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83 MARCH 2009
ロジスティクス=物流。 まだそんな
風に考えている方が少なくないので
はないだろうか。 新入社員ならいざ
知らず、経営者にロジスティクスへの
理解が無ければ、その会社は目に見
えないムダを抱えていると断ぜざる
を得ない。 本書では従来の「物流」
と「ロジスティクス」の相違点を整
理するとともに、ロジスティクス実
現に際しての課題やそれに対するソ
リューションを解説している。 著者
は本誌連載「物流コンサル道場」で
もお馴染みの湯浅和夫氏。
ロジスティクス実現の要諦は「在
庫責任の明確化」にある。 多くの企
業ではこの部分がエアポケットにな
っている。 誰も在庫に関して責任を
負っていない。 結果、多くの不良在
庫や欠品が発生している。
基本的に在庫責任はロジスティク
ス部門が負うべきと著者は主張する。
スポーツ用品製造卸のゼット(本
社:大阪市中央区)と日立物流、佐
川急便、イー・ロジットは二月三日、
スポーツ用品業界に特化した共同物
流会社「ジャスプロ」を設立すると
発表した。 四月初旬にも設立し、ま
ずゼットの物流子会社ザイロが行っ
ている流通加工業務を移管。 二年目
以降、他メーカーからの物流受託を
開始する。 初年度の売上高は六億円、
三年後には一〇億円を目指す。 スポ
ーツ用品業界専業の共同物流会社は
初めてという。
ジャスプロは東京都台東区に設立
する。 資本金は六〇〇〇万円でゼッ
トが八〇%、日立物流が一四%、佐
川急便が五%、イー・ロジットが一%
を出資。 社長にはザイロの太田達男
社長が就任する。
ジャスプロは共同物流のトータル
管理・運営を行い、ゼットがシステ
ム、経理、総務関連、日立物流が庫
内作業、配車、佐川急便が輸送、イ
ー・ロジットが営業企画を担当する。
千葉県内に六〇〇〇平方メートル以
上の物流センターを設置する予定。
スポーツ用品業界は約三〇〇社の
メーカーで構成されるが、少子高齢
化などから市場環境が厳しくなって
いる。 ゼットの渡辺泰男社長は「流
通加工や輸入品の保管など、物流
「物流とロジスティクスの基本」
本誌連載でお馴染みの湯浅和夫氏が新刊
ゼットと日立物流、佐川急便など四社
スポーツ用品特化型共同物流会社を設立
営業部門から商品ごとの売れ行きな
ど必要なデータを受け取り、それを基
に物流拠点に適切な供給を行う。 さ
らに生産部門には今後必要となるで
あろう数量を伝達し、生産活動の指
標としてもらう。 決してモノを運ぶ
だけが役割ではない。
営業部門は販売に専念し、生産部
門は必要な数量を効率的に製造する
ことを第一義とする。 そしてロジステ
ィクス部門は在庫に責任を持ち、過
不足を調整する。 ただし、営業が提
示したデータに間違いがあり、供給
量に問題が発生した場合はその責任
は営業が負う。 同様に、生産部門が
提示された指標を無視して過剰な在
庫が発生した場合は生産部門が責任
を負う。 これがあるべき姿だ。
現実は違う。 著者の提唱する理想
的なロジスティクスを実現するには
ドラスティックな改革が必要になる。
ロジスティクス部門(あるいは物流
部門)に対して大きな権限の委譲が
発生するため、他部門からの反発は
免れない。 ロジスティクスが浸透し
ない要因の一つだ。 だが成功すれば
効果は大きい。 著者の言葉を借りれ
ば「新たな利潤源」となる。 本のタ
イトルからは物流初心者向けと受け
取られるかも知れないが、経営層に
も一読してもらいたい一冊だ。
に対する需要も多様化している。 合
理化への取り組みも出てきているが、
一企業内での合理化は限界にきてい
る。 そこで、共同化という切り口を
考えた」と説明。 ジャスプロを受け
皿に3PL最大手の日立物流、スポ
ーツ用品の国内配送でシェアを持つ
佐川急便、コンサルティングのイー・
ロジットが連携し、物流センターと
配送の共同化による効率化とコスト
削減、環境負荷低減を図る。
ザイロの太田社長は「ジャスプロ
は中立的な立場をとり、スポーツ用
品業界の企業に広く参加してもらえ
るような運営を心がけたい」と抱負
を語った。
『この1冊ですべてわかる 物流と
ロジスティクスの基本』湯浅和夫著
日本実業出版社(一五〇〇円・税別)
左からイー・ロジットの角井亮一社長、
ゼットの渡辺泰男社長、ザイロの太田
達男社長、日立物流の関山哲司副社長、
佐川急便の平間正一副社長
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