ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2008年8号
特集
脱デルモデル 輸出基地タイの現場を歩くの

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

AUGUST 2008  24 輸出基地タイの 現場を歩く の生産規模は中国の約三倍。
光学レンズ業界でも世界 最大規模の生産量で、月間一〇〇トン以上を出荷して いる。
 素材はすべて日本から供給している。
「素材の熔解・ 成型は競争力の源泉であり、技術的にも海外移転は難 しい」とHOYAオプティクス(タイランド)の後藤 哲一ゼネラル・マネージャーは説明する。
 日本からの素材の調達物流は、通常のレンズ生産に 使用する大型の光学ガラス素材と特定の受注生産品に 使うレンズブランクスの大きく二つに分かれる。
光学ガ ラス素材は海上輸送で輸入し、在庫は日本国内ではな く、工業団地内の物流業者の倉庫に保管。
同倉庫から 工場にジャストインタイムで供給している。
「年に一度 しか注文のこない製品もあるが、そうした製品のため にも、専用の在庫を持つ必要がある」(後藤ゼネラル・ マネージャー)ため、在庫を持たざるを得なくなって いる。
 一方、レンズブランクスは受注生産を行う特定の製 品にしか使用しない。
このため、在庫量は光学ガラス 素材に比べて少なく、一カ月未満に設定している。
納 期も厳しいため、全量を航空輸入。
製品の特性に応じ た調達物流を運用している。
三崎港まぐろ ─ ─バンコクで高級 マグロを販売  タイ国内の市場開拓に力 を注いでいるのが、高級マ グロなどの卸・小売事業を 行う三崎港まぐろだ。
バン コクで伊勢丹や日系スーパー「Fuji」内などに四店舗 を展開し、東急百貨店内での店舗開設も予定している。
「タイの人々の食に対する感性は非常に鋭い。
おいしい HOYA ──チェンマイに業界最大規模の工場  タイ北部のチェンマイ 近郊にあるランプーン工 業団地は一九八五年に完 成した。
現在の工場数は 七五社。
業種別ではエレ クトロニクス関連と機械・ 部品関連が九〇%に達する。
このうち、日系企業は村 田製作所、フジクラ、京セラ・キンセキ、ケーヒンなど 三四社に上る。
 ランプーン工業団地はバンコクや主要港湾のレムチャ バンからは遠いが、税制上の優遇措置、他地域に比べ て安い人件費というメリットがある。
チェンマイ国際空 港からは三〇キロで団地内には税関当局の出先機関も ある。
 光学レンズなどを生産するHOYAオプティクス事 業部は、ランプーン工業団地で九一年に生産を開始し た。
現在は四工場を置き、主にデジタルカメラ向けの レンズを生産している。
以前は製品の全量を日本に出 荷していたが、カメラメーカーはデジカメの組立拠点を 中国、東南アジアに 移転している。
これ に伴い、日本向けの 出荷割合は相対的に 下がっている。
 同事業部は海外工 場をタイと中国に置 いている。
中国工場 は主に中国国内、タ イは東南アジアをカ バーする。
タイ工場  中国の台頭で陰の薄くなった感のあるASEAN。
しかし、輸出基地としての実力は依然健在だ。
進 出日系企業の現地化も進み、国際競争力はむし ろ高まっている。
タイの荷主企業、物流企業の現 場の声を聞いた。
        (梶原幸絵) 第3部 後藤哲一ゼネラル・ マネージャー 宮本俊猛社長 ランプーン工業団地の税関出張所 カンボジア ベトナム ラオス タイ ミャンマー バンコク アユタヤ ランプーン アマタナコン レムチャバン イースタンシーボード 自動車産業の集積地域 25  AUGUST 2008 特集脱デルモデル ものに対する情熱、知らない食べものに対する好奇心 も日本人より強い。
本物のマグロを販売し、マグロ文 化を広めたい」と宮本俊猛社長は語る。
 同社は世界中から日本に集まったマグロを買い付け、 日本国内とタイの店舗に供給している。
マグロ以外の 商材はタイ国内で調達しているが、マグロは大部分が 日本からの輸入だ。
月間輸入量は二〜三トン程度と少 量のため、航空輸送している。
空港からはドライアイ スを使い、自社で輸送。
タイ現地法人の超低温の冷凍 設備に搬入し、そこから店舗に配送する。
 プーケットなどで水揚げされるマグロは、買い付け先 のタイ企業がバンコクまで配送するが、温度管理が十 分ではない。
このため、においがついてしまうことも あるという。
マグロは「輸送中の温度管理が命」(宮 本社長)だ。
今後は五店舗目のオープンに伴い、国内 物流体制の整備にも力を入れる。
タイ国際航空 ──最新マテハン施設を駆使  タイ国際航空の貨物部門の事業の柱は二つ。
航空輸 送だけでなく空港貨物施設でのハンドリング業務も行っ ている。
〇六年九月に開港したスワンナプーム国際空港 (新バンコク国際空港)では、昨年、一〇〇万トンを取 り扱った。
今年は一一〇 万トンを見込んでいる。
 同空港はバンコクから 東二五キロメートルに位 置する。
最新鋭の設備 を誇る大型空港だ。
タイ 国際航空が運営する国際貨物施設は九万平方メートル。
二〇一〇年から一四年にかけて拡張工事も計画してい る。
 施設内では最新のマテハン設備により、大量の輸出 入貨物を処理している。
昨年の取扱量は一〇〇万トン。
今年は一一〇万トンを見込んでいる。
自社の貨物のほ か、同空港に乗り入れる航空会社一〇〇社のうち、八 〇社の貨物を扱っている。
 一万平方メートルの生鮮センターも特徴の一つ。
農業 国タイでは生鮮品の輸出ニーズが高い。
エリア全体は 一八度に保たれ、温度別の冷凍・冷蔵庫を備える。
貨 物の特性に応じた温度管理が可能だ。
 タイ国際航空のボラプラワット・スープサーン貨物郵 便担当マネージング・ダイレクターは「当社の強みは 最新の設備と世界中に広がるネットワークだ。
?THAI Cargo Thai Care?をモットーに品質も高め、きめ細 やかなサービスを提供していく」と語った。
日本通運 ──自動車関連の取り込み強化  タイ日本通運は来年、設立二〇周年を迎える。
従業 員数は九三八人、うち、 日本からの出向は十一 人の陣容だ。
航空貨物 部はバンコク支店、チェ ンマイ支店、イースタン シーボード支店を傘下に 擁し、スワンナプーム空港の貨物地区に空港事務所を 設置している。
 倉庫拠点はバンコク近郊のラッカバンとキンケオ、ラ ンプーン、イースタンシーボードなどに置く。
加えて六 月末、スワンナプーム空港貨物地区内のフリーゾーン (保税地区)にも倉庫を新設した。
タイ日本通運航空 貨物部の石川雅彦部長は「航空貨物の混載拠点として 活用していきたい」と語る。
 航空貨物輸送では通常、輸出では空港上屋で複数の フォワーダーの搬入した貨物がULD(ユニットロード ディバイス、コンテナやパレットに貨物がひとかたまり になった状態)に積み付けられ(ビルドアップ)、航空 機に搭載される。
輸入ではこの逆で、航空機からおろ されたULDは空港上屋で解体され(ブレークダウン)、 フォワーダーに引き渡される。
 しかし、貨物取扱規模の大きなフォワーダーは自社 でULDを積み付けて航空会社に搬入、または空港か ら直接ULDを自社施設に輸送する「インタクト輸送」 を行えば、空港上屋を経由せずに済む。
ダメージリス クを低減し、リードタイムも短縮できる。
 タイではこれまでULDのインタクト輸送が制限さ れていたが、フリーゾーン内にフォワーダー用上屋が設 置され、制度上は可能になった。
ただし、フリーゾー ンのフォワーダー上屋は現在入居が始まった段階で、イ ンタクト輸送のオペレーションは確立されていない。
 タイ日通はまずは七月、税関当局などと調整し、輸 入からULDのインタクト輸送のトライアルを開始し た。
トライアルを重ね、インタクト輸送を本格化する考 えだ。
 また、航空貨物では補修部品など自動車関連貨物の 取り込みに注力する。
燃油価格高騰に伴い、海上輸送 へのシフトが進み、〇六年から需要は低迷を続けてい る。
タイ日通の昨年の月間取扱実績は、輸出が前年比 石川雅彦部長 スワンナプーム空港内の国際貨物施設では年間 100万トンを取り扱う ボラプラワット・スープサーン マネージング・ダイレクター AUGUST 2008  26 革に取り組んでいる。
〇 三年から昨年まで四年 をかけ、生産プロセスの 改革によるリードタイム の削減を進めた。
〇三 年時点では生産の五週 間前に販社から受注して いたが、これを四営業日 前にまで短縮。
販社の需 要に即応する生産体制 を整えた。
「販社の需要 を生産の直前まで引き付 けた。
限界ギリギリのタイミングだ」とOKIデータ・ マニュファクチャリング・タイランド(ODMT)の吉 田修社長は説明する。
 これと並行して?物流動線の短縮?を目指した生産 改革活動を進めている。
「部品調達、製造、出荷まで の物流動線を短縮し、人が部品・製品に触る回数を減 らして生産性と信頼性を高める」(ODMTの高橋一 彰ディビジョン・ゼネラル・マネージャー)狙いだ。
工 場内のレイアウトとピッティング方法の変更、工程間の 距離削減、多能工化による工程数削減、作業動作分析 によるムダ取りなどさまざまな活動を進めた。
〇〇平方メートルの「阪急ロジスティクス・センター (HLC)」を開設した。
空港進入路に面しており、空 港だけでなくバンコク市内、レムチャバン方面との輸送 にも利便性が高いという。
輸出航空貨物の空港への中 継地点としても活用していく考えだ。
 同社の大きな強みは品質という。
平田マネージング・ ダイレクターは「タイでは工場が二四時間稼働するの が普通で納期に対する要求は日本よりも厳しいといえ る。
それでも当社では順守している。
事故などのため に遅れることもある。
そうした場合は、例えば輸出で は集荷の遅れが三時間以上になった時点でハンドキャ リーによる航空輸送を行うほどだ」と語った。
OKIデータ ──現地化進め生産改革  アユタヤのロジャナ工業団地は二〇〇社が入居し、総 就業人口は一〇万人に上る大規模工業団地だ。
このう ち日系企業は七割を占める。
ドットインパクトプリンタ ーとカラープリンターで世界二位のシェアを持つ沖デー タは、同工業団地で九四年に生産を開始した。
日本で 技術開発し、主にタイと中国で生産(日本でも一部生 産)、欧米で販売する、というかたちだ。
 タイから輸出するプリンターの六割は欧州向けだ。
以 前はプリンター本体の生産はタイが大部分を占めていた が、〇二年に中国に進出して以降、中国での生産を拡 大。
今では中国工場は月産七〇万台のタイとほぼ同量 を生産している。
タイと中国を二大生産拠点と位置付 けることで集中生産のリ スクを低減する一方、ス ケールメリットを出す考 えだ。
 現在、グループ全体で 生産・サプライチェーン改 一%減の二〇〇〇トン、輸入到着件数が一%増の一万 件。
今年に入って持ち直してはいるが、今後、取扱規 模を拡大するには品目の多様化が必要だ。
 現在、航空貨物の取り扱いはHDDや電子部品、電 機関連が八五%を占め、自動車関連は一五%程度。
し かし、今後は自動車関連の比率を高めていく方針だ。
タイの航空貨物の動向について石川部長は「部品・部 材の輸入と製品・半製品の輸出の双方があり、輸出入 のバランスがいい」と分析。
地域別にみると、日本が 占める比率は年々減っている。
特に、この一〜二年で アジア域内からの調達が急増しているという。
阪急エクスプレス ──ロジスィクス事業を拡大  阪急エクスプレスは航空輸送の需要減に対応するた め、ロジスティクス事業と海上貨物事業を強化してい る。
海上貨物の輸出入と航空輸入の取扱量は前年比一 〇〜三〇%増と好調だが、輸出航空貨物は昨年から二 〇%減と大幅な前年割れが続いている。
「燃油高騰に よる海上輸送へのシフト、米国の購買力低下、環境問 題などのため、輸出航空貨物が減っている」と阪急イ ンターナショナル・トランスポート(タイランド)の平 田耕二マネージング・ダイレクターは語る。
 取扱品目は自動車部品、電機部品、電子部品、電気 製品などだが、自動車部品を除けば低調だ。
同社にと って、航空輸出の売上高比率が高いため、市場低迷の 影響は大きい。
そこで、ロジスティクス事業の強化に よる貨物取扱量の拡大を 図っている。
今年の取扱 目標は航空輸出入、海上 輸出入ともに一〇%増だ。
 今年六月には、スワン ナプーム空港付近に四〇 平田耕二マネージング・ ダイレクター 高橋一彰ディビジョン・ ゼネラル・マネージャー 吉田修社長 宗像正博ディビジョン・ ゼネラル・マネージャー 生産ラインのスペースを削減して設置した研修 室(上)と生産ライン(下)。
屋台生産方式を 採用している 27  AUGUST 2008 特集脱デルモデル ド(BLT)に資本参加した。
これに伴い、これまで 工場ごとに分かれていたOKIグループの物流管理を BLTに一本化。
BLTがタイ国内物流の物流会社選 定と運賃交渉を行う体制に改め、大幅な物流コスト削 減を成し遂げた。
川崎汽船 ──アマタナコンに3PL拠点  川崎汽船はタイで四〇年以上の歴史を持つ。
海上・ 航空輸送だけでなく、タイの国内輸送を組み合わせ、主 要顧客の自動車メーカー、部品メーカー向けに部品か ら完成車までの一貫輸送を提供できるのが強みだ。
タ イ国内物流に関する営業窓口を泰国川崎汽船(ケイラ イン〈タイランド〉:KTL)の総合物流部に一本化 し、ワンストップ・サービスを提供している。
 大型の倉庫拠点をバンコク、アマタナコン、レムチャ バンに置く。
倉庫面積一万四六〇〇平方メートルのア マタナコン倉庫は、大手部品メーカーの海外出荷拠点 としても機能している。
タイのグループ工場で生産し た部品をミルクランで集荷。
アジア、豪州、欧州など の仕向地別に仕分けし、コンテナにバンニングして出荷 している。
部品は保管せずクロスドッキングで処理して いる。
入庫後、即座に仕分けしてバンニングし、積載 率が九五%以上になった時点で出荷する。
 アマタナコンの倉庫の近隣には車両メンテナンス機能 を備えた車両基地を置き、安全運行と運行管理を徹底 している。
タイではトラック・トレーラーの運行管理 にGPSが使用されることが多いが、KTLはGPS に加えてトラック・トレーラー運行管理システムと安全 運行・運転状況モニタリングツールにより、オーダーご との配送状況から車両位置、速度、ブレーキ回数、燃 費消費など細部までを管理。
専任のスタッフがモニタ リングしている。
 車両基地はドライバーの研修センターも兼ねている。
KTLのドライバーは全員が社員だ。
交通法規や運転、 車両整備だけでなく各顧客が定める作業手順、生活習 慣までさまざまな教育を行い、ドライバーの質の向上 を図っている。
 
烹圍未事業で最も重要視しているのは品質だ。
「タ イで当社のような規模・内容で品質に取り組む物流企 業は少ないのではないか」(KTL総合物流部)と自 信を持っている。
自動車関連貨物はジャストインタイ ムの納入が求められる。
遅れはもちろん指定時間より 早く着くことも許されない。
しかしタイ国内は渋滞が 激しく、輸送時間をよみづらい。
港湾ではコンテナの 引き取りに朝から夕方まで並ぶことも珍しくない。
 このため、大手自動車メーカーの輸入部品の納入業 務では、工場から五キロメートル以内にデポを設置した。
納品日前日までに港でコンテナをピックアップし、デポ に一次保管しておけば無理なくオンタイムのデリバリー を行える。
デポにはコンテナのみを保管し、シャーシか ら切り離したトレーラーヘッドは次のコンテナ引き取り 業務に回せるため、トレーラーヘッドを有効活用でき る。
昨年には同じ荷主から生産部品のミルクラン集荷 業務も受託している。
今後も品質を強みに、事業を拡 大していく考えだ。
 一例を見てみよう。
タイ国内からの調達部品は、毎 日ジャストインタイムで納入を受けている。
以前は生産 ラインに投入するために、工場側で荷姿を変更してい た。
そのため、部品倉庫と生産ラインの間に受け渡し のためのスペースを設けていた。
 サプライヤーに要請し、出荷時の荷姿をそのまま生 産ラインに投入できるように改め、生産ライン担当者 が必要なときに部品を引き取りにいく“プル方式”に 変更した。
これで受け渡しのスペースが不要になった。
同時に部品の保管スペースを生産ラインに近づけて、動 線を短くした。
 「こうした地道で細かな改善によって大きな成果が上 がっている」とODMTの宗像正博ディビジョン・ゼ ネラル・マネージャーはいう。
〇七年度上期までに生 産ラインのスペースは三〇%削減できた。
〇七年度下 期は削減目標一五%に対し、一九%削減を達成。
生産 性も大きく向上している。
 目標を上回る成果を上げたのは、活動の主体を現場 で働くタイ人にしたためだ。
「昔は日本人スタッフが 改善活動を指導していたが、なかなか定着しなかった。
しかし、従業員のモチベーション向上に取り組むと同 時に、こちらで方針を策定し、決まった生産プロセス の中で細かい改善を自分から提案し、実行してもらう ように改めた」と吉田社長。
 これで改善提案は大きく増加した。
今後も生産改革 は継続していくという。
そのため空いたスペース分を 利用して、工場の一等地ともいえる場所に休憩所や研 修室を作るなど、従業員のモチベーション向上にきめ 細やかに配慮している。
 タイの国内物流も改革している。
OKIグループの 物流を担うOKIロジスティクスが〇六年、日本ビジ ネス・ロジスティクス(旧日本IBMロジスティクス) のタイ現地法人、ビジネス・ロジスティクス・タイラン トラック・トレーラーの車両基地(上)とアマ タナコン倉庫内(下)

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