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FEBRUARY 2009 20
ハマキョウレックス
──未曾有の不況も3PLの追い風に
3PL を柱とするハマキョウ単体の売上高経常利益率は9%を超え
ている。 規模も大幅拡大基調だ。 折からの景気後退で顧客のコスト
削減意識は急上昇。 比例するように同社への引き合いが伸びている。
懸案だった路線便事業の再建にもメドが立った。 2年後には連結売
上1000 億円、経常利益60 億円を目指す。 (聞き手・石鍋 圭)
手の届く具体的な目標を立てる
││物流会社の倒産が急増しています。
「昨年は原油価格の高騰、リーマンショックを引き
金とする世界同時不況と経済が大変なことになった。
物量も激減している。 これは一企業でどうこうでき
る問題じゃない。 個人的には今年八月頃までは景気
は好転しないと思っている。 残念だけど、まだまだ
倒産は増えるんじゃないかな。 特にトラックでモノを
運ぶだけの運送屋は厳しいだろうな」
「だがその中でもやれることはあるはずだ。 『大変だ、
大変だ』って嘆いているだけじゃ何もはじまらないよ。
誰も助けてなんかくれない。 それより荷物が半分にな
るなら、その中で利益を出す仕組みを考えればいい
んだよ。 不況はチャンスだくらいに思ってさ。 『そん
な簡単にいくか』なんて声が聞こえてきそうだけど、
それが考えられないなら会社たたむしかないよな。 荷
物は半分、やり方はそのまま。 これで経営が成り立
つわけないよ」
││大須賀会長に相談に来る企業も多いのでは。
「相談に来られれば仕組みは全部教えるよ。 日々管
理やアコーディオン方式、日替わり班長制。 ウチの
強みとされている方法はいつでもフルオープンだ。 そ
れでも結果が出ない会社も少なくないけどな」
││そういった企業はどこに問題があるのでしょうか。
「やっぱり経営者に真剣さが足りないんだよ。 方法
さえ聞けばなんとかなると勘違いしている。 そんなこ
とで業績が好転するなら誰も苦労しない。 トップが
一番勉強して、業績が悪いときには一番給料を削っ
て、一番働くのが当たり前。 会社の主役は社員だけ
ど責任はトップにあるんだからな。 なのに勉強は部下
任せ、社長専用車もやめない、給料もそのまま。 こ
れで社員がついてくるわけない。 経営が良くなるわけ
ないよ」
「あとは手の届く具体的な目標を持つことが重要。
これが簡単そうで意外に皆できていない。 オレの場
合はまず月次一〇〇〇万円、年商で一億二〇〇〇万
円を目指した。 それが達成できれば二億、次は五億
と。 今の連結売上げ八四〇億っていうのはその積み
重ねだ。 人間っていうのは具体的な目標を持つと、
それを達成するために知恵を出すようになる。 スポー
ツでも何でもそうだろ。 一〇〇メートル十三秒で走
る陸上選手が十二秒で走れるようになりたいと思え
ばフォームやトレーニング方法を研究するはずだ。 と
ころが多くの人はただ忙しがって闇雲に走り回ってい
る。 ずっと十三秒のままね」
││ところで何故、競争力の源泉であるノウハウを
惜しげもなく他社に教えてしまうのですか。
「社員にも同じことを聞かれることがあるよ。 もう
やめろとも言われる。 けどそれはウチのためでもある
んだ。 他社が業績を伸ばしてくれば、それに負けな
いために新しいアイディアを出さなければいけなくな
るだろ。 つまりまた飛躍のチャンスが生まれてくるっ
ていうことだ。 会社は健全な競争を嫌がっちゃいけ
ない。 むしろ歓迎するべきだよ。 情報を遮断すれば
新しい情報も入ってこなくなるだろうしな。 もしウチ
が閉鎖的な体質だったら、ここまでの会社にはなっ
ていないとオレは確信しているよ」
││冒頭で不況の話が出ましたが、ここ最近多くの
企業が下方修正や人員削減などネガティブな発表を
しています。 ハマキョウレックスは〇八年度中間決
算の業績は単体の売上高経常利益率が九%を超える
など好調でしたが、足下の業績はどうでしょうか。
「第3四半期の集計が上がってきたところだが、計
大須賀正孝 会長兼CEO
注目企業トップが語る強さの秘訣総合8位
21 FEBRUARY 2009
画通りに進んでいる。 通期での下方修正の予定もな
い。 幸い人員に関しても今のところ、まだまだ欲し
いという状況だ」
││好調の要因は。
「3PL事業の稼働中の案件は六〇件近くある。
交渉案件も常時四〇件以上。 引き合いも増えている。
不況期だからこそ顧客はセンター事業をより効率化
してコストを削減したいと考える。 アウトソーシング
を考える。 まさに3PL事業者の手並みが試される
局面だな。 ビジネスチャンスだと考えているよ」
「ただこれまで以上に受託の際の見極めは重要にな
る。 ウチは仕事が欲しいからといって何でも引き受け
て赤字の原因を作るようなことは絶対にしない。 顧
客が出してくる数字も鵜呑みにしない。 実際に現場
を見せてもらって、これならウチがやれば効率化でき
ると判断した案件だけを引き受ける。 当然、料金も
適正な価格をもらう。 正しいデータを基に胸襟を開
いて話し合えば顧客だってわかってくれるよ」
「ウチは難しいことなんて何一つやっていない。 当
たり前のこと、経営の原理原則を貫いているだけだ」
││既存のセンター事業では物量の波動が大きくなっ
て採算が取れない案件も出てくるのではないですか。
「同業者からそういう声はよく聞く。 でも波動が大
きくなったから赤字ですなんて言い訳にならないよ。
そもそもその波動に対応できることにこそ、3PL
の価値があるんじゃないか。 常に物量が安定してい
ていないと黒字にできませんなんてナンセンスだよ」
路線便事業も軌道に
││〇四年に買収した路線便事業の近物レックスが
中間決算で黒字化しましたね。
「利益の額はわずかだが赤字垂れ流し体質から脱却
できたことは大きい。 しかも中間決算期の四月│九
月というのは燃料価格高騰の真っ只中だった。 大変
な環境の中で結果を出せたことは近物の社員にとっ
ても大きな自信になったはずだ」
「ただこの一、二月の業績は楽観視できない。 物量
の落ち込みが半端じゃないからな。 もちろん通期で
も黒字化を目指しているが厳しい結果になるかも知
れない。 それでも再建の目処は立った。 来期からは
これまでの施策の効果が、より顕著に表れるだろう」
││具体的にどのような再建策を打ってきたのですか。
「まず収支感覚の徹底。 以前は支店長が自分のと
ころが赤字か黒字かもわかっていないような状態だっ
た。 まったく話にならないよ。 ハマキョウの日々管理
の手法を導入して全社員にコスト意識を浸透させた」
「路線便は積載率を高めて走らせるのが基本。 なの
に時間通りに到着させることにばかりとらわれて、荷
物が半分に満たない状態で平気でトラックを走らせ
ていた。 汗水垂らして、ついでに赤字も垂れ流して
空気を運んでいたんだ。 路線便数を一〇〇便以上減
らして積載率を高めた。 今では平均九〇%近くにま
でなった。 さらに荷主ごとの採算を洗い出し、どう
努力しても赤字のお客さんとは取引を中止した」
「これで改革が終わった訳じゃない。 ようやく三割
といったところかな。 まだまだムダがある。 これが完
結すればとてつもない会社になるはずだ。 『路線便は
儲からない』とか、『路線便事業の売上高営業利益
率は三%で合格』とかいった常識は覆るよ」
││今後の目標は。
「再来年はハマキョウの設立四〇周年。 それに向け
て経営計画を発表する予定だ。 数字の上では連結売
上高一〇〇〇億円、経常利益六〇億円が目標。 オ
ンリーワンとナンバーワンを同時に目指すよ」
競争激化も体制は盤石
2004年に買収した路線便事業の近物レックスが、08年度の中間決算
で黒字化した。 コスト意識の徹底、路線便数の見直し、不採算取引の中
止など経営改革が奏功した。 しかし通期では赤字になる目算が高い。 年
度前半の燃料価格の高騰、後半の物量減少などが重く響く。 ただいずれ
の要因も歴史的なネガティブ・ファクト。 経営体質は改善されつつある
ので景気が落ち着けば黒字基調になる可能性が高い。
コアである3PL事業の売上高経常利益率は9%と同業他社を圧倒して
いる。 規模も拡大基調。 経済状況の悪化でセンター事業のアウトソーシ
ングへの流れに拍車がかかっており、同社にとっては追い風。 3PL市場
は新規参入の増加により競争は激化しているものの、経営状態をリアル
タイムで見るための「日々決算」や適正な人員調整を行うための「アコー
ディオン方式」、社員一人ひとりにコスト意識を持たせるための「日替わ
り班長制」など独自のノウハウが差別化要因になっている。
06年度からスタートした三カ年計画が今期をもって終了する。 その中
に盛り込まれていた「連結経常利益率6%」や「近物レックスの株式上
場」など一部未達の項目もあるが、概ね実現し健全な成長を遂げてきた。
2年後の創立40周年に向けて新たな経営計画が発表される。 連結売上
高1000億円、経常利益60億円などの目標が盛り込まれる予定。
本誌解説
1,200
1,000
800
600
400
200
0
連結業績推移
100
80
60
40
20
0
1000
60
236
516
776
823 835 865
19
26
31
21
31
40
(単位:億円)
04年
3月期
05年06年07年08年09年
(見通し)
11年
(計画)
売上高
(左軸)
経常利益
(右軸)
物流企業番付《平成21年版》
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