ぎであり、拡大解釈だとの批判も予想
される。 しかし、人間の仕事とは実際そのよ
うにして行われているものなのだ。
具体的な例を引こう。 例えばピッキング。
一枚の伝票に何品目も記入されている場合、
どの品目からピッキングし、次にどれを、続
けてどれと、移動距離が最も短くなるように
心掛けるだろう。 ほかにも、どの品目が重く、
どの品目はカサ高で、落とさないように気を
付けなければならない、あるいは通い箱のス
ペースを無駄にしないように巧く積み込まな
ければならない等々、さまざまの配慮が必要だ。
作業を上手に進行させるための諸条件はた
くさんある。 また、その組合せ次第で、作業
の仕上がりや効率は大きく左右される。 前工
程の結果にも左右されるし、次工程の仕上が
りは後工程にも影響する。 それゆえに、コミ
ュニケーションが次のコミュニケーションに
接続されなければ、オートポイエーシスは中
断してしまうというのである。
ほかにも、在庫のロケーション等、配慮し
OCTOBER 2007 68
業系列の接触しているポイントが、「仕分」
ではなく「積込」の時点であることだ。
それ以前の工程、すなわち運搬・仕分・ピ
ッキング‥‥情報伝達・発注等の諸作業は
既に完了し、消滅してしまっている。 構造的
カップリングが発生するのは、作業が行われ、
コミュニケーションが産出されている、すな
わち要素が作動中の時点だけである。 積込以
前の諸作業には、もはや構造的カップリング
を起こす余地はない。 したがって、受注から
運搬に至る過程がロジスティクス・システム
と交信する機会はないのである。
このことは、先にあげた工程管理や在庫管
理や配送管理が、ロジスティクス・システム
とオンラインでは接続していないことを示し
ている。 すなわち、これらの統制管理はすべて、
連続的作業系列のマネジメント構造の枠内で
行うしかないのである。
これらの過程管理はこれまでも、ロジス
ティクス管理における重要な問題とされてき
た。 IE(Industrial Engineering)やOR
(Operations Research)、近年はITを活用
したソリューションによる成果も目ざましい。
それらは何れも、それらの過程を自己観察し、
その結果を反省し、かつ自らのメルクマール
(管理特性)を強化、濃密化して、管理を効
果あらしめることによるものである。 すなわ
ち過程的自己言及の物理的空間内における
実践だった。
しかし、そのような循環性(再帰性)があ
ればこそ「複数の(しばしば数え切れないほ
どの)諸要素をまとめあげて、自己言及それ
自体がそれに帰属する統一体[システム]を
形成することを必要としている(7)」のである。
なければならない事項は枚挙にいとまがない。
そして状況は一日として同じことはない。 ル
ーマンがいうように「世界の複雑性をそのま
ま処理しえないが故に、自己言及が発生して
いるのである」(6)
過程的自己言及
複数の要素が連結して一つの過程を編成
している。 これらの過程も自己言及によって、
より効率的にしていかなければ、ロジスティ
クス管理は成功しない。 事実、工程管理は物
流センターの効率的運営に欠かせないし、在
庫管理や配送管理等は顧客サービス達成に直
接的に影響する。
しかし、図
13
を見て頂きたい。 この図は図
12
と全く同じだが、一つだけ違うところがある。
それはロジスティクス・システムと連続的作
69 OCTOBER 2007
物流現場改善を専門とするコンサルティング会社、
日本ロジファクトリーが具体的な事例を披露。 手法の説
明だけでなく、クライアントとのやりとりやコンサルタント
の心の動きまで、改善プロジェクトの経過をリアルに描
写。
本誌2003年1月号から連載の「事例で学ぶ現場改
善」を加筆修正。
「経営のテコ入れは物流改善から」
青木正一 著 (明日香出版社)
\1,890(税込)
2005年3月発行
白トラの一人親方からスタートして、一代で会社を
一部上場企業にまで成長させたオーナー創業者の
一代記。 笑えます!泣けます!
本誌2003年4月号〜2004年11月号に掲載した
「やらまいか̶̶ハマキョウレックスの運送屋繁盛
記」を加筆修正。
「やらまいか!」
大須賀正孝 著(ダイヤモンド社)
\1,575(税込)
2005年5月発行
「物流コストを半減せよ!̶Mission」
湯浅和夫 著 (かんき出版)
\1,575(税込)
2005年2月発行
物流コンサルティング業界のカリスマが小説形式
のノウハウ本に挑戦。 「大先生」と「美人弟子」「体力
弟子」の3人組が、常識破りの物流理論で、クライア
ントの課題を次々に解決。
本誌2002年4月号から連載の「物流コンサル道
場」を単行本化。
すなわち、最終的にはロジスティクス・シス
テムとしての総合的評価が欠かせないという
ことである。 それが再帰である。
再帰
ロジスティクス・システムは経済システム
に所属し、その下位システムを構成している。
経済システムは支払いが支払いを産出し
ているコミュニケーション・システムである。
商取引が成立していても、対象商品が到着し
ない限り、支払いは実行されない。 すなわち
商品が手許に到着して、アベイラブルになっ
て初めて、支払いが可能になる。
ということは、ロジスティクス・システム
の経済システム内における役割は、支払いの
ための必要条件を充足して、支払いという行
為を実行させることにより、経済システムの
循環を促進することにある。
ロジスティクス活動により、財貨が顧客の
手許に到着し、アベイラビリティが顧客に伝
達した時点が、ロジスティクス・システムの
形成の瞬間である。 その時、ロジスティクス・
システムは経済システムと構造的にカップリ
ングしている。 アベイラビリティというコミ
ュニケーションが、支払いというコミュニケ
ーションを誘発するのである。
ここでシステムが実現しているシステム/
環境差異、それは顧客サービスである。 顧客
の期待を満足しているか、不満足であるかが
最も主要なる問題である。
ここから先は、既に第四章の偶発性の節で
述べた「二重偶発性の自触媒作用」により、
供給者と需要者との間でロジスティクスに対
する期待の安定化を相互に目指すことになる
というストーリーになる。
顧客の反応が予期の範囲を超えて大きなも
のであったり、環境に重大な変化が発生した
りするときには、ロジスティクス・システム
の構造に刺激を与え、構造効果を起こし、構
造変容の契機ともなる。 それらがさらに進展
してロジスティクス・システムの進化の引き
金ともなり得る。 そしてもちろん、ロジステ
ィクス・システムの構造変容はマネジメント
の構造変化をも伴うのである。
OCTOBER 2007 70
図13 構造的カップリングは作動中しか起こらない
構造的カップリング
連続的作業系列
(アナログの世界)
ロジスティクス・システム
(デジタルの世界)
コミュニケーション
仕分
運搬配送
積込
ピッキング
入庫
発注
情報伝達
受注
受注処理
図14 ロジスティクス・システムと
経済システムの構造的カップリング
経済システム
支払い
アベイラビリティ
構造的
カップリング
支払い
理由の提供
連続的作業系列
ロジスティクス・システム
入庫
ロジスティクス・システムは
支払い理由を提供して経済の
循環を促進する
※1 ニクラス・ルーマン著 佐藤勉監訳「社会シ
ステム理論」恒星社厚生閣 一九九五年
※2 スペンサー=ブラウン著 大沢真幸・宮台真
司訳「形式の法則」朝日出版社 一九八七年
※3 大沢真幸「行為の代数学」青土社 一九九二
※年
4 ニクラス・ルーマン著 土方透監訳「システ
ム理論入門─ニクラス・ルーマン講義録(?)」新泉
社 二〇〇七年
※5 Niklas Luhmann,"Die Gesellschaf der Gese
llschaft", Suhrkamp, 1998
※6 (1)と同じ
※7 (1)と同じ
参考文献
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