ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2007年12号
特集
日本郵便の行方 郵政&日通4兆円連合は成立するか

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

図1 宅配便市場のシェア ヤマト 36.8% 佐川 32.4% 日通 10.4% 郵政 8.4% その他 11.9% 2006 年度 取扱個数 (億個) 14 12 10 8 6 4 2 0 00 年度 01 年度 02 年度 03 年度 04 年度 05 年度 06 年度 図2 大手4 社の宅配便取扱個数の推移 11億6,982万 10億285万 3億3,043万 2億6,795万 郵政 日通 ヤマト 佐川  日本郵政が民営化後いきなり日本通運との宅配事業 れたことで、市場の勢力図が大きく変わろうとしてい る。
その行方を探る。
統合を発表した。
郵便事業と日通の年商は合わせると 約4 兆円も上る。
迎え撃つヤマト・佐川の年商もそれ ぞれ1 兆円規模に達している。
郵便と物流の垣根が崩 特集 宅配便は?二強・一弱?市場に  今年一〇月一日の郵政民営化から間もない同月五 日、日本郵政と日本通運は「包括的かつ戦略的な提 携関係を検討し、構築すること」および宅配便事業 の新会社を設立することで合意し、基本合意書を締 結した。
来年四月に宅配便事業統合に関する最終契 約を締結し、同一〇月に新会社をスタートさせる。
 新会社は日本郵政の子会社である郵便事業(日本 郵便)が五一%を出資し、日通も三分の一以上を出 資する。
新会社のスタートに合わせて、郵政の「ゆ うパック」と日通の「ペリカン便」は統合し、ブラ ンド名をリニューアルする。
両社のシェアは合計で約 一九%(二〇〇六年度実績)。
ヤマト運輸の「宅急便」、 佐川急便の「飛脚宅配便」に続く宅配便市場の三つ 目の柱が誕生することになる(図1)。
 これによって最も大きな影響を受けるのは、ヤマト・ 佐川よりむしろ四番手以下の宅配便事業者だ。
郵政 は〇四年一〇月に「ゆうパック」を全面リニューア ルして以降、取扱個数を急拡大させている。
しかし、 そのあおりを食ったのは、日通を始めとした下位事 業者で、この間にもヤマト・佐川のシェアは逆に高まっ ている。
郵政と日通の事業統合で淘汰にいっそう拍 車のかかることは必至だ。
 その結果、宅配便市場は“二強・一弱?時代に 突入する。
郵政の宅配便は三二三九億円の売り上げ に対して営業利益が一八億円という低収益構造(〇 六年度・冊子小包含む)。
一方のペリカン便も事業 開始以来、赤字が続くとされる。
新会社は約五〇〇 〇億円の売上規模を見込めるものの収益的には苦し い展開を余儀なくされる。
 もともと日通は赤字のペリカン便のてこ入れ策と DECEMBER 2007  10 第1部ポスト民営化市場のシナリオ 郵政&日通4兆円連合は成立するか 記者会見の席上で手を握る日本郵政の西 川善文社長(写真右)と日本通運の川合 正矩社長 して郵政事業庁の時代から郵政との事業統合を模索 してきた。
しかし郵政としてはペリカン便の荷物を 獲得することには乗り気でも、そのインフラまで吸 収することには抵抗があった。
 むしろ郵政は日通の国際物流事業に魅力を感じて いた。
しかし日通にとっても国際物流はドル箱。
他 人の手には触れさせたくない。
宅配便だけで手を結 びたい日通と、国際まで含めた包括提携を求める 郵政の思惑の違いから、両社の話し合いはいったん は暗礁に乗り上げていた。
それがここに来て急展開 したのは、日本郵政の西川善文社長を中心とする 「郵政内のSMBC出身者たちの仕掛けによるもの だ。
今年の夏に日通とのトップ会談を呼びかけて急遽、 話をまとめた」と関係者は証言する。
 宅配新会社は資本上、郵政が主導権を握る。
事業 統合によって郵政はペリカン便の赤字を背負い込む ことになる。
それでも郵政が宅配便の“二強”に対 抗するためには、日通と組む以外に有効な選択肢は ない。
いずれは統合が必要になるのであれば、当面 は国際物流事業の提携に目をつぶり、先に日通側の 希望に応えて?貸し?を作った格好だ。
日通を呑み込み世界へ  郵政が日通の国際物流を諦めたわけではない。
四 大インテグレーターの一角を占めるTNTとの提携が 決裂して以降、郵政は国際物流進出の具体的なスキー ムを描けずにいる。
提携相手の有力候補としてきた 外資系インテグレーターとは、EMSと国際エクスプ レス便との競合問題を抱えており、今や敵対する関 係にある。
他の有力航空フォワーダーはいずれも特定 の企業グループに既に組み込まれている。
 残されたカードは国際物流分野でも日通のほか見 当たらない。
日通との宅配事業統合に関連して郵政 の西川社長は日本郵便の「株式の公開と並行して(日 通との)株式持ち合いも検討する」とコメントして いる。
一方、日通側は「宅配便・国際物流で包括提携」 と見出しを打った新聞報道に対して「国際物流に関 する提携で郵政と合意した事実は全くない」と火消 しに追われた。
 国内通常郵便の減少に加え、民間メール便に足元 を浸食されている日本郵便にとって、国際物流やロ ジスティクス事業など物流市場への本格参入による 事業拡大は既定路線。
目指すはドイツポストと同様 の国際総合物流企業だ。
その実現には大型買収や有 力物流企業との事業統合が避けられない。
 日通の時価総額は十一月二〇日現在、約五六〇 〇億円。
ドイツポストが総額二兆円近くを投じてD HLを始めとした民間物流企業を買収した国際物流 市場の常識に照らせば、郵政が日通を買収しても驚 くには当たらない。
対する日通は売上規模では世界 的にみても大きなプレゼンスを持ちながら、一九九 〇年代後半から始まった国際物流市場の大再編を全 く蚊帳の外で過ごしてきた。
 郵政と日通が統合すれば年商四兆円の規模を誇る アジア最大の総合物流企業が誕生する。
その先兵と して欧米のインテグレーターと伍していくのは日通 のスタッフたちだ。
独立資本に対するこだわりを捨 てれば、活躍の舞台は大きく拡がる。
ただし巨大す ぎるプレーヤーの誕生は他の民間物流企業への影響 が避けられない。
郵便事業の崩壊を覚悟で郵政の経 営の舵取りを縛るのか、それとも民業圧迫に目をつ ぶり国策として和製インテグレーターを育てるのか。
日本郵便の行方は世論に委ねられている。
(大矢昌浩) 11  DECEMBER 2007 図3 4つの事業領域ごとに有力企業との資本提携を積極的に進めている グループ会社 提携相手 出資比率等 設立 事業概要 三菱UFJ信託銀行 電通、電通テック 日本通運 大丸 三越 ANA、日本通運、 商船三井 資本金1億円。
郵政51%: 三菱UFJ信託銀行49% 資本金4億9000万円。
郵 政51 %:電通34 %:電 通テック19% 資本金未定。
郵政51%: 日本通運33%以上 買収金額6億5000万円。
資本金3400万円。
郵政 67.6%:大丸32.4% 資本金1億円。
郵便事業 51%:三越49% 資本金8000万円。
ANA 51.7%、郵政33.3%:日 通10%:商船三井5% 2006年2月 07年内予定 08年10月予定 2005年10月 2007年11月 2006年2月 メール宅配便ロジスティクス国際物流 JPビズメール DM新会社 (社名未定) 宅配便事業新会社 (社名未定) JPロジサービス (旧アソシア) JP物流パートナーズ (旧ディーエス ロジスティクス) ANA&JP エクスプレス 事業 領域 DMの封入発送・印刷業務 DM広告の企画・開発 宅配便事業 航空貨物機運航事業 大丸を荷主とした百貨店物 流。
06年度売上高134億 円 ギフト品の発送を中心とし た業務。
06年度売上高7 億円

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