ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2007年12号
物流不動産市場レポート
東北・北海道宮城を中心に新規着工量は増加傾向北海道では拠点集約の動きが加速

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

物流不動産市場レポート 第6回 活性化が期待される。
 賃料動向は優良物件に対する引き合いの高 まりはあるものの、荷主企業による物流業務 のアウトソーシング化の進行、燃料費の高止ま りなどを受けて、全体的にテナント側の賃料 負担力が改善する兆しがみられず、横ばい傾 向となっている(図2)。
 不動産開発会社による賃貸型大型施設は、 昨年五月にプロロジスが開発した日立物流専 用の物流施設「プロロジスパーク富谷」が黒川 郡富谷町に、今年一月にアスクル専用の物流 施設「プロロジスパーク仙台」が仙台市宮城野 区で竣工した。
同社は今後、同郡富谷町、岩 沼市に計四拠点の供給を予定している。
これ まではBTS型( Built To Suit:特定企業向 宮城・北海道に供給集中  東北地方では、政令指定都市である仙台市 を有する宮城県が物流施設の新規着工を牽引 している(図1)。
トヨタ自動車の生産子会社 であるセントラル自動車が、二〇一〇年から段 階的に、神奈川県相模原市から宮城県黒川郡 大衡村へ本社と工場の移転を決めるなど、工 場立地においても宮城・福島の両県を中心に 動きがみられる。
また、北海道ではコスト削減 を目的とした物流拠点の集約が昨年から今年 にかけて増加しており、大型物流施設に対す る需要は増加している。
 首都圏や近畿圏でみられる不動産開発会社 等による賃貸型大型施設の供給は、今のとこ ろ宮城県のみだが、今後は福島県郡山市や北 海道江別市でも供給が予定されている。
宮城県 トヨタ子会社移転効果に期待  仙台東部地区を走る仙台バイパスの苦竹IC 東北・北海道 宮城を中心に新規着工量は増加傾向 北海道では拠点集約の動きが加速 シービー・リチャードエリス 札幌支店 インダストリアル営業部 寶剱紀明 生駒データサービスシステム 瀬尾茂之 周辺の扇町、卸町に物流施設が集積している。
同地区は、JR仙石線と国道四五号線が東西 に走り、これらと交差する形で南北に伸びる国 道四号線が東北自動車道と接続している。
交 通利便性が良好で、東北地方の物流拠点とし ての機能を果たしている。
 賃貸マーケットでは借り換えによる拡張移転 や独立開業などにより、約五〇坪から三〇〇 坪の小・中型の施設や、低層で使い勝手の良 い大型施設への需要が高まっている。
しかし、 需要が集中する仙台東部地区の仙台市宮城野 区、若林区ではそのような既存物件がなかな か出てこないこともあり、さほど顕在化して いない。
そのため、仙台市に隣接し、東北自 動車道の沿線でもある黒川郡富谷町などに需 要が流れるケースがみられる。
また、同郡大衡 村の第二仙台北部中核工業団地は、トヨタ自 動車の生産子会社であるセントラル自動車の本 社と工場の移転先に決定した。
今後は関連企 業の進出も見込まれ、物流不動産マーケットの DECEMBER 2007  74 (千?) 1,000 900 800 700 600 500 400 300 200 100 0 2002 年2003 年2004 年2005 年2006 年 図1 北海道・東北地方の新規着工動向 出典:建築着工統計(建設物価調査会) 作成方法:建築基準法第15 条第1 項に基づく施工者の都道府県知事 への届出を集計している。
したがって中小倉庫を含む着工 量となっている。
354 349 463 373 405 49 48 194 25 48 140 52 98 176 23 39 165 43 64 113 35 46 106 65 51 130 36 57 111 81 50 108 22 38 129 北海道青森県岩手県 秋田県山形県福島県 宮城県 年比増となっている。
 賃貸マーケットをみると、札幌市から千歳 市・苫小牧市などを経由する国道三六号線周 辺など、札幌市中心部に近い主要幹線道路の 沿線といった好立地物件に対する需要が高く、 汎用性のある物件の空室がでることは少ない。
そのため、土地を安く取得できる札幌市近郊 の北広島市、恵庭市、江別市、石狩市など広 域を視野に拠点を新設するケースがみられる。
 道内では昨年以降、食料品関連や医薬品・日 用雑貨品業界を中心に拠点集約による輸送効率 化への取り組みが活発化しており、約五〇〇坪 から二〇〇〇坪の大型施設に対する需要は増加 傾向にある。
また、札幌市中心部に近い白石区 においては、約一〇〇坪から二〇〇坪の中小倉 庫に対する引き合いも多くみられる。
 賃料動向は、物流コスト削減を目的とした 物流業務のアウトソーシング化や物流拠点の集 約・統廃合が進んでいることもあり、上昇に 至ることはなく、概ね横ばいで推移している(図 3)。
 不動産開発会社の動きは、〇八年秋にラサー ルインベストメントマネージメントが江別市に マルチテナント型の大型物流施設の竣工を予定 しており、道内初の賃貸型大型施設として注 目が集まる。
また、投資家などによる既存収 益物件の取得も一部見られる。
け賃貸建物)の供給が中心だったが、今後は マルチテナント型も想定しているようだ。
また、 昨年五月にREITのユナイテッド・アーバン が、インテリア用品卸大手のリリカラの物流施 設「リリカラ東北支店」の信託受益権を取得し たケースに代表されるように、不動産投資家な どによる収益物件の取得も増加している。
北海道   拠点統合で大型施設の需要増  道内の政治・経済・文化の中心地で、道庁 所在地の札幌市や、苫小牧港や石狩港などの 港湾エリア、新千歳空港と札幌市の中間に位置 する北広島市などに物流施設が集積している。
 物流施設の新規着工量は近年横ばいで推移 しているものの、工場立地件数は食料品を中 心に増加しており、〇三年以降四年連続の前  北海道苫小牧市の東部地域には、一万 七〇〇ヘクタールという広大な複合開発 地域が存在する。
同地域は約五五〇〇ヘ クタールもの工業用地面積が広がる、日 本最大の工業団地だ。
ちなみに、経済産 業省発表の工場立地動向調査によると、 昨年度の全国の工場立地面積は約二四〇 〇ヘクタール。
同地域に展開される工業 団地の規模が、他とは比べものにならな いことがわかる。
 また、同地域は苫小牧港や新千歳空港 に近い好立地だ。
これを活かし、昨年ト ヨタ系列の自動車部品メーカー・アイシ ン精機が、アルミダイキャスト製品を生 産する新会社「アイシン北海道」を設立 した。
自動車関連産業の集積が進む同地 域に、今後も多くの企業進出が期待される。
北海道に広がる 日本最大の工業団地 75  DECEMBER 2007 4,000 3,500 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 8.0 6.0 4.0 2.0 0.0 −2.0 −4.0 −6.0 −8.0 (円/ 坪) (%) 4,000 3,500 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 10.0 8.0 6.0 4.0 2.0 0.0 −2.0 −4.0 −6.0 (円/ 坪) (%) 2002 2003 2004 2005 2006 2007 上 図2 宮城県の平均募集賃料の推移 図3 北海道の平均募集賃料の推移 募集賃料 3,780 3,680 3,270 3,490 3,450 3,450 −2.6 6.7 −1.1 −5.2 −6.3 前期比 募集賃料 3,120 3,120 3,370 3,220 3,190 0.0 3,370 −4.5 0.0 −0.9 8.0 前期比 (年) 2002 2003 2004 2005 2006 2007 上 (年)

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