ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2008年9号
keyperson
小野寺 寛 PRTM パートナー・日本代表

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

SEPTEMBER 2008  4 一段落しました。
その償却がようや く終わり、資金的にも再び身動きが とれるようになってきた。
ただし、今 回は前回の反省を活かし、IT主導 ではなく、戦略主導でITを活用し ていこうと、どこも考えている」 ──二〇〇〇年頃までのIT投資は、 サプライチェーン計画エンジン(SC P)を導入して科学的に需要を予測 し、ムダな在庫を減らそうというア プローチでした。
結局、それは上手 く機能しなかった?  「残念ながら課題は解決できなか った。
そのトラウマもあって、今回 はパッケージソフトを購入するので はなく、『SaaS( Software as a Service :ソフトウエアの機能を従量 制で販売するサービス)』を選択する 傾向があります」 ──なぜ海外で機能したツールが、 日本では使えないのでしょうか。
 「IT化とは基本的に業務のオート メーション化です。
オートメーション 化は業務の標準化が前提になります。
それも業務を単に型にはめるという のではなく、優れた業務のやり方に全 てを合わせる必要がある。
それが日 本人の得意な名人芸とは馴染まない。
欧米企業であれば、標準化された業 務のやり方をして、その結果、以前 より効率が悪化したとしても、それ 在庫削減はゴールじゃない ──
丕劭圍佑行ったSCMのトレ ンド調査で、興味深い結果が出てい ます。
 「二〇一〇年には、顧客の要求に対 する柔軟性が、サプライチェーン戦略 の最も重要なドライバーになることが 分かりました。
既に現時点でグローバ ル企業の経営層は、柔軟性をコスト 以上に重要だと認識しています。
さ らに今後二年間で、柔軟性は他のど の項目よりも重要度を増していく」  「在庫に関しても全体の六五%の 企業が、今後は安全在庫を増強する と答えています。
これまでは『SC Mの高度化=在庫圧縮』という意識 が強かった。
本来手段であるはずの 在庫削減が目的化してしまっている ところがありました。
そうではなく、 本当に達成しなくてはならないのは、 顧客の要求に対する柔軟性だという ことを皆が意識し始めた」 ──在庫削減に行き過ぎがあった?  「なかったとは言えません。
特に日 本企業の場合には、在庫削減を仕組 みによらずに、力ずくでやろうとする 傾向が強かった。
四半期決算ごとに 無理矢理在庫を減らしてしまう。
そ れが欠品や納期の遅れを招いた。
顧 客の要求に対する柔軟性を阻害して いた部分がありました」 ──グローバル化が急速に進展した ことも影響しているようです。
 「グローバル化の当初の目的はコス ト削減でした。
安い労務費、安い部 材コストを求めて企業は拠点を海外 に移した。
その結果、作る場所と売 る場所が離れてしまった。
顧客の欲 しいタイミングで欲しいモノを届ける ことが、その分だけ難しくなった。
結 局、グローバル化によって労務費や部 材コストは下がったけれどもサプライ チェーンの柔軟性には傷が付いてし まった。
今後はそこが最重要課題に なるということです」 ──課題認識には回答企業の出身地 域による違いもあったようですね。
 「柔軟性の強化のほかに、日本企業 の場合には、既存のITインフラの 活用をSCMの重要課題として挙げ る企業が多かったのが特徴的でした。
過去に日本企業はSCMの高度化を 狙って巨額のIT投資を実施しまし た。
ところが、その投資効果には確 信を持てないでいる」  「実際、昨年辺りから改めてSCM のプロジェクトに乗り出す日本企業 が増えています。
日本企業のSCM がらみのIT投資は二〇〇〇年頃に 小野寺 寛 
丕劭圍諭.僉璽肇福次ζ本代表 「コストから柔軟性へ課題は移った」  
咤達佑虜能斗弉歛蠅蓮▲灰好蛤鏝困ら柔軟性の獲得に大 きくシフトした。
在庫も従来の削減一辺倒から積み増しに舵 を切る企業が増えてきた。
グローバル化の進展でSCMのトレ ンドは変化している。
世界の有力企業三〇〇社を対象に行っ た最新の調査で明らかになった。
   (聞き手・大矢昌浩) 5  SEPTEMBER 2008 は自分の責任ではないと知らんぷり する。
しかし日本人はそうしない」  「これは物流も同じですが、日本企 業の現場の意識は欧米に比べて格段 に高い。
現場の一人ひとりが会社に 貢献しようという意識を持っている。
そのために、標準化やシステムの指 示に耳を貸さないところがあります。
自分のやり方のほうが会社のために なると確信している。
実際、その局 面では良い結果をもたらすことが多 が本当に顧客の要求に合致している のか。
サプライチェーンや製造にとっ ても適切と言えるのか。
従来は十分 に検証されてこなかった」  「それを、開発者に任せきりにしな い仕組みに変える。
プラットフォーム の検討に他の機能部門を参加させる。
その結果、開発者だけで検討してい たときとは違ったものができてくる。
それによって時には業界の競争ルー ルを変えてしまうほどの飛躍的な業 績向上が可能になる。
そう判断して、 実務的戦略を財務リストラやビジネ スモデル改革以上に重視する経営層 が増えています」 い。
ところが、そうした?名人たち? のもたらす部分最適が、会社全体と しては非効率を招いてしまう。
合成 の誤謬に陥ってしまう」 ──どうすれば克服できますか。
 「現場の意識が高いというのは、本 来であれば日本企業の強みです。
そ れを業務の仕組み、ITと結びつけ ることができれば、大きな力になる。
それができないのは、現場の能力を会 社全体の推進力に組み替えていく経 営機能が日本企業に欠けているから です。
我々はそれを『オペレーショナ ル・ストラテジー(実務的戦略)』と 呼んでいます」 実務戦略で差が開く ──実務の戦略を経営層が立てなけ ればならないのですか。
 「現場改善などの狭義の実務と、広 義の実務を分けて考える必要があり ます。
我々の提唱する実務的戦略と は、財務的な操作で株価を上げると いうエンロン的な経営手法の対立概 念として注目されるようになったも ので、ちゃんと本業で利益を上げま しょうという考え方に立っています」  「例えば数年前までヒューレット・ パッカード(HP)は、プリンター事 業では大きな成功を収めていたのに、 パソコンやサーバーなど他の事業で は全く成功できずにいた。
HPのプ リンター事業の実務的戦略は、競合 よりずっと進んでいました。
サプライ チェーンの複雑化を避ける設計手法、 グローバルな調達システム、短いリー ドタイムとそれを可能にする物流シス テムなど、同事業の各機能部門が顧 客に向けて見事に連携をとって活動 していた。
しかし、同じことが他の 事業ではできずにいた」  「ある事業では成功しているのに別 の事業では失敗しているという事例 は日本でも無数に見られます。
トッ プ次第で業績が大きく変わってしま う。
実務的戦略が仕組み化されてお らず、トップの能力に依存している からです。
HPはそれに気づき、〇 五年にCEOに就任したマーク・ハ ードがプリンター事業の実務的戦略 を他部門に適用していった。
それに よって業績を飛躍的に向上させるこ とに成功しました」 ──具体的には何をすればいいので しょう。
 「サプライチェーンだけでなく、製 品開発や営業部門まで含めた全ての 機能部門が、顧客の要求に応えるた めに連携をとって動く仕組みを作る んです。
例えば製品開発のプラットフ ォームには、技術者の個人的な嗜好 や思い入れがどうしても働く。
それ  一九七六年に米国シリコンバレーで 設立された経営コンサルティングファー ム。
事業戦略と実務をつなぐ実務戦略 (Operational Strategy)の重要性を提唱 し、サプライチェーンカウンシルの創設 と「S C O R:Supply Chain Operation Reference Model」の開発にも主導的に 携わっている。
九九年十二月に東京オフィ スを設立。
PRTM Management Consultants おのでら・ひろし 1984年3 月、慶應義塾大学経済学部卒。
大手エレクトロニクスメーカーに 勤務。
同社在勤中、慶應義塾大 学大学院経営管理研究科を卒業、 同在学中にペンシルベニア大学経 営大学院ウォートン校に交換留 学。
99年、PRTM入社。
東京オ フィス立ち上げに参加。
2003 年7月、同社初の日本人パートナ ーに昇進、現在に至る。
05年4 月から2年間、早稲田大学先端科 学・健康医療融合研究機構客員 助教授を務める。
0 20 40 60 80 100 (単位は回答率、複数回答含む) 0 20 40 60 80 100 56 61 52 56 44 49 51 32 (単位は高い重要度を示した回答率) 製品品質 顧客サービス 製品の革新性 総輸入仕入れコスト 製品コスト 環境規制対応57 61 74 76 77 83 90 91 (%) (%) ■2010年にはサプライチェーンの柔軟性が最も重要なドライバーとなる 《SCM戦略のドライバーの重要性(08年)》《10年までに重要性が増加するドライバー》 「グローバルサプライチェーントレンド調査2008- 2010-6 August 2008」©2008 PRTM Proprietary 顧客要求に 対する柔軟性 地域市場での 存在感とアクセス

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