ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2009年4号
物流不動産市場レポート
香港日系企業にとって重要な再輸出港物流施設は賃料・価格ともに下降局面

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

物流不動産市場レポート APRIL 2009  86 増加率と比較すると低調な結果となっている。
 香港の貿易相手国の多くが、世界経済の 減速による影響を受けているため、これらの 国々による外需は低迷しており、アジア市場 向け輸出額合計は、前年比十二・二%の減少 を示している。
とりわけ、香港の最大の輸出 市場である中国本土向けの輸出額合計は、一 葵青・荃湾が主要エリア  再輸出港として重要な貿易港である香港は、 中国国内に生産工場を多く構える日系企業 にとって戦略的な意味合いが強くなっている。
香港において物流施設が集積しているエリア は、コンテナターミナルがあるクワイチン(葵 青)やツェンワン(荃湾)地区が有名で、香 港倉庫物件の約五二%がこの地区に立地して いる。
香港国際空港へのアクセスもよく、人 気が高いエリアである。
 その他のエリアでは、シャーティン(沙田) も人気が高い。
空港と中国国境の間に位置し、 賃料もクワイチンやツェンワンと比べ割安なた め、家電メーカー等の進出がみられている。
 ユンロン(元朗)地区は、二〇〇七年七月 に深圳の蛇口との間に深港西部通道が開通し た事もあり、今後物流拠点として注目される エリアといえる。
 香港の工業施設集積エリアでは、欧米と比 較し大型用地が少ないため、高層倉庫が多く、 ランプウェイ方式により高層階へ直接トラック が乗り入れる事が可能な物件も散見される。
世界恐慌で貿易額が急減  折からの世界経済の低迷を受け、香港の 製品輸出額は昨年末から著しく減少している。
香港特別行政区政府統計処によれば、〇八年 十一月の輸出合計額は前年同月比五・三%減、 十二月には同十一・四%の減少を記録して二 〇五八億ドルとなっている。
同様に再輸出額 も十一月は前年同月比四・一%減、十二月は 同一〇・三%減で二〇〇九億ドルとなってい る(図1)。
 〇八年全体の輸出額合計は前年比五・一% の増加、このうち再輸出額は同六%の増加 を示しているが、双方の数値とも前年比九・ 二%増、同一〇・八%増を記録した〇七年の 第22回 香港 日系企業にとって重要な再輸出港 物流施設は賃料・価格ともに下降局面 シービー・リチャードエリス香港 ジャパンデスク 松丸裕之 シービー・リチャードエリス総合研究所 鈴木公二 (単位:十億HK ドル) 図1 香港の製品輸出額 2002 年2003 年2004 年2005 年2006 年2007 年2008 年 300 250 200 150 100 50 0 再輸出 輸出合計    87  APRIL 2009 海上コンテナ貨物取扱量合計は、〇八年十一 月に前年同月比十三・一%減、十二月も同二 四・一%の大幅減となっている。
 航空貨物取扱量も十一月は前年同月比一 八・七%減、十二月は同二八・一%の大幅減 となった。
〇八年八月以降、五カ月連続で対 前年比減少を記録している(図2)。
 香港の工業用不動産市場は、第4四半期 も引き続き景気減速によるマイナスの影響を 受け、工業用物件の投資市場は全般的に閑散 としている。
買い手と売り手の双方が、今後 の景気見通しについて不透明感を持っており、 また銀行の資金融資意欲が後退したため、市 場は逼迫した状態が続いている。
空室率も急上昇  与信が統制される中、多くの投資家は保守 的になり、「様子見」の姿勢をとる傾向にある。
一部の投資家の間には、このような時期を利 用して長期の開発に向けた戦略的な用地を獲 得する等の動きはみられるものの、工業用物 件への需要はさらに減少すると思われる。
今 後数カ月間、価格と賃料の下落トレンドが続 く可能性は否定できない(図3)。
 物流会社は貿易の状況悪化による影響を避 けられない。
そのため倉庫物件を物色する意 欲は後退しており、第4四半期に倉庫に対す る需要は減少トレンドを示している。
倉庫の 空室率は〇八年九月には一・六%であったの に対し、十二月には三・二%にまで上昇して いる。
ただし、現状では比較的低水準にとど まっている。
 倉庫の賃料および価格は、第4四半期にそ れぞれ前期比七・六%、六・六%の下落を示 している。
それでも長期的にみると、エネル ギー価格が下落したこと、新規供給が二〇一 〇年までは限定的であること、インフラ計画 の建設資金調達面で政府の支援策が実施され ることなど、明るい側面が幾つか見受けられ、 倉庫市場の賃料が今後大きく急落することは 考えにくい。
九九九年五月以来の大幅な落ち込みとなって おり、〇八年十一月は前年同月比九%減、十 二月は同十二・一%の大幅減となっている。
 日本向け輸出額合計は、十一月に前年同月 比で一%増加したものの、十二月には同六・ 一%の減少に転じている。
 香港の貨物取扱量は国内消費の収縮と対 外セクターの落ち込みにより、深刻な打撃を 受けている。
直近の政府発表データによると、 図2 香港のコンテナ貨物および航空貨物取扱量 2002 年2003年2004 年2005 年2006 年2007年2008 年 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 500 400 300 200 100 0 コンテナ貨物(単位:千TEU) 航空貨物(単位:千トン) 航空貨物 コンテナ貨物 図3 香港の倉庫賃料および倉庫価格指標 2002 年2001 年2000 年2003 年2004 年2005年2006年2007年2008年 220 200 180 160 140 120 100 80 60 40 20 指 標 (2000 年第1 四半期の賃料・価格を100とする) 賃料指標 価格指標

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