ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2007年10号
物流不動産市場レポート
中国・四国地方広島・岡山が施設の新規着工を牽引四国は着工量・賃料ともに安定推移

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

物流不動産市場レポート 第4回 性化している。
また、物流拠点の集約・統合 を背景に、荷主企業は大阪を含めた広域で大 型用地や物件を探す動きがあり、同地区での 立地を検討する企業もみられる。
 物流業界の動向としては、物流施設の拡張、 新規開設などの動きが活発になっており、特 に食品関連の卸・運送会社の引き合いが増加 している。
中でも早島IC周辺や水島周辺に 需要が集中している。
同エリアを統括可能な 立地性と交通利便性の高さを背景に、大手物 流会社や不動産開発会社による大型物流セン ターの新設事例がみられ、多様な需要を吸収し、 空室消化が進んでいる。
 賃料動向としては、旺盛な需要に支えられ ながらも、需給逼迫を感じるところまで至っ ていないため、ほぼ横ばいで推移している。
広島県 ──優良物件が慢性的に不足  広島県は中国・四国地方最大の消費地であ る。
物流拠点を選定する荷主企業にとっても 当然無視できない大きな商圏ではあるが、広 島市内は平野部が少なく大型用地が確保困難 なことから、物流企業は広域で物件・用地を 探す傾向にある。
同市内で需要が集中してい る地域は、西区商工センター・草津港地区、 中区吉島地区、南区出島地区、安芸区から 安芸郡坂町にわたる東部工業団地・東部流通 団地などの湾岸部、内陸部は山陽自動車道や 広島自動車道などの高速道路IC周辺地区・ 西風新都地区などが挙げられる。
広島・岡山で着工量増加  今回は中国・四国地方における主要県別の 物流不動産市況を解説する。
交通の要衝とし て同エリアを管轄可能な岡山県や、同エリア の中核都市である広島県が物流施設の新規着 工を牽引しており、着工量は二年連続の増加 となった(図1)。
新規の工場立地もこの両 県に集中しており、工場の新設や増産に伴う 物流施設への引き合いの増加が着工量を押し 上げている。
一方、四国地方における物流施 設の新規着工量は、二〇〇一年以降、概ね横 ばいで推移している(図2)。
 首都圏や近畿圏でみられる不動産開発会社 等による大型賃貸物流施設の供給は、現段階 では岡山県都窪郡早島町で建設中の「プロロ ジスパーク早島2」のみであるが、今後、岡 山県や広島県の物流適地において供給される 中国・四国地方 広島・岡山が施設の新規着工を牽引 四国は着工量・賃料ともに安定推移 シービー・リチャードエリス 広島支店インダストリアル営業部 秋山幸人 生駒データサービスシステム 瀬尾茂之 中国地方 可能性は十分考えられる。
ただし前述の都市 圏と比較すると、マーケットが限られている ため、BTS型(Built To Suit :特定企業 向け賃貸建物)による新規開発かセール・ア ンド・リースバックによる取得が主になるだ ろう。
岡山県 ──インフラ改善で企業立地活性化  岡山県は中国自動車道、山陽自動車道等 の高速道路を中心とした広域道路網が整備さ れており、中国・四国地方の交通の要地とし て機能している。
水島港の玉島地区と水島地 区を結ぶ新架橋の整備計画が進むなど、イン フラの改善をきっかけとして、企業立地が活 OCTOBER 2007  78 79  OCTOBER 2007 ない。
また、賃貸物流施設を希望しながらも 要望に合う優良物件がないため、自社で土地 を購入し拠点を新設する動きもみられる。
 賃料水準は概ね横ばいで推移しており、継 続賃料も据え置きが多い。
また、不動産投資 会社が物流用地を探すなどの動きがみられたが、  県内では、物流施設への新規需要がみられ るものの、慢性的に優良な賃貸物件が不足し ていることも影響し、それほど顕在化してい 800 700 600 500 400 300 200 100 0 図1 中国地方の施設供給量推移 出典:建築着工統計(建設物価調査会) 作成方法:建築基準法第15 条第1 項に基づく施工者の都道府県知事への届出を集計している。
したがって中小倉庫を含む着工量となっている。
延床面積(千?) ‘97年‘98年‘99年‘00年‘01年‘02年‘03年‘04年‘05年‘06年 500 450 400 350 300 250 200 150 100 50 0 図2 四国地方の施設供給量推移 延床面積(千?) (円/坪) ‘97年‘98年‘99年‘00年‘01年‘02年‘03年‘04年‘05年‘06年 5,000 4,500 4,000 3,500 3,000 2,500 2,000 図3 中国・四国地方の主要県別平均募集賃料の推移 ‘03年上期‘03年下期‘04年上期‘04年下期‘05年上期‘05年下期‘06年上期‘06年下期‘07年上期 広島県 愛媛県 岡山県 香川県 高知県 高知県 愛媛県 香川県 徳島県 702 614 459 365 324 358 257 203 213 181 186 222 223 425 362 362 455 556 386 378 OCTOBER 2007  80 物流不動産市場レポート 投資基準に合わず具体化した事例は少ない。
香川県 ──高速道路整備で活性化に期待  高松自動車道の板野〜高松中央IC間が二 〇〇一年三月に全面開通、二〇〇二年七月 には鳴門〜板野ICが開通、二〇〇三年春に 高松中央〜高松西IC間も開通するなど、道 路交通網の整備に伴い交通量が増加している。
インフラ改善による交通利便性の向上により 地域活性化が期待されている一方、四国内で の地域間競争は激化しており、香川県の四国 内での中枢機能の低下が懸念されている。
 物流業界の動向としては運送会社等の新規 分室開設の動きや、県外の物流事業者が流通 団地に進出するなどの動きがみられたが、全 体としては賃貸市場に大きな変化はなく安定 している。
施設は平屋建や高床式の物流セン ターに対しての需要が高まっている。
四国内 での拠点の統廃合の動きは依然として続いて おり、再編に伴う自社倉庫の売却、または外 部への貸し出しは引き続き行われていくと考 えられる。
高知県 ──高知新港が重要拠点として機能  高知自動車道の高知ICへのインフラ整備 が進み、県西部も二〇〇二年九月に高知自動 車道伊野IC〜須崎東ICが開通し、交通 利便性が高まっている。
また高知新港には「高 知新港輸入物流ターミナル」が設置されており、 四国太平洋側の輸入促進拠点として、高知県 のみならず四国内の重要な物流拠点として機 能している。
 物流業界の動向においては、施設は自社所 有が中心であり賃貸物件が少ないエリアであ ることから、依然として企業の動きは少ない。
荷主企業による物流業務のアウトソーシング の見直しなどがみられるものの、物流企業の 動きも一段落しており、賃貸市場の変化は乏 しい。
愛媛県 ──市街化区域不足が施設供給に影響  愛媛県の物流施設に対する需要は、松山I Cや川内IC周辺に多く、伊予IC近辺でも みられる。
しかし、これらのエリアは市街化 区域が少ないため、新たな物流施設の建設が 困難で、既存施設も少ないことも影響し、限 られた狭いエリアでの用地選定となっている。
また、同エリアでは工業団地や流通団地など 計画的に造成された大型用地も少なく、道路 インフラが脆弱なこともあって、物流施設運 営に適した用地が少ない。
 物流業界の動向としては、物流拠点の集約・ 統合や新設拠点の需要はみられるものの、一 〇〇坪を超えるような賃貸物件は少なく、需 給のミスマッチが続いている。
このような背 景から、自社による土地購入も視野に入れた 動きもみられる。
なお、以前は3PLを前提 とした需要があったものの、最近は停滞気味で ある。
また、個人投資家が物流用地を物色す る動きがあったが、賃料水準などが投資基準に 合わないなどのケースがみられた。
四国地方  近年、デベロッパー等によって供給さ れる大型物流施設は、例えばデベロッパ ー(投資家)のブランド名」+「地名」 といったように、各社で統一したネーミ ングをつける傾向にある。
マンションデ ベロッパーがイメージ戦略の一環として、 マンションの立地や住環境を一言で表現 するために、各物件にネーミングをつけて いるが、物流施設もこれを見習った格好 である。
 物流施設も、どの地域に立地しどのよ うな運営環境であるかを、競合物件との 差別化を踏まえ、テナントに明確にアピ ールする時代になってきたということであ ろうか。
物流施設のネーミングが、マン ションと同様にブランド戦略に不可欠な 要素になるとまではいわないが、もしかし たら引き合いの多寡に影響が生じるかも しれない。
 今後、ネーミングをどの程度マーケット に印象づけることができるか。
また、新 たにどのようなネーミングが出てくるか、 注目したい。
テナント企業のハートに響く 施設のネーミングに迫る

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